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ファーマ君の気ままな異世界生活  作者: 幸村
4章 王立学園
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第22話 ファーマ君、レオナとデート? する

 今日はレオナと2人でお出かけの日。


「2人でお出かけは初めてだね」


「うん。凄く嬉しい」


 一緒にご飯を食べに行くのだけど、残念ながらレオナは飲食店に入れない。特にアインスは冒険者が多いので下手をすると刃傷沙汰になりかねないのだ。


 という事で、今日は露店巡りをする事になった。


 向かったのはアインスの南街。北街は平民でも富裕層の生活圏なので、レオナと食べ歩きするには向かないのだ。


 南街(こっち)なら冒険者以外の人は異種族を見ても過剰反応する事はないので気軽に歩ける。とは言っても冒険者が居る事も多いのでフード付きの外套は身に付けていなければいけない。


「レオナは何が食べたい?」


「お肉ぅー」


 まあ、そうだろうね。


「甘いものは?」


「食べるー」


「じゃあ、端から端まで全部回っちゃおうか?」


「いいの?」


「今日はレオナの為の日だからね。好きなだけ食べてもいいよ」


「やったぁ」


 因みにレオナの、というよりキャッツの食欲は凄い。食べる量が人間族とは桁が違う。レオナはお肉なら4㎏はペロリだ。大人になったらどれだけ食べるようになるんだろうか?


 それだけ食べても全く太らないし、ちゃんと良い部分は成長する。こっちに戻って来てまた少し成長したんだよね。これでまだ8才(もう直ぐ9才)、将来的にどれだけの成長を見せるのか、たのし──いや、なんでもない。


 まあ、それはさて置き。商業区に到着。


 1軒目は焼き串のお店に寄った。この店はキャビットという角の生えたウサギに似た魔物のお肉とウマシッカというカピバラに似た魔物のお肉を取り扱っている。どちらもこの辺りではよく捕れる魔物なので一般平民でも買う事が出来るお値段だ。


 まあ、素焼き串1本(約30g)が3デニールだからご褒美食材の部類だろう。こういう露店では部位ごとに使い分けなんてしていないから偶に筋ばっかりの固い焼き串が混ざっている事があるので要注意だ。


