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ファーマ君の気ままな異世界生活  作者: 幸村
第2章 浮遊島
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第2話 ファーマ君、カナイ村の子供達と出会う

 グラダの町を出てから4日目。あと2日も進めば次の町に到着する予定。


 今日も旅は順調そのもの、エミルと何気ない会話をしながら本を読んでいると、文字の勉強をしていたレオナが突然顔を上げ、牛車の前方に顔を出して耳をピクピク動かしている。


「ファーマ様、人、魔物、沢山……です」


 レオナが気付いたのとほぼ同時に僕の広域視にも、こちらに向かってくる人達が映る。


 見えたのは13人の足の短い丸々太った鳥に跨った男性。全員が口の周りに髭を生やし、ぼさぼさの頭で、薄汚れた布の服の上に、魔物の外皮で作ったと思われるフサフサのベストを羽織っている。あの恰好は流行っているのか? 夏に毛皮は暑いと思うんだけど……


 全員が武器を所持していて、小剣が3人、斧が4人、槍が2人、弓が4人と、バラエティーに富んでいる。


 僕達は一旦牛車を停め、馭者台から身を乗り出し警戒を高める。━━十数秒後。


「へへへっ、護衛も付けずに旅とは間抜けだな」


 牛車の進行を遮るように塞ぐ髭の団体がニヤニヤと嫌な笑みを浮かべ話し始めた。男性たちの1人が望遠鏡みたいなのを持っているからアレで僕達を見付けたんだろう。


「おおっ、上玉じゃねぇか。他はガキが1人と、ありゃ魔人か?」


「おれぁ、あの小っこいのがそそるぜ」


「かあーっ! 相変わらずてめぇは少女趣味だなぁ」


「るっせぇ! 人の趣味にケチつけんじゃねぇよ」


 ……ひょっとしてアレは僕の話をしているんだろうか?


「おうおう、女3人で旅してるってこたぁ。襲ってくれって言ってんだよな?」


 やっぱり、僕が女の子だと思われているようだ……失礼な。


「おじさん達何者ですか? 言っておきますけど僕は男ですからね?」


「ファーマ様、今は其処を気にしている場合ではないと思うのですが?」


 いや、そこは1番大事でしょ?


 意外と冷静に突っ込んできたエミル。この人数差で普通の人が冷静でいられるのは凄いね。もし戦闘になっても勝てる自信があるって事かな? レオナもいつでも飛び出せるように低く身構えて戦う気満々だ。


「見ての通り、俺たちゃ盗賊だ。目的は言わなくても分かるよな? 女と金目の物だ。男とガキに用事はねぇ。持ってる(もん)とその女置いて消えな。命だけは助けてやる」


 「言わなくても分かるよな」と言いながらちゃんと説明はする辺り、おつむは宜しくないようだ。話しぶりで想像はしていたけどやっぱり盗賊か……なるほど、あの恰好は盗賊の間で流行っているのか。センス最悪だよね。


 盗賊は働かず税金も納めなかった人達が町を出て生きる為になるのだとマルガンさんに教わった。そういう人が全て盗賊になるのではなくほんの一部の人がそういう選択をするらしい。危険を冒して人を襲うくらいなら普通に働けば良いのにね。


「エミル、結界をお願い」


 僕が小声でそう言うと、エミルは小さく頷いて、耐物理結界を無詠唱で展開させた。牛車の周りを半透明の光の壁が被う。


「ロロロロレリレリロララリララロラリレレリロルレ〝ボルカ〟」


 結界が張られるのと同時に最近覚えた火魔法(神術)を唱えて盗賊達に放った。初級火魔法ボルカは一瞬だけ炎を燃え上がらせる小範囲魔法だ。コンロの火が中々着かない時に出たガスに火が付き一瞬だけ燃え上がるアレみたいな感じで、殺傷能力は無いけど結構熱いので驚かせる事は出来る。


 火に包まれた盗賊達は髪や眉がチリチリになって乗っていた鳥も錯乱しロデオ状態になり、数人が悲鳴を上げながら振り落とされる。初級魔法でも相手が毛皮のベストなんか着ているからよく燃えるな。


