表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闇黒の悪役令嬢は溺愛される  作者: 葵川 真衣
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/100

13.皇宮


「話があるんだ。私の部屋に来てくれるかい、リア」

 

 ある日、昼食後に、リアは兄のオスカーに、そう声を掛けられた。


「わかりました」


 兄は真剣な表情である。

 どうしたのだろう?

 次の授業まで、まだ時間がある。リアは兄の部屋に行った。

 シックにまとめられた上品な室内だ。


「座って」

 

 リアはオスカーに勧められ、白の長椅子に腰を下ろす。

 兄はテーブルを挟んだ前の椅子に腰かける。


「お兄様、お話って?」


 リアが尋ねると、兄は膝の上で手を組み合わせた。


「突然なんだが……リア、私と結婚しないか?」


 リアはぱちぱちと瞬いた。


「え? 誰と誰がです?」


 オスカーは穏やかに告げた。


「私とリアだが」

「……お兄様と……?」


 リアはぽかんとした。兄は重く首肯する。


「そうだ。私達は兄妹となったね」

「はい」


 兄妹だ。兄妹で結婚はできない。

 兄は冗談を言っているのだとリアは理解した。


「私はリアのことを妹だと思っている。けれど本当は従兄弟だ」


 ふふっとリアは吹き出す。真面目でしっかり者なのに。


(冗談もおっしゃるんだわ)

 

 オスカーは手を組み直す。


「私達はまだ子供だし、今すぐというわけではないが、将来、私と結婚してくれないかい」


 リアは小さく肩を竦める。


「私、幼馴染からも、呆れられてしまうほどなんですよ。そんな私に求婚してくれるのは、きっとお兄様くらいですわ」


(……パウルは冗談じゃなかった。真面目に言ってくれた)


 結婚しようと言われたとき、とても幸せな気持ちになったことを思い出し、リアは切なく胸が痛んだ。


「いや、いずれリアには求婚が殺到する。私は冗談で言っているんじゃないんだ」


 冗談としか思えない。だって、今もオスカーはにっこり微笑んでいる。


「ふふふ、お兄様。私そろそろ、授業が始まりますので、失礼しますね」


 兄の冗談にずっと付き合っているわけにもいかないのだ。

 席を立とうとすると、オスカーがリアにもう一度言った。


「私と結婚したいとは思ってはくれないのかい?」

「お兄様に求婚されたら、それは嬉しいです。お兄様は素敵ですもの。けれど嫉妬されるのは怖いですわ」


 兄オスカーと弟のカミルは帝都中の令嬢に大人気なのである。

 お茶会で年頃の少女たちと話をすれば、年下も同い年も年上も、オスカーとカミルのことを熱心にリアに尋ねてくる。

 皆、将来の結婚相手として彼らを最高と考えているのだ。


 オスカーは名門アーレンス公爵家の次期当主。

 現公爵は侯爵位ももっているため、弟のカミルは侯爵位を継ぐことになる。二人共、容姿と性格も良い。

 

 理想的な結婚相手だから、令嬢もその親たちも彼らに夢中なのだった。

 

 しかしリアにとっては、二人はあくまで兄と弟だ。

 ここに引き取られたときから、ずっとそう思ってきた。

 たとえ兄弟でなくとも、リアの心には初恋のパウルが今も焼き付いている。他のひとには惹かれない。

 

 リアは兄の部屋を退室した。




◇◇◇◇◇




 数日後、リアは公爵に連れられて、皇宮へ行った。

 

 皇宮は、周囲に高い城壁を張り巡らせた、緑の小高い丘の中腹にあり、川や湖を臨める。

 彫刻群が並ぶ、美しく見事な庭園の先に、城館が幾つもあって、どれも見惚れるほど優美で荘厳なものだった。


(でもどうして、私が皇帝陛下と)

 

 話があると言われただけで、公爵も詳しい内容については聞いていないらしい。 

 リアはずっと不思議に思っていた。

 

 宮殿の磨き抜かれた大廊下を渡っていると緊張し、疑問がさらに膨れ上がってくる。

 近衛兵に案内されて、謁見の間の前まで辿り着いた。

 扉の脇に詰めていた衛兵が、二人がかりでそれを開ける。

 

 リアは父と共に足を踏み入れ、もう一つ扉を抜ける。

 丸天井から大きなシャンデリアが下がり、床に赤い絨毯が敷かれ、国旗の掲げられた室内を奥へ進めば、階段の先の椅子に皇帝が掛けていた。

 

 金銀の刺繍の入った天蓋のカーテンから覗く皇帝は、金の髪にブルーの瞳をした、若々しい容貌の人物だった。

 皇帝に拝謁し、公爵はリアを紹介する。


「驚いた」


 皇帝は信じられないといったように、僅かに首を振る。


「そっくりだ。あの頃に戻ったようだ……」

「ええ、陛下。私も妹を思い出します」

「彼女に初めて会ったのは、ちょうどこの娘くらいの歳だった」


 皇帝は瞠目し、じっとリアを正視する。リアはなんとか笑顔を保ったが、ひやひやしていた。


(母様と皇帝陛下って以前婚約をしていて……母様は……逃げたのよね……)


 昔のこととはいえ、自分は皇帝にとって、ひょっとして許せない存在なのでは……?

 

 リアは血の気が引く。


(ど、どうしよう……)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 人の好意に鈍感なのか
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