 レオナは筋多めの肉を食べるのも好きなので気にしないらしい。レオナにはキャビット串5本とウマシッカ串5本、自分用にキャビット串2本を購入。


「レオナ、塩かける?」


「うーん、こっちのお肉は醤油がいい」


「醤油だね。すいません、この5本にはこの調味料を付けて焼いてもらえませんか?」


「ん? なんだその黒いのは? さっきショーユ―って言ってたけど初めて見る調味料だな」


「これは国外から仕入れたものなんです。刷毛で軽く塗って焼いてもらえると助かります」


「ほほう、他所の国の調味料か。俺っちもちょっと味見させてもらっていいか?」


「どうぞ」


 食べ物の露店をやっているだけあって調味料には興味があるようだ。お皿に入れて刷毛と一緒に渡した醤油を小指に付けて一舐めする。


「おおっ、悪くないな」


 とても良い笑顔で味わっている。どうやら気に入ったようだ。


 調理後の味も知りたいからと僕達の注文分以外の串にも塗って焼き始めると、辺りに香ばしい良い匂いが広がる。


「こっちの5本は塩をかけてもらっていいですか?」


「おう、塩だな。兄ちゃん、塩はサービスでかけてやるから、この皿に余ってるショーユーを貰ってもいいか?」


「はい、お皿と刷毛だけ返してもらえば良いですよ」


 交渉は成立。通常、味付けには追加料金が発生するのだけど、ほんの僅かに余った醤油だけで追加料金はいらなかった。


「美味しいね、ファーマ様」


「うん、醤油の香ばしい匂いと塩気がお肉と合ってるね」


「うめぇっ! 塩より断然うめぇな。兄ちゃん、このショーユ―は国内でも売ってんのか? 値段は?」


 屋台のおじさんはかなり醤油をお気に召したようだ。


「オヤジ、いい匂いさせてんな。俺にも1本売ってくれ」


 匂いに釣られて20代くらいのお兄さんが串を買いに来た。


「あー、悪いけど、この調味料はこの子の持ち込みで、うちの売りもんじゃないんだ」


「良ければこれを食べますか?」


「いいのか? でも、子供の食いもんを取っちまったら寝覚めが悪いな。串代は払うぜ」


 お兄さんは5デニールで醤油味焼き串を買ってくれた。


「な、なんじゃこりゃー! 旨すぎる」


 叫ぶほど? まあ、初めての味だからそうなるか。


「兄ちゃん、金は払うからちょっとだけこの調味料を分けてくれないか?」


「醤油はデザリアで売っていないので多くは分けられないんですけど、どれくらいですか?」


「とりあえず、焼き串10本分でどうだ?」


「それくらいなら全然大丈夫ですよ」


 まあ、そのくらいなら自分達の分がなくなる事も無いから良いだろう。


「オヤジ、焼き串10本だ。調味料はこの兄ちゃんから貰ってくれ」


 お兄さんは調味料代として10デニール渡してくれ、焼き串醤油味を嬉しそうに持って帰った。


 まさか醤油を軽く刷毛で塗っただけで10デニールも儲かるとは思わなかった。あのお兄さんは結構お金持ちだな。


「んで、さっきの話なんだけどよ? 国内でも売ってんのかい?」


「今は売っていませんが、数年以内には商業ギルドから売り出される予定です」


 製造に成功すれば……


「そんな先の予定を知ってるって事は、兄ちゃんの親が商業ギルドのお偉いさんだったりするのか?」


「あー、まあ、そんな所です」


 自分がエンドール家の家臣だなんて事は言わない方がいいだろう。


「そんなお坊ちゃんがなんでこんなところで買い食いしてんだ?」


 聞かれたので僕は無言でレオナをチラ見すると、露店の店主はレオナの手に気が付いたようで声を出さずにコクコクと頷いて納得してくれた。


「さて、次はどの店に行こうか?」


「あそこの丸焼きのお店がいい」


 次に向かったのはクルッポゥという鶏くらいの大きさの鳥の丸焼きを売っているお店。ここも素焼きか塩味だ。


「これは砂糖醤油で焼いたら美味しそうだよね」


「うん、絶対に美味しい」


 と、いう事で焼いている途中のクルッポゥを砂糖醤油で照り焼きにしてもらう事にした。


「すいません、今やいている丸焼きを1つこの調味料を塗りながら焼いてもらっていいですか?」


「そんなやり方やった事ないから上手く焼けるか分かんねぇぞ?」


「じゃあ、僕が塗るんで店主さんは焼く方に専念してください」


「それはいいが、失敗してもちゃんと買ってもらうぞ?」


 許可が得られたのでおじさんが焼いている丸焼きに刷毛で砂糖醤油を塗っていく。焼きあがるまで何度も塗っては焼く、塗っては焼くを繰り返し丸鳥の照り焼きが完成した。


「んー、おいひいー」


 外はカリっと中はジューシーに焼きあがったクルッポゥをレオナは丸齧りしている。


「なあ、この余った調味料、貰っていいか?」


「はい、どうぞ」


 余った砂糖醤油をあげると、おじさんは丸焼きを半額に割り引いてくれ、僕がやっていた照り焼きを見様見真似で焼き始めた。


 まあ、余りなので同じようには仕上がらないだろう。ちょっと薄味になる筈。


「美味しかったぁ」


「レオナ、よく噛んで食べないとダメだよ? それと、鳥は骨まで食べると喉や内臓に刺さる事があるから骨は食べちゃダメ。前にも言ったよね?」


 丸焼き1個がものの5分で骨まで無くなった。それはいいのだが、鳥系の魔物の骨は前の世界と同じで縦に割れるので食べると危険だ。


「でも、美味しいよ?」


「前に喉に刺さって痛い思いしたよね? もう、あんな目に遭うのは嫌でしょ?」


「痛いのは嫌だけど、ファーマ様が治してくれるから平気」


 いや、勿論治すけど……


「僕はレオナが苦しむ姿は見たくないんだ。頼むから鳥の魔物の骨は食べないでよ」


「うん、分かった。ファーマ様が嫌ならもう食べない」


 指切りで約束したのだが、レオナは物忘れが激しい方なので半年もしない内にまた同じ事をしでかすだろう。まあ、その時にまた注意すればいいか。


 このあと、お昼過ぎまで食べ歩きは続き、レオナが満腹になったところで終了。合計20軒以上の露店を回った。


 因みに全部お肉を扱っているお店。どのお店でも醤油や砂糖醤油を使って味付けしてもらい。いずれ商業ギルドから売り出されるという事を宣伝して回った。


 まあ、本当に売り出せるのかは分からないが……


「レオナ、他に行きたいところはある?」


「うーん、お肉はお腹いっぱいだからお菓子が食べたい」


 甘いものは別腹という事か。


「じゃあ、甘いものは買って帰ってみんなで食べようか?」


「うん」


 レオナとのデート? はここで終了。レオナ的には満足してくれたそうだ。


誤字報告ありがとうございました。

最新話まで全てチェックして頂いて本当に助かりました。

今後は出来る限り誤字脱字のないように気を付けたいと思います。

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