「次は消し炭にするよ。死にたくなかったら消えてね」


 馭者台から見下ろしながら薄ら笑いをすると、脅しが聞いたようで盗賊達は悲鳴を上げながら大慌てで散り散りに去って行った。


 初級魔法書に掛かれている神術には殺傷能力がある程強いものはないので、消し炭には出来ない。だけど、平民で神術が使える人は殆どいないので脅しに使うには充分だ。


 引き返して来ないか警戒しながらその場を離れたけど、盗賊達が戻ってくる様子は無かった。これに懲りて、真っ当になってくれたら良いんだけど……


「さっきの鳥ってギルドで見かけなかったけど僕達でも手に入れられるのかな?」


 長旅じゃなかったらあっちの方がお手軽で便利そうだ。


「クワクですか? あれは卵から孵化する時に最初に目にした者にしか懐きませんので、手に入れたいのであれば野生のクワクの卵を見付けて自分で孵化させなければいけませんよ?」


 なるほど、擦り込みを利用している訳か。って事はあの人達が卵を温めて育てたって事だよね? ……凄い光景を想像してしまった。


「へー、それでギルドでも売ってなかったんだね」


「それよりもファーマ様、見逃して良かったのですか?」


「さっきの盗賊?」


「はい、今回は大人しく引き下がりましたが、また襲って来ないとも限りません。あの場で全員始末するのが良かったかと」


 そう言ったエミルの顔は真剣だった。盗賊を見逃すというのはこの世界では良くない事なんだろうな。町の近くなら捕まえて正騎士さんに引き渡すんだけど、ここは町からも遠いし人を殺すというのはまだ覚悟が決まらない。どうしようも無くなったらやるしかないんだけどもう少し心の準備期間が欲しい。


「うん、そうかも知れないけど、なるべくなら人は殺したくないんだ。ごめん」


「いえっ、ファーマ様が謝る事はありません。私の方こそ出過ぎた事を申しました」


「そんな事ないよ。また僕が間違った選択していると思ったら遠慮なく言って。僕も解らない事が多いし、その方が僕の為にもエミル達の為にも良いから。頼りにしてるよ」


「勿体ないお言葉。私に出来る事は多くありませんが、なんなりとご相談ください」


「うん、ありがとう」


 そんな事を思いながら進み、盗賊に遭った場所から5kmくらい離れた森の近くで、お昼休憩をとる事にした。


「レオナは薪を集めて来て。エミルはポークンに水と餌をお願い」


「あぅ、頑張る……ます」


「はい、お任せください」


 午後からも頑張ってもらわないといけないからしっかりした食事を作ろう。今日のお昼はスタンブゥのステーキサンドと、道中採れた野草の炒め物、ミールワームのカリカリ焼き。飲み物はミイルクで、デザートはヨウグルのアプリルジャム乗せ。


 ミールワームは、見た目はミミズみたいで大量に袋に入っている姿は不気味だけど、結構おいしい。焼き、揚げ、煮込みどんな調理法にも合い、栄養価も高いし値段も安い。一般庶民には重宝する万能食材で、内臓を抜いて乾燥させておけば1年以上保存できるから旅にはもってこいだ。


 錬成で土窯を作り、レオナが薪になる木や枯れ草をもって帰って来たので調理開始だ。




「ファーマ様、人、来る」


 調理をしていると、レオナが後ろを振り向いて声を掛けてきた。近づいているのは僕と同じくらいの年から少し年上らしき男女の子供が5人。バットみたいに削った木の棒を持ち、料理の匂いに釣られているように鼻を上げてヒクヒクさせながらこっちを指さしている。


 今回は子供なのでそれほど警戒はしなくて良いだろうと思うけど、さっきの事もあるしとりあえずは調理を中断して武器を手にする。それにしてもよく人に会う日だな。


「子供ですね。ですが武器を手にしています。お気を付けください」


「了解。でも相手は子供だから、もし何かして来ても怪我はさせないように取り押えよう」


「解りました」


「あぅ」


 こちらが身構えていると、子供たちは僕達が警戒している事に気づいたようで、慌てて手に持っていた棒を地面に置き手を上げた。


「お、お願いだからうたないでくれ、何もしないから」


 相手の1番体の大きな男の子にそう言われて、エミルは番えていた矢を外し、弓を下ろした。


「僕達に何か用?」


「用というか……俺達はこの近くの村に住んでいるんだけど、食べ物を探していたら良い匂いがしてきたから来てみたら、お前達が見えたんだ。遠目で見て盗賊には見えなかったから、その、食べ物を分けてもらおうと……」


 なるほど、そういう訳か。僕と話している子以外の子供達は料理の方に目が向いている。余程お腹が空いているんだろう。袖振り合うも多生の縁と言うし、食事を分けてあげるのは問題ない。


