第11話 ファーマ君、王宮へ行く その2
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今日は2月第1週の闇曜日。セリウス様の遊び相手になるお役目の日だ。
前回は先王様達が一緒だったお蔭で唯の囲碁教室になってしまったから、今日は2人で楽しく遊べたら良いな。と思っている。
流石に今日は大人が混ざってきたりしないよね?
今日は2回目の訪問という事もあって王宮に行くのは僕1人だけ。本来なら一般通用門から王都に入らなければいけないのだけど、一般通用門は王都に用事のある商人さんやら冒険者さん等多くの人達が行列を作っているので、お役目の日は特別に貴族用に通用門を通って良い事になっている。
門番さんに王様から貰った特別通過証を見せると、とても丁寧に敬礼までしてくれて通してもらえた。流石は王家訪問者用の通過証。凄い効力だ。
王宮に到着すると前回とは違う部屋に案内された。相変わらず広い、1人だったら道に迷うよね。
「ファーマ様がお見えになりました」
案内をしてくれた使用人さんが扉をノックして声を掛けると、中から「入りなさい」と女の子の様な声が聞こえてきた。
セリウス様の声じゃないな。誰だろう?
「お、はよう、ファーマ」
「おはようございますセリウス様。……そちらの方は?」
セリウス様の横に両手を腰に添えて胸を張り僕を見上げている女の子がいる。年は5才か6才ぐらい? 髪の色はセリウス様と同じ青で、襟足を縦ロールに巻いた可愛らしい子だ。
「すまない、今日は、2人だけの約束……だったのだけど、妹も、一緒で良いか?」
「はい、問題ありません」
なるほど、妹さんだったのか。でもセシリア様にもセリウス様にも似ていない。父親似……でもないな。
「あなたがファーマね。今日はわたくしも一緒に遊んであげるから覚悟しなさい」
何をどう覚悟するのかは分からないけど、一緒に遊びたいんだという事はわかった。
「み、見ての通り、妹はこういう性格なん、だ……仲良く、してほしい」
ちょっとたどたどしい話し方だけど、人見知りのセリウス様がこんなに一生懸命言ってくれたのだ。期待に応えない訳にはいかない。
「分かりました。宜しくお願いします。お名前を伺ってもよろしいですか? 王女殿下」
「ミシェリアーナよ。私の事は、名前で呼ぶ事を許してあげる。光栄に思いなさい」
「ありがとうございます。ミシェリアーナ様、今日は宜しくお願いします」
セリウス様とは真逆な感じだけど、一生懸命胸を張って話している姿は、とても愛らしくて、とても微笑ましい。
遊ぶ前にミシェリアーナ様について少しだけ教えてもらった。年は6才になったばかりで、セシリア様の子供ではなく第2婦人のアデリアナ様の娘なんだそうな。
そういえばデザリアでは一夫多妻が認められているんだったな。王族や貴族、等の上流階級の人は複数の奥さんを娶る事がある。平民でも金銭的に余裕のある人は複数の女性と婚姻を結ぶ事があるらしい。
因みにマルガンさんには奥さんが6人いるそうだ。恋愛とかよく分からないけど、そんなに多くの人を娶りたいと思うものなのかな? まあ、人それぞれか……
「セリーお兄様、今日は何をして遊ぶのですか?」
「今日はイゴという遊戯盤を使った遊びをするんだよ。ミリアナ」
愛称はミリアナなのか。そっちの方が呼びやすいな。まあ、身内以外の異性が愛称で呼んじゃいけないんだけどね。僕がそんな呼び方をすると大変な事になるから、セリウス様に釣られて愛称で呼んでしまわないように気を付けておこう。
「イゴ、ですか? 私にも出来るでしょうか?」
「僕と1つしか違わないのだから問題はないと思うよ。ファーマが丁寧に教えてくれるからしっかりと覚えると良い」
「はい、頑張りますわ。ファーマ、しっかり教えなさい」
ふふっ、なんでか分からないけど僕に対してだけ厳しい口調で接しているのが可愛く見えるな。
それはさて置き。セリウス様は、どうやら身内相手なら普通に会話出来るようだ。慣れたら僕とも同じように会話してもらえるのかな? 期待しておこう。
「では、今日も最初から説明しますね」
前回同様に囲碁入門の本を使いながら2人に囲碁の説明をする事1時間。
「うー、わかんない。おもしろくなーい」
ミシェリアーナ様が今一つ説明を理解できず拗ねてしまった。
