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ファーマ君の気ままな異世界生活  作者: 幸村
第3章 農場建設
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第19話 ファーマ君、ギルド総会に出席する その4

 試乗会が終わり、グラヴァさんが箱に入れて持って来ていた異空間保管庫(アイテムボックス)を王様に渡し、王様が飛行車(スカイカー)をその異空間保管庫にしまって再び会議室へと戻った。


「外交に術式設計までこなせる9歳児。神童を見つけたなグラヴァ」


 大げさに言われているけど僕に外交なんて出来ないよ? 話がどんどん大きくなっている。


「はい、父のお遊びがこんな形で国家への貢献に繋がるとは思いもしませんでした」


「ふおっふおっふおっ、家証をファーマに渡したと報告した時には態々グラダまで来て小言を言われたがのう」


 やっぱり怒られたんだな。あの頃は大げさなものも作れなかったし、平民に勝手に家証を渡したらそりゃ怒られるよね。


「さて、これ程の成果に対して何の褒章も出さぬという訳にはいかんな」


「その事に関して私からお願いしたい事があります」


「申してみよ」


「まず1つ目ですが、今回発表した数々の物事の最功労者はファーマでございます。ですが、僅か9歳の平民の子供が、これほどの功を成したと知れ渡れば身に危険が及ぶ可能性があります。ですので、ファーマの事はこの場にいる方々、それと各地領主の侯爵方以外には秘密にしていただきたいのです」


「ふむ、確かに下賤の輩に知られればエンドール家の庇護があろうと絶対に安全とも言い切れぬな。それが平民の子なら尚更危険だろう。解った公に褒章を出す事は控えよう。お前達もファーマの事は漏らすでないぞ」


「「「「御意」」」」


 王様から念押ししてもらったから一般に知れ渡る事はないだろう。これで安心だな。


「先程、陛下からお話があった褒章に関してなのですが、今からお話しする事は国法を変えるほどの話ですので与えてほしいという事ではなく、一考して頂きたいお願いです」


「申してみよ」


 法律を変えるほどの話と聞いて王様だけでなく他の人達の表情も引き締まった。


「現在デザリアでは亜人や魔人といった他種族に対し、人ではなく物という扱いをしております。今後、物という扱いを止め、亜人狩り、亜人奴隷、生物実験などの非人道的な扱いを国として禁じて頂きたい」


 グラヴァさんがそう口にすると室内の空気が変わる。王様は更に真剣な顔に、エギラスさんとニコラウスさんは少し驚きの顔に、ジェラルドさんは驚きながらも少し嬉しそうな顔に、ベルナンドさんはあからさまに嫌悪感丸出しの顔になった。


「ふむ、それがファーマの望んでいる褒章という事か?」


「はい」


「馬鹿々々しい、確かに今回見せられた物はどれも国に大きな利益をもたらす物だろうが、法を変えるほどの価値は無い。亜人や魔人を国が庇護などすれば暴動が起こるぞ?」


 やはりというか見せた表情通りベルナンドさんは反対してきた。


「まあ、待て。一考の価値があるかの判断は最後まで聞いてから下せばよかろう」


 直ぐに王様がベルナンドさんを制止して話は続く。


「ありがとうございます。ですがファーマへの褒章というのは理由の1つにすぎません。私がこの報酬に関して一考をお願いしたのは、今回発表した全ての物はドラグーンが形成する国から持ち帰られたものだという理由があります」


「ドラグーンの国? そうか、思い出したぞ。ヒナ国、それにファーマ、どこかで聞いた事のある名前だと思っていたが、2年前の【テルホイ、ドラグーン襲来事件】あの時ドラグーンと正騎士の間に通訳として入った子供がいた。ファーマはあの時の子供か?」


 エギラスさんが当時を思い出し声を上げた。


「はい、お察しの通りファーマはその事件の時に通訳を買って出たエンドール家の家臣を名乗る子供です」


「私もその報告は受けましたね。残念ながら私の受けた報告書には国やファーマの名前は書かれていませんでしたが」


 ジェラルドさんも思い出したようだ。そのあとに続くように全員が当時の報告について言葉を発した。どうやら全員が何かしらの報告は受けていたようだ。


「ドラグーンは災厄や災悪と恐れられる魔人。その力はドラゴンに匹敵するとも言われています。そのドラグーンに今日見せた以上の技術力があるというのは、快くファーマに技術を授けたことからも容易に想像は出来るでしょう。敵対する事は得策ではない、むしろ同盟でも結べるならデザリアにとってこれほど心強い事は無い筈です。これを踏まえて皆さんの意見を聞かせていただきたい」


