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ファーマ君の気ままな異世界生活  作者: 幸村
第3章 農場建設
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第31話 ファーマ君、引っ越しする

 一般奴隷と経理担当との契約を終えた翌日。今日から引っ越しの為の準備や仕入れを始める。


 一般奴隷の人達に長屋で使ってもらう寝藁とブロップの布団、農具各種、食材等々、必需品の数々と、工房や研究室で使う鉱物や材木、薬草関係、それとリリ一家、ダン達、ランカ一家、経理2人、ワックスさん一家とアリッサとコテツ用にベッドと綿生地の魔物の毛の入りの布団を上下セットで購入。


 魔物の毛の布団と言っても値段は様々で良い物になると綿の布団より高級、安い物は綿よりだいぶ安価で一般平民でも頑張れば買えなくない値段だ。値段の違いは使われている魔物の毛の質や種類。今回かったのは一番安い色々な魔物の毛が混ぜられている綿より硬い布団だ。今まで寝藁とブロップを使っていた人からすると寝心地は悪くない筈。


 僕達用のベッドは狭くて一緒に寝られないからとエミルとレオナに却下された。自分達の布団は日那国で貰ったのがあるから買わなくても良いだろう。


 いつものようにギルドで購入したのだけど、今回は仕入れの量が多いので、いつもの『ここは個人が買い物するところじゃないのよ?』というセリフを言われなかったのが、少し物足らない気がする……


「あとはワックスさん達が到着するまでにデオドラン新店舗を建ててもらうのとリリ達の家とダン達の家、それに奴隷の人達が働いている間、5才以下の子供を預かる託児所も必要だね」


リリ達とは一緒に暮らしても良いかもだけど、そうするとダン達と差をつけたみたいに思われてもいけないから家は別の方が良いだろう。


 ギルドを通してビルダさんの工房に追加の依頼を出すとその日の内に返事が返ってきて、翌日、すり合わせをする事になった。


「こんなに早く対応してもらってありがとうございます。他の仕事は大丈夫ですか?」


「ああ、気にすんな。お前は変に値切らねぇし金払いも良いし無理難題は言わねぇから、うちにとっちゃ上客だ。賄いもうめぇしお前んとこの仕事は最優先でやってやるぜ」


 そういえば値段交渉は一切しなかったな。まあ、ギルドの紹介だからぼったくられるなんて心配もしていなかったし、払える範囲の値段なら文句はないよね。


 と思っていたけど、値段を完全に相手任せにするのも良い事ばかりではない。いいカモだと値段を吊り上げる業者もいるらしいので気を付けなければいけないらしい。相手の人間性を見て交渉しろと教えてもらった。


 挨拶も早々に追加の建物のすり合わせをした。


「──家が2軒に店が1軒に託児所か、こんくれぇなら直ぐだな」


「この家に住む人たちは一月後くらいに到着する予定なんですけど間に合いそうですか?」


「ああ、問題ねぇ。しっかし、奴隷の家族まで面倒見てやるとはお人好しだな。金が厳しくないか? 自分達の生活を1番に考えろよ?」


「今のところお金には余裕がありますので大丈夫です。ご心配ありがとうございます」


「そうか、ならいい。作業の方は早速明日からでも始めるから、また旨いメシ期待してるぞ」


「はい、宜しくお願いします。賄いは期待しててください」


 家の件が片付いたら次は農場で飼うポークンの仕入れ。農地開拓や水田作り、それと農場と町の行き来にはポークンの力が必要になるので雄のポークンを5頭とホロを5台とミイルク採取用に雌5頭購入。ポー車は3台にしようと思っていたのだけど、経理で雇った2人が元行商人の娘で操車が出来るという事なので5台にした。


