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ファーマ君の気ままな異世界生活  作者: 幸村
第3章 農場建設
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第27話 ファーマ君、再びグラダへ行く その6

また感想を頂きました。ありがとうございます。

 ワックスさん一家をダン達と一緒に農場へ送ってもらう手続きをギルドで済ませてお金(10万デニール程)を引き落とし、リリ達がお世話になった農場に退職と移住の挨拶に行った。


 農場の主人夫婦は「やっとあの暴力夫婦から逃げられるんだねぇ。良かったねぇ」と、涙ながらに喜んでくれ、快く送り出してくれた。リリとミミも泣きながら「お世話になりました」と最後の挨拶を済ませた。


 ──翌日。


 宿を引き払い、今日はディアスキンさんの家にお邪魔する予定なのでリリ達3人とレオナにはお金を渡して旅支度を頼んで僕とエミルでギルドに向かう。


 何故、エミルと2人で、なのかというとディアスキンさんは貴族家の人だ。ディアスキンさん本人やライラさんにキャッツに対して嫌悪的な感情は無いのだけど、一昨日の話ではディアスキンさんのお母さんがディアスキンさん宅にいるそうなので少し気を使った。


 リリ達3人には『貴族の家なんて緊張してお腹が痛くなるから勘弁して』と一緒に行く事を拒否された。普通に話が出来る僕がおかしいらしい。


「おう、来たなファーマ君」


 約束の15分前に到着したのだけど既にディアスキンさんが待っていた。


「お待たせしてすいません」


「おはようございます。今日はよろしくお願いします」


「俺もさっき来たところだから気にするな。エミルちゃん、そんな肩ひじ張らなくてもいいぞ? 貴族の息子ったって俺は家を継ぐわけでもねぇし、成人してっから立場的にはお前らと変わらないからな。じゃあ、行くか」


 ディアスキンさんが家を出て平民になっているとは言っても、貴族家の人に変わりないのだから、同じ立場という事はないだろう。特にお母さんは貴族の奥さん、立場的には貴族に準ずるのだから気を遣うなと言われても普通の人は気を使ってしまうだろう。


 僕はあまり気にしないけど。


 案内されて到着したのはグラダの平民でも富裕層が生活する居住区、商業ギルドから徒歩5分ぐらいにある庭付き一軒家だ。エンドール家の豪邸と比べるととても小さな家だけど、リリ達の元家と比べるとかなりの豪邸だろう。


「お久しぶりですライラさん。ご結婚、ご懐妊おめでとうございます。体調の方はどうですか?」


「お久しぶりファーマ君、体調は最近少し落ち着いたみたい。心配してくれてありがとうね」


「おめでとうございます。あの、これは我が家に伝わる安産のお守りです。良かったら受け取って下さい」


「ありがとう、エミルさん。綺麗な腕輪ね、大事にするわ」


 エミルの渡した安産のお守りはエミルがお母さんから教わったエルフ族に伝わる特別な模様が彫られた銀のブレスレット。特別何かの術式が付与されている訳ではないのだけど、精霊の加護がお腹の子供を守ってくれると信じられている物らしい。


