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ファーマ君の気ままな異世界生活  作者: 幸村
4章 王立学園
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第27話 ファーマ君、田植えを教える

 4月中旬。今日から早生米(白丸米)の田植えだ。


 デザリアで初めての米作り。日那国とは土壌の質が違うので成功するかは賭けみたいな部分がある。


 今日までに収穫まで育てられた作物は水辛草と黒皮豆の2種。紅棒草というアスパラを赤くしたような野菜も植えたのだけど上手く育たなかった。


 水辛草や黒皮豆と一緒に植えた白糖木は今のところ順調に育っている。このまま順調に育ってくれると秋には砂糖作り、初冬には甘い糖木の実を味わえる。楽しみだなー


 今回、白丸米を植えるのは現在開拓が出来ている米用農地の1割ほどの土地。白丸米は地結晶の粉を使うともち米みたいになってしまうので殆どは地結晶を使用せずに育て、餅も食べたいので一部の白丸米は地結晶を使ってもち米用に育てる事にしている。


 水田の準備は先月末から進めてもらい、いい感じの水田が作れている。


 因みにデザリアで竜を飼う事は出来ないので、水田を耕したのはポークン。酪農チームのみんなが頑張って僕が作った鋤をポークンに引かせて耕してくれたのだ。


 全員まとめて教える事が出来れば早いのだけど、他の作業もあるので今日は3分の1の人だけ集めて田植えを教える。


「始めに僕達が植えてみせるから、よく見ていてね?」


 一声かけると、みんなが声を揃えて「はい」と返事をしてくれた。


 2月から育てていた苗を適量、小脇に抱えて僕、エミル、レオナの3人で横1列に並んで植えていく。


 日那国で2回しか経験していないけど、かなりの量の苗を植えたので、3人共それなりにちゃんと植えられる。


 とりあえず1列ずつ植え終わりみんなのところに戻った。


「今やったようにみんなにも植えてもらうんだけど、見ただけでは出来ないので、僕達3人が指導に当たるから分からない事があればその時に聞いてね? じゃあ、6人ずつ教えるから待っている人達は植えているところを見ているように」


 僕達3人で2人ずつ担当して田植え指導を開始。


 先ずはリリ、ミミ、ダン、フーリ、ロナ、コテツの6人に教える事になった。


「僕がリリとミミに教えるからエミルがダンとフーリ、レオナはロナとコテツに教えてあげて」


「畏まりました」「うん、わかったー」


 3組に分かれての指導が始まった。


「じゃあ、2本ずつ手に取って指の第2関節が完全に埋まるくらいの深さまで植えてくれる?」


 通常、米を植える時は3~4本ずつ植えるのだけど、白丸米は他の品種に比べて大きく育つので2本ずつ植えるのだ。


「うん」


「まかせて」


 植えては1歩下がり植えては1歩下がりを繰り返し4歩目でミミが転ぶ、それにつられるようにリリも転ぶ。


「冷たい……」


「下着までビッチョビチョになっちゃった」


「まあ、慣れない内はしょうがないね。僕も日那国で教わった時は転びまくったよ。はい、2人とも手を貸して」


 リリとミミの手を引いて起こしてあげると、他の子達も全員転んでいるのが見えた。酷い転び方をした子は頭の先までビショビショのドロドロだ。


「あれ? さっき植えた苗が浮かんでるわ」


「あっ、私の方も」


「植える深さが足りなかったんだね。失敗した分は僕が植え直すから、どんどん植えていっていいよ。とりあえず、今回は練習だから」


 何事も経験だ。経験を積まなきゃ技術は身に付かない。本番は6月初旬の黄色米だから今回は気楽にやってほしい。


「あー、ずっと腰を曲げていると痛くなるわね」


「泥の中を歩くから凄く疲れるね?」


 1列植え終えたところでリリが腰をトントン叩き、ミミが足をブラブラさせて少し疲れた顔をしている。


「あまり無理せず休憩を入れながらゆっくりやればいいからね。もし、腰の痛みが酷くなったら回復魔法をかけるから言ってね? じゃあ、僕達は他の人達に教えに行くから続けて植えてくれる?」


