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ファーマ君の気ままな異世界生活  作者: 幸村
第1章 グラダの町
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第16話 ファーマ君、エミルの秘密を聞く

 ギルドからは歩いて家に帰った。レオナはロングコートのフードを被せていたので、すれ違う人には殆ど亜人だと気づかれる事は無かった。けど、手は隠しようがないから、数人怪しげにこっちを見てくる人も居た。


 このまま連れて帰ったらリリ達に迷惑かかるかな? とりあえず、リリに聞いて迷惑になりそうだったら宿を探そうか。



 家に到着したけど、リリとミミはまだ仕事に行っていていない。帰りの道中、エミルとレオナのお腹が鳴っていたので先ずは食事を取らせることにした。


「ファーマ様、食事の支度なら私がやります」


「いや、今日は僕がやるから座ってて」


「しかし……」


「良いから、良いから、これは命令だよ」


 命令と言われてはエミルも反論は出来ない。渋々ながらも引き下がってくれた。材料は野菜と、カエルの干し肉がまだ沢山余っていたのでそれを使って、スープを作り、小麦粉をスイトンの様に練ってスープに入れる。夕食前だから軽めに、これだけにしておこうか。


「お待たせ。じゃあ、食べようか」


 僕はテーブルに3人分のスープを置いたのだけど、エイルもレオナも席に着こうとしない。


「どうしたの? 席について」


「いえ、奴隷が主人と同じ席で食事は出来ません」


「あぅ、余り、良い……です」


 なるほど、そういう教育を受けているって事か。


「言っておくけど、僕はエミルとレオナを奴隷として扱うつもりは無いよ? 2人とはこれから旅の仲間になるんだから、そのつもりでいてね。さあ、食べるよ、折角のスープが冷めちゃう」


 そう言っても中々動こうとしないから、無理やり命令で席に座らせ食事を取らせた。2人とも、ずっとろくな物を食べさせてもらっていなかったらしく、僕の作ったスープを一心不乱に食べていた。


 レオナはあの手でもスプーンくらいは持てるようだ。器用だな。


「お、お肉なんていつぶりでしょうか……」


「肉、幸せの、味……です」


 エミルもレオナもお肉に感動しているようで、涙を流しながら食べている。


 前世を思い出すな……給食の時間の僕ってたぶんこんな感じだったんだろう。気持ちが分かるだけにこれからは絶対にひもじい思いだけはさせないようにしないとな。


 スープはあっという間に完食し、レオナは物足りなかったのか皿まで舐めている。エミルは元貴族だけあってそこまではしなかったけど、名残惜しそうに皿を見つめていた。


「さてと、一応は食事も済んだし……レオナこっちに来て」


「あぅ」


「少しジッとしててね」


 僕はレオナに手を当て、回復魔法を発動させた。淡い光がレオナを包み、全身の痣や傷、それに古傷も全て消し去る事が出来た。凄いな回復魔法。


「どう? まだどこか痛い所はある?」


 何が起こったのか理解が追いついていないようでレオナは少し呆けている。エミルは僕の魔法に驚いているようだ。


「……あぅっ、痛い、無い……です」


「次はエミルの病気をなんとかしたいんだけど、浄化魔法で治せるかな?」


「ファーマ様にお話ししておかなければいけない事があります」


 エミルの病気の話になると、エミルは急に改まって話し出した。


「ん? どうしたの? 急に」


「この病は奴隷にされる時に自らかけた術式魔法によるものなので、自力で解除できます」


「嫌な相手に買われない為のカモフラージュって事?」


「はい、その通りです」


「へー、変わった魔法があるんだね。よく奴隷商にバレなかったね。治療や検査はされなかったの?」


「ここから先は、ここだけの話にしておいてほしいのですが、宜しいでしょうか?」


「うん、秘密は守るよ。レオナも人に言っちゃダメだよ」


「あぅ、秘密……です」


「ありがとうございます。少し長くなりますが━━」


 エミルは昔を思い返すように話を始めた。


 エミルは、貴族の生まれとは言っても、正規の子供ではなく、その家の主と働いていた魔法、魔法道具、魔法薬の研究員の1人の亜人の子らしい。亜人とは言っても奴隷ではなく、人間族の社会でもそれなりの立場で生活できている、エルフ族という人間の間では森人と呼ばれる長命で精霊術や薬学に長けた種族だという。それなりの立場とは言ってもやはり、身分は相当に低いらしい。


 普通であれば亜人というだけで毛嫌いされるのだけど、エミルの母は美しく雇い主であった貴族が無理やり行為を迫り生まれたのがエミルだったが、血縁上の父はハーフエルフであるエミルを自身の子である事を認めず、エミルは母の手1つで育てられたらしい。


敗戦後、血縁上の父は自身と他の家族の立場を守る為に、敵国に母と、母の研究資料、そしてエミルを自身の子として差し出し現在に至るという事だ。


エミルに掛けられているのはエミルの母親がエミルの身にもしもの事があった時の為に密かに開発した術式の1つで、精霊術と術式魔法を融合した特別なモノらしい。資料は残しておらずエミルの母親とエミル以外には解析、構築、解除できない仕組みになっているという事だ。


