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ファーマ君の気ままな異世界生活  作者: 幸村
第2章 浮遊島
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第13話 ファーマ君、神に会う

『御山へは招かれた者以外、入る事は許されておりません。この先へはファーマ様だけでお進みください』


 草乃薙さんから樹海の入り口でそう説明を受けた。日那国の人達も森林に入る事は許されていないらしく、戻って来た僕を町へ案内してくれる人を2人残して他の人は町に戻り、エミルとレオナは新右衛門さんのお屋敷で部屋を用意してくれるのでそこで待つことになる。……のだけど。


「ファーマ様を残して私達だけ戻る訳にはいきません。私達もファーマ様が戻るまでここで待ちます」


「レオナも待つます」


 新右衛門さんのお屋敷で待つように説明すると、2人は僕が戻ってくるまでこの場で待つと言い出した。ここは魔性の森(聖域)近辺と同じ環境だ。2人を此処で待たせるのは危険すぎる。ギガントフロッグクラスの魔物に襲われたらほぼ間違いなく死んでしまう。


「うーん、困ったな。2人も一緒に連れて行ければ良いのだけど……」


(連れて来たいのなら構わぬ。共に来るが良い)


 ん? なんだ、今の声? 僕が悩んでいると頭の中に直接誰かの声が響いてきた。


『ファーマ様、お連れの2人も共に入って良いと神託がありました』


 僕が妙な声を聞いた直後、草乃薙さんがそう伝えて来た。今の声が神託なんだろうか? 


「エミルとレオナも一緒に入って大丈夫みたいだから一緒に行こうか」


「はい」「あぃ」


 僕がそう言うと2人は嬉しそうに僕の横にならんだ。


『では、3人で行って来ますから、皆さんは町に戻って下さい。町の場所はもう覚えたのでここで待っていなくても大丈夫ですよ』


『場所が解ってもこの辺りは結構手強い獣が多いでござるから護衛の者は置いておくでござるよ』


『でしたら、なおの事町に戻って下さい。僕達がいつ戻って来られるか分からないのに、待っている人を危険に晒すわけにはいきません。僕達はこう見えて結構強いので護衛が居なくても大丈夫ですから』


 と、少し押し問答になったけど、なんとか説得して日那国の人達は町に戻ってもらった。


「じゃあ、行こうか」


「はい」「あぃ」


 僕達が揃って樹海の中に入り少し歩くと、何か透明な壁の様なものに当たり、すり抜けた感覚と同時に回りの景色が森ではなく石造りの通路に変わった。真っ赤な鳥居が通路に立ち並び、その奥には石造りの大きな扉が見える。


「これはどういう事でしょう?」


「森、なくなたです」


 2人とも突然の出来事に不安を抱いているようだ。特にレオナの感情は読みやすい。シッポが小さく早く揺れているのは不安な証拠。前世で読んだ動物図鑑に書いてあった猫の感情表現という項目にあった情報と同じだ。因みに喜んでいる時はシッポがピンと立ち、苛立っている時は大きく速く動き、怒っている時は毛が逆立ち、怖い時は足の間に挟むように巻き込む。


「不思議だね。でも大丈夫そうだから奥に進もうか」


 2人は驚いているけど僕は天界に居る時に何度もこれと同じ事を体験している。たぶん転移神術だろう。


エミルとレオナは不安そうにしていたけど、僕が先頭切って歩き出すと直ぐ後ろを付いて歩き、鳥居をくぐり抜け扉の前まで移動した。すると、重そうな石の扉は自動的に開き、中から優しい空気が溢れてくる。


(やっふー、ようこそ聖界へ)


 扉が開くと同時に、頭の中に直接小さな女の子のような可愛らしい声が聞こえた。なんだかとてもテンションが高い。僕の視線の先には図書室で読んだ三国志に出てくる関羽雲長のような長い髭を生やした渋い大男が玉座のような椅子に座っていた。頭の角を見る限り竜人族だ。


 まさか、この声の主じゃないよね? だったら嫌だな。


(ここ、ここー、もっと上だよ)


 また頭の中に聞こえた声に従って視線を上げると、僕の視線の少し上に手のひらに乗りそうなくらい小さな女の子? が浮いていた。ショートカットのクリーム色の髪にレースのカーテンに虹色の光沢を付けた様なトンボのような翅、目は金色で可愛いポーズをとっている。


 僕が視線を上げるのとほぼ同じタイミングでエミルが「精霊……」と呟いた。エミル達エルフ族のいう精霊って妖精族の事だったのか。


「今の声は君?」


(そだよー、ボクの名前はエアリス。この世界のか━━)「んぎゃああーー!」


 エアリスという名の妖精が名乗っているところに突然、彼女の頭上から轟音と共に激しい雷が落ちて来て直撃する。エアリスさんはプスプスと煙をあげながら地面に落下し、その場でピクピクしている。生きているようだけど大丈夫なのだろうか?


