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ファーマ君の気ままな異世界生活  作者: 幸村
第3章 農場建設
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第29話 ファーマ君、一般奴隷と契約する

 アインスに戻った翌日。


 僕はレオナとコテツを連れてミッキィさんの奴隷商店へ。エミルとアリッサにはジョブギルドでの面談と試験をお願いした。


 ミッキィさんの奴隷商店に到着すると店の前にはボロボロな服を着た人達(半分以上は子供)が長蛇の列を作っていた。


「おはようございます、ファーマさん。お待ちしておりました」


 ミッキィさんの店に顔を出すと、今日は受付で待っていたミッキィさんが満面の笑みで僕を出迎えてくれた。


「遅くなってすいません。少しアインスを離れていたので。ところで外に凄い列が出来ていましたけど、あの人達はひょっとして」


「彼らは貧民街の住人でファーマさんのところで一般奴隷になりたいという希望者です。前々から宣伝しておりましたので、ごらんのとおり店に入りきらないほど集まりました。あと、ご依頼通り他店から身売りの一般奴隷も預かっておりますよ」


「ありがとうございます」


 今回これだけの人数が集まったのは、ミッキィさんに頼んで予め貧民街の人達に契約条件を広めていたからだ。契約期間はお腹いっぱいご飯は食べさせるという条件だけ広めてもらったんだけど、こんなに集まるのは予想していなかった。


 一般奴隷には〝身売り〟と〝通い〟の2通りいる。どう違うのか、それは期間を決めて契約するか期間を決めずに契約するかの違いだ。


 身売りの一般奴隷は戦争奴隷と同じで、解放するかどうかを決めるのは買った主人。通いの一般奴隷は双方の話し合いで契約時に期間を決める。まあ、主人側の希望が通りやすいのだけど。


 法律で非人道的な扱いをしてはいけないというところは同じなのだけど、身売りの一般奴隷は終わりの見えない奴隷生活を送り、大抵は労働で使い潰され最終的に捨てられる。


 それが非人道的ではないとは言えないと思うのだけど、この国の人の感覚では非人道的ではないのだろう。


 身売りというのはリリ達の父親がやろうとしていたような、生活に困った人が口減らしの為に子供を上手く言いくるめて奴隷商に売る奴隷が一般的。稀に日々の食事を貰う為に自ら身売りする人も居る。


 身売りの奴隷を引き受けた奴隷商は買い手がつくまで食事と住居の面倒をみなければいけない法律があるんだとか。


 通いの一般奴隷というのは、主に貧民街に暮らしている非納税者で、奴隷商店の開店と同時にやってきて契約を待っている人の事。


 通いの奴隷は奴隷商で食事が貰えないので毎日朝から晩まで待機している訳ではない。町の食堂裏に出向いて廃棄物を集めるのも生きる為に必要な事。


 アインスではダンジョンに向かう冒険者が多いので、星1や星2ランク程度のお金のない冒険者は荷物持ちとして短期奴隷契約を結んで一般奴隷に荷物持ちをさせる事が多いらしい。低ランクの冒険者は収納魔法道具を買う程の収入がないので、荷物を持ったままでは戦闘行為が難しいから短期の一般奴隷契約を結んで連れて行くのが普通なんだとか。


 通いの一般奴隷の間では冒険者の荷物持ちは人気らしい。理由は命の危険がある代わりに食事に付け加えて少ないながらもお金をもらう事が出来るから。荷物持ちで少しずつお金を溜めて冒険者を目指すらしい。ただ、荷物持ちはある程度力のある人じゃないと契約してもらえないのでそれなりの年齢の男の子が契約されやすい。そういう理由で今日集まった内の7割ほどは女の子だ。


 契約にかかる費用は身売りの一般奴隷の方が高い。理由は奴隷商が身売り奴隷の家族に支払う料金と奴隷商店で売れるまでに掛かった経費と店の利益が上乗せされるから。それと、少しでも高く売る為に奴隷商で読み書きや計算などの技能を教えられるから。


 売れるまで何もしなくても食事が貰えるならみんな身売りしそうなものだけど、しない理由は成人までに契約出来なかった人は、身売りしてから成人するまでに掛かった経費や家族に支払われた料金が、成人と同時に借金になり、一般奴隷ではなく借金奴隷になってしまう。


