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ファーマ君の気ままな異世界生活  作者: 幸村
4章 王立学園
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第8話 ファーマ君、農場を手伝う

 王都からの帰り道。


「それにしてもこんな遊戯を知っているという報告は受けていないのだけど、どうして黙っていたんだい?」


「いえ、別に黙っていたわけじゃないんですけど……言う機会が無かったというか、報告する程の事でもないかなと思いまして」


「何を言っているんだ? 儲けられそうな話はちゃんと報告しないとダメじゃないか。他の者に先に売り出されたら君にとっても損失だよ?」


 もうお金は沢山あるから儲けとかはあまり気にしないんだけど? いや、少しは気にした方がいいのか? 農場のみんなを路頭に迷わせてもいけないし……


「でも、売れますかね? 他にも盤を使った遊戯はあるみたいですし、そんなに売れないんじゃ?」


「これは絶対に売れるよ」


 マルコさんには確信があるようだ。


「どうしてですか?」


「どうしてって。先王様を始めとする錚々たる面々が、あれほど真剣に覚えようとしている遊戯だよ? 恐らく陛下や王宮の他の方々も始めている筈だ。上級貴族や王族に取り入りたい者ならば、誰より早く習得してお相手として名乗りをあげたいと考えるものだよ?」


 なるほど、個人的に囲碁に興味が無くても買う人はいるという事か。


「それに今日の話の中で君が言っていた、石を置いた時に良い音がする木材の盤や、色斑のない白石と黒石だけを揃えれば付加価値が付いて高値で売れる。貴族という人種は人より良い物、人とは違う物を使いたいと考えるものだからね。金や銀を使って石の代わりを作っても面白そうだ」


 なるほど、そういう考えもあるのか。何気なく前世で聞いた話をしたのだけど、僕は囲碁が打てるなら満足なので、道具に付加価値を付けるなんて事は考えもしなかったよ。でも、金や銀の碁石は目がチカチカしそうだから止めておいた方が良いと思うな。


 マルコさんはギルドに戻ったら早速、囲碁セットの量産に入るという事なのでサンプルとして碁石、碁盤、囲碁の本4冊を渡した。


「じゃあ、セビアス達にしっかりと教え込んでおくように」


「はい、戻ったら伝えます」


 マルコさんをアインスのギルドまで送り、農場で働いているセビアスさん含むエンドール家の使用人さん達に囲碁の指導をするよう念押しを受け、農場へ戻った。


 農場に戻って直ぐにセビアスさんにマルコさんからの言を伝え、家に戻りみんなでゆっくり団欒。


 落ち着いたところでエミルに事情説明する事にした。


「ごめんエミル。王宮にお勤めに行く日が増えちゃって、また農場の手伝いが出来る日が少なくなっちゃったんだ。それと、明日からセビアスさん達エンドール家の使用人さん達に囲碁を教える事になっちゃって、暫くの間、夕方はエルミナさんの家に行かなくちゃいけないんだ」


「ファーマ様が頭を下げる必要はありません。農場の事は私達にお任せください。ファーマ様の人脈が増える事は、農場にとっても私達にとっても良い事です。特にデザリアで生活基盤を築くのなら、王家との人脈ほど心強い事は無いでしょう。それにエルミナさんの家は直ぐ隣ですし、こちらに戻って来ないという訳ではないのでしょう?」


「うん」


「それならば何も問題はありません。ですが、落ち着いたら私達との時間も作って下さいね?」


 エミルは怒ったりはしなかったけど、やっぱり休日に一緒に過ごせないのは少々不満の様だ。


「うん、出来る限り一緒にいられるようにするよ。全部が落ち着いたら、また3人でどこかに行こうね」


「はい。でも、3人ではなくランカやアリッサやコテツも、もう家族のようなものですから6人で行きましょう」


「レオナもみんな一緒がいい」


 しまった……もうそれなりに長く同じ家で生活して家族の様な関係になっているのに、ランカ達を連れて行かないのはおかしいよね?


