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ファーマ君の気ままな異世界生活  作者: 幸村
第1章 グラダの町
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第11話 ファーマ君、忠告を受ける

 連休が明けて、今日から営業を再開したけど今日は店が暇だ。いや、客足が落ち着いたと、言うべきか。ぽつぽつ、お客さんは来るものの、連休前に比べるとかなり少ない。他の店でも当たり前にブラジアとパンテイを販売するようになったのが原因だろうか?


「今日は暇ですね」


「いやいや、連休前までが異常に多かっただけで暇って事はないよ。これくらいが丁度いい、連休前みたいな忙しさがずっと続いたら倒れてしまう」


「商売人にあるまじき発言ね。そんなだからいつまでたってもお店が小さいままなのよ」


「無理に大きくする必要もないだろう? 家族が飢えることなく生活できているんだから。高望みしちゃダメだよ」


「はあ……まったく、お父さんは……」


 ワックスさんの言う通り、全然お客さんが来ていない訳でもないし、こういうのんびりした時間も悪くはないな。


「空いている時間は自由にして良いよ」


「はい」


 さてと、何をしようかな? ……あ、そうだ。


「ワックスさん、アンナさん、休日の間に魔法道具作ってみたんですけど、見てもらっても良いですか?」


「魔法道具だって? そりゃ、凄いね」


「あなた、そんな物まで作れるの?」


 かなり驚かれてしまった。


「そう大した物じゃないんですけど、飲み物を温める道具と、冷やす道具を作ってみました」


 僕は湯沸かし器と水冷器を2人に手渡し、使い方を説明する。


「こりゃあ、便利だね」


「これ1つあれば、薪代がかなり少なくて済みそうね。もっと大きいのを作ってお風呂が沸かせると薪代がいらなくなるわね。そういうのは出来ない?」


「作ろうと思えば作れない事もないですけど、お風呂を沸かそうと思ったらそれなりに材料もいりますし、神り……じゃなくて、魔力の消費も多くなるんで一般向けじゃなくなるんですよ」


「そっかぁ、残念。でもこれ良いわね。絶対に売れると思うわ」


「もう、ギルドには登録したのかい?」


「いえ、ワックスさんの意見を聞いてからにしようと思いまして」


「なら、店は良いから直ぐに行ってきなよ。発想は新しいけど、作りは単純そうだから、たぶん直ぐに真似されちゃうだろうし、広まる前に急いだ方が良いよ」


「分かりました。じゃあ、ちょっとだけ失礼します」




 ワックスさんに勧められて、早速商業ギルドに顔を出すと、受付には昨日と同じく、ニーナさんが居た。


「こんにちは」


「いらっしゃいファーマ君。ここの所、毎日顔を出しているわね」


「はい、ここってなんでも揃っているから便利なんですよ」


「確かに、ここ以上にモノが揃っている所はないわね。本当は個人に売買する所ではないんだけどね。で? 今日は何が欲しいの?」


「いえ、昨日早速、魔法道具を作ってみたんで、試作品を見てもらおうと思いまして。新商品登録も出来れば良いなぁ、なんて思ったりなんかして……」


「はあ? 昨日の今日でもう作れたの? あなた天才?」


 そんなに驚かなくても……まあ、天才と言われれば、神様から凄い能力を貰っているから間違いではないな。


「そんなに難しい物は作れてないですよ? 簡単な魔法式で作れる物ですし」


 複雑な機能は付いてないし、魔法道具が作れる人なら直ぐにでも作れるんじゃないだろうか?


「難しい物とか、簡単な物とかいう問題じゃないけどね……まあ良いわ。ちょっと待てて」


 ニーナさんは、奥の部屋に入って行き、数分後、ギルドマスターのマルガンさんを連れて戻って来て、そのまま別室に案内され早速、湯沸かし器と水冷器をテーブルに置き商品説明をしようとすると。


「ふむ……一昨日本を買って、もう、魔法道具が作れるとは……異常じゃのう。お前さんは」


 異常と言われてしまった……そうなのか?


