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ファーマ君の気ままな異世界生活  作者: 幸村
第2章 浮遊島
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第15話 ファーマ君、女神の小剣に名前を付ける

「ふむ、ではファーマが前にいた世界では神力ではなく、その石油燃料という物で道具を動かしていたのだな?」


 前世の世界の事を話し始めて数時間。ラグナムート様とエアリス様、エミルとレオナも僕の話を興味深く聞いて所々で質問が入り、この世界の事と比べてどう違うとか話し、僕もこの世界の事を教わっている。今は科学世界のエネルギーに興味が湧いたようだ。


「そうですね。あとは風や水流や太陽光なんかもエネルギー源になっていましたね。それと核燃料っていうのもありました」


「へー、なんでもエネルギーになるんだねぇ。星の地下に油が溜まっているなんて不思議な世界だ」


「この世界には無いんですか?」


「地下に油はないな。この世界のエネルギー源は、ほぼ全て神力だ。アスガルドの地下には神脈という神力が流れている地脈があってだな、それが大気中に流れ出したり、植物や鉱物が吸収し動物がそれらを捕食したりしてエネルギーを回しているのだ」


 食物連鎖にも神力が影響しているのか。じゃあ、消費した神力って摂食で補われているって事? いや、何も飲み食いしなくても暫くすれば回復しているな。


「神脈から漏れ出た神力、ボク達は神素って呼んでいるんだけど、神素は大気や大地や水、自然界の全てのモノに宿っているんだよ。だから自然界の神素を取り込みながら神術を使うと自分の神力を節約しながら神術が使えちゃうんだよ。まあ、ファーマの場合は異常に神力が多いからそんな事をする必要はないけどねぇ」


 それは初耳だ。ひょっとして詠唱魔法が無詠唱に比べて少ない神力で同じ威力のモノが使えるのは詠唱の中に自然界の神力を取り込むように術式が組まれているからなのかな?


「人が使う詠唱魔法ってエアリス様が言った自然界の神力を使った神術になるんですか?」


「ああ、そうだな。詠唱というのは神術を使う感覚を覚える為の基礎練習に使われるものだ。当然、神素を取り込みながら発動するように詠唱術式を組むのが本筋なのだが、人種でそれを理解している者は少ないな」


 あ、やっぱり、詠唱神術って基礎練習の為のものだったのか。でも、デザリアでは基礎ではなくて詠唱式が主流になってるんだよね。


「神術の進歩はまだまだだけど、ボク達が迷宮のご褒美用に入れてある宝具を模倣した、魔法道具っていう物には面白いものがあるよね」


「うむ、あれは転生者の活躍のたまものだな。面白い機能を付けた物が多く作られている。それを基にして宝具を作り、迷宮の景品にした物も多くあるのだぞ」


 たぶん、冷蔵庫や洗濯機やエアコン、カメラの事を言っているんだろう。テレビやラジオみたいな通信機器と自転車や車みたいな乗り物は見かけなかったけど、間違いなく科学の世界から転生した人が作ったモノだろうな。


「あの、お尋ねしたいのですが?」


「ん? なんだいエミル」


 此処まで黙って話を聞いていたエミルが口を開き、問いかけに素早くエアリス様が反応する。


「先ほど話されていたホウグというものなのですが?」


 あ、それ僕も気になっていた。


「宝具っていうのはね。ボク達が作った便利道具の事だよ。迷宮で手に入れられる便利道具の中でも、滅多に出て来ない様に設定してある大当たり道具が宝具なんだ」


「ほぼ無限に物を収納できて中の物が劣化しない鞄、自由に空中を飛び回れるマント、常時外敵から身を護る結界を張れる腕輪、まあ色々だな。聞いた事はないか?」


 何それ? 欲しい。特に結界の腕輪は良いな。エミルとレオナの安全の為にも是非手に入れたい。空飛ぶマントも中身が劣化しない鞄も魅力的だ。


「それは神具と呼ばれている魔法道具の事ですか? 以前、母から聞いた事があるのですが、どこかの国の国宝に指定されている神具は、大岩をも羽のように軽々と持ち上げられる指輪や水中でも呼吸が出来る首飾り等、人智を超えた魔法道具だと聞きましたがやはり神が作ったモノだったのですね」


