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ファーマ君の気ままな異世界生活  作者: 幸村
4章 王立学園
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第5話 ファーマ君、授業を受ける その3

感想を頂きました。

ブックマーク、評価、ありがとうございます。

 学園生活3日目。


 1時間目の地理の授業が終わり、2時間目は基礎魔法学の授業だ。授業は魔技演習場と呼ばれる場所で行われる。


 魔技演習場の大きさは実技演習場の半分くらい。横に広く作られていて片側の壁際に魔鋼(神鋼)で作られた人形が並べられている。たぶん、アレは練習用の的なんだろうな。


 授業開始の鐘が鳴り、ルクシーネ先生が魔技演習場に入ってきたのだけど、入学式では見かけなかった30代くらいの男女2人と一緒で、その男女は僕の背丈くらいの魔法道具のような物を乗せた台車を押している。


「皆さん、おはようございます。今日から基礎魔法学を学んでもらうのですが、初めに鑑定神具を使って皆さんの魔法適性を調べますので、1人ずつ私達のところまで来てください」


神具? 今、神具って言った? ……これは不味いな。デザリアで作られた鑑定魔法道具なら鑑定できる適性が12種しかないので特に誤魔化す必要は無いのだけど、ダンジョンアイテムの鑑定道具が同じとは限らない。


 人間族が使える神術の適性を全て持っているという事なら(本来はあり得ないんだけど)とても珍しい程度で納得してもらえるだろう。幸いな事にターニャも12種の適性を貰っているから、それほど悪目立ちはしない筈。


 でも、異種族固有の適性がバレると流石に不味いよね。問題は鑑定結果がどう表示されるかだな。僕の神眼と同じようにどんな属性なのかが分かる表示のされ方なら完全にアウトだ。


 でも、属性に合わせた模様みたいなので表示されて、自分達でどんな属性なのか調べなければ分からないという事なら、多少騒ぎになっても問題にはならないだろう。でも、そんな都合よくはいかないよね?


「先生。俺達、自分の適性は家にいる時に調べているから今更調べる必要はないと思うんですけど?」


 僕が1人悩んでいると、1人の男の子が質問を投げかけた。教室で僕の後ろの席にいるアシュトン君だ。頑張れアシュトン君。


「アシュトン君、貴方が実家にいた時に使ったのは鑑定魔法道具ですよね? 今回、使用するのはダンジョンで発見された鑑定神具です。鑑定魔法道具は偶にですが誤った鑑定結果が表示される事があるので、正確な鑑定を知る為には神具を使って調べ直す必要があるのです」


「そういう事でしたか。不躾な質問をして申し訳ありませんでした」


説明を聞いたアシュトン君はあっさり引き下がり、丁寧に頭を下げて詫びる。


ちょっと期待したけど、やっぱり検査は無くならないか……逃げられないなら覚悟を決めるしかないな。


「はい、他に質問はありませんか? なければ鑑定を始めます。順番にこちらに来てください」


 先生の指示でクラスメイト達が先生の前に綺麗に列を作る。僕とターニャは最後尾に並んだ。


「ファーマは、2年前から練成が使えたって事は、もうそれなりに魔法が使えるのよね?」


 並んで直ぐにターニャに話しかけられたのだけど、今はそれどころじゃ……いや、今更ジタバタしてもどうにもならない。さっき覚悟を決めたばかりじゃないか。ターニャと話をして気持ちを落ち着けよう。


「うん、一通りは使えるよ。ターニャは?」


「残念ながらまだ体内魔力の感知が出来るようになったところよ。早い子だと、もう詠唱の練習をしているのだけど、前に話したと思うけど私はエクサだから、剣術の訓練を優先して魔法の方はあまり教えてもらえなかったのよね」


 なるほど、この国では適性数が多いほど高い効果の魔法(神術)を使う事が出来ないと思われているから剣術を優先したという事か。


 因みにエクサというのはデザリアで適性数を表す言葉の1つだ。6大属性の適性数1つがアンス、2つがドエ、3つがトゥアン、4つがスケア、5つがダンゴで、6つがエクサと呼ばれている。


「聞いていなかったけど、ファーマはどのクラスなの? あれだけ凄い練成魔法が使えるのなら魔法の才能はあるのよね? ひょっとしてアンスだったりする?」


「言ってなかったっけ? 僕もエクサだよ」


「うそっ!? あんな凄い練成魔法が使えるのにエクサなの? 信じられない。って、あれ? さっき一通りの魔法が使えるって言っていたわよね? もう6大属性全部使えるようになったの?」


「うん、無属性も入れると、もっと多いけどね」


 他種族の固有神術まで使えちゃうのだ。言えないけど……


「くぅー、このチート野郎」


 はい、その通りです。ごめんなさい。


「あっ、僕の順番だから行ってくるね」


 早くも僕の順番が来てしまった。どうしよう、まだ心の準備が……


「ここに手を置いて」


 とりあえず深呼吸だな。


「どうしたの? そんなに緊張しなくても適性を調べるだけですよ?」


「……はい」


 そーっと置いたら誤魔化せないかな? ……ええい、なるようになれ!


