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ファーマ君の気ままな異世界生活  作者: 幸村
第2章 浮遊島
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第4話 ファーマ君、魔法(神術)を教える

 食事を終えた僕達は少しライラさんと話をした。


「ライラさんはどうして農場で働いているんですか? 教会ってお布施や寄付で成り立っているはずだから普通は教会内で相談を聞いたり祈りを捧げたりするのが仕事の筈ですよね?」


 グラダの町ではそう聞いた。怪我をしたり病気になったりした時、この国の平民は一般的に薬師に頼る。しかし、一般の薬師では対処できないほど急を要する場合、教会はそれなりのお布施を貰って修道士が神聖術(魔法、神術のこと)で治療をする。その他に悩みごとの相談なんかもやったりしてお布施を集めるのだ。


「私は神殿の教えを受けて聖職についたのですが、神聖術の才能がなく一番簡単な癒しの加護もろくに使えません。ですので、信仰を集めてお布施や寄付をいただく事が難しいのです」


「あ、そんなに畏まった話し方しなくても良いですよ。ダン達に話すのと同じ話し方で話してください。そっちの方が僕達も気楽に話せるんで」


「そう? 良かったぁ。シスターらしく話すのって疲れるのよ。助かるわ」


 話し方が変わると表情も柔らかくなった。やっぱり無理して堅苦しい話し方をしていたんだな。この方が僕も話しやすくて良い。


 治療系の神術が殆ど使えないんじゃ収入を増やすのは厳しいな。教会の主な収入って治療費らしいし。前にマルガンさんに聞いた話だと、教会の規模に寄るけど、教会には2人~10人は神聖術が使える聖職者が居るのが普通らしい。この村の聖職者はライラさん1人だけらしいから、もう少しマシな術が使えないとお布施を集めるのも大変だろう。


 ライラさんを鑑定で見てみたけど聖属性の適性は持っていない。なので聖属性神術が使えない事は無いけど、低い適性を持っている人よりも覚えるのに時間が掛かるし神力消費の割に効果も出ない。一番簡単な癒しの加護って事は初級魔法イルォーは一応覚えているけど、アレの効果が低いものだったら転んで出来る擦り傷程度しか治せないだろうから、お金を払って治療してもらうほどでもないよね。


 それで農場で働いて生活費を稼いでいる訳か……適性の無い神術を覚えるのは並みの努力では無理だとエミルが言っていた。でも、それほど難しい事をやってのけた人が適性に合わせた魔法を使えるようになればかなり有効な生活手段を得られるだろう。


 見た所、ライラさんの適性は、水、土、それと纏……稼ぐ方法があるじゃないか。


「ライラさんは癒しの加護以外の神聖術は使えないんですか?」


「破魔の加護や護りの加護? 私には難しいね。弱い癒しの光がやっとだから」


 えっと、破魔は浄化、守りは結界の神術かな? どちらも聖属性だな。


「神聖術って水や土の属性はないんですか?」


「属性って魔法の話でしょ? 神聖術にはそういった属性っていうのは無いよ」


 聖属性しか教えていないって事? 偏った教え方してるんだな。それで適性の無い人にも無理やり聖属性を覚えさせているのか、勿体ない。


「ライラさん、聖職者って魔法を覚えちゃダメなんですか?」


「ううん、そんな事ないよ。貴族家の出身者は使えるし、魔法は使えると便利よね」


「じゃあ、魔法を覚えましょう。農場のお手伝いをするより余程お金が稼げます」


 材料費なしで作れる魔力水がライラさんだけで作れるんだから覚えない手はない。


「簡単に言ってくれるけど、魔法を覚えるには何年もの訓練が必要だって聞いたよ? 今から覚えるってなると私じゃ何年掛かるか」


「癒しの光は使えるんですよね?」


「一応ね。気休めにもならないくらいしか効果が無いけど」


「僕は鑑定が使えるんですけど、見たところライラさんに回復系の術を覚える素養はありません。適性の無い術を使えるようになるには適性がある術を覚える10倍以上の努力が必要なんです。ライラさんには水、土、錬金の魔法適性があるので癒しの光を覚えられたライラさんならそれほど時間を掛けずに初級の魔法なら使えるようになりますよ」


