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ファーマ君の気ままな異世界生活  作者: 幸村
第2章 浮遊島
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第28話 ファーマ君、米作りを学ぶ

注:作中に出てくる農法、その他製法はこの世界の方法であり、現実世界とは一切関係ありません。

  生暖かい目でお読みください。

 年が明けて1月が過ぎ、丑の月(デザリアの暦でいう所の2月)になった。季節は冬、まだまだ寒い時期である。


驚いた事にデザリアと日那国の気候はよく似ている。ついでに言うと前世で住んでいた町とも似ていて、四季がある。


 因みに日那国では干支が月の暦になっている。新右衛門さんの前世がそうだったから日那国でも取り入れたんだそうな。


 外は雪がパラパラ降って溜池や水路には薄い氷が張っている。標高1万m(雲の上)に雪や雨が降るというのも驚きなんだけど、まあ、そこはラグナムート様(神様)が作った島だからという事で納得している。


 今日から、前々から新右衛門さんにお願いしていた米作りの勉強(お手伝い)が始まる。


 田に苗を植えるのは、まだまだ先の話なんだけど、苗作りはこの時期にやるそうだ。日那国で作るお米は何種類かあって、今日から苗作りをして卯の月(4月)頃に田植えする米は黄色米という粘りが少なくて甘味と歯応えの強い物だ。


 これは未の月(8月)頃に収穫するという事だ。


 日那国で一番多く作られる米は、僕達が日那国に来た日に食べさせてもらった白丸米で、それは辰の月(5月)の下旬に植えるらしい。


『ファーマ達は、この苗箱に土を入れて指1関節分くらいの深さで広げて』


 僕達に教えてくれるのは与太郎達近所の子供。もうすっかり友達だ。


 日那国では米作りは、ほぼ女性と子供の仕事。特に田植えは子供が中心でやる。理由は大人(特に男性)は、指が太すぎて丁度良い量の苗を取って植える事が出来ないからだそうだ。


 大人の男性が田植えをすると殆どの苗が土に刺さらず、後から植え直さなければいけないらしいので、ある程度手が大きくなると田植えから外されるらしい。


 苗箱という木で作られた四角い穴の開いたお盆のようなものに枯草を敷き、その上に土を入れ、そこに種籾を撒いていく種籾を撒き終わったらその上に土を敷き詰めて1箱完成。


 これを繰り返し屋根の付いた育苗場に並べ、千箱作り終え黄色米の苗の準備完了。あとは手頃な大きさに成長するまで毎日水やりをするだけ。難しい作業ではないけどこの量は大変なものだ。


 この作業は作るお米の苗に合わせて時期を決めて行うので丑の月から卯の月のまでは苗作りが忙しい。特に卯の月は田植えと苗作りが重なるので大忙しだ。


 苗作りの合間に術式研究、ポーション研究をして2か月。良い具合に苗が育ち、今日から田植えが始まる。


 日那国の水田作りは豪快だ。


 まず、田に枯れ木や枯草を敷き詰め、そこに炎属性持ちの人が火を放つ。


「ファーマ様、タは火事なるます」


「そうだね。火の海だね」


「こういう農業のやり方があるとは知りませんでした」


 うん、僕も知らなかった。いや、焼き畑という農法があるのは前世の本の知識で知っていたけど、これは規模がおかしい。


 雑草事灰になったら地属性持ちの人が仙術(神術)を使って土を混ぜ返してまた枯れ木や枯草を敷き詰めて燃やす。これを3回ほど繰り返し水を入れ、水が溜まると歴史の教科書で見た木製の大きな馬鍬のような物(形状は少し違う)に子供が3人ほど乗り大人が引き回して土をかき混ぜる。


『これって地竜が引くんじゃないんだね』


『馬鹿だな地竜が引いたら土が殆ど飛び散って田植えができなくなるだろ?』


『与太郎、ファーマは米作り初めてだから知らなくて当然だろ? 馬鹿とか言ったらダメだよ』


『あっ、そうだったな。ごめん』


 かき混ぜる鍬の上はとても揺れて話をするのも大変なんだけど、みんな慣れているようで普通に話が出来る。たまに油断し過ぎて落っこちて全身泥まみれになる子がいるのはご愛敬。


 レオナとエミルも載せてもらったのだけど2人とも落っこちて泥まみれになり与太郎達に笑われた。でも結構楽しそうだったから良しとしよう。落ちた後は直ぐに水神術で洗い流して直ぐにお手伝いに戻っている。



『今年はファーマ殿に教わった地結晶を田に撒いてみるでござる』


『実りが良くなるっていう石だね』


『楽しみだな』


 日那国の偉い人がみんなに説明して、みんなどれだけ効果がでるのか期待に胸を膨らませているようだ。僕は本で読んだ知識を教えただけなのであまり期待されるとプレッシャーが……期待通りに育ちますように。


 粉にした地結晶を、お相撲さんが土俵に塩をまくように水田にまんべんなく撒き、撒き終わるといよいよ田植え開始だ。


 与太郎、僕、佐乃丸、エミル、風音、レオナ、千代という順に横一列に並び苗箱を小脇に抱える。


『いいか、こうやって4本か5本取って、苗先が完全に水に沈むくらい深く差すんだ。浅いと浮いて来るから気を付けろ』


『分かった。やってみる』


 隣にいる子が身振り手振りを混ぜて僕達に教えてくれる。エミルはもう普通に日那国語が理解できるし、レオナもゆっくりなら日那国語で説明しても解るようになったので通訳は殆どいらない。


