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ファーマ君の気ままな異世界生活  作者: 幸村
第2章 浮遊島
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第21話 ファーマ君、家を貰う

 狩りから戻ると、何故か町の門の辺りに人だかりが出来ていた。


『ファーマ殿ぉ!』


 僕達目掛けて新右衛門さんが全力で走ってくる。


『どうしたんですか? そんなに慌てて』


『『どうしたんですか?』ではござらんよ。護衛も付けずに町の外に出ては危ないでござるよ? 本当に心配したでござる』


 竜人族に匹敵する強さだと教えていたのに、そんなに心配しなくても良いのでは? とは思ったけど、まあ、子供が3人で町の外に出たら心配もするよね。悪い事しちゃったな。


 後で聞いた話、出かける時に声を掛けた女中さんと門を通してくれた衛兵さんは滅茶苦茶怒られたらしい。本当に申し訳ない。


「ご心配おかけして、申し訳ありません。お詫びに、狩ってきた獣を使って皆さんにごちそうさせてください」


 どうやら捜索隊を組んで、まさに今から出て行くところだったようだ。集まってくれた人達にお詫びをしなくては。


 お城に戻り、庭に収納魔法道具(ブレスレット)から狩ってきた獲物を並べていく。


 今日の成果は火猿3頭(持ち帰れたのは2頭)、雷牙(虎柄の大狼)4頭、穴混蛇(アナコンダ)2匹、擬木虫(トレント)(木に擬態した昆虫)4匹、一角穴兎(スビット)(土竜叩きの様に穴から飛び出す角兎)5羽、大王鳥(キンチョウ)(始祖鳥のような鳥、蚊取り線香か!と突っ込みそうになった)3羽、断岩豚(スマッシャ)(おでこに鋭い刃の様な角のある豚)2頭。


 中々の成果だ。


 今日戦った魔物は殆どが何かしらの神術系の攻撃をしてきた。火猿は自爆してきたし、雷牙は電気ウナギの様にこちらの攻撃が当たったと同時に放電してきて痺れた、穴混蛇は混乱(幻覚)攻撃、一角穴兎は光魔法スオルキのような聖属性のステータスアップを使い加速してきた、大王鳥は空気弾を飛ばして攻撃してきたこれは放つ瞬間空気が揺らめくので何とか回避できたけど空気弾自体は見えないので結構面倒だった。


 そういった攻撃が無かったのは擬木虫と断岩豚だけ、擬木虫は見ためは只の樹にしか見えないほど高度な擬態をしていたのだけど、レオナの索敵能力が高かったので、こちらが先に気が付き不意打ちで攻撃したのでかなり楽だった。まあ、不意打ちされるのには慣れていないんだろう。擬木虫の1番面倒な所は枝葉に擬態している部分に付いている実のような部位。とても美味しそうな匂いがして食欲をそそるのだけど、致死性の猛毒の塊だ。倒した後に罠が待っているというのは恐ろしいよね。


 断岩豚は筋力値が高く攻撃を受ければ危なかったのかも知れないけど猪突猛進なので当たらないように気を付けてさえいれば楽な相手だった。ただ、名前通り角で岩を真っ二つにしていたので油断は出来なかった。


 多少危ない場面もあったけど、久しぶりに思いっきり体を動かしてエミルもレオナもすっきりした顔をしている。うん、良い狩りだった。


『これ全部今日倒したのでござるか?』


『はい』


『これは驚いたでござるな。擬木虫は不意打ちで毒の実を飛ばして食べさせてくるでござるから、竜人族でもやられる事がある強敵でござるよ。よく無事でござったな』


『いやはや、流石は神託の御子殿でござるな』


 神託の御子……暇つぶしに呼ばれたので、そんなたいそうなものではないのだけど、気の毒過ぎて本当の事は言えない。


 毒の実を飛ばしてくるというのは知らなかったけど、擬木虫(トレント)は不意打ちさえ気を付けていればそれほど苦労しないと思う。確かに殻は硬いけど殻を避けて隙間から攻撃すればレオナの爪でも簡単に切り裂けるし動きもそれほど速くない。エミルなんか擬態しているトレントの眼に矢を撃ち込んで1撃で仕留めたし。


『ファーマ殿、この獣は良かったら加工屋に加工させてお渡しするでござるよ。肉は直ぐには食べきれないでござろうからファーマ殿に作ってもらった冷蔵庫に保管してファーマ殿達が食べたい時に言ってもらえばいつでも料理するでござる』


『いえいえ、ご心配をおかけしたお詫びに食べられる物は今から皆さんに振舞います。神結晶は魔法道具の試作品作りで使うとして、他のものは日那国で使ってください。僕達は装備も生活に必要な物も揃っていますから、加工する時に見学だけさせてもらえれば良いです』


