第1話 ファーマ君、入学する
秋に更新するような事を感想の返事で書いていたのに春になってしまい、申し訳ありません。
ブックマークを消さずに待っていてくれた読者の皆様、ありがとうございます。
待っていてくれる皆様が居るお蔭で創作意欲をなくす事なく話し作りが出来ています。
今日から4章開始なのですが、4章は長くなりそうなので、とりあえずキリの良いところまで投稿します。
楽しんで読んでもらえれば幸いです。
今日は王立学園の入学式の日だ。
「エミル、農場の方は頼んだよ」
「はい、こちらの事はご心配なく、勉学に励んでください」
「レオナも頑張るね」
「うん、レオナ。エミルを助けてあげてね」
「いってらっしゃいませ、ファーマ様」
「いてらさい、ファーマ様」
「いってきます」
エミル、レオナ、アリッサ、コテツに見送られて僕は先日購入した自転車に跨り農場を出発した。ランカも見送りたいと言ってくれたのだけど、食堂での仕事がある為こちらには顔を出せなかったのだ。
農場からアインスまでの道のりは自転車で30分ほどだ。オフロード仕様ではないので自転車へのダメージは酷く、チェーンも度々外れてしまうけど、修理はすっかりお手の物。
前世で読んだ本を思い出しながらオフロードの自転車を制作中なのだけど、【真理】の能力には頼っていないので完成まで暫くかかりそう。急ぐ必要はないのでのんびり楽しく作るつもりだ。
因みに、残り2台の自転車はレオナとコテツの玩具になっている。コテツもレオナと同じで暴走するタイプなので農場内での自転車禁止令を出している。農場の外で走らせていると、地面が荒れている所為で度々派手に転ぶ(ぶっ飛ぶ)。あの2台はそろそろ廃車になるだろうな。
凄いのは何度ぶっ飛んでもレオナもコテツも猫のように上手く体を捻って綺麗に足から着地を決め、1度も怪我をしたことが無い事だ。まあ、自転車は派手に転んでいくけど……怪我をしなければ自転車が壊れるのは構わないので楽しんでほしい。
アインスの町に入り、町の中央通りを西に抜け学園の前に到着。
何処の城壁だろうかと思うぐらい大きな正門だな。前にマルコさんから聞いた話によると、アインスの町の約2割が王立学園の敷地なんだとか。うちの農場の何個分?
学園へは町の東西を結ぶ大通りに面した正門から入る。正門でニコラウスさんから貰った入学証を見せると学園の見取り図を渡され、王立学園初等部の実技演習場に行くように指示された。
見取り図によると、正門に入って直ぐのところには教員の宿舎と学生寮がある。学生寮はアインスに家を持たない人が生活する為の建物だ。
僕は町の近くに家があるので寮を利用する事はない。因みに上級貴族家の子は、学園に通っている間だけの家を貴族街に買って住んでいる人が多いらしい。
学生寮があるのに態々家を買うなんて凄いよね。因みにアインスの貴族街の土地は一番安い場所で10m×10mが100万デニールするんだって。うちの農場はあの広さで建築物コミで150万デニールくらいだったんだけど? お金持ちの金銭感覚は恐ろしい……
寮の区域を抜けると向かって左に初等部の校舎や演習場、書庫、食堂などの施設、向かって右側は中等部の施設だ。そこを真っ直ぐ抜け突き当りに学園生大会用の武技場と魔技場がある。
突き当たって左に進むと高等部の施設があり、突き当りを右に進むと学問ギルドの研究施設がある。研究施設は許可なく学生が立ち入る事は出来ないので、まあ覚えなくても良いだろう。
僕と同じように見取り図を手に初等部の演習場に向かう人がいるけど、みんな1人もしくは同年代の子達と歩いている。前世の入学式のように親が同伴するという事は無いようだ。
演習場の入り口には学園の教師らしき人が立っていて新入生達を中へと誘導していた。
指示されるままに中に入り通路を抜けると陸上競技場かと思うくらいに広いグラウンド中央付近に木製の舞台が設置されその前にはベンチのような横長の椅子がいくつも並べられていて、僕と同年代の子供が座っている。
この演習場は何故かグラウンドを囲むように階段状の客席のような場所がある。ひょっとして、ここでも競技大会とかを開いてみんなで観戦したりするのかな?
