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ファーマ君の気ままな異世界生活  作者: 幸村
第2章 浮遊島
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第26話 ファーマ君、魔法道具と武具を作る

題名の【ファーマ君、〇〇する】の〇〇を考えるのが難しい……

 成人の儀から戻った翌日からエミルとレオナとの朝の戦闘訓練は、いつもより激しいものになっている。エミルもレオナも昨日までより、かなり真剣に訓練に取り組んでいる。これまでも真剣に訓練はしていたのだけど、本気度が違う。やっぱり黒邪竜戦の事を引き摺っているようだ。


 近所の子供達とのドッジボールでも本気になり過ぎて、レオナがボールを当てられる事は殆ど無くなったたし、エミルもアウトになる回数が激減している。もう、遊びというよりは完全に攻撃を避ける訓練って感じだ。まあ、みんな楽しそうだから良いんだけどね。


 あまり思い詰めては欲しくないけど、強く成る事で2人が危険に晒される可能性が減るのは良い事だ。今のレオナを捕まえられるような冒険者は、そう多くないだろう。


 神術の訓練も順調だ。レオナの神力操作もだいぶ上手くなっているので神術を発動できる日も近いだろう。詠唱を覚えさせるという方法も考えたんだけど、詠唱術式はバランス派が神術を取得する為のモノらしいので、野生派の猫人族であるレオナには難しいようだ。因みに理論派の種族は術の成り立ちから理論的に解析して神術を覚えるらしいので、こちらもあまり詠唱術式には向いていないらしい。


 なので、エアリス様の助言通り、神力操作と天と地の属性神術のお手本をレオナにしっかりと見せて感覚を掴んでもらう時間を少し増やしてあげた。



 訓練後は、先日の採取で材料が集まったので本格的に魔法薬と魔法道具作りをする事になった。これまでにエミルと2人で時間を見付けては術式文字を解析しては成分分析に必要な術式の確立には成功している。成分分析魔法道具も一応は完成した。


「術式は発動するけど問題は大きさだね」


「これでも母国で私達が使っていた物の半分の大きさになっているのですが」


 問題は魔法道具の大きさ。前の世界の姉や妹が使っていた勉強机くらいの大きさなので持ち運ぶことが出来ない。因みに僕は家で勉強する暇は無かったので当然勉強机なんて与えられていなかった。


「持ち運び出来るくらいの大きさになれば採取に行った時に使えるんだけどなぁ」


「それほど小型のものが作れるならとても便利でしょうね」


「とりあえず、これでも成分分析は出来るからエミルは新ポーションの開発を進める?」


「良いのですか? 私も一緒に小型の成分分析魔法道具の研究をやった方が早く作れるのではないでしょうか?」


 エミルのいう事も最もなんだけど、同じものを2人で作るより使える物があるんだから分かれて研究した方が効率が良い気がする。小型化よりポーション開発の方が重要だと思うし。


「小型化は急ぐ事では無いからエミルはポーションの開発をしてくれると助かるよ」


「分かりました。では早速、開発に移ります」


 僕の今の知識ではあまりポーション作りの役には立たないのでエミルに任せるのが良いだろう。それは追々教わるとして、自分に出来る事からやろう。分析魔法道具はエミルの自室(現在ほぼ使っていない)に運んで、僕は小型化の構想を練る。


 小型化。これは術式をどれだけ小さな神鉱板に刻めるかが鍵なんだけど、そこはこれまでに鍛えた錬成と神眼で何とかなった。神眼のお陰で普通の人より視力はかなり良い。見ようと思えば顕微鏡が無くても倍率400倍くらいで見る事が出来る。錬成を使って1文字の大きさ0.1㎜、深さ1㎜で術式を彫り、10㎝×10㎝の神鉄板に延べ2万5千文字程の術式を刻み込む事は出来た。


 けど、ここまで凝縮してしまうと神鉄では術式発動に耐えられなかった。神銅は神鉄とあまり変わらないので実験せず、神銀を使って実験してみたのだけど神銀でも十数回ほどで術式基盤が壊れてしまう。これには参った。