「ええっ!? なにこれ? どういう事?」


「信じられん、全属性持ちだと?」


「ひょっとして鑑定神具が壊れたのか?」


 うぅ……やっぱり騒ぎになったか……って、あれ?


 鑑定道具の適性表示に目をやると、表示されているのは12種の模様。文字ではないのは少し予想していたけど、どうして12種しか表示されないんだろう? いや、そんな事はどうでも良い。兎に角、助かった……


 1人でホッとしていると、生徒含めその場にいる全員がざわついている。ターニャも少し驚いたような顔をしている。無属性まで6つとも持っているとは思わなかったんだろうな。言ってなかったし。


「ちょっ! これ見て、魔力の総量!」


「は、892!? 嘘だろ……」


 ああ、そういえば神力の量も騒ぎの種になるんだったな。でも、隠蔽術式が通用しなかったからしょうがないよね? 幸いな事にクレイエ様が施してくれたリミッターは看破出来ない仕様のようだ。いや、神様本人が見破れない術を道具が見破れる筈もないか。


「何かの間違いではないのですか?」


「鑑定魔法道具なら兎も角、鑑定神具で調べたんですよ? 間違うはずは……」


「急に故障したのでしょうか?」


「いや、さっきまで正常に作動していたのだからそれは無いだろう?」


 ……さっきから先生達の僕を見る目がちょっと怖い。


「ファーマ君、計測間違いかも知れないから、もう1度ここに手を置いてくれるかしら?


「はい」


 もう1度、手を乗せて鑑定してみたが、結果は変わらず。どうやらこの鑑定道具では種族固有の適性は表示されないらしい。


 先生達は自分達の鑑定もやって壊れていない事を確認し、軽く深呼吸をして僕の方をチラ見しながら話をし始める。


「こ、こういう結果が出たのだから鑑定神具を信じるしかありませんね」


「そうですね。この年でこれほどの魔力量があるなんて末恐ろしいですが」


「いや、恐ろしくはないだろう? どちらかと言えば勿体ないと思わないか? 魔力がどんなに多くても全属性持ちだぞ? まともに魔法が使えるとは思えん。宝の持ち腐れだ」


 酷い言われようだ。まあ、そう思われていた方が逆に良いかも知れないな。あー安心した。


「お待たせして申し訳ないわね。最後はタータニヤさん、ここに手を置いて」


 気を取り直してターニャの鑑定をすると、結果を見た先生達は驚き過ぎたのか目を剥いて硬直したまま動かなくなった。


 まあ、全属性持ちが続けて2人も出てきたらこうなるのも仕方ないだろう。


 因みにターニャの神力値は92と一般的な子供の中ではかなり多い方なのだけど、僕の後だからなのか特に何も言われなかった。


「家で計測した時にはちょっとした騒ぎになったのだけど、ファーマが先に計測してくれたお蔭で大した騒ぎにならなくて済んだわ。ありがとう」


 お礼を言われるような事はしていないんだけどな。


「でも、やっぱりファーマはチート野郎だったのね。なんなの? あの異常な魔力量は。きっとデザリア史上最高の魔法士と言われている〝氷炎の英雄ゲルドランデ〟より多いわよ?」


 氷炎の英雄ゲルドランデ? 初めて聞く名前だけど〝氷炎の英雄〟ってなんだかカッコいい。ターニャの話によると200年程前に活躍した正騎士ギルド魔法師団の団長さんらしい。


 因みに『きっと』という言い方をしたのは200年前には神力値や適性を調べられる道具が無かったからだ。あの鑑定神具は40年ぐらい前にダンジョンで発掘された物らしい。


「え、えー、少しバタバタしましたが、全員の鑑定が終わりましたので魔法の授業を始めます」


 先生の助手らしき2人は鑑定神具を持って魔技演習場から出て行った。


「本来であれば詠唱魔法の訓練を始める前に座学を教えるところなのですが、今日は全員の鑑定に時間を取られ、授業時間があまり残っていないので、本年度から導入された新詠唱魔法を皆さんに披露したいと思います。私が最初に使ってみせますのでよく見ていてください。その後は皆さんにも実践してもらいますので楽しみにしていてくださいね? 何か質問のある人」


「はい、実践させてもらえるのは嬉しいのですが、僕はまだ魔力操作が上手く出来ません。やる意味があるのでしょうか?」


 質問した生徒に続いて数人がそれに同意するように声を上げ場内がざわざわし始める。


「説明を忘れていましたね。先程話した新詠唱魔法はその詠唱の中に魔力抽出、魔力操作、魔力制御、属性変換等、魔法の発動に必要な工程を身に着ける為の術式が組み込まれているので、新詠唱を使えば体内魔力の感知が出来ない子供でも魔法の発動は出来るのです」


 ラグナムート様に貰った神術書の詠唱は初心者にとても優しい。従来の5音法だと抽出、操作、制御などの発動する神術に合わせた神力の利用法を覚える為の詠唱術式が抜けていた所為で発動が出来難かったのだ。


