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ファーマ君の気ままな異世界生活  作者: 幸村
第3章 農場建設
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第33話 ファーマ君、入学準備をする

 時間は少し遡り、12月の下旬。


 ダン達が農地にやってきたので、農場の方はエミルとリリに任せて僕は入学の準備を始めた。


 必要な物は学園の制服、筆記用具、武具……武具? どうして勉強するのに武具が必要なんだろう?


 貰った入学の手引には実戦用の真剣と訓練用の木剣を用意しろと書いてある。防具は革製でも金属製でも身を守れる物なら何でも良いらしい。


 なぜ武具が必要なのかを聞くためにギルドに顔を出してマルコさんに訊ねてみると、学園の必修科目に基礎戦闘術という授業があるらしく武具はそれに必要なんだとか。


 王立学園に通うような家柄の子供は悪い人に狙われる事がよくあるので最低限自分の身は自分で守れるようにならないといけないらしい。……恐ろしい国だな。


 他にも学園について色々と訊ねてみた。


 王立学園は単位制で必修科目と選択科目があり、必修科目の単位は勿論全て取らなくてはいけない。選択科目は最低2科目の単位を取得しないと進学出来ないらしく。単位を落とした場合、留年ではなく退学となるらしい。


 真面目に授業に出ていれば初等部で単位を落とすことは無いと言っていたので、まあ、心配はしなくて良いだろう。


 制服は学園指定の色と形状を守っていれば生地は何を使ってもOKなので、最初の2着は店で購入して、それが着られなくなったらデオドランで作ってもらおう。


 武具は片手でも扱える程度の剣と動きを阻害する事の無い程度の鎧を用意すれば良いらしい。自分に合った武具であればどんなものでも決まりはないという事なので、鍛冶の練習がてら自分で作る事にした。


 教科書というのは無いそうで、授業をする先生が説明しながら筆壁(前世で言うところの黒板)に書いて授業が行われるそうだ。


 これら以外にも色々と教わり、お礼を言ってギルドを後にした。


 ギルドの帰りに早速、マルコさんに教えてもらった制服を取り扱っている店に行ってみる。教えてもらった店は平民の富裕層が買い物をする商業区の2階建ての大きな服屋さん。店の名前は【ジェスコ】……昔のイ〇ンが似たような名前だったな。


「いらっしゃいませ」


「こんにちは、王立学園の制服をここで売ってもらえると商業ギルドに教わって来たのですが?」


「制服ですね。ご案内します」


 店の入り口に待機していた若い女性店員さんに連れられて店の奥に歩いていく途中に教わったのだけど制服は既製品と特注品があるらしい。貴族家の人は良い生地を使って特注する事が多いらしいのだけど、平民の家の子は既製品を買うのが一般的なんだそうだ。


 見せてもらった学園の制服は前世の学ランっぽい見た目だった。


 学ランと違うのは刺繍や装飾が付いている事。社会科の教科書に出てきた軍の将校が着ているような服を想像すれば分かりやすいだろう。色は黒で、上着は男女とも同じ形。男女の違いはスカートかズボンかという点だけ。暑い時期はカッターシャツにネクタイを締めるらしい。初等部から高等部まで制服の見た目は同じで、どの学園の生徒かとか学年は襟章と腕章で見分けるらしい。


 ギルドの紹介状を見せたお蔭か、店主さんはかなり丁寧に説明をしてくれた。特注する必要はないので既製品でサイズの合う物を2セットで購入。生地は高過ぎず安過ぎない生地の服だったので値段は1セットで1000デニール。


 服にしては結構いい値段だ。このランクの制服にした理由は、平民の着ている制服の生地が安物だと、貧乏人だと笑われる事があり、高級だと生意気だと目を付けられる事があるらしいのでこの程度が丁度いいだろうと店員さんが教えてくれたから。階級社会は面倒だよね。


 町での買い物は終わったので、農場に戻り早速工房で作業開始だ。


 先ずは防具から作成する。


 安全第一なので、性能はそれなりの物を作るのは当然として。問題は見た目だな。さっきの服屋さんで言われた通り、平民があまり高そうな物を身に着けていると、変に目立つから見た目は地味にしよう。


 まあ、子供に何か言われても大人の対応をすれば問題はなさそうだけど、揉め事の種は少ないほどいいからね。


 先ずは素材。竜布や竜板を使えば最高の防具が出来るだろうけど、万が一素材を見抜かれると大騒ぎになる。使うなら日那国の近辺に生息していた魔物の素材を使えば大丈夫なはずだ。


 多少、性能に不安はあるものの、初等部の子供にあの辺りの魔物の素材を使った防具が壊せるとは思えない。まあ、万が一を考えて鎧下にはいつもの聖天布の服を着るようにしよう。痛いのは嫌だからね。


 余談だけど、僕はリミッターを付けて力を抑えているとはいっても、基の生命力値が高いので怪我をしても大抵の傷は直ぐに治る。でも切られれば痛いし火傷だってする。


 リミッターを外せば余程の攻撃でない限り怪我をすることは無いけど、流石に斬りつけられても怪我をしないと怪しまれるので滅多な事では人前で外すつもりは無い。まあ、リミッター解除しても火や熱湯は熱いままだし、電気に触れば痛いし、氷や吹雪に触れば冷たさや寒さは感じるんだよね。火傷や凍傷は負わないけど……