「でも、そんなに難しい術式は使っていないですよ?」


「そういう問題ではないのじゃよ。たった2日、本を読んだだけで術式を組めるのも異常なのじゃが、【魔鉱】の加工も難しいものなんじゃよ」


「そうなんですか? 僕は錬成魔法が使えるからそれほどでもなかったですよ?」


「……錬成魔法だけでこれを作ったというのか?」


「はい」


「言われてみれば継ぎ目がないのう……お前さん、とんでもない事をしている自覚は……なさそうだのう。子供とはいえ、常識がないというのは恐ろしいものじゃ」


 確かにこの世界の常識には疎いけど、特におかしな行動はしていない筈……


「知らぬようじゃから教えておいてやるがのう。錬成魔法だけで金属を加工するのは、魔力をそれなりに持った大人の術者が魔法石や魔力増幅の魔法道具を使っても1日にコイツを1個作れれば良い方なんじゃ」


 なるほど、それは確かに異常だ。


「僕、生まれは別の国だから、この国の常識には疎くて」


「どの国の常識でも異常じゃよ」


 でしょうね。僕も苦しい言い訳だと思ってました……


「ちょいと、お前さんの錬成魔法見せてもらっても良いかのう? 材料を持ってこさせるから少し待っていておくれ」


 そう言ってギルマスさんは部屋を出て行き。誰かに声を掛けると、数分後、職員さんが【魔鉄】と【銅】と材木を持ってきた。


「材料はこれで良いか?」


「はい、じゃあ、作りますね」


 僕は昨日の工程と同じように湯沸かし器を作成した。まったく同じものを作るので加工に時間は掛からない。ただ、魔法式を刻む魔鉄が小さいので、文字を書くのに少し時間がかかり、約15分ほどで部品が完成。それを組み立てる。


「……どんな育ちをすれば、こんな事が出来るようになるのか。お前さん、人前で錬成魔法は使わない方が良いぞ。使うとしても余程信用のおける人物の前以外では使わぬことじゃ。お前さんのような子供に、そんな力があると知られれば、必ず面倒な事が起こるからのう。もう手遅れかも知れんが、何か問題ごとが起こった時は、自分で何とかしようとせず、ちゃんとワシら大人に相談するんじゃぞ?」


「はい、ありがとうございます」


 良い助言を貰った。僕も面倒ごととかが起こるのは避けたいし、これからは気を付けよう。


「それはそうと、新作魔法道具の話じゃったな。これはどういう物なんじゃ?」


「はい、これはですね━━」


 僕は2つの魔法道具の説明をした。


「ほう、一般庶民向けの安価な魔法道具とは盲点じゃったな。造りは単純じゃが、子供らしい良い発想じゃ。値段の高い魔鉱の使用を最低限に抑え、魔法石が無くても使える。この方式を他の魔法道具にも応用すれば大幅なコスト削減にもなる。お前さん中々やるのう」


 魔法道具に魔法石を使わないという発想は無かったらしく、安価で作れる魔法道具はこれが初めてらしい。新しい販売ルートが確立出来そうだと、かなり喜ばれた。


「あったら便利だなくらいにしか考えていませんでしたよ」


「ふおっ、ふおっ、子供はそれでええ。そこから先はワシら大人が考える事じゃ」


 マルガンさんは優しく微笑んでそう言ってくれた。


 新規商品登録は間違いないだろうとお墨付きをもらって、サンプルに、さっき作った湯沸かし器と、水冷器も作って図面と一緒に渡し、僕はギルドを後にした。


 後日、これも開発者ファーマの名前で商品登録され、この2商品は売れに売れる事になる。これに類似した商品も開発され、各店で売られ始め、とんでもない額のマージンが振り込まれて、僕が慌てふためくのは、まだ先の話。


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