第12話 ファーマ君、グラヴァ様から報告を受ける
お詫びと修正のご報告。
昨日、感想にて「セリウスくんに兄弟居ないって言ってなかった?」というご指摘があり、セリウスが1人っ子設定という事を忘れていた事に気が付きました。本当に申し訳ありません。
妹が従妹になっても話に大きな影響は出ないのですが、僕の中でミシェリアーナはセリウスの妹で固まっているので、3章20話のファーマとセリウスの会話を一部修正し、セリウスには兄弟がいるという設定でこのまま話を続ける事にしました。
今後、こういった間抜けなミスの無いように気を付けます。
感想、誤字報告、ブックマーク、評価、ありがとうございます。
王宮を出た後は、農場には戻らずエンドール家のお屋敷に向かう。頼んでいた件についての報告をもらえるのだ。
エンドール家の迎賓館に1泊させてもらって、翌朝、執事さんの案内でグラヴァさんの書斎に向かった。
「では、グラヴァ様がお越しになるまで暫くお待ちください」
グラヴァさんはまだ朝食中らしく、あと30分くらい待たなければいけないようだ。お茶とお菓子を用意してくれたので、ゆっくり堪能させてもらおう。
「待たせたね」
のんびりお菓子を楽しんでいるとグラヴァさんが部屋に入ってきた。
「いえ、お茶とお菓子が美味しかったので時間はあっという間に過ぎました」
もっとのんびりしていてもらっても僕は一向にかまわない。だって、お菓子が減ると補充してもらえるから。因みにお土産用にもお菓子を頂いた。
「先ずは来週の件だが」
「はい」
来週の件って何だろう? 何かあったっけ……? 領主会議? いや、そんなものは僕には関係ないんだから違うか? いや、関係なくもないか。異種族の件がどうなるかは領主会議の結果で決まるんだし。
「領主会議が終わった後に簡単な食事会が開かれるのだけど、ファーマにも出席してもらう事になっているからそのつもりでいてくれ」
それは予想していなかった……どうしてそんな事に? 嫌なんですけど?
「まあ、そう嫌そうな顔をするな」
おっと、顔に出ていたようだ。
「領主方への顔合わせくらいはしておいた方が、君にとって後々都合が良いんだよ?」
気遣いは有難いんだけど、疲れそうだな……
「まあ、食事会と言っても立食形式の緩い会だから、食事でもしに行くつもりで気楽に構えてくれても大丈夫だから」
まあ、そういう事なら問題は無いだろう。
「わかりました。最終日の後という事は闇の曜日の夜って事でいいんですか?」
「いや、流石に終わったその日にはやらないよ。翌日の光の曜日の昼からだ。君は当日の朝、9時ぐらいに此処へ来てくれればいい。それと、食事会には同伴者が必要だから君の部下でも連れてきなさい」
「はい? 同伴者ってなんですか?」
「普通は伴侶の事だけど、独身者は婚約者がいれば婚約者、いなければ使用人や部下を同伴させる事が多いな。勿論、女性だよ?」
婚約者なんてこの年では普通いないよね? って事は部下? エミルやレオナで良いって事?
「レオナでも良いって事ですか?」
「いや、流石に魔──キャッツは王宮どころか王都にも入れないからダメだ」
今、魔人って言おうとしたよね? でも言い直してくれるところが優しいな、お気遣いありがとうございます。まあ、レオナがダメなのは分かってた。言ってみただけだ。
「エミルかエルミナを連れてくるといい」
エルミナさんはエンドール家の家臣だから僕の部下という訳ではない。どっちかというと同僚だよね? エミルを連れて行ってもいいなら頼んでみようかな? ダメならエルミナさんにお願いしてみよう。
「わかりました。エミルに頼んでみます。服装はどうしたら良いですか?」
僕もエミルも王宮に着て行ける服なんて持っていない。まあ、僕は制服という手があるけど。
「服はこちらで適当に用意しておくから此処についてから、それに着替えるといい」
「わかりました。ありがとうございます」
服まで用意してくれるとは至れり尽くせりだな。
「それと、君に捜索を頼まれていたエルフの件だけど」
おおっ! 待ってたよ。どうだったんだ?