 皮や骨の加工は見た事ないから勉強になる。


『それはダメでござる。これを狩ってきたのはファーマ達なのでござるから、権利はファーマ殿達にあるでござる』


『いえ、ここに来てから宿泊や食事でお世話になっているので、その代金だと思って受け取ってください』


『いやいや、そういう訳にはいかんでござるよ』


 と、少し押し問答になり、とりあえず折衷案で肉は、今日ここで野外調理して捜索に集まってくれた人達に食べてもらい、残りはお城で働いている人達の食事に使う。神結晶は魔法道具の試作品作りに使い共有する。その他の素材は加工賃分を職人さんに渡し、残りは使えそうな素材を残し販売。売れた物の代金は半分を新右衛門さん(日那国)に納めて残りの半分は僕達が貰う事になった。


 城の庭で僕達の捜索に集まってくれた人達にBBQ形式で肉を振舞い(調理したのはお城の料理人さん。手伝おうとしたら断られた)、残りはお城で働いている人達の賄いで使ってもらい、沢山の人からお礼の言葉を貰った。特に喜ばれたのは穴混蛇と断岩豚、これは蒲焼と丸焼きになったのだけど、今日採れた獲物の中では日那国の人達の口に1番合うものだったらしく皆さん美味しそうに食べてくれた。




 それから20日ほど経った。その間、5日に1度くらいのペースでエミルとレオナを連れて狩りに出かける。当然、もう心配はかけられないのでちゃんと護衛の大人に護衛で付いてきてもらっている。実際には護衛の必要なかったけど、一応危険区域もあるので色々とアドバイスも貰えて有難かった。


 日那国の人達は強い人が好きらしく、僕達は護衛に付いてきてくれた人達と仲良くなることが出来た。ドラグナの戦闘も見せてもらったのだけど、基本的にパワーで押し切る戦闘なので参考にはならなかった。まさに強者の戦い方って感じ。


 そして、ついに建設中だった僕達が日那国滞在中に生活する為の家が完成した。


 家は瓦屋根の木造平屋で、10畳ほどの個室が3部屋に25畳ほどの居間、15畳ほどの台所、広いお風呂に広いトイレ(ポットン上蓋式)。襖や障子で仕切られていて全室畳、台所は土間。竜人族サイズなので僕達には広すぎる豪邸が出来上がっていて驚いた。


『ポークン10頭でこんな豪邸、本当に貰っても大丈夫なんですか?』


『豪邸という程立派なモノではござらんよ。この国では一般的な造りの家でござるからな。それに保雄君(ぽおくん)だけでなく術式の書も貰ったでござるし、ファーマ殿達が狩ってきた獣の素材や肉も沢山頂いたでござるし、冷蔵庫や収納庫も作ってもらったでござる。この程度の家ではその価値に見合わぬでござるよ』


 いやいやいや、この豪邸がたったあれだけの品で貰えるなんてわらしべ長者くらいだよ? そもそも魔法道具の材料費は全て日那国の経費から出ている訳だし、術式の書はラグナムート様に貰った術式本を翻訳しただけ、獣の素材も僕達が勝手に採ってきた物を買い取ってもらっている。はっきり言って貰い過ぎだ。


『必要であれば世話人も付けるでござるよ』


『いえ、そこまでやってもらうと本当に申し訳ないので、自分達の事は自分達でやります』


 お世話係なんて貴族や富豪じゃないのだから必要ない。というか落ち着かないので丁重にお断りした。


『ファーマ殿に1つやっていただきたい事があるのでござるが、聞いてもらえるでござるか?』


『はい、僕に出来る事ならなんでも言ってください』


『この国では新しく家を建てた者は近所の者に世話になるという事で餅撒きという屋根の上から餅や金銭をばら撒いて挨拶をする慣わしがあるのでござる。それをファーマ殿にやってもらいたいのでござるが構わぬでござるか?』


 おおっ、前の世界にもあるって聞いた事があるな。たしか建前とかいって家の骨組みが出来た時にお餅を配る夢のような催し事。日那国にも同じような風習があるんだな。それは是非やりたい。


『喜んで、やらせてもらいます。どれくらいの量配ったら良いですか?』


『それは個人の裁量でござるが、だいたい普通の家でこの程度でござるな』


 と、紙に一般的に餅撒きで配る餅の量や福餅に入れるお金の金額などを書いてくれた。


『じゃあ、僕はこれより少し多めに配りたいと思います。暫くお世話になる新参者ですし、皆さんに顔を覚えてもらいたいので』


『直ぐに用意させるでござるよ』


 とりあえず、一般的な量の2倍ほどの餅と福餅(餅の中にお金を忍ばせたモノ)を配る事にして、準備してもらった。勿論かかった経費はデザリア小金貨でお支払いした。


 翌日、僕とエミルとレオナは家の屋根に上に特設された矢倉に上がり用意してもらった餅桶を抱え━━


『今日からここに住む事になったファーマです。仲間のエミルとレオナ共々宜しくお願いします』


 ━━大声で家をぐるりと取り囲んでいるご近所さんに挨拶をすると、皆さん大盛り上がりで歓声が沸く。


『宜しくお願いします』


 と挨拶しながら餅を撒く。エミルとレオナも僕を真似て日那国語で同じように大声で挨拶しながら餅を撒いた。


 福餅の中に4つだけ特別な福餅を混ぜた。中に入っているのはデザリア小金貨。デザリア金貨に比べると大分小さいけどこれも純金なので喜ばれるだろうと思って混ぜたのだけど、それを知っている少数の人(お城で働いているそれなりに偉い人)は目の色を変えて福餅を取りに行く。因みに福餅が入っている袋は普通の餅と色が違うので1目で解る。


