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ファーマ君の気ままな異世界生活  作者: 幸村
第3章 農場建設
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第5話 ファーマ君、新しい仲間を歓迎する

昨日またブックマークと評価を頂き、総合評価が500を超えました。

やはり、目に見えて評価されるのは嬉しですね。

これを励みにこれからも頑張ります。

 大きな声を張り上げて店頭の方から勝手に契約室まで入ってきたのは、でっぷりと洋ナシ形におなかの出た中年男性だった。


「これはプラード子爵様、出迎えもせず申し訳ありません」


「そんな事はどうでも良い。ランカだ……ん? まさか売れたのか?」


 プラード子爵と呼ばれたおじさんは丁度契約書にサインを入れるところだった僕の方を見て険しい顔をする。


「はい、丁度今しがた両者の合意が取れましたので契約書にサインを頂くところでした」


「どんな条件だ。契約書をみせろ!」


 ずかずかと肩を怒らせ机の方に来ようとするプラードさんの前にミッキィさんが立ちはだかる。


「申し訳ありませんが、たとえ子爵様といえど契約者様の許可なしに契約内容をお見せする事はできません」


「ならばそこの小僧! どこの誰かは知らぬが許可しろ!」


 どこの誰かも分からないのによくそんな偉そうな態度をとれるものだ。もし、相手が自分より上の立場の人間だったらとか考えないのだろうか? まあ、僕は上の立場の人間ではないけどね。でも人を見る目はあるようだ。初見で僕を男だと判別した人は少ないからね。


「挨拶が遅れました。僕はエンドール家に仕えているファーマという者です以後お見知りおきを」


 本当に覚えてくれなくても良いけど、社交辞令は大切だよね。


「エンドール家に仕えているだと?」


 まあ、家臣らしいことは1度もやった事ないけど……名前だけ使わせてもらってます。ごめんなさい。


「はい、マルガン様からこれを頂きました」


 家臣である証拠のタグを見せると、プラードさんは目を見開いて固まった。


「ど、どこの家の出だ」


「どこの家と言いますと?」


「エンドール家の家臣になれるくらいなのだから、それなりの家柄の者なのだろう?」


 なるほど、そういう事か。


「いえ、僕は平民です。良縁に恵まれてお仕えさせてもらう事が出来ました」


「平民だと? ならば、交渉だ。その契約をとりやめろ」


 ……交渉と言っておきながら『とりやめろ』って、それは命令だよね?


「どうしてですか?」


「ランカは先に俺様が目を付けていたのだ。平民なら子爵である俺様に譲るのが当然だろう?」


 でた! 悪徳貴族の暴論。この人はグラダのグリンドさんと同じタイプと見た。


「申し訳ありませんが、その理由ではお引き受けしかねます」


「ほう、俺様の交渉を蹴るというのだな?」


 交渉なんて1秒たりともされてませんが? こういう理不尽を言う人には絶対に譲りません。


「はい、ランカはこれから行う予定の事業に必要な人材ですので」


「チッ! 後悔するなよ。ん? そっちの女はお前の姉か?」


 舌打ちをしながら今度はエミルに目を付けたようだ。


「いえ、彼女は姉ではありませんが僕の大切な家族です」


「ファーマ様にお仕えしているエミルと申します」


 あ、名乗らなくてもいいのに……


「平民が生意気に使用人を連れているのか。女、この小僧より良い条件で雇ってやる俺様のところで働け」


 上から下まで嘗め回すように視線を送りながらぺろりと舌なめずりをするプラードさん。いやらしい事を考えているのが丸わかりだ。こんな人のところにエミルを働きに行かせるわけにはいかない。


