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ファーマ君の気ままな異世界生活  作者: 幸村
第3章 農場建設
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第23話 ファーマ君、再びグラダへ行く その2

 トーチュの町を出発して2日。もう直ぐカナイ村に到着する。


 道中、もう1つの町に寄ってそこでも農場見学をさせてもらい。そこでもチップを渡すと色々教えてもらえ、いい勉強になった。


 教わったのは主に肥料や地結晶の使い方について、デザリアでも堆肥や腐葉土といった一般的な肥料は使われているらしい。地結晶は作物の成長の補助的な役割で作物に合わせた土地作りというのはやらなければダメなんだとか。


 まあ、それはそうだよね。適当な土地でなんでも育てられるんだったらもっと食材は豊かなはずだ。


 それと地結晶の欠点についても教わった。地結晶は狙った作物だけの成長を促すわけではない。作物の成長を邪魔する雑草などの成長も促してしまうので草取りはまめに行わなくてはいけない。まあそれは日那国で経験済みなので知っていた。


 地結晶は育てた作物の味や性質も育つので、必ずしも育てる作物にいい影響を与えるとは限らない。甘味のある物はより甘く、辛味のある物はより辛く、えぐみのある物はよりえぐくなってしまうので、何にでも使うと食べられなくなる物もあるのだ。


 日那国で知らずに使って失敗したんだよね。新右衛門さん達は気にするなと言ってくれたけど、収穫量が減ってしまったのでかなり悪い事をしてしまった。幸いだったのは試験的に一部にしか使わなかったので合わない作物の全てがダメになった訳ではなかった事だ。中途半端な知識はひけらかすものではないという教訓になった。


 デザリアで育てられている作物に関しては商業ギルドや学問ギルドで図鑑を買えば調べられるので購入する事を薦められた。


 直ぐに購入して読んだのだけど、殆ど文字は書かれていない。書かれていたのは絵と記号のみ。農業従事者は殆どが一般平民なので絵と記号でなければ理解できないからだそうだ。


 字が読めればもっと分かりやすい本になっただろうに……やっぱり、学ぶって大事な事だよね。うちの農場で働く人には読み書き計算は覚えさせよう。


 そんな事をみんなで話しながらカナイ村に到着し、今、カナイ村は大騒ぎになっている。


 騒ぎの理由は言うまでもなくスカイカー、それとマルガンさんの来訪。スカイカーを見て目が零れ落ちそうなほど見開き、あごが外れそうなほど口を開き、驚きで硬直したところで、マルガンさんが乗っている事に気が付いた門番の正騎士さんが大声で挨拶して深々と丁寧にお辞儀をして、村長さんの所へ報告に走る。騒ぎを聞きつけた村人が集まり、大変な事になっている。


 そのままでは進めないので、飛行車の高度を上げ村人の頭上を飛び越えて村長さんの屋敷の前まで移動し、マルガンさん達は村長さんのところに挨拶に行った。


 飛行車は収納魔法道具にしまい、僕達は歩いて教会に向かう。


「ファーマ、レオナ、エミル!」


 道中、聞き覚えのある声に呼び止められ声のする方を見てみると


「ダン、ひさしぶりだね。元気にしてた?」


「ダン、グイ、オルタ、ひっさしぶりー」


「ぐふっ!」


「うげっ!」


 そこに居たのはダン、グイ、オルタの3人。フーリ達女の子組は居ないようだ。エミルは僕の隣に立って軽く会釈をして、レオナは再会が嬉しかったのかグイとオルタに向かって飛びつき、勢い余って2人と一緒に倒れ込んだ。


「『元気にしてた?』じゃないよ。なんだよさっきの?」


「イタタ……死ぬかと思った。って、そんな事よりあの空飛ぶ乗り物、なんだあれ?」


「ちょっ、レオナむ、むねが……」


 ダンが僕に飛行車について尋ねてくると後頭部をさすりながら起き上がったグイが話に混ざり、オルタはレオナの成長を二の腕辺りで感じて顔を赤くしている。レオナ、思春期の男の子相手にスキンシップはほどほどにね?


「積もる話もあるから教会で話そうよ。みんなは元気?」


「おう、前にあった時より元気だぞ。シスターはいなくなっちゃったけどな」


「ええっ!? ライラさん何かあったの?」


 教会までの道中、少し話をしていると衝撃の報告があった。


「シスターはお嫁に行って今はグラダで暮らしてるんだ」


「お嫁?」


 確か2年前にはそれらしい気配はなかったはず。まあ、2年もあれば良い人と出会う事もあるよね? でも、なんでグラダ?


