表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ファーマ君の気ままな異世界生活  作者: 幸村
第2章 浮遊島
41/114

第18話 ファーマ君、日那国を観光する

 日那城(お城の名前)に来て2日目。今日は新右衛門さんの弟の新九郎(しんくろう)さん(500才)に案内してもらい城下町の見学に来ている。兄弟にしては年が離れすぎていると思ったんだけど、竜人族は長寿の所為か子供が出来にくいらしく、これくらいの年の差兄弟は普通らしい。


新右衛門さんや妃美華さんは、それぞれのお役目(仕事)がある為、日那国にいる間は新九郎さんが僕達のお世話をしてくれる事になった。お世話とは言っても僕達と日那国の人達が打ち解けやすいように仲を取り持ってくれる役目で、自分達の事はちゃんと自分達でやっている(食事の用意以外)。


 新九郎さんは成人前で姓は無く今はただの新九郎さんなのだ。成人の儀を乗り越えると1人前と認められ国主が姓を与える仕来りなんだとか。500才で成人前というのは驚きだ。まあ、1万年生きる種族だから成人年齢も高いのだろう。


 竜人族は竜化という竜に近い姿に変身する能力を覚える(使えるようになる)のが500才になる前くらいなので成人の儀を受けられるのは500才からになっているらしく、新九郎さんはもう直ぐ行われる成人の儀に向けてかなり気合が入っていると、話してくれた。


『そんな大事な儀式の前に僕達のお世話なんかしていて大丈夫なんですか? 迷惑なら遠慮なくいってくださいね』


『はっはっはっ、なんの問題もないでござるよ。拙者は兄上ほどではないでござるが、そこそこ強いでござる。成人の儀くらい楽にこなしてみせるでござるよ』


 それなら良かった。それにしても成人の儀って強さが関係するのか? 何をやるんだろう?


『成人の儀ってどんなことをするんですか?』


『難しい事はしないでござるよ。御山の向こう側にある竜の領域の地竜の森を通って天竜の山へ行き、何か1つ持って帰るだけでござる。理想は竜の卵でござるな』


『卵を盗ったりしたら親が襲ってきませんか?』


『親のいない卵を持って帰るでござるよ』


 親のいない卵? よく分からないので詳しく聞いてみると、竜の領域天竜、地竜、水竜の3種の縄張り争いが日々続いているらしい。親は卵を育てている時にもお腹が空けば当然、獲物を取りに行く。その先で戦闘行為を行い戻って来ない親竜が結構いるらしく、その親を亡くした竜の卵を持って帰って育てる文化が日那国にはあり(新右衛門さんが作った)、その内の天竜は騎竜になり天竜以外の地竜と水竜は飛べないので農耕用になるらしい。農耕馬ならぬ農耕竜か、豪快だな。


 因みに親を亡くした卵を見分けるコツは、卵の埃の被り具合を見るらしい。埃が被る程放置されている卵は大丈夫なのか? と、思ったら、半分以上は孵らず腐ってしまうらしい。やっぱり、竜の卵も温めは必要なんだな。



「ファーマ様、あれなにですか?」


 新九郎さんと話しながら歩いていると、レオナが通り沿いの茶屋らしきところで食べている人、いや、人が食べている団子を指さして訪ねて来た。


「あれはたぶん団子っていう食べ物だよ」


 串に3つ刺さっている団子は1つ1つが餅くらいの大きさだ。竜人族(ドラグーン)はみんな体が大きいからあれが普通サイズなんだろうけど、僕達があれを1串食べたらそれだけでお腹いっぱいになりそうだ。


「食べてみる?」


「あぃ、食べるです」


「エミルも食べるよね」


「宜しいのですか?」


 エミルも団子には、興味深々の様だ。特に餡子の乗った団子に視線が釘付けになっているので昨日のお饅頭を思い出しているのだろう。


『新九郎さん、そこのお店に寄っても良いですか?』


『茶屋でござるか。問題ないでござるよ』


 4人で〝フジノチャヤ〟という名前の茶屋に立ち寄り、店の外の複数人が座れる腰掛に座ろうと思ったら腰掛が高くて座れない。日那国の物は全て人間が使っている物の倍以上の大きさがあるから少し不便だ。お行儀は悪いけど仕方ないので僕達は腰掛の上に飛び乗った。


『いらっしゃい、こちら品帳になります』


 腰掛に座ると直ぐに黄色い着物を着た女性店員さんが御品書きを持ってきてくれた。けど、流石に文字まで日本と同じではないので読めない。新九郎さんに内容を教えてもらって注文をした。