「ミリアナ、最初は難しいけど理解してくれば段々と面白くなるから、もう少し頑張ろう」
「むーりー、私はセリーお兄様のように頭が良くないの。他の遊びにしましょう?」
「簡単に諦めちゃダメだよ? そんな事をしていたらいつまで経っても成長できないからね?」
「セリーお兄様のいじわるー」
ちょっと涙目のミシェリアーナ様を見てセリウス様は困り顔だ。
「では、ミシェリアーナ様には囲碁と同じ道具を使って行う簡単な遊びをお教えしましょう。この遊びは囲碁にも通じるものが有るのでセリウス様も楽しめると思いますよ」
「ほんとう?」
僕の提案を受けてミシェリアーナ様が目を輝かせて笑顔になる。
「はい、お教えするのは五目並べといって、囲碁のように交互に石を置き合い、先に自分の色の石を5つ、縦、横、斜め、どの方向でも良いので真っ直ぐ並べた方が勝ちという単純な遊びです」
「それなら出来そう。最初からそういうのを教えなさいよね」
「こらっ、そういう口の利き方はダメだよ? ミリアナ。ファーマは親切で新しい遊びを提案してくれたんだから」
「大丈夫ですよ、セリウス様。僕は気にしていませんので。では、早速やってみましょう」
という事で、五目並べをやる事になった。実は僕も人とやるのは初めてだ。ルールは単純だけど、かなり上手く打たないと5つ並べる事が出来ないので、奥が深いゲームだ。
「では、経験者の僕がお二人の相手をしますね。先番のセリウス様とミシェリアーナ様は黒の石を持ってください」
さて、どうするかだな。いくら初心者相手でも態と負けるのは相手に対して失礼だ。かといって圧倒的に勝ってしまうと、楽しめないだろう。ここは相手に合わせて打って、ギリギリで勝つぐらいに止めるのが最適。
……と、考えていたのだけど、セリウス様は初めてなのに結構強い。上手く先を読んで良い場所に置いてくる。対照的にミシェリアーナ様は先を考えない。ひたすら真っ直ぐ5つ並べる為に突き進む。
これは、下手に揃えに行くと簡単に勝っちゃうな。ミシェリアーナ様の方は暫く阻止に徹して揃えないようにしよう。
とか、考えていると……
「あっ、ミシェリアーナ様の黒石が5つ揃いましたね」
「えっ?」
ミシェリアーナ様の意図に関係なく偶然揃ったので本人も言われて驚いている。うーむ、しまったな。猪突猛進に揃えにきていた石ばかりを気にして見落としていた。
「今、ミシェリアーナ様が置いた石から、この方向に数えると真っ直ぐ5つ並んでいるでしょ? これでミシェリアーナ様の勝ちになります」
「ほんとだー、やったぁ。ファーマよわーい」
くっ! 自分も気付いてなかったくせに。なんか悔しい。
「もう1局やりましょう。今度は本気出します」
「へへーん、次も私が勝ちますわ」
結果。相手に何もさせる事なくあっさり勝利した。
「ファーマのばかー!」
「ファーマ、大人げない……」
ミシェリアーナ様を怒らせてしまい、セリウス様にも呆れられてしまった。
「ごめんなさい」
だって悔しかったんだもん。
僕の大人げない行動はさて置き。五目並べは2人に好評だった。セリウス様は囲碁の方がお気に入りだけど、五目並べはミシェリアーナ様と一緒に楽しめる遊びなので、これはこれで面白いという事だ。
この日はずっと五目並べを楽しんだ。
僕が2人を相手するだけでなく、セリウス様対ミシェリアーナ様、セリウス様対ミシェリアーナ様+僕、セリウス様+ミシェリアーナ様対僕と組み合わせを変えながら遊んだ。
僕と組んだ方が必ず勝っていたので僕を負かしたいミシェリアーナ様が特別ルールを作り、僕対セリウス様+ミシェリアーナ様の勝負で2人の手番の時は1人1手つまり相手が続けて2手打つというおかしなルールで打たされ、負かされた。
流石に5目並べでも囲碁でも2手続けて打たれたら勝ち目がないよね? 流石に悔しくなかった。
僕を負かす事が出来てミシェリアーナ様は満足そうだったのだけど、セリウス様は苦笑いだった。でも、楽しそうだったので良かったな。
「では、今日はこの辺りで終わりにしましょうか?」
「うん……楽しかった。次は第3週、だね」
「はい、また第3週にお伺いします」
「次は私1人でファーマに勝つんだからね」
「はい、楽しみにしていますね」
王宮を出て今日はエンドール邸で1泊する事になっているので、そのままエンドール邸に向かった。