「聞いて驚け、シスターはディアスキンさんに口説き落とされたんだ」


「ええーっ!?」


 ディアスキンさん、いつの間に? まあ、この2年の間になんだけど。でも、ディアスキンさんは確か貴族家(男爵家)の人だった筈。平民と結婚って出来る物なのか? いや、嫡子じゃないから問題ないのか?


「じゃあ、教会はどうなってるの?」


「新しいシスターが来てるよ」


 ああ、なるほど、そりゃ代わりは来るよね。


「面白いシスターだぜ。新しいシスターも神聖術を使えないんだけど、器用だから服や飾りを作ったりして売ってお金を稼いでるんだ」


「フーリやロナ達女の子はおしゃれに目覚めて、新しいシスターに教わりながら飾り職人目指してるよ」


 相変わらず聖属性神術の適性がない人が派遣されているんだな。でも、お金に困らないほど稼げているなら安心した。


 そんな事を話しながら教会に到着。中に入るとライラさんと同じ修道服に身を包んだ少しぽっちゃりめのシスターさんとフーリ、ロナを含む教会の孤児達が礼拝堂で作業をしていた。


 なんで礼拝堂が作業場に? いくら祈りに来る人が少なくても礼拝堂で作業をするのは如何なものだろうか?


「ファーマ?」


「どうしてファーマ達がここに?」


「久しぶりだね」


 僕達の顔を見たフーリ達が立ち上がって驚きの声を上げ、みんなとの再会を喜んだ。エミルとレオナもハグや握手で再開の挨拶を交わしている。


 みんな少し成長しているけど、顔つきは2年前のままだ。いや、少しだけ大人びたかな? 新しい子はいないようだ。まあ、孤児がそんなホイホイ増えていたら問題だろうけど。


「初めまして、あなたがファーマ君? みんなから話はよく聞いているわ。私はシスターライラの代わりにカナイ村に派遣されてきたアリアよ。宜しくね」


「初めましてアリアさん。こちらこそ宜しくお願いします」


 軽く挨拶を交わして少し話をした。アリアさんは現在15才、成人したばかりで、ここに派遣される前はグラダの南に位置する同じステイール領のナントーの町でシスター見習いをしていたらしい。


 元々は小さな工房の娘さんで、小さな頃に大怪我をしたところを神聖教のシスターに治してもらったのが切っ掛けで入信したそうだ。


 なるほど、それで物作りが得意な訳か。


「ところでファーマは何しにカナイ村に来たの? 用事もないのにこんな何もない村に来ないよね?」


「そうだよな。あんな凄い乗り物に乗って、偉い人と一緒に来たんだから何か用事があるんだろ? こんなとこにいても大丈夫なのか?」


 フーリとダンは少し心配そうに注意してくれた。それにしてもこんなところ呼ばわりはアリアさんに失礼だろう?


「僕の目的はここだから良いんだよ」


「教会に用事?」


「正確にはダンやフーリ、みんなに用があって来たんだ」


「はい? 俺達に用事?」


 ダン達が顔を見合わせた後、不思議そうにして僕の顔を見つめてきた。


「うん、今度アインスの町の近くに商業ギルドの実験農場の経営をする事になってね。向こうには農業経験者がいないからダン達を誘いに来たんだよ。ダン達なら農業の経験は豊富でしょ? どうかな?」


「商業ギルドの実験農場? なんか凄そうだな……」


「私達なんかがそんな所で働いても良いの? 経験があるって言っても、ファーマ達が前に来た時からだから、たったの2年だよ?」


「それに、あんまり偉い人と一緒だとお腹が痛くなりそうなんだけど?」


 話を聞いたダン達は期待と不安が入り混じったような複雑な表情を浮かべて少し怖気づいたようにしている。


「大丈夫だよ。実験農場とは言っても、僕が自由にしていい農場だから農場の護衛の人以外、ギルドの人は殆どいないし、気を使わなくても良いよ。給金もそれなりに貰えるし、アインスから近いから休みの日に町に遊びにも行けるし、悪くないと思うんだ」


 給金は僕が払うんだけどね。


「良い事ばかり言われると逆に不安だな」


「でも、大きな町に遊びに行けるのは魅力だわ」


「給金がそれなりってどれくらい貰えるんだ?」


「今の予定だと、家はダン達みんなで住める家を建てるからそれに住んでもらって、食事は食材を農場から支給して、それと別に給金が1日30デニール。あと最初に仕事着の支給もあるよ」


 条件を聞いてダン達が生唾を飲み込んで沈黙して、みんなで集まって小声で話し始めた。


「30デニールって銅貨何枚だっけ?」


「バカね、銀貨3枚よ。シスターライラに習ったでしょ?」


「銀貨3枚? 多すぎるよな?」


「うん、農場で仕事するのに家とご飯と服が貰えて、それと別に毎日銀貨が3枚も貰えるなんて絶対に変」


「月に3枚の間違いじゃないのか?」


「それとも、上手い事言って実は奴隷みたいな過酷な仕事をさせられるのかも」


「ファーマが悪い人になっちゃった?」


 こらこら、誰が悪い人になったって? 丸聞こえだよ?