 次の実験には魔金を使おうと思ったのだけど、作るには金が必要。でも、浮遊島では今の所金が採掘出来ないので、使えるのは僕達が持っているデザリア金貨だけ。


 これまでに結構な額を日那国のお金と両替してしまったので、手元には殆ど残っていない。


『と、いう事なので何か良い金属が欲しいんですけど、良い物ありませんか? 親方』


『……お…ぃ、六三郎。保管……庫、見せてや……れ』


 今日も神力枯渇でぶっ倒れている五平太さん。よく毎日ここまで気力がもつものだ。


『ファーマ殿、案内するでござるよ』


 六三郎さんに案内されて城の鉱石置き場に行き、鉱石を見せてもらうと


『これ、少し分けてもらっても良いですか?』


 なんとミスリル鉱石を発見。


碧鋼(あおかね)でござるか? そんな加工の難しい物で良ければいくら持って行っても良いでござるよ。使い道が無いでござるからな』


『えっ? これって魔法道具を作るには最適の金属ですよ? 僕が居た国だったら、これだけ(1㎏程)で半年は遊んで暮らせる程の値打ちがあるんですけど?』


 本当はアダマンタイトの方が媒体に適しているけど、ミスリルの方が加工は簡単なのだ。


 デザリアで買うと鉱石が1㎏1万デニールはする。日那国では結構な量採掘出来るらしいのだけど、刃が付きにくいので刃物には向かず、他の金属より加工が難しくて鍛冶加工できる人は五平太さんしか居ないなので、採掘場に放置される事が多いらしい。直ぐに国のお偉いさんに報告して今後採掘された物は全て持ち帰る事になった。


 本当に価値を知らないというのは恐ろしい。それを教えてあげたお礼と言われて、ミスリル鉱石10㎏を新右衛門さんに渡された。買うと言ったのだけど殆ど捨てていた物だからと半ば強制的に渡された。


 気前が良いにも程がある。10万デニールの価値の物をタダで貰うのは流石に気が引けるのだけど、あまり断り続けるのも良くないので代わりに成分分析魔法道具の術式を教える事にした。


 術式は知っていても神鉱に刻めなければ使う事は出来ないので、あとは職人さんの頑張り次第だ。


 早速、地属性神術と錬成を使ってミスリル鉱石から不純物を取り除き加工して、ミスリル板を作り術式を刻み込む。発動実験を繰り返し1000回の起動に成功。ミスリル基盤に不具合は生じていないので、とりあえず完成という事で良いだろう。


 術式基盤が完成したら偽木虫(トレント)の外殻を加工して作った外装を取り付け、竜の鱗から作った糸(竜糸)を繋げる。竜糸の反対側をトレントの外殻と浮遊島産の水晶を加工して作った眼鏡に取り付け、小型成分分析魔法道具(アナライザー)が完成したのだ。


 アナライザーは眼鏡で見たモノの成分を脳裏に映し出すことが出来る。脳内に成分の色や形が浮かび、どの程度そのモノに含まれているかを凡その割合が判断出来る。因みにどの成分がどういう効果を発揮するのかは実験を繰り返して調べなければいけない。


 そこはエミル達が今まで使っていた物と同じだけど、いつでもどこでも成分分析が可能だからかなり使い勝手は良い。


 余談ではあるけど術式の組み立ては【真理】の能力を使わずに自力でやっている。何故使わないのか、それは過程を楽しみたいからだ。能力が導き出した最善の答えだけを使って物を作るのなんてつまらない。


 まあ、欲に負けて作る過程を楽しまなかった事も2度ほどあるんだけどね……出来る限り【真理】には頼らず楽しもう。色んな組み合わせを自分で考えて作り出すのは大変だけど面白みがあるし、完成した時の喜びも半端ないのだ。


 閑話休題。


 アナライザー本体は少し大きめのポケットを服に付ける事で手に持つ必要は無くなる。起動はボタンを押すだけ。


 欠点はこのサイズの魔法道具に使える神結晶が小さくて長時間の使用が出来ないところぐらいか。一応3つの無属性神結晶を電池の様に並べて2時間は連続使用が可能になったのだけど、それを超えると神結晶が砕けてなくなってしまうので新しい神結晶を入れなくてはいけなくなる。