グラウンドの広さはだいたい、前世で見た本に載っていた新国立競技場と同じくらいか? 客席には1000人ぐらいは余裕をもって座れそうだ。こういった大きな施設を見るといつも思うんだけど、重機も無いのによくこんな大きな建物を建てられたものだ。
職人の技術力は機械が無い分この世界の方が上なのかも知れないな。
さて、感心している間にどんどん椅子が埋まっていく。席はどこでも好きなところに座って良いという事なので空いているところに適当に座ろうか。
「ファーマ、久しぶりね」
僕が場内をキョロキョロと見回しながら適当な椅子に向かって歩いていると、後ろから女の子が声を掛けてきた。
「あっ、タータニヤちゃん。久しぶり、覚えてくれていたんだね」
振り返ると、そこにはテルホイに向かう途中の街道で知り合った、ステイール侯爵令嬢のタータニヤちゃんがいた。
「ファーマも覚えていてくれて嬉しいわ」
「そりゃ、あんなところで領主一家に出会ったら印象に残るよ。それにあのお兄さんは強烈だったからね」
そう、あのシスコン兄は印象強い。いきなり妹を口説いたら許さんなんて凄まれたら忘れるわけない。
「あはは、兄と父は過保護なのよ」
お父さんも、そうなのか……
「あっ! ひょっとして近くにグレイシス君がいるんじゃ?」
辺りを見渡したけど、どうやら居ないようだ。
「入学式は新入生と学園の教職員しかいないわ。安心して」
なるほど、親と上級生は出席しないのか、良かった。
「それにしてもこれだけの人数の中、よく僕に気付いたね」
ザッと数えた感じ、場内には大人と子供合わせて200人以上の人間がいるんだよね。
「それほど難しくはなかったわよ? あなたの真っ白な髪は目立つもの」
ああ、なるほど。この世界には青、赤、黄、緑、黒、茶、金、等々、様々な髪の色の人がいる。でも、白髪というのは今のところ僕以外では見た事が無い。
まあ、誰にも何も言われない事を考えると珍しいだけで全くいない訳ではないのだろう。お蔭でアルビノの事を聞かれる事もないので助かっている。
僕達は隣同士の席に座る事にして、新入生の全員が集まったところで入学式が始まった。
入学式は前世と似たような感じで先ずは学長さんが壇上に上がり挨拶を始めた。学長さんは60才前後くらいの女性。年寄り臭い感じはなく、落ち着いた雰囲気の優しそうなスラッとした綺麗な女性だ。
名前はレイネリア・フレイマンさん。苗字がフレイマンという事はニコラウスさんの家の人なんだろうな。
学長さんの挨拶が終わると学園関係のお偉いさんの挨拶、アインスの町の領主さんの挨拶……2時間ほど偉い人達の挨拶が続き、流石に飽きてきたのか眠そうにしている子がチラホラ。
長い挨拶が終わると学園の説明が始まった。
今年の新入学生は240人、うち男子が147名で女子93名と男子生徒の方がかなり多い。
この240人は僕のように推薦で入学した子以外は入試に合格した子だけ、試験に落ちた子は地元領地にある学校に通うらしい。マルコさん情報によると、今年王立学園に入学できた平民は僕だけなんだとか。
学園は週休二日制で【火、水、風、土】の曜日が登校日で【闇、光】の曜日が休日。1年が前期、中期、後期に分かれていて学期の間には、4月に春期休暇、7月半ばから9月半ばまでが夏季休暇、12月頭から1月の半ばまでが冬期休暇という長期休暇が設けられている。
この国の乗り物事情から考えると、タータニヤちゃんの様に実家がアインスの町から遠い子は、在学中に実家に帰る事は出来ないだろうな。夏期休暇の期間なら無理すれば帰れなくはないだろうけど、数日滞在する為に往復1カ月半かけて帰るのは厳しいだろう。
飛行車が普及すれば年に3回は帰る事が出来るようになるだろうけど、現状では材料の関係で量産は難しいので、一般に普及するのは何年も先の話だろうな。