「ふむ、確かにそれが本当ならば敵対行動は避けるべきだが、同盟を結べるかといえばそれは難しい話だろう? 報告書の話が本当であれば、ファーマは神託の御子という立場であったから、たまたま危害を加えられなかったというだけで、国同士が友好な関係を築けるかというのはまた別の話だ。魔人の扱いについての意見だが、どの道もうデザリアには亜人や魔人は殆ど生息していない。大した脅威でもないのだ。態々探し出して捕獲する必要はもうないだろう? ベルナンド殿は暴動を懸念しているようだがそれは話の持って行き方次第だ。何も今日明日直ぐに庇護しろという話ではないのだろう?」


 グラヴァさんの問いかけに最初に口を開いたのはエギラスさん。同盟には反対で亜人狩りや奴隷についてはどちらでも良いといった感じ。


「私はグラヴァ殿の提案に賛成ですな。同盟を結べるなら結んだ方が良いですし、亜人や魔人の扱いについても前々から嫌悪感を抱いておりました。これを機に亜人や魔人との関係を改善すべきです」


 ジェラルドさんは貴族には珍しく亜人や魔人に偏見を持っていないタイプの人のようだ。マルガンさん達のように嫌悪してはいないけど品物や物としてしか関心が無い人はいたけど好意的な貴族は初めてだな。


「ワシとしてはヒナ国と同盟する事で新しい知識が手に入るのであれば、同盟を結べば良いと思いますな。亜人狩りや亜人奴隷についてだが、ホムンクルスという物が本当に作れるのなら、学問ギルドとしてはもう亜人などに用はない。そんな事が褒章になるというのなら叶えてやれば良いのではないか? 暴動の可能性にしても一部の嫌悪派の人間を黙らせれば問題は無かろう? エギラス殿の言うように今日明日直ぐに法を変えるという話でもあるまいて」


 ニコラウスさんの興味はもう新しい知識へ移っているようだ。ってか、みんな同盟がどうたらと話しているけど、デザリアに上空1万メートルまで飛べる技術が無いのだから、向こうから来てくれないと交流は出来ないという事を失念していないだろうか? 飛行車があるといっても地上10mまでしか浮かないんだよ?


「俺は断固反対する。野蛮な魔人と同盟など結べるわけがない。奴らは神敵、この地上は我らが人間の物なのだ。いずれはレムール大陸も我らの手に取り戻さねばならん。奴隷など生ぬるい殲滅すべきだ」


 ベルナンドさんは一定数に該当する亜人嫌悪派のようだ。この人がトップなのだから冒険者が亜人に対して敵対心が強いのは仕方ない。ここまで亜人を嫌う理由って何なんだろうか? 神敵って言っているから宗教の関係? っていうか、暴動を懸念しているというよりは先導しそうな言い方だよね? この人を説得って難しいんじゃないだろうか?


「ふむ、皆の意見は分かった。まず、最初に聞いておかなければならん事があるのだが、グラヴァ、ヒナ国というのはドラゴンの巣の上にあるのだろう? どうやって交流をするのだ」


 やっとそこに気付く人がいた。流石は王様だ。


「ファーマが行けたのだから方法があるのでしょう。ファーマ、聞いていなかったけど君はどうやってヒナ国まで行って戻って来られたんだい?」


「えっと、日那国へは騎竜という日那国で乗り物代わりに使われているドラゴンに乗せてもらって行きました。帰りも同じです。日那国ではドラゴンを家畜として飼っているんです」


「そういえば報告書にもドラグーンがドラゴンに乗って襲来したと書かれていたな。ドラゴンを手なずける方法も教わったのか?」


 やっぱりそこは興味がわくよね。質問を投げかけて来たのはエギラスさんだけど、エギラスさん以外の人もドラゴンの話に興味深々のようだ。


「手懐ける方法は教わりましたけど、人間には無理だと思います」


「人間には無理? 何か特別な理由があるのだな? ドラグーンはどうやってドラゴンを手なずけているのだ?」


「方法は単純です。卵を持って帰って孵化させて育てれば良いだけなので。ある程度数が集まれば卵を取りに行かなくても家畜の様に繁殖させることが出来ます。でも、ドラゴンは自分より弱い相手には例え親でも従いません。1対1でドラゴンに勝てるなら卵を巣から持ち帰って孵化させれば手なずけられるそうです」


