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ファーマ君の気ままな異世界生活  作者: 幸村
第3章 農場建設
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第18話 ファーマ君、ギルド総会に出席する その3

「これはホムンクルスという物を作り出す方法が書かれた資料です」


「ホムンクルス?」


「ホムンクルスというのは生物の一部を利用して人工的に作り出す生物の事です。人間の一部を使えば人間の、魔物の一部を使えば魔物の体を作り出すことが出来ます。これによって魔人を使った臨床実験を行わなくとも人間にとって最良の実験を行う事が出来るようになります」


「人工的に生物を生み出す? 本当にそんな事が出来るのか?」


 グラヴァさんの説明を聞いてその場の全員が驚きの声を上げた。特に興味を持っていそうなのはニコラウスさん、やはり学問ギルドのグランドマスターだけあって知識欲は旺盛のようだ。


「先程は生物と表現しましたが、ホムンクルスは正確には生物ではありません。これはゴーレムと同じで自我や感情を持たず、命令を与え行動させることは出来ますが、学習させたパターン以外に自発的に行動を起こす事はできません。ゴーレムと違うところは、ある程度の学習能力があり、学ばせた事柄に関しては簡単な命令1つで複雑な行動が可能なところ、生物と同じで水分や栄養の補給が必要で排泄も行うというところです。ホムンクルスの体は元になった生物とほぼ同じですので目的に合ったホムンクルスを作れば現状より優れた研究成果を上げる事が出来るでしょう」


 デザリアで薬物の実験に使われているのは猫人(キャッツ)狼人(ウォルフ)、この2種族は人間と近い耐性を持ってはいるのだけど、どちらも人間より毒や病気に強いし生命力が高く傷や病気の治りが早い。毒薬を作るのならこの2種族で実験すればより人間に効果のあるものは作れるだろうけど治療薬を作る場合はこの2種族に効いたからといって人間に効くとは限らないし副作用が無いとも言えない。


 だけど、ホムンクルスの素体が人間であれば、そのホムンクルスに効果のある薬は確実に人間に効果のあるものなので、他の生物で試すなんて事をやらなくて済む。


「なるほど、これは確かに薬学に大きな革命を起こす代物だな」


「ほぼ、という事は何か違いはあるという事だな?」


「はい、先ほど挙げた2点ともう1つは繁殖能力が無いという部分です。生殖行動はとれますが実際に繁殖は出来ないそうです。つまり、それに関する実験だけは行う事は出来ません」


 勿論、ホムンクルス×生物の組み合わせでも子供は出来ない。あくまでも似て非なるものだから。でも繁殖に関する実験って何かあるんだろうか? そもそも実験体にされているのは子供ばかりだからそんな実験はやっていないよね?


 暫くホムンクルスについての質疑応答は続き、1時間ほど経って詳しい資料は後日提出する事になり、やっと会議の終わりが見えてきた。


「会議の後、今回入手した新魔法文字を利用して作ったもう1つの魔法道具を披露しますが、その前に皆様にお伝えしたい事があります」


 飛行車以外の発表が終わったのでグラヴァさんが報告の締めに入る。


「今日、商業ギルドから発表した新魔法文字、新詠唱魔法、ホムンクルスの技術に関して商業ギルドは権利の主張をせず、国家へ献上したいと考えております」


「ほう、利益を1番に考える商業ギルドがその多大な利益を手放すというのか?」


 王様から疑問の声が上がり、周りも同意見のようだ。


「確かに、これだけの物があれば多大な利益が得られるでしょう。しかし、争いの種にもなります。デザリアには既に学問ギルドが開発した魔法文字と魔法の技術を持っております。そこに新たな技術が登場すればどちらが優れているか、どちらが多くの支持を集めるかなど比較しようという輩も出てくるでしょう。商業ギルドとしては、それは望むところではありません。この新たな技術と現在の技術を基に、より優れた技術が生まれれば、より多くの利が得られます。但し1つだけ条件を飲んでもらいたいのは学問ギルドにも魔法や魔法文字に関する権利を国家へ移譲して頂きたいのです」


「ふあっふあっふあっ、先ほどの話で学問ギルドの技術よりヒナ国の技術が全てにおいて勝っているとは思わんが、確実にヒナ国の技術の方が勝っている部分はある。そんなものを出されて、しかも国家に献上されては我がギルドとしても権利の移譲をせぬわけにはいかんだろうのう。ワシがこの場で今すぐに決定を下す事は出来んが、この会議後に直ぐにでも主要幹部を集めて前向きに検討する事を約束しよう」


「ふむ、では学問ギルドの意向が決まり次第、それらに関する制度の見直しを図るとしよう」


 マルガンさんとグラヴァさんの予想では、学問ギルドは間違いなくこの条件を飲む。その後は術式や魔法の使用税という形で、全貴族と発明や研究に関わる全ての人から使用料を徴収する事になるだろうという事だ。それと個人とは別に各ギルドからも税金の徴収をされることになるだろうけど、学問ギルドと商業ギルドに関しては最低でも向こう100年はそれらに関する納税の義務は免除されるだろうと読んでいる。