「折角のお申し出ですが、私はファーマ様以外の方の下に仕える意思はありません。お断りさせていただきます」


 僕が断るより先にエミルがはっきりと断った。


「本人もこう申していますので僕からもお断りさせていただきます」


「2度までも俺様の交渉を断るとはいい度胸だな。覚えておけよ?」


 だから1度も交渉されてないってば……


 怪しげな捨て台詞はあったもののプラードさんは諦めてくれたようで、鼻息荒く店を出て行った。悪は去った。


「私がランカを勧めたばかりに面倒なことになり申し訳ありません」


「いえ、大丈夫ですよ。一応、侯爵家の家臣ですので余程バカでない限り力ずくで何かやってくる事は無いでしょうし、何かあれば主家が守ってくれますから」


 最初は貴族の家臣なんて面倒だと思っていたけど、タグのお蔭で色々助かっている。本当にマルガンさんには感謝しなきゃね。


「まことにありがとうございました。今後、私で力になれることがありましたら何なりとお申し付けください」


 契約を完了させ、支払いはギルドカードから引き落としが出来るというので引き落としでお支払い。店の入り口まで見送ってもらい、僕達は帰路についた。


「じゃあ、1度家に帰って家族を安心させてあげなよ。心配しているでしょ?」


 聞くところによると、ランカはミッキィさんの奴隷商から300mくらい離れた場所に実家があるらしい。両親と弟がいるって話だからかなり心配しているだろう。


「はい、ありがとうございます」


「エミル、護衛で付いて行ってあげて。ランカ、久しぶりの帰宅なんだから、ゆっくりしてきて良いからね」


「かしこまりました」


「ありがとうございます。お言葉に甘えさせてもらいます」


 ランカはエミルといそいそと自宅の方へ歩いて行った。


「さて、新しい仲間も増えた事だし、歓迎会でもしてあげようか。レオナ、手伝ってね」


「うん、何するの?」


「まあ、いつも通り食事するだけなんだけどね。いつもよりちょっと豪勢な物を作ろうか、レオナは何か食べたいものある?」


「レオナはお肉が良い」


 ブレないな……


「じゃあ、すき焼きでも作ろうか。同じ釜(鍋)のご飯を食べるって仲間っぽくない?」


「すき焼き大好きー」


 材料は収納魔法道具(ブレスレット)に入っているので早速家に帰って調理を開始した。


 すき焼きは日那国に砂糖や醤油があったので作ってあげたらエミルとレオナに高評価だった。けど生卵に浸けて食べるのは、うちの子含めて誰にも受け入れられなかった。竜人族は昔、生肉を食べていたと聞かされていたのに、生卵が気持ち悪いとか解せない。


 お肉は浮遊島で狩った【長角水牛】を使おう。


 ご飯は日那国で最初に食べた白丸米より、少し小ぶりの黄色米にしよう。甘味やモチモチ感は少なめで、どちらかというとパラパラな感じだけど、丼や焼き飯にすると美味しい僕が好きなお米。勿論そのまま食べても美味しく、毎日食べても飽きの来ない米なのだ。白丸米はとても美味しいのだけど毎日食べると飽きてしまう。たまに食べるのが1番だ。


 レオナも黄色米が好きで、エミルはモチモチ感が1番強い紅米が好き。僕としては、紅米はお餅かおこわにして食べたい。


 すき焼きだけでは飽きるかも知れないので野菜と魚介の天ぷらも作ろう。あとはシメのうどん……は無いから諦めよう。うどんは今度作ることにしよう。


「デザートもあった方が良いよね?」


「うん、なに作るの?」


「果物を使ったデザートなんてどうかな?」


「うん、好きぃ」


 よし、決定だな。


 台所で食材を準備して、レオナにはレオナでも持てるように作った特製の包丁で野菜を適度な大きさに切ってもらい、僕はお肉を薄切りにする。レオナは相変わらず味付けが独特だから絶対にやらせられないので、味付けは僕が担当。


 切り終わったらデザート作り、ギルドで買っておいたアプリルの実とブラベリーを摩り下ろして濾して、ミイルクと混ぜ合わせるとカッテージチーズのような物が出来上がる。これを冷やすと程よい酸味と甘味がさわやかなお手軽簡単デザートの完成だ。


 冷やしている間に雨土鶏(ウドッケ)の卵と水と小麦粉を合わせて軽くかき混ぜ衣を作り、ナノ菜の種から作った油で揚げて天ぷら完成。収納魔法道具に入れておけば冷める事も無いので熱いうちに収納。