「ランカ、アリッサ、コテツ、ごめんね。農場が落ち着いたらみんなで小旅行でも行こうね」


「いえ、私など只の下僕、ファーマ様の思うようになさってください」


「いや、前にも言ったけどアリッサは下僕じゃないからね? せめて家臣だと思ってくれるとありがたいんだけど……」


「私も只の奴隷ですから気にしないでください。そりゃ、一緒に連れて行ってもらえるなら嬉しいですけど」


「ランカも一応は奴隷だけど、只のではないよ? エミルの言う通り、僕達は同じ家で生活する家族みたいなものだからね?」


 ランカは自分の家族と一緒に食堂の2階に住むと思っていたのだけど、本人の希望もあってこの家で一緒に生活している。今ではすっかり家族みたいになっているのだ。


「コテツは、みんな一緒、いい」


「そうだね。ごめんねコテツ。何処かに行く時はみんなで行こうね」


「あぅっ」


 暫くみんなで団欒して、お風呂を済ませ寝室に移動する。寝室はエミルとレオナは僕と一緒だけど、ランカ達は別の部屋だ。


 家族みたいな関係になってきているとはいっても、まだ教えられない事が多いので僕達3人だけで話が出来る空間は必要なのだ。


 寝室に入ると僕を真ん中にして右にエミル、左にレオナで川の字になってベッドに寝転がり、暫く会話を楽しむ。


「来週はご学友が訪問されるのですよね?」


「うん、前にテルホイの近くで侯爵家の人達に会ったのを覚えてる? あの時の侯爵令嬢と友達になってね。レオナとコテツに会いたいって熱望しているんだ」


「レオナ達に会いたいの? どうして?」


「ここだけの話なんだけど、ステイール家の御令嬢は僕と同じで前世の記憶を持っている子なんだ」


「えぇっ!?」


 流石に驚いたようでエミルは大きな声を漏らしたあと慌てて両手で口を塞いだ。慌てなくてもこの話を始める前に遮音結界を室内に張っているから声が外に漏れることは無い。


「やっぱり驚くよね。僕も驚いたよ。まさか前世で仲の良かった子が同じ世界に転生しているなんて思いもしなかったし」


「えっ? 前世でもお知り合いだったのですか?」


「うん、そうなんだ。これは僕達と本人しか知らない事だから、2人とも絶対に誰にも言っちゃダメだよ?」


「はい」「うん」


「それは良いのですが、私達に話しても大丈夫なのですか?」


「うん、本人には許可をもらっているから大丈夫だよ。エミルとレオナが僕に前世の記憶がある事を知っているっていうのもターニャは知っているからね」


「それならば安心ですね」


「でも、それとレオナ達に会いたいのは関係あるの?」


「うん、前の世界ではレオナ達キャッツやエミル達エルフは空想上の生物だから、実物に憧れている人が多いんだよ。特にターニャはそういう人種(ひとしゅ)が出てくる物語が大好きで、前世の記憶や人格が目覚めた時に絶対に友達になるんだって決めていたらしいんだ」


「そういえば以前、前の世界には人間(ヒューム)以外の人種は存在していないと仰っていましたね」


「うん、ひょっとしたら他の惑星にはいたかも知れないけど、僕の住んでいた星にはいなかったよ」


「では、種族間の争いというのは起こらない平和な世界だったのでしょうね」


「そうでもないよ? 僕のいた国は戦争をやっていなかったけど、同族同士でも肌の色や思想や宗教の違いから、ずっと戦争を続けている国もあったんだ。何かにつけて差別もあったし、種族の多さと戦争の有無は関係無いかな? だけど、文明が発展していた僕が生きていた時代には大きな戦争は無くなっていたよ。派手にやると生物どころか星が滅んじゃうくらい文明が進んでいたからね」