「それは分かったけど、その魔法を覚えるとどうしてお金が稼げるようになるの? 私、魔法の事は全然分からないから……」


「今挙げた3つの魔法の中で特に重要なのは錬金です。これが使えるようになると魔力水や魔鉱といった高値で取引されている物が作れるようになるんです。魔鉱というのは鉄や銅などの金属を錬金で変質させて作る事が出来るんですけど、材料費が掛かるので今の此処の財力では原料の仕入れが出来ません。そこで魔力水なんですが、これは魔法で作り出した水が原料なので水魔法の適性も持っているライラさんなら材料費を掛けずに魔力水が作れるという訳なんですよ。まあ、容器は購入しなくちゃいけないですけどね」


 鉄や銅を仕入れるよりは容器代の方がだいぶ安い。


「高値ってどれくらいで売れるの?」


「初級魔力水1本(100ml)が600デニールで市販されています」


「600デニール!? えぇっと、私の農場でのお給金が1日25デニールだから……それ1本で農場の1月分くらいのお給金が稼げるの? でも、そんな高級品この村では売れないよ?」


「週に1度商業キャラバンが来るんですよね? その商人さんと交渉して纏めて買ってもらえば良いですよ。市販するよりは安くなりますけど、商人なら儲け話には飛びつくと思いますんで」


「なるほど、その手があったわね。でも魔法を教わる授業料とか高いんじゃないの? お金ないよ?」


「お金はいりません。その代わり僕達がカナイ村に居る間の宿賃を無料にしてください」


「そんなので良いなら何日でもOKよ」


 二つ返事でOKをもらい、宿代がタダになった。ライラさんも「これでみんなを飢えさせずに済む」と大喜びだ。



 ━━翌日。ライラさんは農場からお休みを貰って朝から魔法の訓練を始めた。農場にはライラさんの代わりにダン、フーリ、グイの3人が行っている。農場側も1人分の給金で3人働かせられるので喜んで了承してもらえたし、ダン達もライラさんの役に立てるのが嬉しいらしくやる気満々で出かけて行った。レオナとエミルには村の外に野草などの食料集めに行ってもらっている。肉ばかりだと栄養が偏るしね。エミルが居るから無茶はしないだろうし任せて大丈夫だろう。


 魔法(神術)を教えるのは僕の役目。知識量はエミルの方が多いのだけど、僕は神眼があるお陰で神力の動きや変化具合、消耗具合等色々な情報を見る事が出来るから効率を考えると僕が教える方が良いし、僕ももっと無詠唱で使える魔法を増やしたい。という訳で、エミルには自分の勉強にもなるからと理由を付けて僕が教える事にしたのだ。


 因みに普通は目で神力の動きは見えないらしい。エミルは神力の動きを肌で感じ取る事が出来るらしいので、たぶんそれが一般的なんだろう。僕も目だけに頼らず、肌で感じ取れるように練習しておこう。


「じゃあ、実際に使わなくても良いので癒しの光を発動する直前の所まで神力を練ってみてください」


 ライラさん達神聖教の人も魔力ではなく神力と呼んでいるらしいので、馴染みのある神力という言葉が普通に使えて楽だ。


 まずは、どれくらい神力操作が出来るのかを見る為に実際に癒しの光の時の神力操作を見せてもらった。


 ライラさんが女神像と同じ祈りのポーズをとり集中すると、体の中心から両腕を通して握られた掌の中に神力が集まる。


「ふうっ、こんな感じよ」


 思った通りスムーズに神力を集めることが出来ている。これなら詠唱を覚えれば直ぐに初級魔法の発動は出来るだろう。


「良い感じだと思います。毎日、今と同じように神力を練り上げる練習を欠かさなければ、錬金の方も同時に出来るようになると思うので、練習は続けてください」


「うん、朝晩のお祈りの後に練習するように、習慣づける事にするよ」


 此処からはグラダの町で購入した初級魔法書を見せてまずは水の詠唱魔法の練習だ。複製はダメって言われたけど人に見せるなとは言われていないから問題はない……筈。


「まずは詠唱文を覚えましょう。結構読みづらいですけど、間違えない様に繰り返し読みあげてください。魔法を発動するのは詠唱を完全に覚えてからなので、意識しなくても良いです」


