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ファーマ君の気ままな異世界生活  作者: 幸村
第2章 浮遊島
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第17話 ファーマ君、日那国へ行く

「お疲れ様ですファーマ様」


「ファーマ様、ご飯食べるです」


 ラグナムート様の指導を受ける事10時間。今日の授業? を終え、テーブルの置いてある部屋に移動すると、丁度エミルとレオナも今日の授業? を終えたところらしく、テーブルに食事を並べて待っていた。(食事を用意してくれたのはエアリス様だ)


「ラグナー、明日はレオナに神力操作教えてやってよ。レオナは感覚派だから僕が教えても覚えられないんだよ。ラグナは感覚で教えるの得意でしょ」


「ふむ、構わぬぞ。ならばファーマはエアリスに教わると良い。創造、神眼、真理の基礎はだいたい教え終わった。あとは修練あるのみだからな」


 明日からはエアリス様と勉強か。今度はどんなことを教えてもらえるのか楽しみだ。


 食事が終わって一夜明け。エミルと一緒にエアリス様の指導を受ける。レオナ達のいる部屋からはレオナとラグナムート様の「うおーっ!」って叫んでいる声が聞こえて来た。


 神力操作を教わるのにどうして叫ぶ必要があるんだろう? どんな修行をしているのかちょっと気になるな。あとでレオナに聞いてみよう。


 で、後から聞いたけど「お腹の真ん中からぐわーってなってうおーってしたです」とよく解らない答えが返って来た。


 でも、僕が教えても神力操作出来なかったのに、この短時間で自然に体から流れる神力が微量だけどレオナの意思に合わせて動いていたから凄い。流石はラグナムート様。


 後から教わった話。猫人族、狼人族、竜人族は感覚派、野生の獣に近い種族らしく理論で理解するのが苦手なんだそうな。代わりに本能的に自分のチカラを把握出来るらしく、鑑定神術で調べたりしなくても成長と共に自分の使える属性が解るようになるらしい。神術も親や仲間が使っているのを見て自然に使えるようになるんだとか。ただし、レオナのように親や仲間から離れてしまうと、手本にする相手がいなくなるため使い方を覚えるのが難しくなるらしい。


 なので、種族的差異があっても僕やエミルが神術を使ってるところを多く見せてあげるのがレオナが神術を覚える近道になるらしい。これまでは狩りで神術を使う事は少なかったけど、これからはレオナが持っている属性を中心に神術も使って狩りをしよう。


 因みに妖精族、魚人族は感覚や本能的な所が弱く物事を理論で理解する理論派。人間族、鬼人族は理論と感覚の両方で物事を理解するバランス派。


 感覚派の種族は肉体が強く、理論派は神力量が多い傾向にあるんだそうな。バランス派はその中間で、双方に特定の能力で劣る代わりに弱点は少ない。


 竜人族は例外で、感覚派だけど神力値も高いという特別な種族。その代わり神力操作が苦手で繊細な神力操作をする事が難しいらしい。あのテルホイで新右衛門さんが合図を送る為だけに打ち上げた炎属性神術が雲を吹き飛ばすほどの威力だったのにはそういう訳があるのだ。



