第17話 ファーマ君、仲間達と買い物に出かける
今日は朝から商業ギルドに顔を出した。受付にはいつも通りニーナさんが立っている。
「こんにちは、今日は旅の準備に色々買いに来ました」
「あのね、ファーマ君。いつも言っているんだけど、ここは個人が買い物に来るところじゃないのよ?」
今日もニーナさん節は絶好調の様だ。いつもの事なので気にせず買い物をしよう。
「旅をするのに馬車が欲しいんですけど、ここで買えますか?」
「バ車? ウンバってかなり高級品だから余程のお金持ちじゃない限り、荷車はポークンに引かせるのが一般的よ?」
ウンバ? ポークン? 馬車で通じるって事は、ウンバは馬の事だろうけど、ポークンって何だろう? 名前からすると豚みたいな生き物かな?
「ポークンってなんですか?」
「あら、見た事ない? 町中でも結構走っているのよ? まあ、良いわ。付いて来て」
ニーナさんに連れられて、商業ギルドの一角にある生き物を取り扱っている所へ来てみると━━
「牛だ! 牛が居る」
そこに居たのは丸々と太った真っ黒な牛……いや、牛とは少し違う。角が無いし、牛より真ん丸で可愛い感じだ。鳴き声は山羊に近いか? 名前が豚肉で見た目は牛、鳴き声は山羊って……ややこしいな。
「ウシって何? これがポークンよ」
なるほど、この世界では馬車じゃなく牛車が一般的だったんだな。牛が居るなら乳製品もあるのかな? 見た事ないけど。
「ニーナさん、このポークンの乳とか乳を使った食料品とかもあるんですか?」
「ええ、あるわよ。ここでも売っているし、設備の整った料理屋に卸しているから、そこに行けば食べられるわ」
乳製品はどうやらあるらしい。料理屋で販売してるのか、この町に来てから外食はしたことが無いから知らなかった。
「製品って見る事出来ますか?」
「大丈夫よ。色々あるけど全部見てみる?」
「はい、お願いします」
ニーナさんに案内されて来たのは食品を置いてある大きな冷蔵庫。さすがは商業ギルドというべきか、ここの冷蔵庫は大きな倉庫だった。大量の食品が所狭しと、木箱に入れられ積み上げられている。
牛乳があった。それと、チーズやバターそれとヨーグルトまである。さらに冷凍品倉庫にアイスクリームまで置いてあった。商品名はミイルク、チイズ、バタア、ヨウグル、アイスクリンになっている。これはたぶん同じ世界から来た転生者が作った商品だろう。前の世界の商品名と似すぎている。開発者は100年ほど前に亡くなっているそうだ。
アイスクリンはこの町では、此処と中央街の料理屋にしか置いていないらしい。
値段的には少し高価なくらいで、リリ達の収入でも買えない事は無いのだけど、保存が出来ないから一般庶民は滅多に口にする事は無いらしい。
とりあえず、チイズとバタアは3㎏ずつ、ミイルクとヨウグルは1リットル購入。家に帰ったらリリ達と一緒にミルクパーティーだな。
アイスクリンは持って帰っても溶けるので、購入してその場で食べた。前世から含めて初めて食べたアイスクリームの味は格別で、濃い牛乳の旨味と甘味が口一杯に広がり、牛乳の良い匂いが鼻を抜け病みつきになる美味しさだった。エミルとレオナも幸せいっぱいな表情で無言で食べている。
これは冷凍庫作ってkg単位で購入しよう。丁度都合よく水結晶を持っているし、水冷器の応用で簡単に作れる。
アイスクリンを食べて満足した後は、目的の物を購入だ。ポークン1頭と荷車(屋根付き)1台、3人入れるテント、干し肉や野菜類、塩、胡椒、とうがらし等の調味料色々、エミルとレオナの服を作る為の生地、それとこの国の地図。武具も買おうと思っていたら、それはギルドでは作っていないと言われた。
仕方ない、武具はダンキー・ホテイで買おうか。牛車(ポー車というらしい)の操車はエミルが出来るらしいので、馭者はエミルに任せて、後々教わろう。因みにウンバというのはやっぱり馬だった。安い馬で1頭10万デニールするらしい……マルガンさんは商業ギルドマスターだからお金持ちなんだろうけど、テレスティナさんもお金持ちだったんだな。馬車に乗馬、貴重な体験をさせてもらってた事に今、気が付いた。
ここでの買い物を終え。早速、牛車の乗り心地を体感する為、エミルの操車でダンキー・ホテイに向かった。家にはポークンを置いておける場所が無いので、試乗が終わったら、旅立つ日までギルドで預かってくれる事になっているので、そこは安心だな。
速度はママチャリ程度だからそれなりに早く、乗り心地はあまり良くない。椅子部分が木なのでお尻が痛くなりそうだ。あとで座面にクッションでも付けて長時間乗っていてもお尻が痛まないように作り直そう。
ダンキー・ホテイに到着すると、牛車は預かってもらえるところがあるので預かってもらい。早速、武具コーナーに向かった。
「エミルはどんな武器が得意なの?」
「私は、弓が1番得意です。あと剣を少々使えます」
「レオナは、たぶん武器使った事ないよね?」
「あぅ、無い……です」
まあ、それは予想してたけど。でも、この手じゃ武器は持てないよね? キャッツ族って戦闘はどうやっているんだろう?