 まずは詠唱を読み上げる練習。これが出来なきゃ始まらない。


「分かった。ラ、リ、リ、リ、ラ、ラ、ロ、ル、リ……書いて覚えたらダメなの? これを読み上げだけで覚えるのって難しくない?」


 僕もそう思う。書きながら読んだ方が絶対に覚えが早いだろう。


「この内容って複製したら重犯罪になるらしくて……書くと複製になっちゃうから読み上げで覚えないとダメなんですよ」


 問題ないかも知れないけど万が一法に引っ掛かった場合、物理的に首を斬られるらしいので最善の注意を払うべきだろう。


「それはぁ……面倒ね。うん、頑張って覚えるよ」


 ここからひたすら読み上げの練習が始まった。本を見ながらラリリリララロル、本を閉じてラリリリララロル側から見たら奇声を上げているようにしか見えない。教会に残っている子供達がライラさんの詠唱練習を見て真似をして笑い転げる。


 僕も一緒に練習をしているので教会内が水浸しにならないように外でやっていると、通り行く人たちからヒソヒソされてしまう。ライラさんは少し恥ずかしそうだ。


「〝ラリリリララロルリルロラロルロリラレ〟ジョルォー」


 ライラさんの隣で同じ詠唱をしながら僕が魔法の練習をしているのでこれが魔法の練習だと理解した村人は段々変な目で見ることはなくなった。けど、まったく間違えずに水魔法の詠唱をしている僕を見てライラさんが少しへこんでいる。


「なんでそんなにスラスラ唱えられるの?」


「慣れです。僕も最初の内はよく舌を噛みました」


 まあ、1日で慣れたけど。とりあえず納得したようで読み上げの練習に戻る。


 初級水魔法ジョルォーは水を発生させるだけの魔法(神術)なのでどこかへ飛んでいく事はないけど、5Lくらいの水が手から零れ落ちるので今は適当に教会の周りに打ち水している。ジョルォーと一緒に初級水魔法アスキューも練習する。アスキューは直径2㎝ほどの氷を数個作る初級魔法。何故覚えているのかと言うとある物を作る為だ。


 お昼まで繰り返し練習して水神術の無詠唱に成功した。水も氷も作り放題だ。



 よし、これで魔力水が作れるぞ。


 先日エミルに教わった魔力水(マナポーション)の作り方は、水神術で作った水を綺麗に洗って加熱消毒したガラスか陶器の入れ物に溜め、そこに錬金魔法で神力を注入するという方法だ。水神術で作り出した氷の器でも代用は可能で、要は雑菌が入らなければ良いのだ。アスキューの練習はこの為のもの。氷を無詠唱で作れるようになれば形状もサイズも神力操作次第で自由に変化させられる。とても便利だ。


 まず、氷の器を作りその中に魔法水を溜める。その器に神力を纏わせて色の変化を見ながら魔力水を作る。凡そ1分ほどで半透明の黄色い液体が完成。氷の器も黄色くなった。


 この氷を食べても神力が回復するみたいなので、食べやすい形にして入れ物事食べるのも有りかも知れない。丁度夏だし。


 エミルの話だと、販売されている一番効果の低い薄黄色の魔力水でも100ml作るのに普通の人は30分ほど掛かるという事だけど、魔鉱の時と同じで僕が作るのは時間が掛からなかった。


 神眼で鑑定したら【神力水(神力を含んだ水、飲むと神力が回復する)】となっていた。並みの大人ならこれ1つで神力が完全回復する。錬金魔法を使うには無詠唱魔法を覚える必要があるので僕がいつでも魔力水を作れたらライラさんの練習効率も上がる。


 反復練習をするにも度々神力枯渇してちゃ効率悪いからね。


 まあ、その前に詠唱で発動出来ないと先に進めないんだけどね。


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