進級する為には科目ごとに定められた基準を達成、もしくは単位試験に合格すれば単位取得となるので、必修科目の全てと選択科目の内2つの単位を学年末までに取得すれば、授業に出なくても進級できるそうだ。
単位制だというのはマルコさんから聞いていたから知っていたけど、授業に出なくても単位を貰えるのは驚きだ。前世の学校と違い過ぎて違和感が凄いな。
学園の説明が30分ほどで終わると壇上に男女6人が整列する。
「続いて今日から3年間、皆さんに勉学や技能を指導する教師を紹介します」
先ず紹介されたのはクラス担任。
・騎士科
エイデン先生、男性、57才、白髪交じりの髪の熊のように大柄なムキムキの人。
デュナウ先生、男性、33才、灰黒色の髪をした細身の猫背、背筋を伸ばすと背は高いだろう。
・魔法士科
ロドリー先生、女性、36才、赤髪で見た目は20代と言われても違和感がないほど若々しい美人。
・統治科
ジェイサン先生、男性、47才、光が当たると青色に見える黒髪の爽やか美中年。
・政務科
ヴォウルド先生、男性、24才、瓶底眼鏡を掛けていて顔が分かり難いけど、眼鏡を外すと整った顔をしている。
・家政科
ヴィヴィオ先生、男性、51才、執事服が似合いそうなナイスミドル、メッシュのような白髪がちょっとカッコイイ。
・商業科
ルブラン先生、男性、32才、小太りでちょび髭を生やした糸目の人、年齢より少し年上に見えるな。
・薬師科
ジャンナ先生、女性、42才、灰銅色髪で三角メガネをかけた白衣の似合いそうなキリッとした顔立ちの細身の人。
・生産科
ルクシーネ先生、女性、20才、淡い金髪で背が低く、童顔なのでとても20才には見えない。新任教師らしい。
王立学園は前世の高校や大学のように学科が色々ある。将来どの道に進むかでどの学科に入学するのかを決めるのだ。
クラス担任の紹介が終わると、また別の人が入れ替わりで壇上に上がり、順番に紹介された。こちらは選択科目で専門的な知識を教えてくれる先生達だそうだ。
かなりの人数が紹介され、簡単な紹介だったにもかかわらず先生の紹介は1時間以上続いた。
「──これにて入学式は終わります。ここからは各自クラス担任の指示に従い、各教室にて話を聞いてください」
長かった……僕が推薦されたのは生産科なので担任はルクシーネ先生か。タータニヤちゃんはどのクラスなんだろう? ステイール家だから騎士科? もしくは統治科?
「ファーマはどのクラスなの?」
尋ねてみようと思っていたら先に聞かれた。
「僕は生産科だよ」
「あら、奇遇ね。私も生産科よ」
おおっ、それは嬉しいな。やっぱり、知っている子が同じクラスに居るとホッとするよね。
同じクラスだったので一緒に担任のルクシーネ先生のところに移動した。
王立学園は学科ごとに人数が違う。1番多いのは騎士科、2クラス合わせて100人その内の凡そ9割が男子生徒だ。その次に多いのは家政科、30人いて凡そ9割が女子生徒。政務科と商業科と薬師科は各20人ずつで、魔法士科は17人、男女比は半々といったところだろう。1番人数が少ないのは統治科で13人しかいない。
僕達、生産科は20人いて男女比は6対4。僅かに男が多い。
なんか魔法士科と統治科だけ中途半端な人数だな。
あとでタータニヤちゃんに聞いた話によると、統治科と魔法士科は定員の人数が決められていないらしく、入試で基準点を超えていれば入学できるそうだ。
どうして定員が決まっていないのかというと
先ず統治科。デザリアで領地を継ぐ為には王立学園を卒業しないといけない、という法律がある。小領地なら中等部、大領地になると高等部を卒業しなければいけないそうだ。
なので、定員人数を決めてしまうと能力が基準に達している子が領地を継げないなんて事が起こってしまうのだ。