 切った野菜とお肉を出汁を張った鍋に入れ煮込み、すき焼きの完成だ。


「「ただいま戻りました」」


 食器や鍋をテーブルに準備しているとエミルとランカが戻って来た。


「おかえり、丁度食事の準備が出来たからみんなで食べようか。今日はすき焼きだよ」


「すき焼きですか? ファーマ様、チイズはありますか? 私はチイズに絡めて食べたいです」


 あ、忘れていた。エミルはすき焼きをチイズに絡めて食べるのが好きなんだった。僕としてはその組み合わせは微妙なんだけど……


「チイズも直ぐに準備するね」


 温めてトロトロにするだけだから手間はかからない。


「あの? お食事の支度は私の仕事なのでは? スキヤキとは何ですか?」


 僕達がご飯の用意をしたからかランカはオロオロしている。


「とりあえず、最初の内は僕やエミルと一緒に家事をやってもらって、僕達の料理や生活習慣を覚えて、完全に家事を任せるのはそれからだね」


「はい、畏まりました。ファーマ様」


 そう答えるとランカは直ぐに配膳の手伝いに入り料理をテーブルに並べて終わり、僕達は席に着く。ランカは壁際に直立している。


「何やってるの? 早く席について」


「いえ、私は奴隷ですので」


「いやいや、そんな所で立っていられると落ち着いて食事ができないから。ランカも一緒に食べるんだよ? これはうちのルールだから従って」


「ええっと、わかりました。ファーマ様がそうおっしゃるのなら、失礼します」


 戸惑いながらも僕の言葉に従って、申し訳なさそうにランカは席に着いた。


「じゃあ、食べようか。いただきます」


「「いただきます」」


「い、いただきます……」


 僕達に釣られるように両手を合わせて〝いただきます〟をするランカ。これにも直ぐに慣れてくれるだろう。


 相変わらず、エミルとレオナは僕が1口食べるまで食事に手を付けない。もう、奴隷じゃないのだから気にしなくても良いのだけど、そこは譲れないそうだ。


 僕が1口食べてエミルとレオナが食べ始め、それを確認した後ランカが食べ始めた。因みにランカはまだお箸が使えないのでフォークを使っている。


「こ、これは……美味しいですー。こんなに美味しいお料理、生まれて初めて食べました。貴族のお屋敷で働いていた時でも、こんなに美味しい料理は食べた事ありませんでしたよ? ファーマ様達はいつもこんな美味しいお料理を食べているのですか?」


 ランカは何故か目に涙を浮かべて肉を噛みしめ、初めてのすき焼きに感動している。


「いつもすき焼きって訳じゃないけど、日那国に行ってからは和食が多いよね?」


「レオナはチイズハンバーグ好きだよ」


「私も好きですよ。チイズは正義です」


 ……正義って。


 天ぷらも好評だった。サクサクの食感、魚醤で作った天つゆと塩の両方の味わいを楽しんで至福の表情だった。初めて食べたお米にも感動していた。


 とりあえず、味覚の好みは共有できそうなので和食を中心にレシピを覚えてもらおう。


「で、デザートまであるのですね? 奴隷になってからの方が良い食事が出来るのは驚きです。私など、黒パンと具の無いスープだけで十分だと思うのですが?」


「1人だけそんな質素な物を食べられると僕達が美味しくご飯を食べられないから。これからも同じ物を食べてもらうからね」


「私達も最初の内は戸惑いましたが、ファーマ様とはこういうお方です。立場は弁えなければいけませんが、それほど肩肘を張る必要はありませんよ」


「レオナは敬語もいらないって言われたよ」


「そんなご主人様は世界でもファーマ様だけだと思いますよ?」


 そんな事は無いだろう? 世界は広い。僕なんて只、普通に接しているだけなんだから。


 因みにみんなでお風呂に入っているのも驚かれた。まあ、それはそうだろうな。僕達にとっては日常でも世間は違う。3人でお風呂に向かったところ、顔を真っ赤にしながらランカも一緒に入って来た。


「ランカまで一緒に入る必要はないんだよ? 僕達は習慣になってるから一緒に入ってるだけだからね?」


「こ、これがこの家の習慣なら私も守ります。大丈夫です、私の意志で入っていますから契約違反にはなりませんので」


 そうは言われても、そんなに恥ずかしがられるとこっちまで恥ずかしくなってしまうので無理はしないでほしい。


 恥ずかしがりながらも、しっかりお風呂の大きさに驚いてくれたようで『貴族のお風呂みたい……』と声を漏らしていた。


 流石に4人で入るとかなり狭かったな。次にお風呂を作る時はもう少し大きくしよう。



 翌朝、ランカの家族が家にあいさつに来た。


「初めまして、私はランカの父のベジルと言います。こっちが母のルインカ、そしてこっちが息子のノルンです。本来なら昨夜のうちに挨拶に来るのが良かったのでしょうけど、何分夜も遅く手土産の1つも持たずに顔を出すのは失礼と思いまして今日になりました。お許しください」


 少しぎこちなく一生懸命敬語で話すベジルさん。別に手土産なんかは必要ないのだけど、気持ちなのでありがたく受け取ることにした。


「これはご丁寧にありがとうございます。これから5年半、娘さんを大切に預からせてもらいますのでどうか安心してください」


 僕がそういうと、ベジルさん達の緊張した面持ちは少し綻び、笑顔を見せてくれた。


「ありがとうございます。娘の事、末永く宜しくお願いします」


 ん? 末永く? 嫁にもらうわけじゃないからね?


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