「生まれたばかりのドラゴンであれば勝つことも可能だろう。で、あれば卵さえ手に入れてしまえば可能ではないか?」


「それは子竜の時期だけです。ある程度育つまでの間であれば言う事を聞くらしいですが、力関係が逆転してしまったら手に負えなくなります。日那国の人達の話によるとドラゴンは孵化して100年ほどで若竜と呼ばれる成竜の半分ほどの大きさまで育ちます。その辺りまでなら強い人なら従える事も出来るでしょうけど、人が乗れる大きさになる頃には手に負えなくなるので育てるだけ無駄になると思いますよ?」


 若竜で魔性の森(聖域)近辺の魔物と同等くらいの強さなので、騎竜にするのは難しいだろう。隷属の首輪などで従えようにも(ドラゴン)は神術への耐性が高いので、最低でも邪黒竜くらい強力な邪属性の術式で縛らないと隷属は無理だろうな。まあ、現実的じゃないよね。


「ふむ、ドラゴンを手懐けるのが現実的ではないという事は分かった。もう1つ疑問があるのだが、ファーマは神託の御子としてドラグーンに迎えに来られたと報告書に書かれていたが、グラヴァ、ファーマはいったい何者なのだ? 出自は分かっているのだろう?」


 ……やっぱりそこは突っ込まれるよね。あの時もう少し頭が回っていれば〝神託の御子〟なんて伝えなかったのに、まさかこんな会議に出る事なんて考えていなかったし、失敗だったなぁ。


「私も詳しくは知らないのです。ファーマをエンドール家に迎え入れたのは父ですから」


「ふおっふおっ、ワシも出自なんぞ知らん。ワシは直感的にファーマの将来性を感じて臣下に加えただけじゃからな。聞いてもおらん」


「そんないい加減な……」


 うん、僕もそう思う。グラヴァさんは呆れて開いた口が塞がらないようだ。


「マルガンらしいといえば、らしいのだが、ファーマ聞いても良いか?」


 まあ、そうなるよね。全員に注目されて居心地が悪いな。


 さて、本当の事は話せないけど全く分かりませんでは許してくれないだろうな。嘘はたぶんマルガンさん辺りにバレるから言える範囲だけ言って誤魔化すか。


「僕を育ててくれた母から聞いた話なんですけど、僕は赤子の時に森で瀕死の実母に抱かれていたところを義母に拾われて育てられました。7才の頃にその育ての母の下を離れて単身グラダの町に移住して、仕事を見つけて働いている時にマルガン様と知り合ったんです」


 本当はその時ソフィア母さんの身体は死んでいたのだけど、生命の防護陣という特別な神術で意志と魂をその場に留めて僕を守ってくれていたので、まだ生きていたという表現は間違ってはいない。


「ふむ、嘘を言っている様子はない。が、何か隠している事があるといった感じか」


 僕の答えを聞いてエギラスさんが口を開いた。


 そっちから突っ込まれるとは思っていなかった。やっぱり正騎士だから犯罪者の取り調べとかで相手を見抜く目を鍛えられているんだろうか?


「隠している事があるなら正直に申してみよ」


 神様に育てられたというのは言えない事だし、言っても信じてもらえないだろうから、もう1つの話していない事を話すことにした。


「ええっと、僕が母に拾われたのはナティシ帝国領の森の中なんです」


 言えるのはここまでだ。


「なるほど、口にできなかった訳だな。我が国と帝国は敵対まではいかぬが、決して友好な関係とは言い難い」


「帝国の間者ではないのか?」


「間者であればデザリアの国力を強化させるような真似はせぬであろう」


「ブラフという事も考えられます」


「それはあり得んのう。ワシの目はそこまで狂うておらん。ファーマは色々と子供では考えられんような事をしでかすが、物事をあまり深く考えておらん無邪気な子供じゃよ。そもそも帝国にもない技術を披露しておる時点で間者という事はあり得ん」


 やっぱり、帝国側で拾われたって言うと勘繰られるよね。図書館やエミルの話でデザリアと帝国の関係は知っていたからあまり言いたくはなかったんだけどな。マルガンさんは信じてくれているようだから良かった。でも『物事をあまり深く考えておらん』っていうのは失礼な話だ。僕だって色々と考えているんだよ?


