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ファーマ君の気ままな異世界生活  作者: 幸村
4章 王立学園
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第25話 ファーマ君、グラダ出身の人達と交流を深める

「こんにちはー」


「いらっしゃいリリ、ミミ、セト」


 今日は久しぶりにグラダ出身の人達との交流会だ。同じ農場内に居るのに学園やお互いの仕事の都合で滅多に顔を合わせる事が無かったので偶には一緒に食事でもしようとお誘いしたのだ。


 カナイ村の子達も一緒に交流出来れば良かったのだけど、うちの居間はそれ程広くないのでカナイ村の子達とは別な日に交流する予定だ。


「どう? 3人とも、もうこっちでの生活には慣れた?」


「ええ、仕事は大変だけど前より気楽に生活出来て最高よ」


「あのおじさん達が居ないからお金もご飯も心配ないもんね」


「ファーマ、だっこ」


「セトー、元気にしてた? あんまり会ってあげられなくてごめんね」


 あまり顔を合わせていなかったのに抱っこをせがんでくれるなんてちょっと感動だ。


「だいじょぶ、アリッサあそんでくれる」


「そっかぁ、アリッサが遊んでくれるのかぁ。アリッサの事は好き?」


「すきー」


 うんうん、アリッサも好かれているなら良かった。


「もう、1カ月以上顔を合わせていなかったから忘れられないか心配だったけど、忘れら荒れていなくて、本当に良かったよ」


「忘れられる訳ないでしょ? 私達が毎日ファーマの事を話しているからセトはファーマの事大好きよ?」


「セトだけじゃなくて、みんなファーマの事大好きって言ってるよ?」


 それは嬉しいな。農場では家と工房とエルミナさんの家にしかいないから、みんなから雇い主として認識されていても好かれている自信は無かったんだよね。


「私も日頃から託児所の子達には、ファーマ様の偉大さを教えていますので」


「ちょっ、アリッサ、あまり大げさに教えないでね? 僕なんてアリッサが思ってるほど大した人間じゃないんだから」


 アリッサは僕を妄信し過ぎているところがあるからちょっと困る。会った頃より今の方が酷くなっているのはどうしてなんだ?


 暫くは何気ない会話をしながらお茶とお茶請けを楽しむ。リリ達から遅れる事20分、テシアさんが合流した。


「うちの人達を待っていたら何時になるか分からないから先に来たけどいいかい?」


「勿論ですよ。ゆっくりしていってください」


 因みにワックスさんとアンナさんは今日もアインスで仕事をやっている。仕事を休む人が多い週末はこの世界でもかきいれ時なのだ。今日は少し早めに店を閉めると言ってくれたのでそろそろ戻ってくる筈。


「そういえば、ファーマ会長」


「あの? 出来れば仕事の時間外に会長はやめてほしいんですが?」


「あははっ、そうだね。最近癖になっちゃって」


 癖になる程呼ばれた事は無いような? 他の人達と話す時に使ってるのかな?


「まあ、呼び方はいいじゃないか。それより、少しだけ仕事の話いいかい?」


 テシアさんの話は田植えに関する事だった。エミルからも説明を受けているのだけど、稲作の手順書を書いたのが僕なので、僕の話をしっかりと聞いておきたいらしい。リリとエミルも混ざって暫く仕事の話をしていると、僕が抱っこしていたセトは眠たくなったようで現在熟睡中。


 ミミはレオナとコテツと一緒にカードゲームをしている。農場のみんなはケイトとミリムの授業のお蔭で最近は2桁同士の足し算、引き算と九九まで出来るようになったのでカードゲームでの遊びも幅広く出来るようになった。


 最近の流行りは前に僕がレオナに教えたブラックジャック。


 因みにこの世界のトランプは、マーク5種の数字は12まで、絵札という概念が無いので正確にはブラックジャックではなく21カード。それと1を11に変化させるというルールはみんなが混乱してしまうので適用外にしてある。