『僕達は3人であの餡子の乗った串を1本と甘茶というお茶を1つずつ貰えますか?』


 名前の通り甘みのあるお茶らしい。他にも渋茶と苦茶というのがあったけど甘茶が1番飲み易そうだ。


『拙者は黒糖団子を2本と渋茶を1杯頼むでござる』


『はーい、直ぐにお持ちしまする』


 注文を受けた店員さんは明るく返事をして店の奥に入って行き、暫くして注文した品を持ってきて僕達の腰元に置いて行った。どうやら団子1串の意味を理解してくれていたようで、僕達3人に1個ずつ団子を分けてお皿に乗せて持ってきてくれた。お茶も竜人族の大人が使っているジョッキサイズの湯飲みではなく小さめの物を持ってきてくれた。


 それでも僕達からすれば大きいのだけど、かなり気遣いの行き届いた良い店だ。


 新九郎さんが頼んだ団子も運ばれて来た。黒糖団子は茶色い団子で、団子に黒糖木という植物の搾り汁を練り込んだ団子だ。この国には糖木という木があるらしく、この木の汁を天日で乾燥させて水分を無くすと砂糖が採れるらしい。


 糖木には黒糖木と白糖木と赤糖木の3種類があり、黒糖木から採れる砂糖は黒糖と言って少し苦みと酷があり大人向け、白糖木から採れる砂糖は白糖と言って甘味が強く子供向け、赤糖木から採れる砂糖は甘酸っぱく暑い時期に喜ばれる砂糖なんだそうな。


 団子はお米の粉を練って丸めた物を蒸し器(蒸籠のような物)で蒸して作るらしい。お餅ではないけど、もちもち食感で餡子との相性もばっちり。とても美味しかった。


 新九郎さんにお願いして黒糖団子を少し切って食べさせてもらったけど、ほんのり苦みのある甘さ控えめの団子だった。餡子の乗った団子も美味しいけどこれも悪くない。グラダでもかなり多くの発見があったけど文化が変わるとまた新しい発見があって楽しい。もっといろんな国の色んなものを見て、色んなものを食べたいな。


 と、お茶を啜りながら団子の余韻に浸っていると、隣の席に居た男性がお金も払わず、そっと席を立ってキョロキョロしながら立ち去ろうとしていた。食い逃げか? なんて思っていたら本当に食い逃げだったようで突然走り出した。


 と思った瞬間、男性が宙を舞っている。


『うちで食い逃げしようたぁ、いい度胸だねぇ?』


 強く地面に背中を打ち付けた男性の腹部を踏みつけ見下ろしていたのは、さっきまで僕達の接客をしていた愛想の良い店員さん。いつの間にあそこに移動したんだろう?


『ち、違うんだ。財布を忘れたから取りに帰ろうとしただけなんだ』


『そんな言い訳が通ると思ってんのかい!? このお菊さんを舐めんじゃないよ!』


 踏みつけられて苦しそうに言い訳をしている男性にド迫力の啖呵を切っているお菊さん(本名、雛菊(ひなぎく)さん)。さっきまでの愛想の良いお姉さんと同一人物とは思えない……姐さんって感じだな。


 食い逃げ犯はお菊さんに足腰立たないほど拳を叩き込まれ店の奥へと引き摺っていかれた。戻って来たお菊さんは般若のような形相から一転、菩薩のような笑顔で接客していたけど黄色の着物に付いた赤い点のようなシミが生々しく惨状を物語る。食い逃げさんが裏でどうなったのかは聞けない。


 クイニゲ、ダメ、ゼッタイ……



 お腹も膨らみ、フジノチャヤを後にする。支払いは新右衛門さんに両替してもらった日那国のお金を持っている。このお金は最初、新右衛門さんが僕にくれると言ってくれたのだけど、家まで建ててもらっているのにこれ以上貰ってしまったら対等でいられないので、僕の持っているデザリア硬貨と交換してもらう事にした。金額はだいたいの価値に合わせて交換してある。

 

 この国のお金の単位はリン、昨日のすり合わせの結果10リンが1デニールくらいの価値になる事が解った。硬貨は鈺鉱(ぎょっこう)というこの浮遊島で採れる、くすんだ青い金属で作られている。デザリアにいた頃には見た事のない金属なのでデザリアでは採れない鉱物なのかも知れない。


 硬貨の種類は1リン、5リン、10リン、50リン、100リン、500リン、1000リンの7種類で、単位が大きくなるほど硬貨も大きくなり、それぞれ別の絵柄になっている。


 両替はとりあえず5千デニール分してもらい。こちらは金貨5枚を渡し、貰う分は使い易いように適度に分けてもらった。この浮遊島では金鉱脈が見つかってないらしいのでデザリアの純金硬貨はかなり喜んでもらえ、お互いに良い取引になった。


 茶屋の次は服屋、鍛冶屋、木工屋、小物屋、等、色んな店を回って商品や工房を見せてもらった。文化交流するにも相手の国の文化を知らないと、こっちが教えられる事も分からないからね。