 いつまでも売れない奴隷の面倒は見てもらえないのだ。つまり、成人して1年売れなければ犯罪奴隷になってしまう。


 故意に売れないようにして借金奴隷に落とす事は出来ないけど、なにか特別な技能が無い限り高いお金を払ってまで購入する人はいないので、早いうちに売れない身売りの一般奴隷が借金奴隷に落ちてしまう事は珍しい事ではないらしい。


 そういった理由で今回、ミッキィさんには、この町の他の店舗に掛け合ってもらい身売りの一般奴隷を集めてもらったという訳だ。


 今回、奴隷契約の為に集められたのは186人、そのうち身売りの一般奴隷の数は8人。思ったより身売りする人は少ないようで良かった。


 年齢は8才~13才と幅があり、何故か女の子ばかりだ。


「身売りの子はどうして女の子ばかりなんですか?」


「女児の方が高値で取引されるからですよ」


「一般奴隷でも女の子の方が高くなるんですね」


「〝身売り〟の方は先を考えるとどうしても女児が高くなるのですよ。理由は先日のランカの件を思い出していただければ」


 なるほど……それは大変だ。


「とりあえず、身売りの子を優先的に面接しますね。たぶん全員と契約する事になるでしょうけど」


「わかりました。では、あちらの部屋へ」


 応接室に移動し、レオナとコテツはフードを外して僕の両隣に座らせて面談開始だ。


 まあ、予想通り身売りの一般奴隷の子はレオナ達を見ても反応は薄い。一応、亜人や魔人に対して偏見は無いかの確認をしてみたけど、全員が『初めて見た』『そういう人種がいるのも知らなかった』と答えて偏見も嫌悪も感じていない事が分かったので、この子達は契約決定。


「8人全員ですとそれなりに高い金額になりますが、本当によろしいですか?」


 ミッキィさんに再度確認されたけど、値段は安い子で1万デニール、高い子でも3万デニールなので大した出費ではない。……いや、普通に考えれば大した出費なのだろうけど、ここのところこれよりもっと多い金額を動かす事が多かった所為か、これくらいの金額では動じなくなってしまった。


「これくらいの金額なら全然問題はないです。通いの面談に移りましょうか。通いの方は家族ごと、もしくはそれに準ずるグループごとに部屋に入れてください。どの人と契約するかは全員と面談した後に決めます」


「わかりました」


 通いの人達は最少が1人、最大が5人というグループで部屋に通された。質問内容は身売りの子と同じく亜人に偏見や嫌悪を持っていないか、ここには来ていない働けない家族はいるか、犯罪歴はあるか、非納税者になってしまったのは何故か、等々、人間性や信頼性を確認する為の質問が殆どだ。


 亜人に偏見や嫌悪の感情を持っている人は殆どいなかったけど、父親や夫が元冒険者で亜人に殺されてしまったという人が一瞬敵対の目で見てきたので、その人達は不採用。僕にとってエミルやレオナは大切な人なのでそういった感情を持っている人とは契約できない。まあ、相手側もうちでは働きたくないだろう。


 それと、最初に質問には正直に答えるように言い含めて、思考視で確認しながら質問をして、嘘を言ったグループも除外した。


 正直に話してくれれば犯罪歴があっても犯罪に走った理由次第ではその犯罪歴も気にしなかったんだけど、それを隠すような人は信用できないので例え奴隷契約で縛れるとしても一緒には暮らせない。


 小さな子や働けない家族(血縁に関係なく)を養っている人を優先して契約を結び。


 結果、通いの一般奴隷17組43人を選出し、契約を結んだ。期間は一律2年、働きぶり次第で延長は可能だ。契約したのは43人だけど、まだ奴隷として契約できない5才以下の子供や、怪我や病気で今日連れて来られなかった家族を含めると57人を農場に連れて行くことになる。


 契約したのは殆どが6才~14才までの未成人。成人で契約したのは家族を養っている人のみだ。男女の比率は7対3で女性が多い。特に成人に近くなると男性の比率は少ない。


 言っておくが、決して女性を優先して契約したわけではない。来ていた中に男性が少なかっただけだ。


 荷物持ちや土方など体力仕事は男の方が向いているというのが主な理由だろう。一般奴隷を如何わしいお店で働かせるのは交渉次第ではありらしいのだけど、倫理的にダメな行為らしく、それをやると周りから白い目で見られるから、滅多にそういう目的で一般奴隷と契約を結ぶ人はいないんだとか。