「ふっ、確かに間者というのはあり得んだろうな。これほど考えている事が顔に出る者が間者であれば直ぐにでも気が付く」


 僕ってそんなに顔に出るタイプなんだろうか? エギラスさんに言われてどの人も納得の顔をしているので分り易いんだろう……変に怪しまれなかったのは良い事なんだけど、なんか複雑だ。


「恐らく帝国の生まれだという事は分かった。問題は神託に選ばれた理由だな。ファーマよ、神託によりヒナ国へ向かったというのなら何か役目があったのだろう? どういった役目の為にヒナ国に滞在したのだ?」


 役目? と、言われても神様の暇つぶし……絶対に信じてもらえない。あとは文明の発展も目的の内だったよね? 神術書や術式書はその為に貰ったんだし。うん、これでいこう。


「文明の発展が目的だって聞いています」


「文明の発展? ヒナ国にはこれほどの高い文明があるというのに子供を1人連れて行ったところで大した発展は望めないだろう?」


「なんでも世界的に見て文明の発展が停滞しているという事なので、日那国だけに限った発展を望んでいるのではないのだと思います」


「なるほど、確かにどの国も近年、魔法や術式に関して大した進歩はしておらなんだな。しかし、ドラグーンにはどういった得があるのだ?」


「いえ、どちらに得があるという話ではないです。今回持ち帰った魔法書や術式書、それにホムンクルスに関する書は神様が与えてくれた物らしく、それを持ち帰らせる事で世界に広めるのが目的なんだそうです」


 まあ『らしい』ではなく、神様から直接貰ったんだけどね。


「神から与えられた物だと? 神託が降りたという話はよく聞くが、神が人に物を与えたなどという話は聞いた事が無いぞ?」


 貰いまくっている人がここにいますが?


「いや、ひょっとするとダンジョンから発見したものを神からの贈り物だと考えているのかも知れぬぞ? 神国や神聖国などの神への信仰の強い国ではそう考えている事も多い」


「なるほど、そういう事なら納得だ。だが、ダンジョンからそういった書物が発見されたなどと聞いた事がないのだが?」


「深部に行けば発見されるのかも知れませんよ? ドラグーンは我ら人より戦闘に長けているのだから、ダンジョンの深部に到達している可能性は高いでしょう」


「それはもっともな意見だな」


 みんな想像力が豊かだな。因みに浮遊島にはダンジョンは無い。


「入手経路に関してはそんな所だろうな」


 どうやら皆さん勝手に良い方向に解釈して納得してくれたようだ。良かった。


「神託が停滞した文明を発展させる為に交流させるのが目的だという事は理解した。ではファーマが選ばれた理由は何なのだ」


 まだ続くのか……面倒臭い。


「僕が選ばれた理由は分りません。日那国の巫女様が受けた神託は『この先の町にいる白髪の少年を連れて来い』というものだったそうなので」


 嘘は言っていない。実際に妃美華さんが受けた神託はそれだけだったらしい。


「理由がわからんでは困るだろう? なにか説明は無かったのか?」


 そんな事を言われても神様の暇つぶしに呼ばれたなんて言えないし……


「まあ、神託という奴は大抵必要最低限の言葉しか降りぬという。嘘を言っている様子はないし、これ以上聞いても無駄だろうな」


 ベルナンドさんの問いに僕が困っていると王様が助け舟を出してくれた。ラグナムート様以外の神様も神託は必要最低限の言葉だけなんだな。ちょっと勉強になった。


「ファーマについての話はここまででよかろう。先ほどグラヴァから提案のあった亜人や魔人への処遇については後日、各地領主も交えて協議を行う。ファーマへの報酬もこの会議の結果次第で後日に沙汰を出す。他に意見のある者はいるか?」