 適度な神力の量というのを自分の感覚だけで探らないといけないのだから、そりゃ発動し難いよね。


 面倒な訓練が省けるという事でみんな嬉しそうだ。


「ただし、新詠唱は魔力効率の良い無詠唱魔法を覚える為のものです。無詠唱魔法を使う為には、この詠唱による魔力操作、魔力制御、属性変換等の技術を体に覚え込ませる必要があるので、魔力感知を使って詠唱中の魔力の動きを感じ取らなければいけません。なので詠唱での魔法訓練を始める前に体内魔力の感知は出来るようになっていなければいけないのですが、この中にまだ体内魔力の感知が出来ない人はいますか?」


 いや、それ最初に確認しとくやつ……まあ、騒ぎの所為で忘れていたんだろう。


「いないようですね。では、先生が実際に使ってみせますから見ていてください」


 先生が人形に向かい手を伸ばし軽く深呼吸して詠唱を始めた。


「オブリディアードザライガエロボルデルガルデアゾグヨウノズキァヘルトユシゼクジョポレヲクマジジョベルン……」


 約500文字にもなる詠唱がゆっくり7分ほどかけて行われ。唱え終わるとルクシーネ先生の右手から魔鋼人形に向かってソフトボール大の火の玉が放たれた。


 火の玉は人形にぶつかると人形全体に燃え広がり、数秒燃え続けた後に消える。人形は神術に耐性があるので燃え尽きたりはしていないけど、表面が焦げて煙を登らせていた。


 因みにこの詠唱は貰った神術書に書かれていた神語を人語の発音に直しただけのもので、デザリア語に訳した訳ではないので適当な文字の羅列にしか見えないだろう。500文字を暗記するのは中々に難しいと思うけど、この短期間でよく覚えきれたな。流石は先生だ。


「今のが効果としては旧詠唱の中級魔法と同程度の火属性魔法の1つです。魔法耐性のある魔鉱人形相手なので地味な効果に見えますが、あれが人間なら今頃は只の炭の塊になっているでしょう。魔法を覚えても絶対に人に向けては使わないように充分注意してください」


「先生、魔法は使う人によって威力が変わると教わったのですが、新詠唱では誰が使っても威力は変わらないのでしょうか?」


「いえ、勿論使う人によって威力は変わりますよ。魔法の威力というのは属性適性の高さによって変わるものです。例えば私と同じトゥアンの人が同じ詠唱魔法を使った場合でも、その人が私より火魔法が得意なら今見せた火魔法より高威力になりますし、その逆もまた然りです。その辺りは新詠唱も旧詠唱も同じです」


 今の説明に少し補足すると、同じ詠唱を使った場合には適性値が高い方が効果も高くなるけど、神術の効果は適性値だけで決まるものではない。適性値というのは神術の属性変換効率に関係するものなので、無詠唱で使う場合は神力の操作や制御等、技術的な面や使用する神力量や濃度などの物量面でも効果は変わってくる。


 それでも、適性値が高い方が高い効果が出しやすいのは間違いない。幼稚園児がどんなに達人級の格闘技術を身に着けても格闘経験のない大人に素手での戦闘で勝つことが出来ないのと同じで、適性値が10の人が適性値が100の人には、どれほど技術を磨いても及ばないのだ。まあ、同種族でそこまで差が出る事はほぼ無いけどね。


 この辺は無詠唱を覚えてから必要になる知識なので今は気にしなくてもいいだろう。


「では、皆さんに詠唱魔法の訓練を始めてもらいます。座学の時間にまた詳しく説明しますが、詠唱に慣れない内は体内魔力の動きを探っていると詠唱時に使う魔力が安定せず魔法を発動させる事ができません。なので、慣れるまでは詠唱に集中して練習してください。詠唱するにあたって最も重要なのは発音です。発音を間違えると魔法が発動しないので、詠唱速度はゆっくりでも構わないので、丁寧に読み上げてくださいね?」


 先生の説明が終わり詠唱の訓練が始まった。が、残り時間が15分ほどしかなかったので、この日、最後まで間違えずに詠唱できる子はいなかった。


「今日の授業は終わりです。詠唱の書かれた用紙を先生のところまで持って来て下さい」


「先生、放課後に練習したいのですが、このまま持っていてはダメですか?」


「ダメです。逸る気持ちは分かりますが魔法というのは便利な反面、大変危険なものです。誤って人に向けて放ってしまった場合、怪我で済まない事もあります。魔法の訓練はちゃんとした指導者の下で行ってください」


 先生にそう言われて渋々といった感じで用紙を返す生徒達。


「忠告しておきますが、先生のいう事を聞かずに勝手に魔法の練習をしていた場合、学園にはいられなくなりますよ? それと、詠唱の書かれた用紙は毎回、授業の最後に回収します。もし、隠れて書き写したりした場合、投獄され最悪斬首刑になる事もありますから、絶対に書き写したりしないでください」


 流石にこの言葉は効いたようで、みんな激しく頷いている。何人かは目を泳がせていたので、その子達はバレなきゃ良いや程度に考えて隠れて書き写して練習するつもりでいたんだろうな。


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