 まあ、小さな戦争でも今のこの世界の戦争よりは被害が大きいだろうけど……


「この世界でも文明が発展すると同じように大きな争いは減るのでしょうか?」


「そうなると良いよね」


 まあ〝大きな〟の基準が違うから良い事なのかは分からないけどね。この世界では1度、世界崩壊を起こしている訳だし、あまり発展しない方が良いのかも知れないな。


 まあ、あれはクレイエ様の失敗も絡んでいるから、そうそう同じ事は起こらないだろうけど。


 小難しい話になったからか、いつの間にかレオナは寝落ちていた。まだ数分しか経っていないのに、本当にレオナは難しい話が苦手だよね。


 レオナが寝てしまったから僕達も、もう寝よう。



 翌日。


 今日は久しぶりに農作業の手伝いをしようと思う。マルコさんにはああ言われたけど、エミルが自分のやりたい研究を後回しにして農場の面倒をみてくれているというのに、全く手伝いをしないというのは落ち着かない。


 現在の農地の開拓率は5割を超え、育てる作物も少し増えた。


 新しく育て始めたのは〝石芋〟というデザリアで多く育てられている芋。見た目はジャガイモを灰色にして大きくした感じ、一見石に見える事から〝石芋〟という名前が付いたんだそうな。


 皮を剥くとクリーム色をしていてジャガイモとあまり変わらない。味はジャガイモとは違い少し苦みがある。ジャガイモより粉っぽい感じで、火を通すと崩れてしまうので煮物には向かないけど、マヨネーズを開発できればポテトサラダには出来そうだ。


 この石芋を育てる理由は、季節に関係なく育ち、栄養価が高く、種を撒いてから収穫まで2カ月と育ちが早いので、連作障害の予防に丁度良く、農場で消費する食料にも出来、茎や葉はポークンの餌にもなる。一石二鳥どころか一石三鳥、一石四鳥の作物なのだ。


 石芋を作ろうと提案してくれたのはテシアさんだ。農場労働の経験が長いだけあって、リリを通して沢山の提案をしてくれる。


 この他にも農場で育てる日那国の作物の年間予定表を見て、収穫から次の作付けまでに空いている農地に育てられる作物を提案してくれるので大助かりだ。


 リリはテシアさんが親方をやった方が良いんじゃないか? みたいな事を本人に進言したらしいのだけど、テシアさんは『年寄りがでしゃばるより若いリリが中心になった方が将来的に農場の為になるよ』とリリを支える役目を買って出てくれた。


 という話がエミルから話が回ってきたので、テシアさんにはリリの補佐役というか相談役という役職になってもらう事にした。勿論、役職が付いたので手当は気持ち程度だけど出している。



 鍬を担いでエミルと一緒に顔を出すと


「お、おはようございます。ファーマ様」


「おはよう。今日も頑張ってね」


 少し緊張気味に一般奴隷の子達が僕に挨拶をしてくれたので挨拶を返すと、みんな嬉しそうに笑って自分の持ち場に小走りしていった。


 ここでエミルとは別れて僕は開拓作業中の農地に向う。


「おーっす、ファーマかいちょー。今日は一緒にやるのか?」


「ばかダン! 〝おはようございます〟でしょ? それと〝やるのか〟じゃなくて〝やるんですか〟よ」


「いってぇっ! 叩く事ないだろ?」


 開拓中の農地に到着すると既に作業を始めていた元カナイ村のダンが僕に声を掛けてきてロナにツッコミを入れられ後頭部をさすっている。


 どうしてこんな事になっているのかというと、僕が学校に行っている間にエミルとリリとテシアさんが、ステイール領から来てくれたみんなに従業員教育とやらをやったから。


 どうして〝会長〟なのか。僕的にはこれまで通り〝ファーマ〟や〝ファーマ君〟と呼んでもらいたいのだけど、雇用主という立場上、特定の従業員からフレンドリーな呼ばれ方をされていると他のみんなに示しがつかない。


 仕事外の時間は兎も角として、仕事中はちゃんと線引きしないと何れ問題が生じてしまうと、最初は統一して〝ファーマ様〟と呼ばせようとしていたのだけど〝ファーマ様〟呼びは僕が却下した。