「怪しくないから。少しは僕の事を信用してよ」


「でもさあ、銀貨3枚って言ったらこの村で1日農場の仕事して貰える給金より多いんだぜ?」


「そうだよ。僕達は1日朝から夕方まで農場で働いて銀貨2枚と銅貨3枚だよ。なのに家とご飯まで付いてくるなんておかしいよ」


 本当に? それは安すぎるだろう? 食料買ったら殆ど残らないじゃないか。


「知ってるか? 騙す人はみんな自分を信じろっていうんだぜ?」


 グイの過去にいったい何が……?


「……僕ってそんなに信用無い?」


「ごめん、ごめん、冗談だからそんなにへこまれると困る」


 なんだ、冗談か……良かった。


「条件が良さそうに聞こえるけど、向こうに引っ越したらアインスに住民税を治めないといけないし、物の値段もカナイ村よりだいぶ高いから、あまり安いと生活に困るんだよ。だから、これくらいが向こうでは普通の給金なんだ」


 アインスの住民税は年間で600デニール。グラダの町よりだいぶ高く、カナイ村と比べると6倍にもなる。それに付け加えて食料品などの生活物資も農場がある町に比べると1.5倍くらいの値段になるのであまり給金が安すぎると町で買い物も出来ない。


「そうですね。大きな町ならそれくらいが普通なのかも知れませんね。アインスって王家の領地でも大きな町ですし、物価もカナイ村とは比べ物にならないくらい高いらしいですから」


 アリアさんのフォローが聞いたようでダン達の疑りは無くなった。


「何人雇ってもらえるんだ?」


「来てくれるなら、このダン達全員で来てほしい」


「そんなに雇っても大丈夫なの?」


「農地の広さがこの村全体と同じぐらいあるから全然足りないくらいだよ。最初はアインスの町の一般奴隷と契約して始めるから、農業の経験者はダン達以外にいないんだよ。だからみんなにはその人達に鍬の握り方や土地の耕し方を教えてもらわないといけないし、結構大変な仕事になると思うよ。グラダにも農業経験者の知り合いがいるから、その人達も誘うつもりなんだ」


「そんな良い話ならみんなで行きたいけど……」


「シスターが1人になっちゃうのは可哀そうだよね」


 そうか、この教会に1人で生活するのは寂しいよね。


「私の事は気にしなくて良いのよ。みんながちゃんと独り立ちしてくれる方が私は嬉しいもの。大丈夫よ、たまに実家に帰る事も出来るし、村の人だって私の作った装飾を買いに来てくれるんだから寂しくはないわ」


 アリアさんはにっこりと笑って、ダン達の頭を撫でながらそう言った。


「本当に良いのか?」


「勿論よ。遠慮しないで行ってらっしゃい。でも、たまに手紙くらいは頂戴ね」


「うん、わかった」


「じゃあ、みんなで行くよ」


「直ぐに出発するのか?」


 アリアさんに説得されて全員が農場への移住を決めてくれた。みんなの生活の為にも、しっかり農場経営しなきゃね。


「出発は今すぐじゃないよ。グラダのギルドで運び屋さんを雇うから、たぶん10日後くらいに迎えが来るよ。僕達は先に帰るから一緒には行けないんだ」


「それなら良かった。今すぐだとみんなにお別れも言えないからな」


「10日もあったら準備もゆっくりできるね」


 話は決まり、僕達は教会を後にしてマルガンさんを迎えに行った。その時に村長さんには孤児を雇った事を報告したのだけど、とても喜んでくれた。


 孤児の人数に応じて教会に寄付を渡していたらしく、経費が浮くんだとか。それと、孤児がちゃんとした職にありつけたというのは喜ばしい事だとお礼を言われた。村の農場での給金では子供の内は生活出来ても大人になると納める税金が多くなるので生活に困る人もいるんだとか。


 村人が減るから怒られるかもって思っていたけど、喜んでもらえたのなら良かったよ。


 さて、次はリリとミミを誘いにグラダに出発だ。

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