 因みに雌は力が弱いので農耕に使ったりホロを引かせたりするのには向いていない。でも、ミイルクが取れるから値段は雌の方が倍くらい高いのだ。


 引っ越しの準備には全部で4日掛かり、今日は全員で引っ越しの日。


 予定していた日数よりだいぶ早く準備で来たな。


「今日出発だけど、もうみんな準備は出来てるの?」


「はい、昨日のうちに連絡をしていますので、もう出発の準備を終わらせて宿で待機している筈です」 


「うちの家族も大丈夫です」


 経理の2人もランカの家族も準備は良いようなので、ランカには家族を呼びに行ってもらい僕達は経理の2人を迎えに行って商業ギルドで集合する事になった。因みに今借りている家はそのまま契約を継続して、農場に戻らない時の宿代わりにする事にしている。


 経理の人が宿泊している宿に到着して、2人の顔を見て驚いた。


「初めまして先日契約させてもらったケイトです」


「私はミルムです。13才独身です」


「ミルム、はしたないですよ? 今は独身とか関係ないでしょう?」


 ……見覚えのある子達だ。っていうか、前にコテツやアリッサと一緒に助けた子達だよね?


 エミルとアリッサの方に視線を送ると自信ありげな顔をしているので、問題はないだろう。たぶんケイトとミルムにも事情を話した上で契約している筈だ。でも前もって言っておいてほしかったな。まあ、エミルにもドッキリを仕掛けるようなお茶目な面が出てきた事を喜ぶべきか。


 『初めまして』と言ってくれているから、こちらも初顔合わせの体で良いよね?


「初めまして、ファーマです。凄く優秀だと聞いているので期待しています。これから宜しくお願いしますね」


「は、はい、死ぬ気で働きます」


「はーい、解雇されたくないので頑張りまーす」


「いや、死ぬ気ではやらなくていいからね? ほどほどに頑張って」


 ケイトの社畜丸出し発言が怖い……ケイトは真面目でお堅い感じの性格なんだろう。ミルムの方は軽いノリで明るい感じだ。どちらも元行商人なのに対照的で面白いな。


 簡単な挨拶を済ませギルドに移動すると、ランカ達は既に到着していた。ギルドからポー車を受け取りミッキィさんの奴隷商店まで一般奴隷の人達を迎えに行く。


 1つだけ心配なのはレオナの操車。暴走癖があるので少し心配だけど、暴走しないと約束してくれたので信用する事にした。


 ポー車5台ではどれだけぎゅうぎゅうに詰めて乗っても69人(通い45人、その家族12人、身売り8人、ランカ一家4人)は同時に連れていけないので2回に分けて往復する。


 1回目は体の小さな子を中心に39人を農場に連れて行き、長屋の前に待機するように指示をだしてアインスに戻り、残り30人と雌のポークンを連れて再度農場に向かう。


 雌は雄より体は小さいのだけどポー車に乗せられるほど小さくはないのでホロにロープで結び付けて移動する。ケイトとミルムが行商をやっている時に経験もあったので雌ポークンは2人に任せた。


 全員が無事(レオナの暴走もなく)移住完了したので最初に空き地に集めて挨拶を始める。


「先ず最初に、この農場の責任者のエルミナさんから挨拶してもらうから静かに聞いてね」


 そういってエルミナさんにバトンタッチ。


「責任者を任されているエルミナです。農場内の事は基本的にはファーマさんに任せてあります。私は場外とのやり取りが主ですので、あまり接する機会は多くないと思いますが宜しくお願いしますね。良い仕事をしてくれることを期待していますよ」


 今日はおすましして余所行きの話し方で簡単に挨拶をしている。きっとセビアスさんに厳しく注意されたのだろう。これで農場の責任者はエルミナさんだと意識づけは出来た筈。


 責任だけ押し付ける事になるので、美味しいお米が育ったらお裾分けしなきゃね。


「エルミナさんありがとうございました。僕の事は契約時に会っているから紹介は省くね。さっきエルミナさんが話していたエミルさんはこの人ね。僕は年明けからあまり農作業には係われないから、輸入した作物の栽培指導はエミルさんがやってくれる事になっているからちゃんという事を聞くようにね」