 得る利益は権利費に比べると少なくはなるけど、争いが起こった場合に出るであろう不利益に比べれば少なくなった利益など微々たるものだと考えて今回の条件を出したのだ。


「そして、もう1つ皆様にお伝えしておかなければいけない事があります。先ほども申し上げたように、今回お見せした3種の書物、そしてコメを含む幾つかの穀物はこのファーマが持ち帰った物です。それに付け加え、私が今身に着けているこの新しい収納魔法道具と、この後お見せするもう1つの魔法道具を開発したのも、ここにいるファーマです」


 グラヴァさんがそう伝えると予想通り、全員から注目が集まってきた。


「こんな子供が本当に時魔法の術式を組み込んだ収納魔法道具を作り上げたのか? 信じられんな」


「信じる信じないはそちらの勝手ですが、ファーマは我がエンドール家が全面的に庇護する対象です。くれぐれも手出しする事の無いようお願いします」


「家名を懸けてまでグラヴァ殿が言うのであればそうなのだろうが、この小僧が1人で開発したのか?」


「いえ、当然ですがヒナ国の技術者の指導の下、開発したという事です。ですが、9才の子供がそれを作り上げたという事が重要なのです。先ほど話した2つの魔法道具はファーマの指導の下、我がギルドの研究者や職人達が作り上げた物です。これがどういう意味か解りますか? ファーマはそれらの術式を理解しているという事です」


「確かに、理解しておらん事を他人に教える事は出来ぬな。ところで、先ほどから話しておるもう1つの魔法道具というのはまだ出さぬのか? どんな物か気になるのだがのう」


 ニコラウスさんの発言にその場の全員が頷いている。まあ、やっぱり気になるよね。


「直ぐにでもお見せしたいのですが、この部屋で出すには大きすぎる魔法道具なので会議後、中庭でもお借りできたらと思っております」


「ならば、1度会議を中断してそれを見せてもらおうではないか」


 王様の鶴の一声で会議は中断。早速、お城の中庭に移動した。


 ……中庭?


 到着した場所は中庭と呼ぶにはとんでもなく広い場所だった。流石に地平線は見えないけどエンドール家のお屋敷(庭含む)はすっぽり収まりそうな広さだ。道幅も広く馬車がゆとりをもってすれ違える道幅がある。


「では、早速お見せしますので私の後ろにお下がりください」


 そう言ってみんなを後ろに下がらせるとグラヴァさんは献上用に作ったワンボックスカー並みに大きな飛行車を中庭の道に出した。


「箱……なのか?」


「これは何をする魔法道具なのだ?」


「馬車のホロのように見えなくもないな」


 エギラスさんが惜しい事を言ったな。半分正解って言ってあげたい。ニコラウスさんは無言で飛行車の周りをうろうろしながら細部まで覗き込んでいる。


「これはスカイカーという乗り物で、これ自体が宙に浮かび空中を移動することが出来ます」


 グラヴァさんがそう説明すると全員がどよめく。


「この箱が浮くのか?」


「早速、起動させて見せてくれ」


「どの程度浮くのだ? 移動速度は? 起動時間は? 仕組みはどうなっている?」


「ああっ、あまり触らないでください。これは陛下に献上するために持ってきた物ですから」


 誰もかれもがペタペタと飛行車を触るものだからグラヴァさんが少し慌てている。注意されて献上品だと分かったところで一斉に手が離れたのだけど、勝手にドアを開けて乗り込もうとしていたベルナンドさんが体半分を車内に入れた状態で硬直し、そーっと振り返った。


「そ、そういう事は先に言ってくれないと困るだろう? 危なく陛下より先に乗ってしまうところだったではないか」


 いや、献上品じゃなくても王様より先に乗っちゃダメなんじゃないだろうか?


「余に献上してくれるのなら早速乗せてもらおうか。グラヴァ、起動させてくれ」


「申し訳ありません。私にはスカイカーの操作は出来ません。今、この場にいる者の中でスカイカーの操作をすることが出来るのは開発者のファーマだけです。ですが、陛下への献上品にファーマを乗せる訳にもいかないので別のスカイカーでの試乗をさせて頂ければと思います。ファーマ」


 僕に目配せしながら僕の飛行車を出せと訴えかけるグラヴァさん。僕を連れてきた1番の理由はこれか? ……先に言っておいてよ。


 仕方ないので僕の飛行車を収納魔法道具から取り出して王様の飛行車の前に置く。


「これがファーマの開発したスカイカー1号機です。見た目は質素ですが性能としては先ほど献上しましたスカイカーと遜色ありません」


 パッと見だけなら僕の飛行車の方が質素に見えるけど使われている素材は遥かに高価な物だ。一応見た目に分からないように日那国にあった塗料で塗装しているので水氷竜の鱗が使われているとは分からないだろう。