「それは凄いね」


「凄いだろぉ。でも神具は言い過ぎだねぇ」


「そうだな。人界の今の術式技術では難しいが、どれも作ろうと思えば人の手でも作れぬ事は無い程度の道具だ。宝具というのは人種の向上心を煽る為にある程度、人種の技術でも作れそうな物を迷宮の景品にしているからな」


 なんとぉ!? それは良い事を聞いた。作れる可能性があるというなら是非作ってみたい。


「そ、それならば神の雫も人の手で作れますか?」


「神の雫?」


「はい、小さな瓶に入ったどんな怪我や病気も治す事が出来るという赤い液体です。迷宮で発掘されたという話を聞きました」


「あぁ、たぶんボク達が昔作った万能薬の事だねぇ。あれは人界の者が持っていない創造って能力で作ったモノだから君達普通の人種(ひとしゅ)には作れないよ」


「そうですか……」


 作れないと聞いてエミルはかなりガッカリしているようだ。まあ、お母さんと一緒に研究していたものだから可能性を否定されちゃったら落ち込むよね。


「そんなに肩を落とすな。万能薬は作れなくとも、それに近い物ならば作りだす事が出来るかも知れぬぞ? お前達の頑張り次第だがな」


「本当ですか? 頑張ってみます」


 少し希望が見えたようでエミルの顔にやる気が見える。やっぱりエミルも研究者なんだな。


「そういえば、僕がデーア母さんから貰った剣。これもひょっとして宝具ですか?」


 ふと気が付き、僕は【女神の小剣】を収納魔法道具(ブレスレット)から取り出してラグナムート様に見せた。


「……またとんでもない代物が出て来たな」


「これって神器クラスの武器だよねぇ」


 ジンキって、なんだ?


「貰った時に説明は受けなかったのか?」


「はい、デーア母さんが「妾じゃと思ってお守りにするが良い」って、渡してくれた物なので詳しい事は聞いていません。神眼で鑑定しても詳細が分からないんです。とてもよく切れる剣だというのは解っているんですが」


「なるほどな。まあ、未熟な神眼では未開放状態の神器を鑑定するのは難しいだろう」


「未開放? ですか?」


「それも聞いてないんだねぇ。この剣にはまだ名が付いていないんだよ。神器は主が名前を付ける事で神器本来の力が解放されるんだ。名を付けてあげなよ」


 女神の小剣が名前だと思っていたら違うんだ。


「1つ忠告しておいてやるが、名というのはそのモノにとって重要な意味を持つものだ。例えば人の名ならその者の性格や能力、運勢等を左右する事もある。唯の道具であればそれほど気にする事はないが、神器クラスの道具には名前によって開放度合いが変わり神器の性能に係わるからな。あまり適当に付けぬようにな」


 えっ!? 名前にそんな重要な役割が? どうしよう……レオナの名前は、確かに本人の意思を尊重して真剣に考えたモノだけど本当に良かったんだろうか? 本人が気に入っているから今更変えようかとも言えないし……もっと早くに教えてほしかった。


 過ぎた事はしょうがない。今は剣の名前をどうするかだな。性能を左右するというのは、それほど気にしなくても良い。でも、デーア母さんが僕のお守りとして渡してくれた剣に適当な名前は付けられない。


 神器というなら神語で付けるのが良いかな? …………【&$#%¥】と、いうのはどうだろうか? 人界の発音に直すと【ディグランザ】直訳すると〝大いなる護り〟だ。武器の名前としては向いていないかも知れないけどお守りとしてもらったんだから悪くない筈。