『驚かせて悪かったな。俺はラグナムート、お前を此処へ呼んだのは俺だ』


 玉座に座っている男性が日那国語で僕に話しかけて来た。この方が竜神ラグナムート様か……という事はこちらで倒れているのは妖精族の神、妖精神エアリス様? にしては扱いが酷い。


『&$#%&&%$#%$##$#%%&&(ラグナ! いきなりなにすんだよ! 服が焦げちゃっただろ!?)』


 今の雷で服が焦げるだけで済んでいるのは凄い。普通の人なら消し炭になっていてもおかしくない威力だったのに……さすがは神様という事か?


『$#%&&%$$##%%&%$$%#%(ふん! 貴様が邪魔をするからだろう? 俺が呼んだ客だぞ)』


『&%$#%$$%#$%&%$#(良いじゃんかちょっとくらい。ラグナのケチんぼ)』


 口喧嘩が始まった。神語で話しているから普通の人には何を言っているのか分からないだろうけど、僕は天界で育ったので何を言っているのか理解できる。内容は小学生の喧嘩みたいだ。えーっと、管理神で間違いないよね?


~~~~


 この世界にはデーア母さんに仕える人界を管理する6柱の管理神が居る。クレイエ様が話していた下位神というのがこの方達だ。


 デーア母さんの話だと、本来この惑星(アスガルド)の管理神は、ゼノス神というアスガルドを中心とした宇宙の管理神だけだったらしいのだけど、1億5千万年前の世界崩壊時に他の管理神が管理する惑星は消滅してしまって現在修復中なので、6柱ともアスガルド含むゼノス神の管理する領域を一緒に管理をしているんだそうだ。


 世界崩壊時にこの世界の生命体は全滅したのだけど、その時に各管理神が集めた(救った)生物の因子を原初の生命に宿して進化したのが、現在アスガルドに生息している生物。


 そういう訳で、現在このアスガルドには1千万を超える種類の生物(植物、微生物含む)が生息している。これでも世界崩壊前に生息していた全宇宙の生物の数十分の1程度らしい。その中で人種(ひとしゅ)と呼ばれる知的生物は大きく分けて7種。


人間族(ヒューム)竜人族(ドラグーン)妖精族(フェアリー)猫人族(キャッツ)狼人族(ウォルフ)魚人族(マーメイツ)鬼人族(オーグ)だ。


 人間族がアスガルド本来の人種で、他の6種族は別の惑星の人種の因子から生まれたんだとか。


 進化の段階で増えた種を分けると倍以上の知的生物が居るらしく、森人(エルフ)山人(ドワーフ)なんかは人間族が進化の途中で変異した新種族だと教わった。


 管理神は人間族の神ゼノス、竜人族の神ラグナムート、妖精族の神エアリス、猫人族の神ライオス、狼人族の神ヴェルガ、魚人族の神フィオーナ、の6柱。もう1柱鬼人族の神が居たらしいのだけど、世界崩壊時に行方不明になったそうだ。


~~~~


『あの、お尋ねしたいのですが、僕はどうして呼ばれたんですか?』


 ラグナムート様とエアリス様の口論が終わったようなので本題に戻し、呼ばれた理由を聞いてみた。人界の者に直接会うという事は余程重要な用事なんだろう。


『ああ、すまぬな。呼んだのは他でもない。暇つぶしだ』


『はい?』


 シレっと何を言っているんだ? このおっちゃんは……1国の主を迎えに寄越して暇つぶしで呼んだ?


『はははっ、半分冗談だ』


 ……笑い事じゃないよ。ってか、半分は本気って言ってるんですが?


『俺達は、この星を管理する神だ。地上に妙なチカラを感じたのでな、神眼で確認したら面白そ……ではなく、奇妙なチカラを持ったお前が見えたのでな』


 今、面白そうって言いかけたよね? いや、9割言ったよね?