 合計5日間聖界でお世話になり、色々な基礎知識や本等(お土産)を貰い、今日、人界に戻る事になった。


「短い間だったが楽しかったぞ。しっかり鍛錬を積んでより人生を楽しむのだぞ?」


「本当はあと1000年くらい遊んでたいんだけど世界の管理もしなきゃいけないし、残念だよねぇ」


 僕も楽しかった。色々と勉強にもなったし本当に聖界に来て良かった。


「僕達も楽しかったです。色々勉強にもなりましたし、本当にありがとうございました」


「私も新しい発見や可能性に気付かせてもらい本当にお世話になりました。生きている間に宝具に匹敵する道具や神の雫に近い新薬を作れるよう精進致します」


「レオナは神術覚えて強くなるます。ドラゴン倒すです」


「はははっ頑張るが良い。そうだな、折角だからエミルとレオナには俺達の加護を付けてやろう。ファーマはリュミエール神の眷属だから必要はないな」


「そうだねぇ。持っていると便利だし、楽しませてくれたお礼をあげるのは悪くないねぇ」


「本当ですか? 光栄です」


「ありがとです。加護はなにですか?」


「加護というのは、与えられた者の成長を助けるモノだと考えると良い」


「努力さえすれば人より高い身体能力を手に入れる事が出来るよ。みんなまだ成長する時期だし、今から努力すれば種族最強も夢じゃないかもねぇ」


「ありがとうございます。精進致します」


「レオナも百獣の王なるです」


「ラグナムート様、エアリス様、ありがとうございました」


 僕達はお二方に深く頭を下げた。


「では、人界に送ってやろう。元の町で良いか?」


「あ、出来れば日那国に送ってもらえませんか? 日那国の人達とも話したい事や教わりたい事があるので」


「うむ、ならば日那国に転送してやろう。達者でな」


「また機会があったら遊ぼうねぇ」


「はい、ラグナムート様もエアリス様もお元気で」


 僕達はラグナムート様の転移神術で聖界を後にした。



 ◇



 ザワザワと僕達の周りで大きなお侍さん達が騒いでいる。ちなみにちょんまげではない。


 送ってやろうと言われラグナムート様が僕達を日那国に転送してくれたのだけど、まさか新右衛門さんの目の前に落とされるとは思わなかった。


 普通は家の前とか町の前に移動させるよね? 突然、僕達が目の前に出て来たもんだから新右衛門さんも流石に驚いたらしく、派手に後方に転んで強か後頭部を打ち付けたらしく頭を擦っている。


 僕達の事を知らない大きなお侍さんが殺気を放ちながら拳を構えた時にはどうしようかと少し焦った。刀を持っているのになんで拳? とか悠長なことを考えていたのは内緒。


 直ぐに新右衛門さんや僕達を迎えに来た時に居た鎧武者さんが静止してくれなかったら殴りかかられていたんじゃないだろうか? まったく、この世界の神様はどうしてこう大雑把なのだろうか? まあ、そんな神様らしくないところが親しみやすくて良い所なのかも知れないけど。


『いやぁ、驚いたでござるよ。相変わらず、神の御業は凄い物でござるな』


『僕も驚きましたよ。まさか、目の前に落とされるとは思っていませんでした。』


『して、羅呉那武斗様はどのような御用でござったか?』


『その話は、あの話と関係しているので人払いをお願いして良いですか?』


 転生にかかわる事を新右衛門さんも他の人には隠しているようなので、みんなの前では説明できない。新右衛門さんは直ぐに察してくれ、巫女の草乃薙さんだけを部屋に残し人払いをした。


『草乃薙さんは居ても大丈夫なんですか?』


『問題ないでござるよ。妃美華には話しているでござるから』


『ファーマ様、私の事も名の方で呼んでいただけると嬉しいのですが』


『あ、ごめんなさい。じゃあ、これからは妃美華さんと呼ばせてもらいますね』


 と、みんな名前で呼び合う事が決まり、話を進める事にした。


『今回、僕がラグナムート様に呼ばれたのは、僕がこの世界に生まれ変わる時に神様に貰った恩恵が原因です。少し特別なモノだったのでラグナムート様が直に確認されて、問題がなかったので解放してもらいました』


 嘘ではないけど全部は話していない。暇つぶしの為に呼ばれたなんて教えるのは気の毒だし。


『やはり、ファーマ殿も前世の記憶を持って生まれ変わった御仁でござったか。同じ境遇の御仁に会ったのは2000年生きて初めてでござるよ』


 2000年? これは予想外だ。話し方や街並みからして平安~江戸時代くらいの人だと思ったら弥生時代の人だったのか……って、そんな訳がない。弥生時代に侍とか和風建築の文明は無かったはずだ。って事は、元々この国が昔の日本に似た文化なのか、新右衛門さんが僕とは別の世界から来た人って事だ。


『新右衛門さんの前世はどういうところだったんですか?』


『拙者がこちらに来る前は、この国に似た所に住んでいたでござるよ。まあ、前の世界に似せたのは拙者でござるが』


『新右衛門さんが似せた? 前は違った感じだったって事ですか?』


『そうでござる。拙者が怒羅呉那(ドラグナ)(おさ)になるまでは、国という形を成していなかったでござるよ』


 なるほど、これではっきりした。新右衛門さんは僕の前世とは違う世界の日本の江戸時代に似た文化の国から転生してきている人だ。


『以前は、会話は出来ても文字は無く、文字が無いから名も持たず、家は山に穴を掘っただけ、食料はその辺りの生き物を適当に殺して生のまま丸かじり、強い者に従えが掟のとんでもない種族でござったからな』