 まあ、貧困に苦しんでいる人の足元を見てそんな事をさせていたら白い目で見られても仕方ないだろう。


 通いの一般奴隷の値段は手数料の300デニールのみ。人数が人数なのでそれなりの金額になり、ミッキィさんは嬉しそうにしている。因みに5才以下を奴隷にするのは法律違反なので奴隷契約は結んでいない。


 今回、集められて契約をしてあげられなかった人達には1人300デニールを手渡して、農地のある町や村への移住を薦めた。


 そういった町や村なら生活費はアインスよりずっと安いし、技能を持たなくても仕事が見つかりやすいという事も説明して、商業ギルドのキャラバンの定期便に乗って新しい町に移住すれば、渡したお金でも移住先で2~3カ月分の住民税を納めても十数日は食べていけるだろう。その間に何とか生活基盤を築いてほしいと手渡す時に伝えると、殆どの人は目に涙を浮かべて頑張ると約束してくれた。


 ごく少数だけど『これっぽっちで今の生活から抜けられるなら苦労はしない』というような事を言った人もいたけど、これからどうするかを決めるは本人だ。そこから先の面倒までは見てあげられない。


 出来るだけ多くの人が今の生活から脱却してくれる事を願うよ。


「農場に連れて行くのはもう少し先なので、それまでここで預かってもらう事は可能ですか?」


「はい、宿泊費と食費を頂ければ契約済みの奴隷としてお預かりいたします。稀にそういう方もいらっしゃいますので遠慮なくお預けください」


 宿泊費と食費からも利益が得られるそうなのでミッキィさんはホクホク笑顔だ。


「じゃあ、お願いします。荷物を取りに帰る人や、家に残した家族を連れて行く人もいると思いますのである程度出入りは許可してあげてください」


 契約後に奴隷の子達にはいったん家に帰って準備をしてくるように指示を出している。


「わかりました。本日は大きな取引をありがとうございました」


 僕が奴隷商を出て行くと、契約出来なかった人の殆どは貧民街の方ではなく商業ギルドの方へ歩いて行った。契約した人達は持ってくる物がないのか誰も店を出て行く気配はなく、早速ミッキィさんから食事が配られていた。


 僕は怪我や病気で動けない家族がいるベイ(男7才)とコルン(女6才)の2人を連れて貧民街に迎えに行く事にした。行ったついでに治療もやってしまうつもりだ。


「さて、君達の家に案内してもらえるかな?」


「うん、こっちだ、です、ご主人様」


 貧民街の入り口傍に住んでいるけど、貧民街に足を踏み入れるのは初めてだ。


 家から見えていた一部でもわかっていた事だけど、かなり酷い場所だ。壁の崩れかけた家、覇気のない顔で座っている痩せた大人、草は1本も生えておらず、そこら中から糞尿の臭いがする。


 草が生えていない理由は食べ物が無いので生えていたら誰かが食べてしまうから。糞尿の臭いは水道が止められているので流せないから。そんな状態が続くとトイレは使い物にならなくなり、今は外でして雨が流してくれるのを待っている状態らしい。


 これって、いつか此処から疫病が発生するよね? 寧ろ、今まで発生していないのが不思議だ。


「2人とも今までよく病気にならなかったね」


「病気にはなったよ、です」


「仲の良かった子も何人か死んじゃったけど、生まれた時からここに住んでるから、これが普通なの、です」


 ……前世の僕なんかより遥かに大変な生活をしているよね? 僕なんて寝ていたのは狭い物置だったけど家の中に住んでいたし、残りものだけど食べ物もあったし、お下がりを手直ししてきていたけど着る物もあった訳だし。