 王様が締めに入り、他に意見は無かったのでここで会議は終わった。



 ……つ、疲れた。最後以外何も話してもいないけど、最後だけで滅茶苦茶疲れたよ。みんなの圧が強い。


 会議が終わり、控室に戻った僕達。僕はソファーに倒れこみ、うつ伏せで項垂れた。


「緊張したか?」


「はい、偉い人に質問攻めにされて、とても疲れました」


「はははっ、最後はファーマに集中したな。まあ、これも良い経験だ」


 こんな経験はいらない。


「もう、会議はこりごりです」


「心配せんでもギルド会議には2度と出席はせんでも構わん。今回は顔見せの為の出席じゃったからのう」


 それは有難い。でも〝ギルド会議には〟という部分が気になる。何かしらの会議には出なくてはいけないのだろうか?


 気にすると疲れるので、椅子に座り直しテーブルに用意されていたお茶をカップに注いで一息ついた。どうやら新しく用意し直してくれたものらしくアツアツのお茶だ。


「邪魔するぞ」


 僕がお茶で一息入れていると、〝ゴンゴン〟と強めのノックの音が聞こえ、返事をする間もなくニコラウスさんが部屋に入ってきた。


「勝手に入るんじゃないわい」


「ふん、貴様に遠慮する必要もなかろう」


「まったく、作法も知らん奴はこれじゃから……で、何の用じゃ?」


 小憎たらしそうにマルガンさんとニコラウスさんが言葉を交わす。やっぱり2人は仲良しなんだな。


「貴様にではない、ファーマに用があるのだ」


「僕ですか?」


「お前さん、年は9才といっておったな。王立学園に通う気はあるか?」


「はい、今期の試験を受けて合格すれば来期から通おうと思っています」


「それならば丁度良い。ワシが推薦しておくから試験は受けんでも良いぞ。来期から通え」


「えっ? 本当ですか? なんで突然?」


 受けなくても合格なら楽でいい。


「理由は言わんでもわかるだろう? 優秀な者を育てるのはワシら大人の務めだ。いくら指導を受けながら作ったとはいえ、たった9才の子供があれほどの魔法道具を作れるのだ。放っておける訳がなかろう。それと、1番の理由はワシがお前さんを気に入ったからだな。まあ、ファーマについての詳しい情報は表に出せぬから特待生という訳にはいかんがのう」


 何か気に入られるような事をしたかな? でも、人に好かれるのは良い事だ。有難く気に入られておこう。


「貴様、ファーマを貴様のところに引き込もうと思っている訳ではないじゃろうな? 言っておくが引き抜きなどしおったら本気で怒るぞ?」


「安心せい、引き抜きなど考えておらん。まあ、ファーマが自らフレイマン家に仕えたいというなら快く引き受けるがのう。ふあっふあっふあっ」


 ニコラウスさんがいたずらっ子のようにニヤッと笑ってマルガンさんにそう言うと、マルガンさんは結構本気で睨みつけている。


「ありがとうございます。仕える主を変えるつもりはありませんけど、来期から宜しくお願いします」


 とりあえず、フォローを入れておこう。こう言っておけばマルガンさんの機嫌が悪くなることは無い筈。


「ふあっふあっふあっ、フラれてしもうたようだのう。まあ、うちに来たくなったらいつでも声を掛けるがいい」


「下らん事を言っとらんで用事が済んだらとっとと出て行かんか!」


「ふあっふあっふあっ、面倒なのが怒っておるから帰るとするかのう。入学証と必要な書類は後日アインスの商業ギルドに送っておくから準備を忘れんようにのう」


「はい、ありがとうございます」


 ニコラウスさんは楽しそうに部屋を出て行った。あんまりお年寄りをからかっちゃダメですよ? あ、ニコラウスさんもお年寄りだから良いのか?


「本当に憎たらしい奴じゃ。ファーマ、あまりあ奴に近づくでないぞ? お前ぐらいなら口八丁でその気にさせるだけの話術を持っておるからのう。あ奴は」


「あはは、大丈夫ですよ。これでも僕はマルガンさんの事を慕っていますから。他所に鞍替えとかはありえません」


 マルガンさんは眉をしかめて微妙な顔をして、グラヴァさんは苦笑いを浮かべる。今言った事は嘘じゃないですよ?


 今日は面倒な事もあったけど、良い事もあった。2度と会議には出たくないけど来て良かったな。

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