領地を継ぐ為にこんな法律があるとは驚きだ。でも、これなら創作物によくある無能領主が横暴な領地経営をするなんて事は起こり難いだろう。今までに寄った町や村が何処もある程度治安が良いのも頷ける。
次に魔法士科。魔法士科というのは魔法の素質が非凡であると認められた子のみ入学できる学科なので、人より素質のある子を定数に達しているからと入学させないのは勿体ない、逆に平凡な子を入学させても意味がないという事で定員数を決めていないんだとか。
非凡かどうかの判断って難しいと思うんだけど何を基準にしているんだろうか? まあ、生産科の僕には関係ないから気にしなくて良いか。
「はい、それでは教室に移動しますから付いてきてください」
ルクシーネ先生に連れられて校舎1階の教室に移動した。
教室は前世の大学の講堂のような部屋で、奥に行くほど高い位置に机が置かれていて前の席に身長の高い子が座っても筆壁(黒板のような物)が見えなくなるなんて事はない。
席は好きなところに座って良いという事なので、タータニヤちゃんと隣同士で前の方の席を選んだ。
「はい、皆さんお静かに。改めて自己紹介します。私の名前はルクシーネ・ヴォボスタン、まだ今年見習い期間が終わって正式な教師になったばかりの新人ですが、共に成長していきたいと思っていますので一緒に頑張りましょう」
「「「「「はい」」」」」
先生の話に全員が声を揃えて返事をする。うーん、学校に通ってる実感が湧くなぁ。これだよ、これ。
このあと、先生のお話が1時間ほど続いた。入学式の時にも聞いた話だけど、クラス担任の先生が教えてくれるのは一般教養で、専門的な科目は入学式の時にクラス担任の後に紹介されていた先生達が教えてくれる。
驚いたのは基礎戦闘学や基礎魔法学の授業もクラス担任が教えてくれるというところ。戦闘や魔法(神術)って一般教養なのか?
因みに学園の教師は立場的には男爵や子爵と同格(役職により変わる)で、学園内においては侯爵と同格扱いになるそうなので、上級貴族家の子供であろうと教師に横柄な態度をとったりすると不敬罪になるそうだ。
「はい、説明はこれで終わりです。授業は明日からになるので今日はこれで解散してください」
先生のお話が終わると、生徒側の自己紹介は行わず解散になった。先生が教室から出て行くとクラスメイト達も次々に教室を後にする。
なんで生徒側の自己紹介をやらないんだ? これじゃ、知っている子以外に話しかけ辛いじゃないか。と、そんな事を考えていると
「ねえ、ファーマ。貴方これから何か用はあるの?」
タータニヤちゃんが声を掛けてきた。何か用事かな?
「ううん、もう帰るだけだよ?」
「それなら帰りに少しお茶しない?」
おおっ! 初日からクラスメイトと寄り道が出来るなんて嬉しいお誘いだ。前世では誘われる事なんて殆どなかった。まあ、誘われたとしても家事をしなきゃいけなかったから、お断りしなきゃいけなかったんだけどね。
夢だったクラスメイトとの寄り道が初日に叶うなんて幸先が良い。
「うん、喜んで」
僕が了承すると、タータニヤちゃんは少し嬉しそうに軽く微笑んで「じゃあ、行きましょう」と言って、教室の外に向かって歩き出し、僕はウキウキしながらタータニヤちゃんの後を追った。
何気ない会話をしながら教室を出て寮の前を通り過ぎ正門に到着すると、ホロに家紋の入った馬車が十数台、正門前に集まっていた。タータニヤちゃんの話では、あれは寮ではなく貴族街に家を建てて学園に通う子の迎えの馬車らしい。
その中の1台がタータニヤちゃんの前に止まる。その直ぐあとに軽鎧で武装した男性……ではなく、よく間違われると言っていた女性が馬に乗って僕達の側で止まり、馬から下りてきた。
「お迎えありがとうございます、テレサ叔母様。でも、町中まで護衛してくれなくても大丈夫よ?」
えっ!? 叔母様? この人がタータニヤちゃんの?