 ……原始時代か! そんなところからよくもまあ、これだけの文明を作り上げたものだ。尊敬します。


『どうやってここまでにしたんですか?』


『拙者は、こちらに生まれ変わる時に、どんな理不尽な暴力にも屈せぬ強靭な肉体が欲しいと願ったでござるよ。その願いは聞き届けてもらえたのでござる。わらしの頃には、さすがに大人には勝てなかったでござるが、500才になった頃には怒羅呉那に拙者より強き者はいなくなったでござる。そこから文字や物作り、皆に名を与え、食料生産等の文化を1500年かけて根付かせたという訳でござる。当時の怒羅呉那は脳みそまで筋肉で出来ているような者ばかりで度々反発も受けたでござるが、その度に拳を交えて説得したのでござる。中々骨ではござったが、幸い怒羅呉那は長寿でござるから気長に浸透させて来たでござるよ』


 1500年……新右衛門さんの根気強さがよく解る壮大な話だ。ラグナムート様に聞いた話では竜人族(ドラグーン)の寿命は1万年前後、いくら長寿でも1500年も良く頑張れたよね。


『ドラグナって、この国の他の所には居ないんですか?』


『そうでござるな。怒羅呉那(ドラグナ)という括りなら日那国にいる者が全てでござるが、竜人族という括りなら他にもいる筈でござるよ。確か、2200年前だったかに地上で好き勝手暴れまわっていた竜人族を褐色の小さき者が半殺しにして回り、その者の命令でこの島に移り住んだのが怒羅呉那でござる。それ以降ファーマ殿を迎えに行くまで浮遊島から出た者はいなかったでござるから、他の部族に関してはよく知らないでござる』


 なるほど、気性の荒い人達がここに送られた訳か。それをまとめ上げるのはさぞかし大変だったんだろうな。


 新右衛門さんの苦労話を聞いた後は僕の事も聞かれ、当たり障りない程度に僕が貰った恩恵について話をした。流石にチート能力を全て教えるのは問題があるので、色んな神術が使えて物作りに才能が発揮できる事と、リミッターの事は隠して本気を出せば竜人族に匹敵する戦闘力があると話しておいた。(今の所周りに被害を出さずに開放できるのはリミッター1つまでだから)



『新右衛門さんに折り入ってお願いがあります』


『なんでござるか?』


『暫くの間、僕達をこの国に住まわせてもらえませんか? お米の作り方やこの国の文化を勉強したいんです』


『おおっ、それは願っても無い事でござるよ。ファーマ殿がいたいと思う限りいつまででもいてくれて良いでござる。代わりと言ってはなんでござるが、ファーマ殿の持っている知識も拙者達に教えてほしいでござる。所謂(いわゆる)、文化交流という奴でござるな』


『僕が教えられる事で良ければいくらでも教えます。暫くの間、宜しくお願します』


『こちらこそ、頼むでござる』


 竜人族の掟で強い者に従えというのを守り続けていたので、これまでは新右衛門さんの前世の知識でここまで文明を発展させたのだけど、ここからどう発展していけば良いか悩んでいたそうで、異国の文化を知ることが出来る良い機会だと喜んで受け入れてくれた。


 日那国に滞在する間の僕達の宿泊場所は、城を出て直ぐの一等地に庭付き平屋を建ててくれるらしい。さすがにそれはお断りしようとしたのだけど『牛の代金を立て替えてもらったお返しでござるよ』と笑顔で返された。


 僕は人界に来て日が浅いのでデザリアの文化について詳しくはないけど、ラグナムート様に頂いた本があるし、エミルがいるから役に立つ事も教えられるだろう。


 家の分以上は返せるように頑張らないとね。




 その日の夕食。


 久しぶりにお米を食べた。日那国のお米は前世で食べたお米より2倍ほど大きく、形は真ん丸ではないけどそれに近い楕円形。艶と香りが前世の物より強く、甘みがあってもちもち食感。おこわにするとピッタリな感じかな? ひょっとしてお餅も作れるかもしれない。おかずは分厚いステーキと味噌汁と野菜の天ぷら。あるかも知れないとは思っていたけど味噌や醤油があったのは凄く嬉しい。お酢もあるらしいので卵を採ってくればマヨネーズが作れるな。日那国に来て本当に良かった。