 閑話休題。


 さて、鎧に使う素材は火猿(フレイプ)のなめし革を使おう。フレイプのなめし革は火に耐性が高く、弾力があり、とても軽い。鉄の剣くらいの斬撃なら簡単には傷つけられないほどの硬さもあるので防具に使うには良い素材だ。


 作るのは軽装鎧。胴は肩から腰までのベスト型にして、アームガードで前腕、レッグガードで膝下を防護する。


 練成ではなく全て手作業だ。これが将来的に練成や創造の糧になるので、今はあまり練成に頼らず手作りを極めようと思っている。


 基本は日那国の雄二郎さんに叩き込まれているので、教わった基本に忠実に叩いて縫って作業を進めた。


 約2週間を掛けて完成したのはなんの飾り気もない地味な革の鎧。実用性だけを目的に作ったのでこれで良いのだ。これなら平民が身に着けている分には目立たないだろう。


 雄二郎さんの作った物に比べると縫い目も荒いしサイズ感も甘い。神眼で理想の作りが見えているだけに、技術の無さがはっきりわかるな。2年で色々な事を覚えた内の1つなので、基礎の基礎程度しか学べてないんだよね。これからコツコツ磨いていこう。


 防具は完成したので、次は武器作りだ。


 材料は神鉄鉱を使う事にした。鉄ではなく神鉄にしたのは、エミルに教わった【纏い】という武具に神術を纏わせる技を使うのに神鉱の方が適しているからだ。


 折角だからディグランザに似せた形の剣を作る事にした。将来的にディグランザを使う事を考えると似た形の剣に慣れておいた方がいいだろう。


 勿論、練成ではなく親方(五平太さん)直伝の刀鍛冶の技術を使って打つ。


 打ち方は教わったけど剣を打つのはかなり難しい。最適な温度とタイミングが分かっても打つ力加減は自分の感覚頼りなので神眼があっても最高の物が作れるわけではない。


 逆に神眼で親方の打った刀を見ているので、自分の技術の荒さが余計に目立つのだ。


 折りたたんで叩いて、折りたたんで叩いて、伸ばして整形して冷やす……1人で打つのは初めてなので何度も失敗したけど、納得いくまで最初から打ち直し、刃をつけ……とりあえず武器と呼べる物が完成したのは、入学式前日だった。見た目は剣だけど、刀鍛冶の技法を使って作っているので刀と言っても良いかも知れない。


 まあ、完成したとはいっても親方の作る刀には程遠い出来栄えだ。親方に見せたら〝なまくら〟だって言われるかもな……


 親方曰く『鍛冶師の道に終わりは無い』だそうなので道は長い。でも、初めて自分1人で作った武器には感慨深いものがあるな。大事にしよう。


 ディグランザ以外で剣を使うのは初めてだ。将来的にちゃんとディグランザを振るえるように日那国にいる時にエミルに剣術を教わろうとしたのだけど『申し訳ないのですが、人に教えられるほどの技術は持っていません』と、お断りされた。中途半端な技量しかない人に教わると悪い癖がついてしまうらしい。


 という事で、新右衛門さんに相談したところ『剣は使った事はないでござるが、刀の使い方であればお教えするでござる』と言ってくれたので、子供用の刀を借りて新右衛門さんが前世で学んだという【真幻流刀術】というのを教わった。


 竜人族は手加減する時以外は基本素手で戦う。理由は素手の方が武器を持つより強いから。素で強いので武術も使わない。


 だけど新右衛門さんだけは前世の経験を引き継いでいるので武術の心得があるのだ。というか、前世では師範代をやっていた程の腕前だったらしい。


 刀術とは言っても刀だけを使う訳ではない、武器を持っていない時にでも戦えるように素手での格闘術もある。新右衛門さんがドラグナで最強な理由はステータスが群を抜いて高いのもあるけど、この【真幻流刀術】によるところも大きいのだ。


 刀での立ち回り、間合いの測り方、抜刀術、素手での打、突、投げ、極め等々色々教わり、新右衛門さんからは一応【免許皆伝】を頂いた。この時に僕が訓練に使っていた刀をくれると言ってくれたのだけど、自分の武器は自分で作りたかったのでそれはお断りした。


 因みに日那国の人達にも【真幻流刀術】を教えたらしいのだけど、竜人族は神術、神力の扱いと同じく、体術でも不器用な人が多く免許皆伝を貰ったのは数人しかいないらしい。



 早速、完成した剣で試し切りをしてみた。薪の原木(直径10㎝)を空中に投げ、落ちてきたところを【真幻流刀術・雷光一閃】で真っ二つに斬る。


 雷光一閃とか大げさな名前だけど簡単に言えば抜刀術だ。天から落ちる雷の如き速さで抜刀するところからこの名前が付いたんだそうな。


 斬った薪を拾って切り口を見てみると、切れたというより割れたという感じで切り口が荒い。


 うーむ、剣の出来が悪いのか僕の剣の腕が悪いのか……新右衛門さんなら同じことをしても鉋を掛けたように切り口が滑らかになるんだけどな……


 考えなくても両方未熟なのは解っている。でも、もう少し綺麗に切れると思ってたんだけどなぁ。どちらの技術も、もっと磨かないとね。


 とりあえず武具は完成したので最後に訓練用の木剣を作る。材料はトレントの外郭で良いか。見た目はただの木だし。入学の手引を何度も見直し、見落としが無い事を確認して入学準備は完了だ。



 明日は入学式。学校、楽しみだなぁ。


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