 他にもババ抜きや神経衰弱を教えたのだけど、勝負が長引くこの2つより、一瞬で決着がつく21カードの方が好まれるようだ。


「さて、長々とすまなかったね。仕事の話はこのくらいにして違う話でもしようかね」


 仕事の話は1時間ほどで終わった。まあ、エミルがしっかり教えていたので僕が訂正する事は全く無く、やったのは確認だけなんだけどね。


「そうですね。折角ですから楽しい話でもしましょうか。アリッサ、みんなのお世話はいいから、こっちに混ざらない?」


 僕達が話をしている間、ずっとお茶の補充やらお菓子の補充やらして全然会話に入って来ない。まあ、田植えの話に入って来てもしょうがないんだけどね。


「いえ、私は皆さんの話を聞いているだけで楽しいので」


 アリッサにはまだ遠慮があるので僕が呼んでも中々素直に来てくれない。


「エミル、お願い」


「畏まりました」


 エミルはこの短いやり取りだけで僕の意を汲んでくれアリッサの手を引いて戻ってきた。話をしなくても輪の外にいるのと輪に入っているのでは全然違う。1人だけ離れた場所にいさせるのは心苦しいのだ。


「はい、アリッサもお茶飲んで」


「ありがとうございます。ファーマ様」


「うん、少しずつでいいからみんなと打ち解けていこうね?」


「大丈夫だよ。アリッサさんは子供達やそのお母さん方から大人気だからねぇ」


「そうね。セトも大きくなったらアリッサさんと結婚したいって言ってるわよ」


 そういえば、さっきセトに聞いた時も〝好き〟って言ってたよね。


「アリッサさんは美人だし優しいし、私が男なら放っておかないだろうねぇ。ファーマ君も油断してると誰かに取られちゃうよ?」


 いや、アリッサに好きな人が出来るのは良い事だから何の問題もない。


「いえ、私なんて大したものではありませんから」


 アリッサは謙虚だよね。リリやテシアさんの言う通りアリッサは容姿も性格もいいんだから、ちゃんと好い人をみつけて幸せになってほしい。


「結婚って言えばリリはどうなの? 衛兵さんから人気だって聞いたけど、気になる人は居ないの?」


「えっ? そうなの?」


 あれ? 本人は知らないのか?


「うん、前に一緒に農作業をやった時にロナが言ってたよ?」


「ああ、ファーマ君が話ばかりして作業を遅らせた時だね?」


「あはは、その節はすいませんでした」


「まあ、偶にしか会えないんだから仕方ないよ。でも、手伝いに入る度に遅らせるのは止めておくれよ? あまり作業を遅らせると親方が苦労するんだからね?」


 確かに、親方のリリがスケジュール管理までするのだから僕が邪魔をして足を引っ張ると苦労するのはリリだ。


「はい、気を付けます」


「なんか、ファーマがテシアさんに怒られてると、どっちが偉いんだか分からなくなるわよね?」


「まあ、僕が至らないからしょうがないよね」


「いえ、ファーマ様は至らなくなんてありませんよ? そこに居るだけで皆のやる気が出ますから」


 いや、それは実質、役に立っていないって事だよね?


「エミルちゃんはファーマ君に甘いねぇ。悪いところは悪いと言ってあげないと本人の為にならないよ?」


「そうだね。エミルは1番僕の事を分かってくれているんだから、僕の悪いところはちゃんと指摘してね?」


「私が1番……はい、お任せください」


 なんか変なスイッチが入っちゃったか? エミルの目に炎が見えるようだ。


「話を戻すんだけど、私が衛兵さんに人気だって本当なの? 全然知らなかったんだけど?」


 いい話なんだけど何故かリリは困ったような苦しそうな微妙な表情だ。


「ロナが話しているのを聞いただけだから詳しくは知らないんだけどテシアさん何か聞いてますか?」


「ああ、何度かリリの事を聞かれた事があるよ。好きな食べ物とか、どんな男性がタイプなのかとか」


「私も手紙渡してって言われたよ?」


 ここでミミが話に参加。レオナとコテツも僕の所に来た。


「本当? 私は受け取ってないんだけど?」


「だって、お姉ちゃん貴族の人って苦手でしょ? だから『お姉ちゃんには好きな人が居る』って言って断ったよ」


「そう、それなら良かった」


 良かったの? そこはホッとするところじゃないと思うんだけど?


「ミミ、次からも渡されそうになったらお断りしてね?」


「大丈夫、任せて」


 それでいいのか? この農場には男の人が少ないから婚期が遅れちゃうんじゃ?