 の、だけど。こういう時の主婦の気迫は凄まじく、福餅は全て主婦の手の中に納まったようだ。


 福餅の時だけは戦かと思うぐらい激しい戦いが繰り広げられていた。日那国には100年に1度、一族の長を決める大会があるらしいのだけど上位100人は全て男性だという。だけど、福餅争奪戦で勝利したのは全て女性(主婦)。こういう時の主婦は新右衛門さんより強いかも知れないと誰かが言ったとか言わないとか。


 餅撒きは大盛況のうちに終わり、僕達は日那国の一般の人達にも受け入れてもらえたようだ。


 餅撒きが終わると、今度は新右衛門さん、新九郎さん、妃美華さんを始めとする身近な人達と、家の居間で宴会が始まった。


 僕達を含め合計15人が所狭しと居間に座り、お城から来た料理人さん達が作った食事やお米で作ったお酒が食べきれるのか心配なほど用意される。


 これは新右衛門さんからの新築祝いという事で用意してもらったもので、材料費は受け取ってもらえなかった。


 宴会が始まり暫くして、この日、生まれて初めてお酒を飲んだエミルはあっという間に酔っ払い、やたらと甘えん坊になった。


「ファーマしゃまぁ、らいふきでふぅひじゃまきゅらひてくらはい~」


 呂律が回らずちゃんとじゃべれていないようだけど、言っている事は理解できたので、膝枕してあげて頭を撫でてあげると嬉しそうに僕のお腹の辺りに顔を埋めて腰のあたりをギュッと抱きしめてきた。


「飲み過ぎると後で大変らしいからほどほどにね」


「かしゅこまりまひたぁ」


 甘えん坊エミルは普段とのギャップの所為か、とんでもなく可愛い。今後、僕の癒しの為にも定期的にお酒を飲んでもらおう。


「エミル、ズルい。レオナもするです」


「らめれふ、ここぁわらひひぇんようれふ、ろふろうへきれふ」


 僕の膝の上でゴロゴロ甘えているエミルを揺って代れと催促するレオナだったけど、酔っ払いに話は通じない。エミルは代わる気はないようだ。


「レオナには後でやってあげるから今はエミルの好きにさせてあげて良い?」


「あぃ、約束です」


 指切りで約束してあげるとレオナは嬉しそうにして食事に戻った。僕達がこんなやり取りをしている間に大人は全員すっかり酔っ払いになったようで、妙な踊りを踊る人や歌う人、説教を始める人、泣く人、笑う人で、もう訳の分からない事になっている。


 宴会というのはこういうのが普通なのか? それとも日那国の人達の宴会がこういうものなのかは分からないのだけど、とりあえず楽しそうなので良かった。


『ファーマ殿ぉ、飲んでいるでござるかぁ?』


『僕はまだ子供なのでお酒は飲めませんよ?』


『だぁいじょうぶでござる。少しくらい飲んでも問題ないでござるよ』


 7才の子供にお酒を進めるのは如何なものか? 新右衛門さんだいぶ判断力が低下しているようだ。


『ファーマ殿ぉ、私にも色々教えてくださいぃ。新ちゃんばかり相手してずるいですぅ』


 新右衛門さんを押しのけて今度は妃美華さんが僕の所へ。地が出ると妃美華さんは新右衛門さんの事を新ちゃんと呼ぶのか。幼馴染だって言ってたし、あだ名で呼び合うのも分かるけど、新ちゃんは違和感あるな。


『坊主、俺んとこはぁ、今度いつ来るんでい。おめぁ見どころあんだから毎日顔ださねぇか』


 と、五平太さんまで寄ってきた。殆ど毎日顔出しているんだけど酔うと忘れるのだろうか?


『ファーマ殿、拙者はやるでござるよ。今までの誰よりも奥地に行って希少品を持って帰るでござる』


 次に来たのは新九郎さん。成人の儀なんて余裕みたいな事を言っていたけど、やはり気負っているようだ。それにしても、この国では未成年でもお酒を飲んで良いのだろうか? まあ、もう500才だから良いのかも知れないな。



 ━━宴会は翌朝の日の出近くまで続き、エミルはそのまま僕の膝で就寝、レオナは僕の背中に寄りかかって就寝、日那国の人達は途中から料理人さん達も宴会に混ざり全員が酔い潰れたようで、あちらこちらに寝転がって就寝、僕は寝なくても平気な体質なので最後の1人が寝た後も宴会の余韻を楽しんだ。


 案の定、お酒を飲んだ人達は二日酔いというのになったらしく、起きた側から頭を抱えて辛そうにしている。カナイ村の時と同じく、僕は浄化神術で全員の二日酔いを治してあげて感謝されたのは言うまでもない。


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