「うん」


「頑張るね」


「本当に無理はしなくていいからね? 今回は本番に向けての練習のつもりでいいから」


 田植えはかなり足腰に響く。無理にやってギックリ腰にでもなったら大変だ。まあ、ギックリ腰も回復神術を使えば治療できるんだけど、かなり痛いそうだからならないに越した事は無い。


 田植え機があればそんな苦労はしないと思うんだけど、作ったら作ったでみんなの仕事を奪っちゃう事になるから直ぐに作る訳にもいかないんだよね。


 まあ、地道に慣れてもらうしかないな。


 このあと、1日掛けて全員に田植えを経験してもらい、案の定全員もれなく転びまくって全身泥まみれになった。


「はーい、今日はこの辺で終わりにするね。全員、お風呂に行く前に外である程度泥を落としてお風呂に入る事」


 排水溝が詰まる事は無いだろうけど、掃除当番の人が可哀そうだからね。


「「「「「はーい」」」」」


 みんな泥だらけなのに何故かハイテンションな返事が返ってきた。ひょっとして楽しかったのだろうか?


「あと、風邪ひかないようにしっかりと温まるんだよ? それじゃあ、解散」


 解散と同時にほぼ全員が用水路に飛び込み体の泥を落とし始めた。


 いや、そこで洗わなくてもお風呂の傍にお湯の出るシャワーがあるよね? まだ4月だから風邪ひいちゃうよ?


 子供達は男女問わず、その場で服を脱ぎ、用水路で濯いで全裸のままお風呂の方に歩いて行く。流石に大人達はその場で全裸になるなんて事はなかったけど、上着は脱いで水でスケスケになった肌着だけの状態でお風呂に向かっているので目のやり場に困る。


「あー気持ち良かったぁ」


「あぅ、ひえひえする」


 レオナとコテツも他の子達同様に用水路で泥を落として服を脱いでしまっている。


「2人とも、まだ外だから服は脱いじゃダメだよ? はい、これ羽織って」


 濡れた服を着せる訳にもいかないので大きめのタオルを肩から掛けて巻いてあげた。


 コテツはまだしもレオナはそれなりに成長しているんだから、そろそろ羞恥心というものを持ってもらいたい。まあ、レオナ達だけでなく一般奴隷の子達全員にも言える事なのだが……


 家に戻り4人でお風呂に入った。


「コテツ、こっち来て。頭、洗ってあげるから」


 用水路で濯いだとはいえ毛の根本にはまだ泥が残っているのでしっかりと洗ってあげないとね。


「いいなーファーマ様、レオナも洗って」


「うん、コテツが終わったらね」


 レオナは転んでいないのでそれほど汚れてはいないのだけど、コテツだけ洗ってあげるのは不公平だから、本人が洗って欲しいというなら洗ってあげないとね。


「あ、あの? 私もお願いしていいでしょうか?」


「勿論だよ」


 エミルが素直に甘えてくれる事はお酒を飲んでいる時以外では珍しい。けど、甘えられるのは嫌いではない。


 3人の頭を洗ってあげた後、お返しとばかりに3人に頭から背中まで洗われ、前も洗われそうになったのでそこはお断りした。いくら家族同然とはいっても、流石にそこは恥ずかしい。


 それから3日かけて全員に田植えを経験してもらい、漏れなく泥まみれになってもらった。


10日かけて何とか白丸米の田植えは終了。初めての田植えなので真っ直ぐ植える事は出来なかったけど、まあ、生育には影響はないだろう。……ないよね?


 上手く育ってくれるかが心配だな。まあ、失敗しても種籾はまだ残しているので次に繋がればいいや。

ストックが無くなりました。次回更新日は未定です。

出来るだけ早く再開できるよう頑張りますので気長にお待ちください。

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