表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ファーマ君の気ままな異世界生活  作者: 幸村
第2章 浮遊島
31/114

第8話 ファーマ君、ロイスと話す

 ギルドに紹介してもらった宿は、少し高級な宿で、全部屋にシャワーが付いている。浴槽に浸かりたい場合は共同浴場があるらしいけど、レオナはそちらには入れないし、シャワーを浴びれるなら満足なので部屋付きのシャワーを使う。


 シャワー室はみんなで入るには狭いので、順番に入る事に決めたのだけど、レオナは僕の番の時に乱入してきた。まあ、レオナと僕の2人なら狭くはないので問題ないか。


 2人で背中の流しっこをしてお風呂から出ると、いつもクールなエミルが珍しく怒っているようだ。


「レオナ、少し話があります。こちらへ」


 なんとなく迫力のあるエミルの笑顔を見たレオナは素直にエミルの元へ行き、床にチョコンと正座する。


「あなたは、奴隷としての立場をどう考えているのですか? まったく、うらやま…コホンッ……」


 少し妙な言い間違い? をしたエミルだったけど、レオナに奴隷としての立場というのを懇々と説明し始めた。レオナは耳を折ってシュンとしてお説教に耐えている。シュンとしているレオナも可愛いな、なんて思ったのは内緒にしておこう。


 奴隷としての立場というのは僕が気にしていないから良いのではないか? とも思ったけど、なんだかエミルの迫力が怖いので言わない事にした。


 体は毎日拭いていたけど、やっぱりちゃんと洗うと気持ちが良いな。エミルもレオナもすっきりしたらしく気分が良さそう。食事は食堂では取れないので、宿の人が部屋まで運んでくれた。至れり尽くせりで本当にありがたい。


 翌朝。殆どの宿泊客が出て行ったのを見計らって、宿の人が僕達を呼びに来た。僕は宿の人にお礼を言って、正規より少し色を付けて宿代を払い、裏口から出た。


「良い宿だったね」


「はい、宿の主人は亜人に対する偏見を持っていないようで良かったです」


「でも、いつ他のお客さんに見つかって迷惑かけちゃうとも分からないから長居は出来ないね。買う物を買ったら今日にでも出発しようか」


「ファーマ様、ごめんなさい……です」


「なんで謝るの? レオナは悪いことしてないんだから謝っちゃダメだよ」


「でも、レオナ一緒、嫌い、多い……です」


 宿泊中は楽しそうにしていたけど、やっぱり昨日の冒険者に絡まれたり、宿探しに時間が掛かってしまった事を気にしているようだ。落ち込むレオナを見て、エミルまで辛そうにしている。レオナは全然悪くないんだから気にしなくて良いのに。


「それはレオナを悪く言う人が悪いんだよ。僕はレオナを迷惑だとも思ってないし、大切な仲間だと思ってる。いい? その事でレオナが謝るのは僕が間違っていると言っているようなものだよ? レオナは僕が間違っていると思うの?」


「間違う、ない……です」


「なら、堂々としていれば良いよ。百獣の王が下を向いていたら恰好悪いからね」


「あぅ、レオナ、上向く……です」


 僕が励ましてあげるとレオナはムンッと胸を張って顔を上げる。百獣の王ってフレーズはレオナのお気に入りの様だ。レオナが元気になるとエミルも笑顔になり、微笑みながらレオナを見ていた。


 昨日宿を探すついでにギルドの受付嬢さんに聞いておいた店を回り、食料品を購入した。アイスクリンは売ってなかったけど、ミイルク、チイズ、バタアは手に入った。これで暫くは大丈夫。


 度々絡まれるのはレオナが可愛そうなのでレオナのロングコートは昨日の内に外套に作り直している。これで前を閉めれば膝下まで隠れるからフードを被っていれば絡まれなくなるだろう。


 全ての買い物が終わりギルドに向かっていると、昨日の最初の宿で会ったロイスさんがこちらに歩いてくるのが見えた。どうやらムキムキの人は居ないようだ。向こうもこちらに気付いたようで、一緒に居た人と別れて僕達の所にやって来た。


「おう、昨日の嬢ちゃんじゃねぇか。何やってんだ?」


 ……度々このやり取りがあるのは本当に面倒くさい。テレスティナさんの気持ちが解った気がする。


「言っておきますけど、僕は男ですからね?」


「マジか? そりゃすまねぇな。どう見ても女の子にしか見えねぇわ。はははははっ」


 失礼な! 服装見れば判るだろう? それに一人称を〝僕〟と言っているのが聞こえていないんだろうか?