 エミルも大変な人生を歩んできているんだな。奴隷商にはハーフエルフだって事はバレていなかったようだし、この魔法と種族についてが秘密って事なんだろう。


「なるほど、じゃあ、属性適性や基礎能力を分からないようにしているのもお母さんの特別な術式?」


「え? どうしてそれを」


「僕は鑑定魔法みたいなものを使えるんだよ。悪いけど、奴隷商に居る時2人とも鑑定させてもらったんだ。あ、これは人に言わないでね」


「はい、決して他言は致しません」


「あぅ、話し、ない……です」


「1つ疑問があるのですが?」


「何?」


「私に掛けられている術式は、2つとも隠蔽の術式が組み込まれている為、鑑定魔法では認識すら出来ない筈の特別な術式なのですが、ファーマ様の鑑定魔法は何か特別な力があるのですか?」


「さっきも言ったけど僕のは鑑定魔法みたいなモノで、鑑定魔法ではないんだよ。それの遥か上位の力って考えてくれれば良いよ」


「解りました。深くは聞かない方が良いモノという事ですね」


 察しが良くて助かるな。今のところ2人には神眼や他の能力について詳しく話すつもりは無い。


「察しが良くて助かるよ。それで、もうカモフラージュは必要ないと思うんだけど」


「そうですね。あまり気味の良いモノでもありませんし、私も痒くて仕方ありませんので直ぐに解除致します」


 そう言ってエミルは自身に掛けられた術式を解除すると、顔のニキビみたいな酷い膿がスーっと消えて行きあっという間に綺麗な肌になった。術式解除後のエミルは、僕の予想を遥かに上回るほどの美少女で、透き通るほど綺麗な白い肌だった。


「病気が治ったら美人だろうとは思っていたけど予想以上に綺麗だね。カモフラージュしていた訳が解ったよ」


「お褒めにあずかり光栄です」


「でも、エルフ族って耳が尖っていると思っていたんだけど違うんだね」


「いえ、私はエルフとは言っても純血ではありません。人間の血が濃いようなので見た目は人間と殆ど変わりません。それでも母は私を大切に育ててくれました」


「そっか、良いお母さんだったんだね。お母さんはその後無事なの?」


「母とは引き渡された直後に別々になってしまったのでどうしているのかは解りません」


「ごめん、余計な事聞いちゃって」


「いえ、大丈夫です。母は研究命の人なので、今もどこかで研究に勤しんでいる事でしょう」


 エミルはそう言って寂しそうな笑顔を見せた。今は、どうしてあげる事も出来ないけど、エミルがこれ以上辛い思いをしないようにしてあげないといけないな。


「「ただいまー」」


 いつの間にか、夕方になっていたようで、リリとミミが家に帰ってきた。


「あれ? どちら様?」


「おかえり、リリ、ミミ。この子達は僕の旅に付いて来てくれるエミルとレオナっていうんだ」


「ああ、そういえば今日(奴隷商に)行くって言ってたわね」


「お姉ちゃん、この子……」


 ミミがレオナを見て驚いているようだ。リリもミミに言われてレオナを見て吃驚している。やっぱり亜人は受け入れられなかったかな?


「「可愛い!」」


 と、思ったら違った。2人はレオナを抱きしめて頭や手をモフモフしている。レオナはかなり戸惑っているようだ。


「……ファーマ様。この2人は亜人に対して差別的な扱いはしない方なのですね」


「うん、どうやらそうらしいね。僕も初めて知った」


 そういえば、リリは前に亜人に対するこの国の人の考え方を嫌がっていたっけ。


「リリに相談なんだけど、旅に出発する日までエミルとレオナもこの家に泊めてほしいんだよ。良いかな?」


「勿論良いわよ。あ、でも家賃は3人分頂戴ね」


「うん、勿論家賃も食費もきっちり払うよ」


 思いの外スムーズに話は付き、エミルとレオナは受け入れられた。


 この後、僕、リリ、エミルの3人で夕食を作り、レオナはミミに以前に買ったトランプで遊んでもらい、楽しく食事をした。そして……


「じゃあ、今日もみんなでお風呂に入るわよ」


 この家では薪の節約のため全員でお風呂に入る習慣がある。


「いえ、主人と同じ湯に入る事は出来ません。私達は、残り湯を頂ければ充分です」


「あぅ、レオナも……です」


「何言ってるのよ。この家で1番偉いのは家主である私よ? 私が全員で入るって言ったら入らなきゃダメ。さあ、行くわよ」


「2人とも家主の言う事は聞かなきゃダメだよ。これは命令です」


 僕も、もう慣れたけど最初は抵抗あったんだよね。嫌だって言っても引きずって行かれるし、素直に一緒に入るのが1番。エミルとレオナは命令と言われては逆らう事は出来ず。大人しく一緒に入った。


 ……でも、子供が3人居るとはいえ、5人でお風呂に入るのは厳しい。湯舟は大人がなんとか2人入れる程度の大きさなので、全員で一緒に浸かる事は出来なかったけど、リリ、ミミ、レオナが先に浸かって僕とエミルは先に体を洗い交代する。


 お風呂のあとの睡眠も5人同じ部屋。寝返りをうつと誰かに当たってしまうので精神衛生上キツかった……まあ、直ぐに寝ちゃったみたいで気が付いたら朝だったけど。


 他にも部屋はあるのに何故1部屋にタコ詰めにするのかはよく分からないけど、リリとミミはみんな一緒が好きなんだろうな。と、いう事で納得した。


 さて、明日は旅に必要な物の買い物だ。


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