「残念ながら発見には至らなかった」
「そうですか……」
まあ、アイセン王国が滅ぼされてもう5年以上経っているから仕方ないよね。
「だけど、生きている可能性はあるよ」
「本当ですか!?」
「まあ、落ち着きなさい」
おっと、思わずテーブルに乗り出してしまった。
「現在、キターサ共和国には既にいないという事は確実だ。調べたところアイセン王国が滅ぼされた時にキターサに捕獲されたエルフは4人。その中で君の言った条件に合うエルフは、3年前にゾルドアデッシュ法国の富豪に売られている」
因みにキターサ共和国というのはエミル達の母国アイセン王国を滅ぼした国だ。探してもらっていたエルフというのはエミルのお母さん。グラヴァさんにはエミルの育ての親という事にして探してもらっていたのだ。
まあ、グラヴァさんなら僕のウソぐらいは見抜いているかも知れないけど、エルフと人間のハーフというのは宝くじより低い確率でしか生まれないそうだから信じてもらえているだろう。
戦争奴隷や亜人奴隷の場合は大抵名前を登録していないので条件で探してもらった。僕が教えたのはエミルの血縁上の父の家名と、そこの研究者をしていたという2つだけ。アイセン王国にもエルフ族はそれほど多くいなかったのと、その研究施設にエルフはエミルのお母さんだけだったので、この2つだけでも特定は可能なのだ。
「その後、ブルゲイアの貴族に売られ、昨年の夏頃にコルトピ公国の娼館に売られたところまでは掴めたんだけど、その娼館へ輸送される途中に何者かに連れ去られたそうだ」
連れ去られた? 盗賊か何かに襲われたのかな?
「という事は、生死不明という事ですよね? どうして生きている可能性があると思うんですか?」
「生き残った者の証言によれば、輸送中に連れ去られたのはそのエルフだけで、他の奴隷や荷物は手付かずだったそうだ」
「それは変ですね。盗賊ならお金になりそうな物は全部持っていく筈」
「その通りだ。つまり、襲った者はエルフの救出が目的だと考えられる」
「なるほど、それなら無事に生きている可能性は充分にありますね。少し安心しました」
生きているのなら、いずれ何処かで会えるかも知れない。
「いや、生きている可能性はあるけど、無事とは言えないんだよ」
「どういうことですか?」
「あまり子供に話す事ではないのだけど、そのエルフは最初の富豪に売られた時には自らの手で食事も出来ない程、自我を壊されていたそうだ」
「壊されていた?」
「ああ、君の探しているエルフが研究者をやっていたのが災いしたというところだね。少し残酷な話になるけど、聞くかい?」
どんな話かは想像もつかないけど、聞いておいた方がいいだろう。
「はい、教えてください」
「一般的にエルフというのは愛玩奴隷として高値で取引される事が多い。まあ、私には亜人を愛玩具にするような変態趣味はないがね」
いや、グラヴァさんの性癖情報はいらないから……
「でも、稀に君が探しているエルフのように特殊な技能を持っている場合がある。そういった特殊な場合、情報を引き出した後に他には情報を漏らさないように自我を壊すんだよ」
「自我を壊す。ですか?」
「ああ、情報を引き出す時には相手が人であるなら懐柔して取り込む事もあるのだが、亜人の場合は自白剤などの薬を使って無理やり引き出すんだ。そして、全ての情報を引き出した後は自失剤などの脳に影響を与える薬を使い完全に意志を奪うんだよ」
「酷い話ですね」
聞いていて胸がムカムカする。
「まあ、それが亜人に対する一般的な扱いだよ。この先、また聞く事のある話だろうから君も慣れておいた方がいい」
いや、そんな事には慣れたくないよ。
「話は以上だ。これ以上の捜索は不可能だから、そのエルフの事は諦めてくれ」
「わかりました。捜索して頂いてありがとうございました」
「まあ、見つける事が出来なかったからお礼を言われる程の事ではないのだけどね。気休めにしかならないと思うが、探し出す事は不可能に近いけど治療と運次第では自我が戻る事も充分に考えられる。自我が戻れば、もしかすると向こうもエミルの事を探そうとするかも知れないから、縁があれば巡り合う事も出来るだろう」
「はい、希望を捨てずに探し続けたいと思います」
可能性が残っていただけでもよしとしなきゃな。でも、この事はエミルには話せないな……
グラヴァさんからの報告はこれで終わり、僕は家に戻った。
夕食後。
「──そういう訳でその日はエミルに同伴者として一緒に出席してもらいたいんだけどいいかな? 無理ならエルミナさんに頼んでみるんだけど」
「いえ、その必要はありません。その席だけは絶対に誰にも譲りません。何があろうと絶対に私が行きます」
……珍しくエミルが激しい自己主張をしている。面倒そうな食事会なのにそんなに行きたいのかな? まあ、来てくれるなら良かった。
「いいなぁ、エミル。レオナもファーマ様とご飯行きたい」
「ごめんね、レオナ。じゃあ、レオナとは別に日に一緒にご飯食べに行こうか?」
「本当? 絶対、約束だよ?」
レオナと指切りで約束してあげると、レオナはご機嫌になった。コテツやアリッサやランカも羨ましそうにしていたので、全員とご飯に行く事になりそうだな。
次回更新は3/26になります。