 無属性の神結晶は魔物からは滅多に採れず高価なので、なるべくそれは避けてほしいものだ。まあ、先日黒邪竜から採れた神結晶があるから予備は10個ほど作ったんだけど……それでも下手すると直ぐに無くなっちゃうから気を付けなければいけない。


 ここまで1か月掛ったけど良い物が出来た。


 レオナはその間、日那国の衛兵さんに師事して神力操作と神術のお勉強。予想はしていたけれど、僕達が教えるより同じ感覚派の竜人族が教える方が神力操作の上達が早いようだ。


 でも、竜人族の神力操作は豪快というか大雑把というか一気に引き出し一気に放射するというやり方なので、神力値の低いレオナが同じ要領で神術を使うとあっという間に神力枯渇になってしまう。出力や精密操作は僕達で教えないとダメだな。


 そして、僕達には教える事の出来ない獣化も教わっている。竜人族の竜化と猫人族の獣化は感覚としては同じらしいので、その感覚をしっかりと教わっていれば将来レオナも獣化出来るようになるとラグナムート様に教わった。ただし、獣化が出来るようになるのは、ある程度体が成長して大人の身体になってかららしいので、今は獣化の感覚だけを掴めるように教わっている。


 レオナは将来(ドラゴン)と1対1で戦って勝ちたいらしいので、ドラゴンより強い竜人族との訓練は明確な目標が見えて良い勉強になるだろう。毎日、その日の訓練について楽しそうに話してくれるレオナはとても可愛いな。


「エミル、これ付けてみて」


「ついに小型の成分分析魔法道具が完成したのですね」


 うん、やっぱりエミルには眼鏡が似合う。わざわざ眼鏡型にして良かった。


「凄いです。これならどこでも成分分析が出来ますね」


 エミルも喜んでくれているので頑張って良かった。


「レオナも付けてみる?」


「あぃ、付けるです」


 レオナにも付けてもらおうと思ったのだけど耳の位置が僕達と違うので眼鏡が掛けられない。仕方ないので手に持ったままスイッチを押して魔法道具の体感をしてもらった。


「凄いです。変なの沢山です」


 普通では見れないものが見えるのでとても楽しそうだ。レオナも使いたいというのならゴーグル型のも作ろうと思ったけど、1通り見て回ったら満足したようで「無くてだいじょぶです」と言われてしまった。


 それから更に1か月経ち。エミルは新ポーションを完成させ、レオナはまだデザリアの初級魔法程度の精度だけど天属性神術(雷)の発動に成功した。


 エミルの作った新ポーションは効果的にはデザリアで売っているポーションの最高級品よりも優れている。指程度の部位欠損なら治せる程効果の高い物だ。完成品を指が無くなった竜人族の人に飲んでもらって効果は実証済み。


 因みにこのポーションの性能試験には動物実験等は行っていない。実験に使ったのは僕達の皮膚や血液だ。採れたての皮膚や血液にポーションを数滴垂らして反応を見るという方法をエアリス様に教わったので、その方法でエミルが実験して作った物を僕が神眼で鑑定して効能を確認している。


 より精度の高い実験を指定のであれば、人体の一部(血液、皮膚、毛髪等)を材料にしてホムンクルスという疑似人体を作成して実験をする方法がある。この技術は世界崩壊以前の文明が作り出したもので、現代の人界には文献すら残っていないらしい。


 ホムンクルスは、迷宮生物と同じで魂は宿っておらず核を入れない限り動く事も無いし、7日程度で塵になって消えるらしい。核さえ入れておけば致死性のダメージでも受けない限り、核に神力を供給していれば何年でも活動は可能。


 ホムンクルスには意思や感情という物はない。核を入れておけば知識の集積と多少の行動判断は出来るけど、人が指示をしない限り自らの意思で何かをやることは無い。核が無ければ人形と同じだ。


 でも、1度だけ完成品を見せてもらった、毛のない赤子サイズのホムンクルス(エアリス様が創造で作った)は見た目が完全に人なので、これを実験に使うのは罪悪感が酷く、あまり使おうとは思えない。(エミルも同意見。だけど作り方を記した本は貰った)