「これには屋根が無いのだな」


「このスカイカーは屋根が開閉式になっていまして、ここを伸ばすと、こんな感じに屋根が付きます」


 僕は説明しながら飛行車の後部にアコーディオン状に畳まれていた屋根を広げてセットした。


「なんと!? これは面白い仕組みだな。しかし、どうして開閉式にしたのだ? 安全性を考えると開かない方が良いだろう?」


「そうですね。安全面からみると開閉式じゃない方が良いと思いますけど、天気のいい日に屋根を開いて走らせると風が凄く気持ちいいんです」


「なるほど、確かに天気の良い日にウンバを走らせると風が気持ち良いな。それと同じという事か、悪くない発想だ」


 王様はニコニコと僕の説明を聞いて納得したのか機嫌よく頭を撫でてくれた。


「じゃあ、早速試乗しましょうか。このスカイカーは4人乗れますけど王様だけでいいですか?」


「ふむ、それならあと2人乗せても構わぬ。お前達の中から誰でも良い、2人選出せよ」


 と王様が言うと、お偉いさん達が話し合いを始めた。


「ここは研究の為にもワシが乗るのが妥当だろう」


「なにを言っている立場を考えるなら公爵である俺が優先されるべきだ」


「いえ、陛下は誰でも良いとおっしゃられました。立場や研究など理由になりません」


「なら俺が乗る。国への貢献度を考えるならダンジョンを攻略して様々なダンジョンアイテムを世に出している冒険者ギルドが1番高いだろうからな」


「なにを言っているのだ。冒険者の貢献など正騎士に比べれば微々たるもの、貢献度と言うのなら国防を預かっている正騎士ギルドの俺が優先されるべきだ」


「なにを言っているのです。国民の約7割を占める平民の生活を不安なく支えているのは我がジョブギルドですよ? 貢献度なら私が優先されるべきです」


「ふんっ、揃いも揃って馬鹿な事を言うでない。貴様らが使っておる魔法道具はどのギルドが開発したと思っておるんだ。魔法に関しても我が学問ギルドが研究開発したから分け隔てなく使えておるのだ。貢献度ならば学問ギルドを置いて他になかろう?」


「何を言っている。魔法道具の元になるのはダンジョンアイテムなのだ。冒険者ギルドが1番貢献度が高い」


「アイテムなど使う者あってこそだ。国防こそ最大の貢献だ」


「民無くして国は成り立たないのですから、民の生活を支えている我がジョブギルドこそ、最大の功労ギルドですよ? ですから私が乗るべきです」


 それぞれが自分が1番だと主張して話がまとまりそうにない。因みにマルガンさんとグラヴァさんは既に試乗しているのでこの話し合いには参加せず、傍観を決め込んでいる。


 マルガンさんが楽しそうに「醜い争いじゃのう」と笑っていたのは見なかった事にしよう。


「早くせんか、話し合いが出来ぬならジャンケンで決めよ」


 5分ほど待たされて苛立った王様が選出方法を提示した。ってか、この世界にもジャンケンってあったんだな。まあ、お口にチャックもあったし不思議ではないか。


 結局、ジャンケンを勝ち抜いたのは上手く相手を口八丁で誘導したニコラウスさんと、常に対人を想定して訓練をしている駆け引き上手のエギラスさんの2人だった。


 余程乗りたかったのか、負けた2人が地面に諸手を突いてがっかりしている。


 ……うーむ、貴族といっても素は平民と変わらないのか? 子供の争いみたいだったな。


「では、起動させますね」


 全員が飛行車に乗り込み助手席には王様が、僕の後ろにはエギラスさんが、その隣にニコラウスさんが座る事になるんだけど、全員が運転する僕に身を乗り出して注目するので運転し辛い。


 動かす事自体は簡単。起動ボタンを押してハンドルを握り、前進ペダルか後退ペダルを踏み込むだけ。高度の調整はサイドレバーの上げ下げで自由自在だ。


「おおっ、これは中々に乗り心地が良いな。馬車のように揺れぬから腰も痛くなりそうにない」


「ふわふわとなんとも不思議な乗り心地だ。速度はどの程度出せるのだ?」


「最高時速は50㎞ほどです。高度を上げて速度を出してみましょうか?」


「是非に頼む」


 エギラスさんの希望で高度を10mまで上げ、お城の敷地からは出ないように時速40㎞まで上げて敷地内を1周してみた。


 消音術式で音はしないのだけど上空を移動する大きな物体があれば流石に目立つ。使用人さん達が指さしながら空を見上げているのが見えた。何か喋っていたようだけど距離が開いているので何を言っていたのかは分からない。まあ、距離に関係なく時速40㎞も出していたら立ち止まっている人の話し声なんて聞こえないだろうけど。


 操作方法を説明しながら試乗会は続き、途中後部座席の2人がジャンケンに負けた2人と交代。また最初から説明をやり直し、合計2時間試乗会は続いた。

次回更新は5/29になります。

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