 茶屋の次に行った服屋で僕達は、この国の服を買い着替える事にした。和服だらけの中に洋服の人が歩いていたら目立ってしょうがないし、和服をエミルとレオナに着せてみたいと思ったから。


「エミルはこの青いのかこっちの黄色いのが似合いそうだよね」


「そうですか? ではこちらの黄色のにします」


「レオナはこの赤いのとか可愛いと思うんだけど?」


「あぃ、これ着るです」


 2人とも僕の選んだ浴衣で本当に良かったんだろうか? 気に入ったのがあったら遠慮なく言ってほしいんだけど、どうもこういうところであまり好みを言わないんだよね。


 僕は紺色の羽織袴を選んだ。この国では浴衣は子供か女性が着るもので僕が着ると間違いなく女の子に間違えられるからだ。サイズ的には子供用の物が丁度良い大きさなので既製品で問題なかった。竜人族も子供(赤子)の大きさは人間とそう変わらないらしい。ただ、成長が遅く成人と呼べる身体に成長するまで500年近くかかるのだ。


「2人ともよく似合ってるね」


 エミルとレオナの浴衣姿も良いものだ。とても可愛い。


「そ、そうですか? 初めて着る服なのでよく解りませんが」


「うん、凄く綺麗だよ」


 褒めてあげるとエミルは照れ臭そうに俯いて目を泳がせている。


「レオナも可愛いね」


「これ、動く難しいです」


 レオナは可愛いとか褒められてもあまり喜ばない。強くなったねと言ってあげると凄く喜んでくれるんだけど、女の子としてそれはどうなんだろうか? 浴衣は僕の勧めで着たのだけど、かなり窮屈そうだ。でも、下駄は気に入ったようで歩くたびにカランコロン音が鳴るのが楽しそうだ。けど━━


「レオナ、そんなに裾を持ち上げちゃダメだよ。下着が見えちゃうからね」


「あぃ……でも、歩くないです」


 注意されるととても悲しそうな顔でしょんぼりするレオナ。


 小股で歩くのは慣れないかも知れないけど、歩き難いからといって、浴衣の裾をパンツが見える程たくし上げるのはダメだよ。女の子なんだからもう少し羞恥心を持とうね。



 夕方近くまで街を見て回って分かった事は、この国は昔の日本と似たような文化で洋風の物がない。水道は無く川から水車と用水路を使い、水を引いて生活用水にしている。たまに水辺の小型危険生物が水車に掬われて流れてくる事があるので要注意らしい(スライムみたいなのとかピラニアみたいなのとか色々)。明かりは松明や灯篭や提灯で、灯篭や提灯の火は蝋燭ではなく植物由来の油に紐を浸けアルコールランプの要領で火を灯している。


 移動は基本徒歩、遠出をする時は騎竜(天雷竜)に乗り、荷運びは地竜と呼ばれるトリケラトプスの角が長くなったような竜が大きなリヤカーを引いている。農場の方を見に行くと溜池(僕から見れば湖)にプレシオサウルスを怖くして角を生やした様な顔の水竜が数匹いて、稲作の時期に水田に水を供給する役割をしたり畑に水を撒いたりしている。どの竜も雑食でなんでも食べるけど肉や魚が好物らしい。(川から流れて来た危険生物も竜にとっては餌になるらしい)


 因みに地竜と呼ばれている竜は鑑定すると地角竜(ガイホーン)、水竜は水氷竜(スプラドン)という種だった。どちらも天雷竜に匹敵するステータスで、天雷竜は瞬発力、角地竜は筋力、水氷竜は神力が高い傾向にあるようだ。飼われている竜の割合は天雷竜<地角竜<水氷竜という感じで、やはり騎竜に使う天雷竜が1番多いようだ。


 そして、神術。日那国では仙術と呼ばれているけど、これはある程度の年齢になると勝手に使えるようになると言っていた。聖界で教わった通り竜人族は本能的に習得するんだな。しかし、錬成や錬金等の無属性神術は聞いた事もないらしい。


 無属性の適性を持っている人がいないのかな? と、思ったのだけどどうやらそうではないらしい。今日会った人を神眼で鑑定したところ、何人かは無属性の適性も持っている。


 魔法道具や術式魔法みたいなモノも無いらしい。まあ、術式や魔法道具なんかは、ここ数百年くらいで世界に広まった技術らしいので2000年以上地上の国と交流の無かった日那国に広まっていないのは仕方ないだろう。


 さて、まだ国内全部見て回った訳ではないけど、ある程度は僕が教えられる事もありそうだ。薬学はエミルにこの国の薬師さんと交流してもらってお互いに新しい発見が出来れば良いな。


 まずは、エミルとレオナにも日那国語を使えるようになってもらわなきゃいけないな。大変だとは思うけど四六時中僕が一緒に居る訳ではないので覚えておかないと生活に苦労するからね。


次回更新は10/25になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