「事情は分かったよ。丁度今、お昼ご飯を作っている所だから一緒に食べる?」


 僕が了承すると、エミルが小声で「大丈夫だとは思いますが最低限の警戒はしておいて下さい」と、注意をしてくれた。僕はエミルの目を見て、頷いて笑いかけた。


「本当に良いのか?」


「うん、今のところ食料には余裕があるし、1食くらいなら分けてあげても問題ないよ」


「「「「「ありがとう」」」」」


 子供達は僕達に礼を言うと、地面に座ってワイワイ話始めた。待っている間に、レオナの手や耳に気が付いて少し驚かれたけど、この子達は亜人を初めて見たらしく、これと言って偏見は持たれなかった。むしろレオナの可愛さに照れている男の子もいるくらいだ。調理量が倍以上になったけど、予定通りの品を作り、全員に手渡す。


「なんだこれ? 初めて見る食べ物だ」


「美味しそう」


「1人分で、こんなに食べても良いのか?」


「凄―い」


 渡された料理を見て近くの村の子供たちは目を見開いて生唾を飲み込んでいる。


「はい、じゃあ、みんな手を合わせて」


 僕達が胸の前で手を合わせると、それを見た村の子供たちが不思議そうにしながら真似をする。


「いただきます」


「「いただきます」」


「え? あ、いただだきます?」


「いだだます?」


「いたたきます?」


 僕達に釣られるように村の子供たちも口々に「いただきます」を言っているけど、3人間違っている。


「これは、前に僕が住んでいた地域で、ご飯を食べる前に捧げる祈りみたいなものなんだ」


「へー、変わった祈りをするんだね」


「簡単で良いな」


「それより、もう食べても良いのか?」


「どうぞ」


 どうぞと言うと、村の子供たちは勢いよく食事を始めた。エミルとレオナは僕が1口食べるのを待って食べ始める。別に待たなくても良いのだけど、奴隷教育は中々抜けないようだ。


 どの子も夢中で食べてくれている。男の子3人は口いっぱいに料理を詰め込むようにして必死で食べている。美味しいとは言ってくれているけど、あれでは味が解らないだろう。


 ある程度食事が終わったところで、少し話をした。この子達は、ここから北西に2kmほど行ったところにあるカナイ村という小さな村の子供で、1番大きな男の子はダン9才、次に大きな男の子がグイ8才、次の男の子はオタル7才、女の子は年上の子がフーリ10才、年下の子はロナ6才。ダンとロナが兄妹で、フーリとオタルが姉弟らしい。


「それ、ちょっと分けて」


「あんたはもう食べたでしょ? これは私がゆっくり味わって食べるの」


「そうよ、そうよ。がっつくからいけないんでしょ」


「「ねー」」


 男の子達は一気に食べてしまった様で、デザートのヨウグルをジャムと混ぜながら少しずつ食べている女の子の手元を見て、食べたそうにしている。フーリとロナは声を揃えて拒否した。仲良いな。


「食べ足りないなら、もう少しデザート出そうか?」


「「「「「ほんとに?」」」」」


 うおっ! 息ピッタリだな。レオナも一緒に目を輝かせているのが何とも可愛い。


 全員の空いたお皿にアイスクリンをお玉で1掬いずつ乗せてあげると、今度は男の子達もしっかり味わって食べている。エミルとレオナもアイスクリンは大好きなのでとても至福の表情だ。もうすっかり警戒は解いたようだな。


「みんなはどうして子供だけで食料探ししてたの? 村や町の外は魔物とかいて危険なんだから、普通は大人と一緒に出るもんだよね?」


「俺達は孤児でさ、いつも面倒見てくれるシスターがいるんだけど、仕事とか家の事とかでいつも大変そうだから、俺達も少しは役に立ちたくてたまにこうやって食べる物探しに来てるんだよ」


 孤児か……奴隷商の一般奴隷に登録している子達は殆どそうだって言ってたな。ダン達の話では村は町より住民税が安いから、お世話をしてくれているシスターさんが代わりに払ってくれているので村にはいられるのだけど、シスターさん1人に負担を掛けているので、少しでも役に立とうと家の事を手伝ったり、こうしてたま子供達だけで木の実や野草なんかの食料を探しに出ているらしい。


「俺達にもっと狩りとか出来るくらいの強さがあったらシスターもあんなに苦労しなくても良いのに……」


 ダン達は悔しそうにうつむいている。子供のそんな顔を見ていると放っておけないので僕はダン達の村に寄る事にした。


「エミル、レオナ、少し寄り道しても良いかな?」


「ファーマ様がそうしたいのなら良いと思いますよ」


「あぅ、どこ行く、一緒……です」


 エミルとレオナの了承も得られたので、ダン達に村に行きたいと伝え、案内してもらう事にした。


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