「勿体ない事するねぇ。私なら即受け入れちゃうよ?」


「いいんです。貴族家の人となんて話をするだけでお腹がもたないし、付き合うなんてとんでもないわ」


「でも、衛兵さんは嫡子じゃないから平民と変わらないんだよ?」


「全然違うわよ。親が貴族なのよ? それだけで絶対に無理」


 まあ、確かに親は貴族だからどうしても付き合いはあるだろうな。冷静に考えてみると面倒かも。


「もういい年なんだから恋の1つもしないと婚期が遅れちまうよ?」


「でも、今は仕事が手いっぱいでそれどころじゃないわ」


 僕が重要な役目をお願いしちゃったから結構大変な思いをしてるんだな。ちょっと反省。


「私よりアンナの方が大変そうじゃない? 最近、商売とお金の事しか興味なさそうだし」


「あー、あの子は誰に似たのか商売っ気は強いんだけど、色恋には疎いからねぇ。結婚出来るのか心配だよ」


 そう言えばアンナさんも男っ気はなさそうだな。露店の方には口説きに来る人が居るみたいだけど、ワックスっさんの話では誰が着ても服を買わせる以外の興味は無いそうだし。


「私は色恋に興味がない訳じゃないからね? 前にちゃんと好きな人だって居たんだから」


「こらこら、私だって居たわよ」


 僕達の後ろから聞き覚えのある声が


「いらっしゃい、アンナさん」


「まったく、人が居ないところで守銭奴みたいに言わないでよね」


 いや、そこまで酷くは言ってないよ?


「アンナの好きだった人ってあの人よね?」


「ええ、リリもよく知っているあの人よ。羽振りも良かったし付き合ってもいいかな? なんて思って調べてみたら、単にお金にだらしない人だったから直ぐに冷めちゃったけどね」


「あはは、そう言えばそんな話してたね。確かあの2年後くらいに大きな借金していなくなったんだっけ?」


「そうそう、借金返せなくなって奴隷になったみたいよ。冷めて正解だったわー」


 ……キャピキャピ話しているけど、それって笑い話なのか?


「アンナさんはリリの好きだった人も知ってるの?」


「ええ、リリが前に隙だったのは私達の倍くらいの年齢の人だったわよね?」


「……も少し上だった」


 年上が好きなのか? それは知らなかった。って事はダンの可能性は消えたのか? これは本人には教えない方が良いな。


「それくらいの年齢の人が好きだったという事は、見た目だけで言えばセビアスさんは好みなの?」


 いや、ちょっと年上過ぎるか? セビアスさんはもう50過ぎだし。


「別に年上じゃなければいけないって事は無いわよ? でも、好きになるのは年上が多いかな? えっと、セビアスさんってエルミナさんの家の偉い人よね?」


「うん」


「言われてみれば見た目は好みかも」


 ありなんだ?


「あんた、あの人は私より年上だよ? ちょっと離れすぎじゃないかい?」


「お母さん、リリはあれくらい年上でも対象に入るのよ」


「ほう、じゃあ私も年齢的にはありなのかい?」


 いつの間に来てたんだ? ワックスさん。


「何、馬鹿なこと言ってんのよ。お父さんなんて年齢的にありでも見た目でないわよ。リリの好みじゃないわ」


「あんた! 浮気なんかしたら只じゃおかないからね?」


「た、例えばの話だよ。そんなに本気で怒らなくてもいいじゃないか」


 一応、法で一夫多妻は認められていても、やっぱり女の人の気持ち的には夫が別の人に気が向くのはアウトなんだな。テシアさんが一瞬般若みたいに見えたよ。


 それにしても軽い冗談だったんだろうけど、妻と娘に同時に怒られるなんてちょっと可哀そうだ。この国って男性優位の社会だけど、結構奥さんの尻に敷かれている人多いよね?


「全員揃った事だし、そろそろ食事会を始めようか?」


「直ぐに準備します。行きますよ、アリッサ」


「はい」


「僕も手伝うよ」


 食事会は夜遅くまで続き、成人している人はみんな酔っ払いになった。明日も仕事なのに起きれるのかが心配だな……


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