「そういう訳にもいかんだろう? 侯爵様に頼まれたのだ。中等部卒業までは悪い虫が付かぬよう、しっかり護衛させてもらうぞ」
そういえばお父さんもお兄さんと似た者同士だって言ってたっけ……それにしても、この人がタータニヤちゃんの叔母にあたる人だとは驚きだな。前に会った時は正騎士さんだった筈なんだけど辞めたんだろうか?
「その子は今日知り合った子か? ん? どこかで見た顔だな?」
「お久しぶりですテレスティナ様。僕はグラダの町で1度だけお会いしたファーマという者です。ブラジアの開発者だと言えば分かりますか?」
「……おおっ、思い出したぞ。確か1度、質の悪い連中に絡まれていたところを助けた子だったな。君が男の子だと姉から聞かされた時には驚いたぞ。そうか、もうターニャと仲良くなったのだな」
ん? 姉から聞かされた? 姉って、たぶんクレスティアさんの事だよね? ステイール侯爵の事を〝兄〟ではなく〝侯爵様〟って呼んでいたし、顔の雰囲気が似ているから間違いないだろう。
どうしてテレスティナさんとクレスティアさんの間で僕が話題に上がるんだろう? ……まあ、いいか。
「覚えていてくれて嬉しいです」
「君の髪の色は珍しいからな。それにどこか通じるものを感じるから印象に残っていたのだ」
通じるものは異性によく間違われるという点を指しているんですよね?
「ふむ、君なら姉のお気に入りだから排除の必要はないな。ターニャと仲良くしてやってくれ」
は、排除って……
「だから……排除しようとしないでよ! 友達が出来難くなるでしょ?」
「ははは、そう怒るな。侯爵様には近づく男全てを排除しろと言われているが、それをしたらターニャの婚期が遅れてしまうからな。排除するのはターニャに相応しくないと判断した者だけだ」
どんだけ過保護なの? その為にこっちに転勤させられたって事? 親バカが過ぎる。
雑談が終わり、馬車に乗せられて連れて来られたのは貴族街にあるおしゃれで綺麗なカフェ? にしては大きいな。庭が庭園のようでとても綺麗だ。
「テレサ叔母様、今日はファーマと2人で話がしたいから先に戻っていて下さいませんか?」
「なんだ、さっそく逢引きか? ターニャも案外手が早──」
「違うわよ! もうっ、からかわないで。ちょっとお話するだけなんだからね?」
ニマニマと含みのある笑い方をしながらテレスティナさんが話す言葉を遮り、結構本気でタータニヤちゃんが怒って頬を膨らませている。
うーむ、テレスティナさんはもっとお堅い人のイメージだったけど、素はちょっとオヤジっぽいんだな。これでは男に間違えられても……なんて事は口が裂けても言えない。
ムフフと楽しそうに笑うテレスティナさんに見送られ、僕とタータニヤちゃんはカフェに入る。テレスティナさん達は僕達が出て来るまで待っていてくれるそうだ。
「防音の個室に案内して頂戴。注文はミイルク茶とグレップ菓子のセットを2つお願いするわ」
「かしこまりました」
店に入るなり、タータニヤちゃんが慣れた様子で注文を済ませ、僕達は店の奥にある個室に案内された。この個室は部屋全体に防音の術式が組み込まれていて、密室状態になると術式が発動する仕組みになっているらしい。
密室になると発動する術式か面白いな。原理が気になる。学園ではそういう知識も教えてもらえるんだろうか?
部屋に入り軽い雑談をして、注文の品が届き、お互いにこの2年間の出来事を話せる範囲で話し、楽しいティータイムを堪能した。
「──私達と別れたあと、浮遊島の上に行っていたなんて本当に驚きだわ。大変だったのね」
「楽しかったから大変でもなかったよ? ドラグーンって、この国で噂されているみたいに粗暴でも乱暴でもないし、良い人ばかりだったから」
まあ、ちょっと戦闘狂みたいな面はあるけど。
あっ……調子に乗って日那国に行った事を話しちゃったけど大丈夫かな? ま、まあ、そこから飛行車を作ったなんて事には繋がらないよね?
話が一段落して僕がお茶を口に含んだ時──
「ところで柳君?」
――衝撃の言葉がタータニヤちゃんの口から発せられた。