『これは状況確認の為に本人に会わねばならぬと判断した。と、いう訳だ』


 興味半分警戒半分って感じなのか? いや、顔を見る限り興味8割って感じだな。


『ボクの管轄はここじゃないんだけどねぇ。ちょうどラグナの所へ遊びに来ている時に君の存在を知って、これは遊ぶしかないってワクワクしてたんだよ』


 ……エアリス様には建て前とかいうものが無いんだろうか? この世界の神様は、デーア母さんもクレイエ様も結構お茶目というか天然というか人間味あふれる神様だとは思っていたけど、ここまで自由なのには驚きだよね。


 神託を受けて物凄く真面目に対応してくれた日那国の人達が不憫でならない。


『うむ、やはりお前は面白い。チカラは人間の子供にしては異常な程強いがそれだけではない。もっと強力な何かを感じる』


 全ての世界を統括する創造神(クレイエ様)が作ったリミッターで抑えられている、見抜けない筈の僕のチカラを見抜いている。おちゃらけたように見えてもやっぱり神様って事か。


 隠しても怪しまれるだけだし、相手は神様だ。正直に話して大丈夫だろう。


『僕は前世の記憶を持ってこの世界に生まれた転生者です。ラグナムート様が言っている強力な力というのは、たぶんデーア母さん……じゃなかったリュミエール神に育てられた事で身に付いた力で、今は創造神クレイエ様が作ってくれた術式で抑えています』


 と、簡単に説明すると━━


『ふむ、それは大事(おおごと)だな』


『あちゃー、またやっちゃったかぁ』


 ━━言葉とは裏腹に2柱の神の顔は〝玩具見付けたぁ!〟みたいになっている。……本当に退屈していたんだな。



 とりあえず、座って話そうかという事になり別な部屋に移動した。


 案内された部屋にはテーブルや椅子、人界で使っているような家具が置いてある部屋だった。さっきまで居た場所は謁見の間だったんだろう。


 エミルとレオナは神様達の小競り合いを見て変に警戒心が強くなっていて、緊張がまだ解けないようだ。まあ、言葉が分からない上に、不思議な事(転移や頭の中に直接聞こえる声)が起こり、目の前に雷が落ちて喧嘩が始まるんだから無理もない。


 僕は2人の手を握って「そんなに警戒しなくても大丈夫だよ。肩の力を抜いて」と、声を掛け2人を落ち着かせた。


 促されるままにテーブルにつくと、ラグナムート様は異空間からクリスタルグラスを取り出し水を灌ぐと、僕達の目の前にグラスを置き、更に籠を取り出すと色とりどりの果物をその中に積み上げてテーブルの中央に置いた。


「どれでも好きな物を食べると良い」


 さっきまで日那国語で話していたのに今度はデザリア語を使っている。エミルやレオナに分かるように使い分けてくれたんだろう。


「いただきます」


 グラスに入っているのは神水と呼ばれる神の領域にのみ存在する特殊な水、果物も神果といって人界にはない特別な物で、味は人界にある水や果物と大差ないのだけど、栄養価は高く疲労回復効果や神力上昇効果があり、食べる程にほんの僅かずつだけど神力の最大値が増える。僕のステータスの神力値が他よりも高いのは、これのお陰もあるのだ。


 天界に居た頃は、ほぼ毎日神果や豆やパン等、植物性の物を食べていた。動物性の食べ物と言えばミルクぐらいだ。たぶん神様は全員肉類を食べないのだろう。だから僕もこの世界に来てから人界に下りるまで肉や魚は口にした事なかったんだよね。


 エミルとレオナは色々驚きっぱなしで戸惑っているけど、僕が神果を手にして促すと続いて2人も神果を手に取った。手には持つけど僕が最初に口にするまでは食べるのを待っているようだ。僕を待つ必要はないのだけど、まだ奴隷教育は抜けていないんだな。


 僕が神果(桃)を1齧りして「2人も食べて大丈夫だよ」と言うと、2人は神果(林檎、柿)を口にし、美味しそうに食べている。


(先ほどの話は連れの2人にも話しているのか? まだなら聞かせるかどうかはお前に任せる。聞かせたくないなら日那国語で話せ)


 ラグナムート様の声が頭の中に直接聞こえて来た。


 ここに一緒に来ると決めた時からある程度覚悟は決めていた。でも、本当に僕の秘密を全て2人に話しても良いものだろうか? 2人の事を信用していない訳ではない。だけど、理解の及ばない力は畏怖されるものというのは前世の歴史が証明している。本当の事を知れば僕から離れて行ってしまうかも知れない。


 最初はマルガンさんの勧めと半分人助けぐらいの気持ちで2人と契約したのだけど、この2か月弱の間に僕にとってエミルとレオナは家族に近い存在になっている。出来る事なら別れられたくない。


 でも、ずっと一緒に居るなら話さなきゃいけない事なんだし、早いか遅いかの違いだ。もし本当の事を知って離れていかれるなら僕がそれまでの人間だという事。その時は諦めるしかないよね?