 リリやミミやカナイ村のみんなに〝様〟なんて呼ばれると悲しくなるから。


 エミルやレオナに〝様〟呼びされるのは出会った頃からなので、もう慣れてしまったけど、出来る事ならやめてほしいんだよね。


 という事で、適当な呼び名はないかとエミル達が相談した結果。ケイトが出した


『ファーマ様を代表にした商会を立ち上げて商会長になって頂くのはどうでしょうか? 生産品を販売するのなら何かと都合も良いでしょうし』


 という意見が全員一致で可決され〝会長〟と呼ばれるようになったのだ。


 僕は人の上に立つようなお堅い役目は苦手なので、あまり好ましくはなかったんだけど、みんなからお願いされて断れなかったんだよね。まあ、名目だけで農場の事は人任せなので気にしなくてもいいか。


「やっぱり会長って呼ばれるのは慣れないね」


「あはは、俺も呼びにくいぜ」


「だーかーらー」


「わかった。悪かった。ちゃんとするから叩かないで」


 ロナの圧力に負けてダンが後退りしている。年齢はダンの方が上だけど、力関係はロナが上なんだな。女の子は強い……


 因みに今日はフーリを含む半数の人達は休日なのでいない。とりあえず作付け時期と収穫時期以外は作業にゆとりがあるので闇曜日と光曜日で、半数ずつ交代で休日をとる事にしたようだ。


 フーリ達カナイ村出身の女の子は休日になるとデオドランにお手伝いに行っているらしい。カナイ村でシスターアリアに小物作りを学んでオシャレに目覚めた女の子達は、すっかりアンナの妹分に収まったそうだ。


 露店の手伝いをする代わりにアンナとワックスさんから服作りを学んでいるらしい。農場の方が落ち着いたら、みんなにも進みたい道に進んでもらう予定なので良い傾向だな。


「ダンはどうなの?」


「どうなのって何が?」


「いや、リリとは進展あったのかなー? って」


「ば、馬鹿! そんなでっかい声で言うなよ」


 いや、そんなに大きな声では言ってない。


「ふふふーん、進展も何も、全く相手にされてないんだよねー」


 ロナが話に混ざってきた。やはり女の子は恋話センサーが鋭いようだ。


「そうなの?」


「リリ姉は仕事で頭がいっぱいだから、今は色恋なんて全く興味なさそうだよ? まあ、そうじゃなくてもダンには無理じゃないかな? 子供過ぎるし」


 まあ、年の差は大きいな。もう少し大人になれば7才差くらいはそうでもないだろうけど、18才と11才では大人と子供だ。流石に興味を持ってはもらえないだろう。まあ、誰かさんのような特殊な趣味の人もいるから希望も無くはないだろうけど……


「も、もう少し大人になれば俺だって」


「その頃には良い人が出来てるんじゃないかな? リリ姉は美人だし気立てもいいから、狙ってる人も多いのよ?」


「え゛っ!?」


 ロナから伝えられた新事実にダンがこの世の終わりみたいな顔で青ざめている。


「へー、リリって人気あるんだね。でも、農場で男の人って少ないよね? 一般奴隷の男の子達はみんなダンと変わらない年齢か年下だし、子供に好かれるのかな?」


「何言ってんのよ。大人の男の人だっているでしょ? ほら、農場(ここ)の衛兵さんとか」


 ああ、そういえばギルドから派遣されている衛兵さんの中にリリとあまり変わらない年齢の人や年上の人がいたな。


「でも、リリは貴族家の人とは付き合わないんじゃないかな? 偉い人と話すと胃が痛くなるって言ってたし」


「そんなのは慣れよ? 好きになったら気にならなくなるわ。それに貴族っていっても後継ぎじゃなかったら平民になるんでしょ? それなら問題はないじゃない」


 ロナがやたらと諸事情に詳しいのだけど、誰かに教わったのか? ……あっ、そういえばライラさんがそういう状況だったな。ダンの競争相手は手強そうだ。


 今日は夕方まで農作業を手伝ったのだけど、僕が話を振り過ぎて作業があまり進まなかった。


 みんな作業が進んでいない事には気付いていたらしいのだけど、僕に遠慮して言えなかったらしく、午後から開拓作業の様子を見に来たテシアさんに『作業が遅い! 会長が率先して作業を遅らせてどうするんですか?』と、注意されてしまった。


 最近、全然みんなとの会話が無かったから、つい話し込んでしまった。みんなごめん。次からは邪魔しないように気を付けます……


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