 ライラさんは神聖教のシスターだけど、こういう時に他宗教のお守りだからと拒否する事はない。気持ちは嬉しいものだから。


「いらっしゃい、あなたがファーマ君ね。息子とライラからよく話を聞いているわ。私はディアスキンの母のケイティーよ。宜しくね」


 あ、不味った。最初に挨拶すべき人はディアスキンさんのお母さんなのに、つい懐かしくて先にライラさんに声かけちゃった。


「挨拶が遅れてすいません。お初にお目にかかります。今日は突然の訪問に快く応じて頂きありがとうございます」


 僕が挨拶して頭を下げるとエミルも一緒に頭を下げてお辞儀した。


「あら、子供なのにきちんとした挨拶が出来るのね。息子の話ていた通りしっかりした子だわ。そんなに畏まらなくても大丈夫だから気楽にしてね」


 ケイティーさんは僕の非礼を気にも留めず優しく迎え入れてくれた。物腰も柔らかいし雰囲気も落ち着いていて、見た目からも優しさと育ちの良さが滲み出ている。


「それで、こっちへはどんな用事で来たの? 私達のお祝いの為に戻って来たんじゃないわよね?」


「そうですね。お祝いの為に来たと言いたいところですけど、残念ながら違います。今度、アインスの近くでギルドの実験農場という名の自分の農場を経営する事になりまして、向こうには農業経験者がいないから、どうせなら知り合いを雇おうと思ってカナイ村のダン達と、この町で以前お世話になった姉妹を誘いに来たんです」


「ダン達って他はどの子を誘ったの?」


「教会の子供達は全員が来る事になりました」


「本当? そんなに連れて行って大丈夫なの? まだ働ける年齢じゃない子もいるのよ?」


「はい、問題ないです。農場はカナイ村ぐらい広いので足りないぐらいですよ。働けない子達には給金は出ませんけど、住むところと食事には不自由させないだけの蓄えはあるので、働けるようになったら正式に雇おうと思っています」


「まだ小さいのに凄いのねぇ。夫にも見習わせたいわ。夫ももう少し収入が良ければ子供達に苦労させる事もないのだけどねぇ」


 こらこら、そんな事を言ったらご主人が可愛そうだよ? 確かディアスキンさんのお父さんはグラダの商業ギルドで中間管理職やっている筈だから収入はそれなりに高い筈。


「はははっ、そういってやるなよ母さん。ファーマ君はあのマルガン様が直々にエンドール家に誘ったほどの才子だぞ? その辺の小貴族とは比べもんにならねぇよ。まあ、ちょくちょく常識知らずなヘマはやらかすけどな」


 確かに自分が如何に迂闊なのかは、この間の会議辺りから身に染みている。幸い悪い方に向かっていってないから助かっているけど、いつか痛い目に遭いそうだよね?


「ファーマ君って何かやらかしたの?」


「こらこら、ライラはその当事者の1人だぞ? 魔力水の件を忘れたか?」


「あっ、そういえばあなたから前に教えてもらったわね」


「他にもカナイ村で回復魔法の価格破壊を起こそうとしたり、ステイール家の奥様の前で尋常じゃない精度の練成魔法使ってみたり、ドラグーンの国に勝手に行っちまったり、たぶんデザリアに戻ってからも何かやらかしただろう?」


 僕のプライバシーが駄々洩れなんですけど? 戻ってからの事は詳しい内容までは伝わっていない様だけど、ある程度の話は伝わっているようだ。一応、王様が緘口令を敷いてくれているから飛行車や異空間保管庫を僕が作った事は広まる事はないだろうけど、バレると悪者にまた狙われるらしいから危ないところだったらしいんだよね。


 まあ、魔法道具云々に関係なく既に襲われたんだけど……


「ドラグーンってあのドラグーン?」


「そう、物語なんかに出てくるあの厄災とか災悪とか呼ばれているドラグーンだ」


「大昔に滅びたって聞いていたけど、まだ現存していたのねぇ。ドラグーンの国ってどんな国なの?」


 ケイティーさんはドラグーンの国に興味深々のようだ。僕は当たり障りない範囲で日那国に行った時の事を話した。


 ディアスキンさんもライラさんもケイティーさん同様に興味があったようでとても楽しそうに僕の話を聞いてくれた。


「物語の話だけじゃなくドラグーンは本当にドラゴンより強いんだなぁ。敵対されたらと思うと寒気がするな」


「でも、ファーマ君の話だと温厚な人達なんでしょ? リュミエール神の教え通りに接していれば怖がる事はないわよ」


「そうねぇ、ファーマさんの言う通りの種族ならこちらが攻撃でもしない限り敵対はしないでしょうね。そんな事より私はライッシーが気になるわ」


「母さん、ライッシーじゃなくてコメな。ファーマ君が農場経営をする1番の理由がそのコメなんだろ? 帝国から輸入しているライッシーが1㎏で大体250デニールで売買されているから、そのコメの栽培に成功すりゃかなりの儲けになるな」