「エミル、レオナ、これから今まで2人に話していなかった僕の秘密についてこちらのお二方と話をするんだけど、その内容を聞くと僕と一緒にいるのが怖くなるかも知れない。それでも聞いてくれる?」


 僕がそう言うと2人は首を傾げ果物を飲み込むと静かに微笑んで口を開いた。


「ファーマ様にどんな秘密があろうと、私は一生ファーマ様にお仕えすると決めております。是非聞かせてください」


「あぃ、ファーマ様優しい、怖いないです」


 2人とも真っ直ぐ僕の目を見てそう言ってくれた。


 僕は包み隠さず全て話した。前世の記憶を持っている事、前世の事、神様の力でこの世界に生まれ変わった事、この世界に生まれ変わって直ぐに実の父親によって実の母親が殺され自分も死ぬところだった事、その時この世界を統べる女神さまに拾われ育てられた事、それによってこの星位なら破壊できる程大きな力があり、今は創造神の作った術式でチカラを抑えている事、創造神の誤りで通常人間が持っていない特別な能力を3つ付与されている事、デーア母さんに名前を貰ってリュミエール神の眷属になっている為、全ての神術が最高位で使用可能な事、また通常人では使えない神術も使う事が可能な事等々。


 普通に聞いたら信じられない話なのだけど、エミルはこれまでの僕の魔法習得速度や際限なく魔法を使っている様子、子供らしくない言動、新アイテム製作、浮遊島に来てからここまでに起こった不思議な事柄を思い返してなんとなくは信じたようだ。


 レオナは話が難しいのか、前に酷い生活を送っていた事と、生まれて直ぐに殺されそうになって助けられた部分以外はよく理解できていないようだけど、凄いチカラを持っているという事は理解してくれたようだ。


「ファーマ様1つお聞きしたいのですが、カナイ村の裏に倒れていた盗賊を倒したのはファーマ様ですか?」


「うん、そうだよ」


「納得がいきました。正騎士を呼びに行った時に感じた強大なマナはファーマ様のモノだったのですね。レオナも私もあの時は身を竦ませて何事かと驚きました。そうですよね、レオナ」


「……?」


 同意を求められたレオナは首を傾げなんのこと? みたいな顔になっている。結構前の話だから覚えていないのかな?


 2人とも解放した僕のチカラに気付いていたんだな。レオナは野性的勘が鋭いから違和感ぐらいは持ったかなと思っていたけど、エミルもチカラを感じ取っていたのには驚きだ。エルフもキャッツも種族的にそういう感覚が鋭いのかな?


「ははははっ、想像を超えてとんでもないな、お前」


「創造に神眼に真理? 主神様もやっちゃってるねぇ」


 僕達の話が1段落すると、突然ラグナムート様が乾いた笑いをし、エアリス様は苦笑いする。お二方とも流石に驚いたようだ。それはそうだろうデーア母さんだってクレイエ様に激しいツッコミを入れる程、とんでもない能力を持っているんだから。


「まだ全然、チカラの制御が出来ないから能力は上手く使えていないし、リミッター無しだと災害おこしちゃうから下手にチカラを解放できないんですよね」


 天界には本来人界の者が入っちゃいけないから、ある程度生活能力が身に付いたら出なきゃいけなかったし、人格が覚醒してからの2年間じゃ旅の支度と基礎的な神力操作と護身術と錬成の訓練で手一杯だった。


 普通の人並みのチカラならそれほど時間を掛けなくても基礎的な神力操作は身に付くんだけど、僕のステータスは|ラグナムート様達に匹敵するほど高い。2年かけても本当のチカラの1割もまともに使えていない。


「まあ、主神様の封印があるなら暴走する事は無いだろうが、お前にその気があるなら俺達が少しばかり手ほどきしてやろう」


「うん、そだね。その代わり」


「「娯楽をよこせ」」


 ハモった。見事なハモりだ。娯楽に飢えすぎでしょ……でも、色々教われるなら僕の知る限りの娯楽を教えようじゃないか。


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