「何か御用ですか?」


「ああ、用というほどの事じゃねぇんだが、昨日のベングの事で謝っときたくてな。アイツも普段は子供に絡んだりしねぇんだが、魔人が絡むとどうしても抑えが利かなくなるんだ。すまなかった」


 なるほど、昨日の事で謝りに来てくれたんだな。ロイスさんは良い人のようだ。


「いえ、ロイスさんに謝っていただく事はないですよ。昨日はあの人を止めてくれてありがとうございました。今日は一緒じゃないんですか?」


「ああ、昨日飲み過ぎたみたいでな。今日は宿で寝てると思うぜ」


「ロイスさんは亜人に対して差別や偏見はもっていないんですか?」


「ああ、俺はそういうのはねぇな。まあ、クエストなら亜人狩りをやったりするがな。だが、ベングや他の冒険者は亜人を恨んでいる奴が多いんだ」


 冒険者に亜人を恨む人が多い理由は、その亜人狩りのクエストという仕事の最中に返り討ちに遭って死んでしまう人が居るかららしい。ランクの低い冒険者はチカラや経験が少ないためクエスト中に死んでしまう事は珍しくない。殺された冒険者の仲間や家族が、魔物や亜人を恨んでいるんだとか。


 いや、それ完全に逆恨みだから……自分達だけが奪うのが正当だとでも思っているのだろうか? その辺りの教育はきちんとやってほしいものだ。


 この国で亜人が嫌われている理由はとりあえず解かった。到底納得のいく理由では無かったけど。そんな事より気になるのは〝亜人狩りのクエスト〟というフレーズ。冒険者は亜人が何処に住んでいるのか知っている?


「ロイスさん、1つお聞きしたいんですけど」


「なんだ?」


「さっき亜人狩りのクエストって言ってましたけど、亜人の人達の住処って解るものなんですか? 一般的に知られている場所に住んでいるとか?」


「いや、アイツらは住処を転々と変えるから普通は見付ける事はできねぇ。だが、そういうのを見付ける専門家が居るんだ。自分で捕まえる事が出来ねぇから情報を売って金にするんだよ。そんで、住処が解ったらギルドがクエスト発注するって寸法だな」


 なるほど、色んな人が居るんだな。でも、住処を発見できたとしてもどうやって捕まえているんだろう? 見た所、ロイスさんのステータスはレオナの1.3倍くらいだ。瞬発力だけならレオナの方が高い。大人のキャッツ族だったらステータスはレオナの倍以上あるだろうし、まともに戦っても勝ち目がないだろう。まあ、戦闘がステータスだけで決まる訳ではないけど、レオナを見る限りキャッツ族が戦闘の素人とは思えない。


「大人のキャッツ族ってかなり強いですよね? どうやって捕まえているんですか?」


「キャッツ族? ああ、魔人の種族名か。大人の魔人とはなるべくやり合わない様に捕獲してんだよ。まともにやり合ったら面倒な相手だし、捕まえても金にならねぇからな。相手にするのはガキだけだ。方法は飯の種だから秘密だ」


 何かしら大人に見つからない捕獲方法があるって事か? そういえばレオナは命名式の最中に捕まったって言ってたし、そういう子供が大人から離れる時を狙って捕まえているのかも知れないな。


「勉強になりました。ありがとうございます」


「良いって事よ。昨日の詫び代わりだ。じゃあな」


 ロイスさんは手をヒラヒラと振って昨日会った宿の方へ歩いて行った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