 そして、生命力値回復させられる成分も発見し、生命力回復薬(ライフポーション)も作れる日は近いという事だ。


 ライフポーションが完成すれば並みの人間なら、新ヒーリングポーションと合わせて飲めば大抵の怪我(致命傷でも)は治療は可能だろう。流石にお腹に大きな穴が開いたり、心臓を抉り取られたり、首を切断されたり、したら助けようもないけど、心臓を刺された程度なら助けることが出来る筈。


 とりあえず部位が繋がって生きてさえいれば何とかなりそうな性能だ。試すわけにはいかないけど……


 エミルの努力のたまものだな。寝る間も惜しんで自室に籠って実験していたし、かなり大変だったと思う。


 僕はアナライザー完成後、エミルが新ポーションを作っている間に、エミルとレオナの武器と防具作りをした。黒邪竜の鱗から作り出した竜布と水竜の鱗を加工して作った竜板を使い、とても軽くて丈夫な防具が完成した。


 今の所、竜鱗の加工は僕の錬成じゃないと出来ないのだけど、誰にでも竜布が作れる技術を考えないといけないな。そういえばデザリアでは竜の素材は使い道が多いってモンロウさんが言っていたし、加工技術があるのかも知れないな。


 作った防具は━━


 頭は頬まで隠れる厚手の兜(レオナの兜は耳を出す穴付き)、体は襟を高くして首から股下辺りまで守れる竜布の鎧。どちらも竜板が入っているので針の様な細いものでの刺突攻撃でも貫くことは出来ない(隙間を狙われると流石に刺さるけど)。


 腕は指が出せる籠手を作り手の甲から肘まで守れる。これにも竜板を入れているので盾の代わりにして攻撃を受け流す事も可能。足は膝まで守れるように前方を少し長くしたロングブーツ型、これも関節部分の可動を邪魔しない様に竜板を入れてある。


 竜布は厚みを持たせる事で衝撃を吸収、分散させられ、元が竜鱗なので熱、冷気、電撃に対する耐性が高く、僕のサバイバルナイフでも簡単に切れない。繊維なので鉄砲で撃たれても防弾チョッキの様に防いでくれる。欠点と言えば針の様な細い物で刺突されると突き抜けてしまうことくらいだけど、そこは竜板で補強してあるので急所を突かれる事は無い。


 竜板は竜人族が本気で殴っても(単発なら)割れないし、竹の様にしなるから曲げても折れにくい(竜人族ぐらいの腕力がないと折れないだろう)。


 二の腕と太ももは今回作った防具では守れないけど、下に聖天布の服を着ていれば打撃以外の攻撃は防げるので問題は無いだろう。


 竜布の防具には伸縮性があるので、ある程度なら体型が変わっても(体が成長しても)使い続けられるし、元が黒邪竜の素材なので多少の邪属性耐性があるのも優れた所だ。


 そして武器、エミルには竜鱗の繊維と竜の骨を組み合わせた弓を作った。


 この弓は腕力で引こうとしても大人の竜人族ぐらいの力が無いと引くことは出来ないけど、竜鱗の繊維の面白い特徴で、神力を込める事で自分の意思でしならせる事が出来る。


 腕力だけで引くのではなく9割は神力で引くので、纏矢との相性も凄く良い。試しにエミルに纏矢を撃ってもらったら普通の矢で厚さ1m程の石板に反対側が見える程の穴が開いた。(同時に矢も壊れたけど)


 最初は扱いに苦労するかな? と、思っていたのだけどエミルの神力操作と弓の技術は僕の想像を超えて高く「少し癖は強いですが良い弓ですね」と、最初から苦も無く使えていた。(威力には驚いていたけど)


 流石に竜板は貫けなかったけど、矢の方を改良ずれは竜にも効くようになるだろう。


 レオナの武器は以前レオナが狩った極彩ポッポゥから採れた天結晶を使ったスタンガンのような物。腕に取り付けるタイプで先が針の様になっていて手首を返すと飛び出す。天属性の神術を使うと威力が増す術式になっていて、天属性神術を覚えたばかりのレオナの神術でも実戦で使える威力は出せるようになるだろう。


 レオナが成長して爪や神術が攻撃手段として使えるようになればお蔵入りになる程度の物だけど、それまでの繋ぎに使ってもらう。


 2人とも気に入ってくれたらしく、とても喜んでくれたので作って良かった。


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