「レオナは狩りをしていた時はどうしていたの?」
「狩り、これ、使う……ます」
レオナは手を前に出して指の先からニョキっと爪を出した。
「なるほど、自前の武器がある訳か。じゃあ、防具だけ買えば良い?」
「動き、遅い、ダメ……です」
動きを阻害しないものなら良いかな? とりあえず、付けさせてみてから意見を聞いてみよう。
武具は、エミルは鉄のショートソードと木製の短弓と矢を50本購入。弓は木製だけど、エミルが見てこれが1番扱い易く威力も高いと選んだものだ。
レオナには手甲なら大丈夫と言ってくれたので肘から手の甲を守れる革製の手甲を購入。少し大きいのは、あとで調整すれば良いか。
身体はデーア母さんに貰った聖天布(ファーマの服の素材)で服を作れば刃を通さないので、エミルには戦闘用に服を作ってあげれば大丈夫だろう。弓を使うんだったら胸当ては必要だろうから革製の胸当てを購入。レオナはロングコートがあるから問題ない。
それと、エミルはサンダルみたいな動きにくい靴でレオナは裸足だったので、2人には動きやすく丈夫な靴を購入した。
そして、最後にもう1か所寄る所がある。
「ギドラさん、こんにちは。また収納魔法道具を買いたいので案内してもらっても良いですか?」
僕は前回お世話になったギドラさんを見付けて、案内をお願いした。
「おお、あの時の坊主か。今日はそっちの2人に買ってやるのか? ……あれ? そっちのは、ひょっとして?」
フードで耳は隠せても手だけはどうにもならない。ギドラさんはレオナを見て、眉をしかめる。
「はい、この子は亜人です。亜人の子が一緒だとダメですか?」
「いや、ダメじゃねえよ。亜人を連れて歩く奴を見たのは初めてだから少し驚いただけだ」
ギドラさんの話では亜人、特に魔人は連れて歩いている人は珍しいらしい。殆どの魔人は騎士団の訓練や、実験動物として扱われている為、ちゃんと服を着せて連れて歩く人は居ないんだとか。
奴隷商でも同じような事を言われたな。
「亜人って言っても人間と殆ど変わらねぇのにな。貴族の奴らはなんで、こんな可愛い子供に酷い事が出来るのかねぇ? おっと、今のは聞かなかった事にしてくれよ。俺も奴隷にはなりたくねぇからな」
ギドラさんも亜人に対する偏見は無いみたいで良かった。この話からすると、一般人は亜人に対する差別意識を持っていないんじゃないか? まあ、たまたま僕の会った人が良い人ばかりなのかも知れないけど。
ギドラさんの案内で収納魔法道具の売り場に到着。今回は、ネックレス型の収納魔法道具を2つ購入する事にした。前回と同じ店員さんと一緒に奥の部屋に移動する。この店員さんはレオナを見て一瞬嫌そうな顔をしたけど、そこはプロ、直ぐに笑顔に戻って対応してくれた。
やっぱり、嫌がる人も居るんだな。
2人に収納魔法道具を契約させ、町中で武器を装備したままなのは好ましくないので、武器はネックレスに収納させた。
「見えるところにぶら下げていたら引きちぎって盗る人が居るらしいから、普段は見えないように服の中に隠しておいてね」
「かしこまりました」
「あぅ、解る……ます」
いつまでも、警戒していなくても良いように今度、腕輪型に改良しよう。