 いや、量産されたら価格は下がるからそんなに儲けにはならないだろう。まあ、最初の数年くらいは高く売れるだろうけど。僕としては、米がいつでも食べられて農場で働く人達が生活に困らない程度に利益が出れば良いと思っている。


「値段的に買えない事は無いのだけど、入荷が少ないから手に入らないのよねぇ。実家にいた頃にも1度も口にした事がないから、1度は食べてみたいと思っていたのよ。国内での生産に成功すれば気軽に食べられるようになるのよね? 楽しみだわ」


「そうだな、俺も興味はある。高値で取引される上に子爵以下の小貴族では、まずに手に入れられない物だったからな」


 ディアスキンさん達の話だとライッシーを手に入れられていたのは侯爵家以上の上級貴族が主だという事だ。極まれに伯爵家にも回ってくる事があるらしいけど、子爵家や男爵家ではまず手に入れられないそうだ。


「良かったら少しお分けしましょうか? 日那国で貰った物があるので10㎏ぐらいならお分けしても大丈夫ですよ?」


「マジか!? 纏めて10㎏も買う程余裕はねぇが、1㎏でも買わせてもらえるならありがてぇ」


「じゃあ、うちは5㎏ほど買わせてもらおうかしら?」


 ん? 売るつもりで言ったんじゃないんだけど?


「いえ、お金はいりません。ディアスキンさんとライラさんへの結婚と懐妊のお祝いだと思って受け取って下さい。調理法も書いてお渡ししますね」


 そう言って収納魔法道具(ブレスレット)から米(白丸米)の10㎏袋を取り出しディアスキンさんに渡す。精米機は普及していないので精米方法も調理法と一緒に紙に書いて渡しておいた。まあ、玄米で食べても美味しいお米なんだけどね。


「悪いな、こんな高価な物貰っちまって」


「いえ、これからデザリアで栽培されるようになれば、数年後には麦と変わらない値段になると思うので気にしないでください。自分達の食べる分はまだありますから」


「じゃあ、早速料理人に調理させましょうか」


 ケイティーさんはディアスキンさんから米を受け取り(ひったくり)軽々と片手で抱え、調理法を書いた紙を反対の手に持ちいそいそと部屋を出て行った。


 華奢な体つきの割に力あるな。女の人が軽々持てるような重さではない筈なんだけど?


「母さんにも参ったな。悪いなファーマ君、まさか君がいる間に出て行っちまうとは思わなかった」


「気にしなくても良いですよ。僕も少し長居しちゃったから、そろそろお暇しようと思っていたところなので。こちらこそライラさんの体調がすぐれないのに長居してすいません」


「気を使わなくても良いのよ、ファーマ君。今日はそれほど体調も悪くないから。それよりも来てくれて嬉しかったわ」


「いえ、僕も久しぶりにお二人と話が出来て楽しかったです」


「私もあまりお話は出来ませんでしたが、お二人の仲睦まじい姿が見られて、幸せのお裾分けをしてもらえたようで楽しかったです」


 そういえば僕ばかり話して、エミルに話をさせてあげていなかった……悪い事しちゃったな。あとで謝ろう。


「では、今日はこれで帰らせてもらいますね」


「ああ、今日はありがとな。またこっちに来る事があったら、いつでもライラに会いに来てやってくれ」


「ファーマ君、またね。子供が生まれたら写真を送るわ」


「はい、お邪魔しました」


「失礼いたします」


 ディアスキンさんとライラさんは玄関まで見送ってくれ、見えなくなるまで手を振ってくれた。


「ごめんねエミル。僕ばっかり話しちゃって」


「いえ、私は聞いているだけで楽しめました。やはり、人が幸せそうにしている姿は良いものですね」


「うん、こっちまで幸せな気分になるよね」


「ライラさんのお子様の写真、楽しみです」


「そうだね。僕も楽しみだよ」


 僕とエミルはみんなと合流するまでディアスキンさん夫婦の話で盛り上がった。


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