 エミルが1歩前に出て軽く会釈をする。


「それと、こちらにいるのはリリさんとミミさん、それとまだ到着はしていないけど農業の経験者、つまり君達に農具の使い方や農地の耕し方、その他もろもろを教える先生がいるので、暫くは先生達の教えに従って農地開拓をするように」


 リリとミミを紹介すると奴隷達の注目は2人に集まり、リリとミミは恥ずかしそうに会釈した。


「君達の食事を作ってくれるのはこちらの4人。名前は右からベジルさん、ルインカさん、ランカさん、ノルンさん。4人で人手が足りないと判断した場合は、君達の中から何人か食事担当に回ってもらう事もあるので覚えておいてね」


 ランカ一家も注目を浴びて恥ずかしそうに会釈した。


「じゃあ、ベジルさん達は早速夕食の準備に取り掛かって下さい。食材は食堂の冷蔵庫に入れてありますのでそれを使ってお願いします。ランカ、あとは任せるよ」


「かしこまりました」


 ランカを先頭に4人は食堂に向かった。


「次に経理担当のケイトさんとミルムさん。契約を交わした時に話したから、君達には毎月少額だけど給金を支払うのは覚えているよね? 給金の中から毎月一日に100デニールを今建築中の経理事務所で手渡すから楽しみにしておいて、残りは君達が奴隷から解放される時に纏めて手渡す事になっているけど、どうしても必要なら経理事務所に申し出てもらえば貯蓄の中から受け取れるから遠慮なく言ってね」


 ケイトとピシッと背筋を伸ばして軽く礼をしてミルムは可愛くピースして「宜しくね」といってウインクしている。


「とりあえず簡単な説明は終わったので、今からみんなには新しい服と入浴セットを渡すから受け取った人から順番にお風呂に入る事。今日は体を癒してもらうつもりだから、ゆっくり入って温まってね。服を渡す時に病気の診断もするから指示した人はこの場に残る事。レオナ、コテツ、みんなをお風呂まで案内して簡単に使い方を説明してあげて」


「うん、わかった」


「あぅ、任せる」


 手前に立っている家族から順番に僕のところに呼び、服とタオルと石鹸を手渡す。


「あの? この子は奴隷の契約をしていないのですけど、他の人達と一緒に行ってもいいのでしょうか?」


 契約をしていない5才以下の子供の母親がそう尋ねてきて、他にも同じ条件の人達も心配そうにこちらを見つめる。


「契約の時に説明した通り、今ここにいる人達はこの農場の施設、と言っても研究室や工房は別だけど、お風呂もトイレも食堂も自由に使って大丈夫だから遠慮しなくて良いよ」


 そう説明してお風呂に向かわせた。自覚症状が無い人を含め14人も病原菌に侵されている人がいたので治療を始める。


「エミル、アリッサ、治療を手伝ってくれる?」


「「かしこまりました」」


 3人で治療を始め、エミルの作った魔法薬と浄化神術で治療完了。細菌やウイルスを全て除去した後はエミルとアリッサに頼んでシルとマルネのお風呂に入る補助をお願いした。他は補助が必要なほど弱っていない筈だけど、一応気を付けて見ておくように頼んで、男湯の方はエミル達に任せるのは色々問題があるので僕が様子を見にいった。



 全員がお風呂ですっきりした後、今度は家族ごとに家を与えて寝藁とブロップの布団を渡していく。身売りの子達は家族がいないので2人1組で部屋を使ってもらう事にした。


 みんな喜んで寝藁とブロップ布団を受け取り、部屋に寝床を作っている。貧民街に住んでいた頃は寝藁や布団は当然使っておらず、地面や床に直接寝ているのが当たり前の生活で、家も屋根付きなんて殆ど無いので壁だけあれば上等という生活を送っていたので、何もない長屋に住めるだけで「こんな立派な家に住める日がくるなんて」と、涙ながらに喜んでくれた。