 これが普通だなんて、国はいったい何をやっているんだ? こういうのをどうにかする事こそ国の仕事だろうに……


「ついたよ、です」


 1軒目に案内されたのはベイの住処。屋根が半分崩れて空が見える家だ。


「お帰りベイ。その人は?」


 家の中にいたのは酷く痩せた僕より少し年上くらいの女の子。ふと視線を落とすと足には酷い傷跡があった。


「今日、君の弟と契約したファーマだよ。仕事先に移住するまでミッキィさんの奴隷商で面倒見てもらうからあなたも一緒にそこで待機してほしい」


「契約出来たのね。私の事はいいからベイはその人のところでしっかり働くのよ。ベイのご主人様、ベイをお願いします」


「姉ちゃんも一緒に来て良いんだよ? ご主人様は姉ちゃんにもお腹いっぱいご飯食べさせてくれるって」


 お姉さんの言葉を聞いたベイは嬉しそうにそう話し、ベイのお姉さんは少し驚いたような顔を見せると僕に視線を移した。


「ベイの話した通り、君にも一緒に農場に来てもらいたいんだけど良いかな?」


「私は足が悪いから仕事なんて出来ないけど、本当にご飯を食べさせてもらってもいいの?」


「うん、ベイと契約した時にそう約束したからね。ところでその足はどうしたの?」


「これはこの辺りにいる悪い人達に持ってた食べ物を取られそうになって、取り返そうとした時に棒で叩かれて動かなくなったんです」


 なるほど、貧民街は危険だというのは聞いていたけど、同じ貧民街の人同士でも奪い合いとかがあるんだな。お金を渡した人達が戻ってきたら同じような目に遭わされないか心配だ。


「ちょっと傷を見せてね」


 僕は地べたに座っているベイのお姉さんの前に座って神眼で足の具合を見てみた。右足は膝関節辺りで折れた骨がズレたままくっついて、太くなって神経を圧迫している状態だ。左足は右足を庇っていた所為なのかは分からないけど、アキレス腱が切れている。


 こういうタイプの怪我は以前の回復神術の使い方では治す事が出来なかったけど、ラグナムート様とエアリス様に正しい使い方を教わった今なら治せるはずだ。


 正しい使い方というのは、どういう状態なのかを正しく把握し、どのように治療したいかというイメージを明確にして治療神術を掛けるやり方だ。以前は詠唱で覚えた感覚そのままで、イメージなどせずに神力を練って発動させていた。


 そのやり方でも相当な傷は治す事が出来るのだけど、今回のように骨が曲がってくっついていたり、腱が切れていたりすると、どんなに神力を練って強力な神術を使っても正常には戻らないらしい。


 神眼を使ってしっかり状態を把握し、練成と同じように神力を患部にまとわせ、ズレた骨を真っ直ぐ正常な状態に伸ばして繋ぐようなイメージを描きながら回復神術を発動すると、骨が生き物のように正しい位置に移動し無駄に出来ていた骨が吸収されるように消えて真っ直ぐで正常な骨に戻った。


 左足も同じように神力をまとわせ、今度は切れたアキレス腱を引っ張り繋ぎ合わせるようにイメージしながら術を継続すると、アキレス腱は正常に繋がり切れた痕も残っていない。全身隈なく治療をして傷痕も残さず綺麗に完治させた。


「ふぅっ、これで動くようになったと思うんだけど、どう?」


「……うそっ! 動くよ、本当に動く。傷も無くなったよ」


 動かせるようになった事に感動したのか、ベイのお姉さんは口元を押さえて嬉しそうに涙を流していた。


「動かせるようになったとは言っても落ちた筋力が戻った訳じゃないから、暫くは無理のないように少しずつ動かす練習して、ちゃんと元のように動けるように頑張ろうね」


 特に右足の方は何カ月もしくは年単位で動かせていなかったのか、かなり細くなっている。急に激しく動くと肉離れを起こしたり、腱が切れたりするかも知れないので暫くはリハビリが必要だろう。シルを抱き上げて、ずっと異空間保管庫で死蔵されていたリヤカーを取り出して乗せると、シルは何故か頬を赤く染めて目が泳いでいる。


「レオナ、コテツ、なるべく揺らさないように引いてくれる」


「任せて」「あぅっ、任せる」


 レオナとコテツがリヤカーの前で取っ手を持って引き始めると、ベイとコルンはリヤカーの後ろについて一緒に押してくれた。4人とも何故か楽しそうだ。


 リヤカーには痛くないように寝藁で作った畳モドキを敷いている。体が冷えないようにブロップの掛け布団もかけてあげた。綿の掛け布団を渡そうとも考えたのだけど、農場ではブロップを支給する事になっているので今回もブロップを渡した。


 最初は全員にちゃんとした布団を買ってあげようと思っていたのだけど、エミルやランカやアリッサにあまり贅沢な生活をさせると、奴隷から解放されてから苦労するから一般平民以上の扱いはしない方が良いと注意され、支給品は常識の範囲で、贅沢品は自らが稼いだお金で買ってもらう事に決まったのだ。