 1束植えたら1歩後ろに下がり、また植える。これを反対側の端まで繰り返し1つの水田が植え終わると、次の水田に移動。


「あぃっ!」


『あはは、レオナ何やってんのよ。足は素早いのに不器用ね』


 レオナは水田に足を取られて後ろに倒れ、また泥まみれになった。


「あぁっ!」


『エミルまで何やってるの? ほら手を貸してっと、ああっ!』


 エミルがバランスを崩して前のめりに倒れ両手両足が抜けなくなったのを助けようとした風音が足を滑らせてエミルに向かって倒れ込む。


『「『「『「あははははっ!」』」』」』


 その光景があまりにもおかしくてみんな揃って大笑いした。この後、僕も同じように転んで全身泥まみれになり、笑っていた与太郎に手を引かれて立ち上がろうとしたところで与太郎も足を滑らせて一緒に水田に倒れて泥まみれになった。


 初めての田植えは思っていたより楽しかった。


 余談だけど、この翌日エミルとレオナが朝から腰痛になり起きられなかったので回復神術を掛けてあげて、回復神術が怪我だけでなく腰痛にも効くことが分かった。



 ━━時間は流れ未の月(8月)。僕達が浮遊島にやって来て凡そ1年が経ち、今は黄色米の収穫時期だ。育つまでの間もただ稲が育つのを待っていただけではない。稲以外の雑草を抜いたり、稲を食べる虫を除去したり、水を入れ替えたりと毎日何かしらの作業がある。


 実際にやってみると農業は大変だ。


 日那国の人達の話によると、今年の実りは例年より多いらしい。1粒1粒の大きさは例年より2回りほど大きく、稲1本の粒の量も1~2割ほど多いらしい。


『地結晶の効果は凄いねぇ。あとは味が良ければ言う事なしだよ』


 与太郎のお母さんの藤花(ふじはな)さんがご機嫌に話してくれた。


 稲刈りは大人の男性も手伝う。鎌を手に稲を刈り、根元を藁で結んで束にして置いていく。これを木で組んだ丸太の台に干して乾燥させるんだそうだ。


 僕達デザリアの3人はこの作業になれていないので今日はみんなが刈り取った稲を干場に運ぶ役目。抱えられるだけ抱えて運ぶを何十往復も繰り返した。


『良いか、こうやってくるくるっと巻いてこの間を通すんだ』


『こうだね』


『おおっ、初めてなのに器用だな』


 今日の稲刈りが終わる頃、与太郎達の指導で僕達3人も稲刈りをやらせてもらう。僕とエミルは問題なく刈り取りと束にまとめる作業が出来るのだけど、レオナは手が猫に近いのでこの作業に向いていない。


 まず、鎌がもてない。藁で巻くのも難しい。という事で稲束を運ぶの専門になった。でも、成長と共に少しずつ指が長くなっているので、いずれ僕達と同じようにモノを持てる日が来るかも知れないな。今は出来る事をやれば良いと思う。


 乾燥が終わると脱穀。脱穀は歴史の教科書に出て来たとうみのような物を使う。日那国の文明レベルを考えるととうみはハイテクだ。


 因みに精米は手で回す精米機がある。ザルの様な入れ物2つを貝のように合わせて使うようで中に入れた米の糠が取れるまで回し続けるらしい。十数件に1件の割合で精米機を設置している小屋を置いてあるらしく、食べる時に食べる分だけ精米するのが日那国流なのだとか。


 これらの作り方もしっかり教わっているのでデザリアに戻ってから米を作って食べるまでの準備は万端だ。あとは土地と人員の確保だけだな。


 早速、とれたての新米をみんなで試食してみる。


『う、旨い』


『これ、本当に黄色米か?』


『食感も味もまるで別物でござるな』


 昨年採れた黄色米と比べると、新米と古米の差だけでなく明らかに今年の黄色米の方が美味しい。ふっくらふんわりとしていながらも歯応えの良さは今までのまま、甘みと旨味が1段階上がっている。


 収穫量が増えて味も食感も良くなるなんて地結晶の効果は凄い物だ。たぶんどんな化学肥料よりも良い肥料の筈。しかも、農薬や化学肥料と違って体に悪影響を及ぼす心配がないから安全に農業を行える。


 日那国のお米は前の世界のどんなお米より美味しいものなんじゃないかな?


 後日、白丸米や他のお米も同じ様に試食したのだけど、どれも美味しくなっていた。ただ、白丸米と赤米というモチモチ感の強いお米の粘り気が強くなり過ぎてお米として食べるには少し難ありになってしまったのが失敗。特に赤米が。


 何でもかんでも地結晶を使えば良い物が作れるという事は無いという良い勉強になった。


 でも、赤米はモチ米より餅に向いていそうなので、杵と臼を作ってお餅にしてみた。


『おおっ! どこまでも伸びるでござる』


『団子とはまた違った美味しさでござるな』


『砂糖醤油との相性も良いでござる』


『おいら、赤糖で食べるのが1番好きだな』


『うちは白糖で食べるのが好きぃ』


 これが老若男女みんなに大好評だった。新右衛門さんの前世にも米を突いてお餅にして食べるという文化は無かったらしく(米粉の団子はあるのに不思議な事だ)、新しいお米の使い道が出来た事を喜ばれた。因みに半つきにしておはぎも作ったらこれも好評だった。


 余談だけど、この杵と臼を使ったお餅の作り方は前世で覚えたものだ。1人でついては1人で返す方法でお餅を作らされていたので慣れたもの。今思えばあれは嫌がらせの一環だったのだろう。でも、そのお陰でみんなに喜んでもらえたので結果オーライだ。前世の親に感謝はしないけど……


 ちゃんと役割分担をしてついたお餅は1人で作った物より良い出来になっていた。やっぱりお餅は2人でつくべきものだよね。


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