 全員に家と服を配布したあとは僕達の家に従業員を集めて今後についてのすり合わせをする。


「さてと、ケイトとミルムには経理以外にも任せたい仕事があるんだけどいい?」


「なんなりと」


「はい、任せてください」


 ケイトはどこかの秘書? と思わせるビシッとした姿勢で頭を下げ、ミルムは歯を見せにっこり笑ってサムズアップで返事をしている。


「2人には一般奴隷の人達と農場の従業員全員に読み書きと計算を教えてほしいんだ」


「お任せください」


「どれくらい出来るようになればいいですか?」


「そうだね。とりあえずこの本を基にして教えてくれる?」


 グラダから旅に出る時にマルガンさんに貰った王立学園入試対策のテキストを2人に手渡す。これが出来れば普通に生活するうえで困ることは無いだろう。


「畏まりました。しっかり読み込んで完璧に教えられるよう頑張ります」


「凄い本ですねー、これって庶民が使う教材じゃないですよね?」


「貰い物なんだけど、一応王立学園を受験する対策の為に貰った物だからいい勉強になると思うよ? レオナもこれで勉強して読み書きと算術を覚えたんだよ」


「でも算術は苦手……」


 王立学園の受験対策と聞いてケイトとミルムは驚きが隠せないようで無言で固まっている。大げさな言い回しだったけど、算術は小学5年生くらいまでの内容だからそんなに驚く程でもないと思う。


「次にアリッサ」


「はい」


「アリッサには託児所を任せたいと思うんだけど良いかな?」


「はい、精一杯務めさせて頂きます」


 アリッサを託児所の担当に選んだ理由は子供達と触れ合う事で僕に恩返しをするという事以外の生きる意味を見つけてもらいたいというのが理由だ。変な宗教的思想が少しでも抜けてくれると良いな。


「託児所の建物が完成するまではうちの家を託児所代わりに使う事にするから宜しくね。次はリリとミミ」


「「はい」」


「リリにはこっちに来る時にも言ったけど、農作業をする人達の管理を任せたいんだけど良いかな?」


 少し考えさせてほしいと言われたので直ぐには返事をもらわなかったんだよね。あれから7日立っているしそろそろどうするかを決めている筈。


「うん、やってみる事にした」


 少し不安げにしているけど、覚悟を決めてくれたようだ。


「ミミはリリの応援を宜しく」


「うん、分かった」


「レオナとコテツは食料の確保担当を頼むね。毎日じゃなくていいから、この近辺で狩りをしてお肉を確保してくれる?」


「任せて」


「あぅ、狩り、好き」


「絶対に遠くに行っちゃダメだからね? あと危ないと思ったら直ぐに農場に引き返す事」


「うん、分かってる」


 レオナには通信魔法道具の範囲圏外には行かないようにしっかり釘を刺しておく。レオナは日那国での生活と加護のお蔭で強くはなったけど、まだレオナより強い人は多い。索敵能力が優れているからそうそう捕まる事はないと思うけど、隠形魔法道具で不意打ちされて逃げられない時は通信魔法道具で僕、もしくはエミルに連絡するように念押ししておいた。


 まあ、学校が始まったら日中に僕と連絡は取れないから主にエミルと連絡を取る事になると思うけど。


「エミルは最初の1年は日那国から持ち帰った作物を育てる指導をお願い。僕も出来る限り一緒にやるから」


「いえ、農場の事は私に任せて、ファーマ様は勉学に励んでください」


「うん、ありがとう。それと農場で怪我をした人や病気になった人が出た場合は治療も頼めるかな?」


「お任せください」


「ごめんね。研究もやりたいと思うけど暫くは農場の方を頼むね」


「とんでもございません。研究などやろうと思えばいつでもやれます。私にとってファーマ様のお役に立つ事こそ全てです。遠慮なくお申し付けください」


 エミルはそう言ってくれるけど、あまり甘えてばかりも良くないので出来る限り僕も頑張ろう。


 すり合わせも終わったので従業員のみんなにはゆっくりするよう伝えて、僕は食堂の様子を見に行く。


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