 良い暮らしは自分で稼いでからするように教育しないとダメな人間になってしまうらしい。って事は、人から貰った力でお金を儲けて贅沢している僕はダメ人間一直線なのだろうか? ……うーむ、気にしたら負けだな。



 次に案内されたコルンの家にも半分屋根がなく空が見えている。中にいたのは剥き出しの地面にブロップの敷布団を敷いただけのところに寝かされている中年女性? 痩せているのに妙にお腹が出ていたので神眼で見てみると、どうやら妊婦さんらしい。


「お母さん、私、この人のところで奴隷になる事が決まったよ。お母さんも一緒にご飯食べさせてくれるんだって」


 コルンが嬉しそうに母親に報告するとコルンの母親は怪しい人を見るような目で僕を見て


「アタシは良いからコルンだけ連れて行っておくれ。どうせ病気持ちの妊婦なんか連れてったって何の役にも立ちやしないんだ」


「大丈夫ですよ。病気は治療しますし、お腹に子供がいるのなら、ここよりはちゃんとした家にいる方が体にと思います。一緒に行きましょう」


「治療ったってアタシは金なんか持ってないんだ。借金奴隷にでもするつもりかい? 移る病気だから娼婦にもなれないよ?」


「治療は僕がやるからお金はいらないですよ? 出来ればコルンと一緒に農場で働いてくれると助かります。あ、でも産後の体調が落ち着くまでは無理しないでくださいね?」


「……そんなこと言って、どうせあんたも死ぬほどこき使って動けなくなったら1デニールも持たせずに捨てるつもりなんだろ? 騙されないよ」


 どうやら、コルンのお母さん(マルネ)は前に酷い扱いを受けて人を信じられなくなっているようだ。コルンの態度からするとコルンの事は大事に育てたという事が解る。こういう親子を引き離すのは気が引けるので、ゆっくり話を聞いて説得する事にした。


 話を聞いてあげていると、マルネさんは多少気持ちがスッキリしたのか、表情も刺々しい態度も少し柔らかくなった。


「コルンを大切に思っているなら来るべきです。大丈夫、3人とも食事には苦労しない生活は約束します。とりあえずコルンとは2年の契約だから、契約更新の時に続けるか止めるかはまた話し合いになると思いますけど、真面目に仕事をやってくれれば本人の意思を尊重して継続も可能です。あなたとも解放する時には契約年数に応じてちゃんと支度金も支払うという契約を結びますから1デニールも持たせずに解放するなんて事にはならないですよ」


「本当だね? あんたを信用しても大丈夫なんだよね?」


「僕を信用してくださいといっても難しいかも知れませんけど、契約書の内容を反故にすると僕が犯罪者になっちゃうので契約書を信じてください」


 そう言うとマルネさんはクスリと笑い「わかった信用するよ」と言ってくれた。契約の了承を得られたので、早速病気の治療をする為に神眼で診ると、マルネさんの掛かっている病気はいわゆる性病という奴だった。


 生活費を稼ぐためにモグリで娼婦をやっていたマルネさんは治療費に回すお金が無いので治療も出来なかったらしい。


 病原菌は回復神術と同じように正しい使い方の浄化神術でサクッと消滅させて、お腹の子共々衰弱が酷いのでエミルから貰ったライフポーションを飲ませておく。母親が飲んだらちゃんとお腹の子供にも届くようで2人とも衰弱状態からは脱した。


「す、凄いんだねぇあんた。あっ、これからご主人様になる人にあんたなんて言っちゃダメだったね」


「あはは、まあ気にしなくて良いですよ」


 ミッキィさんの店に戻りシルとマルネの2人と契約を結んだ。2人とも暫く仕事は出来ないだろうけど、動いても問題ないくらいになったら頑張って働いてほしい。


 余談だけど、貧民街からの帰りに怪しげな男達が棒や刃物を持って物陰に隠れながら僕達を付けてきていた。当然、僕もレオナも恐らくコテツも気付いていて、たぶんシルを襲ったというのはこの人達だろうと思って、神術を使って脅しをかけておいた。


 足元に長さ50㎝程の氷柱を刺してにっこり笑うと驚いて腰を抜かして青ざめていた。当ててはいないので怪我はしていない。


 これに懲りて悪い事は止めてくれたらいいな。


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