「決めました。この剣の名前はディグランザです」


 僕が剣に名前を付けると突然、剣に吸われるように体から力が抜けた。座った状態で良かった。立っていたら倒れるところだったよ。


「ディグランザか、悪くない。送り主の意を汲んでいる良い名だ」


「うん、良い名前だねぇ。その名の通り、自身を、大切な人を守る為に使うと良いよ」


「上手く開放出来たようだから鑑定してみると良い」


 流石は神様だな。僕が考えた事を直ぐに察して理解している。早速、ディグランザを鑑定してみた。


 【神剣ディグランザ】全てを斬る事が出来る何も斬れない剣。持ち主の意思次第で斬る対象を選ぶ事が出来る。この剣は物質、非物質、問わず持ち主の斬りたいモノを斬り、斬りたくないモノは斬らない。所有者本人以外が使用すると何も切れずダメージを与える事は出来ないが子供のおもちゃ程度の痛みは与えられる。


 神器というだけあって性能がとんでもない。ちょっとネタみたいな項目があるけど……


 どの程度のモノまで斬れるのかは分からないけど、鑑定を素直に受け取ると兵器に匹敵する性能だよね? 万が一にも誰かに奪われでもしたら大変な事になるんじゃ?


「凄い鑑定結果が出たんですけど、もし誰かに盗まれたりしたら大事ですよね?」


「それは問題ないよ。神眼で見た通り、正式な持ち主以外に使えないからね。今はファーマが所有者だからファーマが自分から所有権を放棄しない限り、誰かに盗まれたとしても何も切れない唯のおもちゃにしかならないから」


 なるほど、所有者というのはそういう意味か。僕が自分から所有権を放棄するなんて事はありえない。因みに僕が使っても斬ろうという意思が無ければちょっとした痛みを与えるだけで斬る事もダメージを与える事も出来ないらしい。


「そもそも、人界の誰がファーマから盗めるのだ? まあ、万が一盗まれたとしてもファーマが念じれば手元に戻ってくるから心配するな」


 おおっ! そんな便利機能があるのか? 鑑定には出て来なかったけど?


「ちょっと貸してみろ」


「はい、どうぞ」


 ラグナムート様にディグランザを貸すとゆっくりさやから引き抜き刃を見つめ、次の瞬間。


「痛っ! な、なにするんですか? ラグナムート様」


 突然、ディグランザで僕の脳天をポカリと叩いた。


「うむ、神眼で鑑定して切れないと解っていても実際に体感してみないと、いざという時に脅しにも使えぬだろう?」


 そう言いながらポカリポカリと僕の頭を打ちのめす。


「ちょ、切れなくてもちょっと痛いんですよ?」


 躱そうと動き回るのだけど、未来でも見えているかのように躱したところにディグランザが振り下ろされる。


「ちょっと、いい加減に━━あ痛っ!」


 くそぉっ! 全く避けられない。あっ、そうだ。戻ってこいディグランザ。そう念じると鞘と剣が僕の手に戻って来た。


「もうっ、しつこいですよ? ダメージなくてもハリセンで叩かれるくらいは痛いんですから」


「いや、すまん。いつその機能に気が付くかと思ってな。必死に避けている姿が段々面白くなってきたからではないぞ? ところでハリセンとはなんだ?」


 絶対に嘘だ……まったく、子供みたいな事しないでよね。ハリセンは教えてあげません。


「ところで、この剣ってなんでも斬れるって、どこまでのモノが斬れるんですか?」


 面倒なので話を戻した。


「視たとおりだ。世界の理を超えぬ限り、物質だろうと空間だろうと神術だろうとなんでも斬れる」


「斬ろうと思えば意思や記憶、存在なんてモノも斬れるよ。あと、ボク達神だって斬れる。試してみるかい?」


 エアリス様がとても良い笑顔でそう言った。なんかこういう時の笑顔って怖いよね?


「ラグナムート様じゃあるまいし試しませんよ?」


「良かったぁ。試してみたいって言われたらどうしようかと思ったよ。流石にそれで斬られたら大変な事になるからねぇ」


 なら、言わなければ良いのに……


「まあ、万が一斬りかかって来たとしても、今のファーマでは俺達に掠りもせぬがな」


「やりませんって、当たっても当たらなくても神様に剣を向けるなんて罰当たりな事は」


 前世では信仰心なんて欠片も無かった。と、いうか祈る余裕もなかったけど、現世では生まれてからずっと神様のお世話になっている。妄信する事はしないけど、だからと言って絶対に刃を向けるなんて不義理な事は出来ない。


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