『お米がもちもちで美味しいですね。久しぶりに食べられて嬉しいです』


『喜んでもらえたのなら良かったでござるよ。この味に仕上げるまで結構苦労したでござるからな』


『元々はこういうお米じゃなかったんですか?』


『拙者が米を発見した米はもっと粒も小粒でパサパサしていたでござるよ。数種の原種を発見して配合を繰り返し出来たのがこの米でござる。原種も残しているでござるから良かったら別の日に食事に出すでござるよ。アレはアレで旨いでござるからな』


 色んな品種が食べられるのか、それはまた嬉しい。今日は1番の自信作を出してくれたんだな。本当にありがたい。


 一生ここに住むのもありかも知れないけど、色々やりたい事もあるし、会いたい人もいるから1度はデザリアに戻らないとね。学校には絶対に行きたい。ラグナムート様やエアリス様に色々教わったから学べることは少ないかも知れないけど、それとこれはまた別だ。デザリアの学校がどんなところかは分からないけど、僕にとっての学校は特別な所だ。行かないという選択肢はない。


 年に1度テルホイ上空を通るなら丁度2年ぐらいで地上に戻れば試験日には間に合うだろう。その間にお米の育て方、作物の育て方、味噌や醤油の作り方はしっかり教わって帰ろう。


 食後には、白い餡子の入ったお饅頭が出て来た。これにも喜んでいると、明日はなんとお団子を食べさせてくれるという。これは是非作り方を教わろう。



 食事が終わって新右衛門さんとお互いの前世の話をした。新右衛門さんはどうやら魔法文明の別世界から転生してきた人らしい。


 前世では、八都(やと)の国という国の村主(むらぬし)(解り易く言うと村長)の跡取りだったらしく、農業や商業を学びながら土地を豊かにする為に村の人達ともよく話し合いをしていたのだとか。


 八都の国には仙術というモノがあったらしい。仙術とは丹力という内なるチカラを用いて使うこの世界の神術と同じようなモノで、誰にでも簡単に使える生活仙術と、選ばれた人にしか使えない特殊仙術があるという事だ。そういう理由で日那国では神術の事を仙術、神力の事を丹力と呼んでいるらしい。


 新右衛門さんが理不尽な暴力に屈しない強い肉体が欲しいと願った理由は、前世での死因に関係している。


 新右衛門さんの父が任されていた村がある地域の都主(みやこぬし)(解り易く言うと領主)が内戦に負けて、入れ替わってしまったらしく、新しい都主が税を大きく引き上げたらしい。


 税率が大幅に上がった事で、民の生活が困難になってしまい、見兼ねた村主である新右衛門さんの父は民を代表して税の軽減を願い出たのだけど、それが気に入らなかった都主は新右衛門さん一家と一緒に上告した村人を冤罪で首を跳ねて見せしめにしたんだとか。


 死後、僕と同じように真っ白な世界で神様に会い、その村がどうなったのかを尋ねた新右衛門さんは、この世界ではそういった場合にでも自分の庇護下の者を守ってあげられるようにチカラを欲したという事だ。結果、神様に貰った強い肉体で怒羅呉那の長になって国を興し今があるんだとか。


 妃美華さんの話では、新右衛門さんが怒羅呉那の長になって改革を始めた頃はかなり反発も多かったらしいのだけど、今の生活が定着してからは国民からの信頼も厚く慕われているし、昔反発していた人達も今では原始的な生活には戻れない程文化的な生活が気に入っているという事だ。


 理不尽に殺されたのに転生する時の願いが守る為のチカラが欲しいなんて、新右衛門さんの人柄の良さが分る。新右衛門さんは尊敬できる素晴らしい人だ。


 新右衛門さんの話を聞く限り、転生させてもらえる人の基準は不幸な人生を歩んだというものだけでは無い様に思える。少なくとも新右衛門さんは領主が変わるまでは幸せな生活を送っていた。そもそも、前世の僕が不幸だったというのは間違いないのだろうけど、もっと不幸な人は沢山いる。その全てが救済されるならどの世界も転生者で溢れ返っている筈だ。


 まあ、選ぶのは神様の基準に沿ってだろうから、考えても意味は無いかな。僕達は運が良かったと思っておこう。


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