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ファーマ君の気ままな異世界生活  作者: 幸村
4章 王立学園
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第20話 ファーマ君、協力する

「──って事で、ファーマも協力してくれない?」


 登校して早々に何言ってんだ? この子は……


「なんで急にそんな話に?」


「昨日の帰りに偶然見かけたから色々と話をしたのよ。そしたら前に会った時と同じで凄く良い子だったから放っておけなくて。お願い、パニックになったら私が抑えるから協力して」


 ……友達に頼まれると断り難いよね? まあ、攻撃されても避けられるからいいか。


「分かったよ。協力する」


「本当? ありがとう。ファーマも何か困った事があったら言ってね? 私にできる事なら何でも協力するから」


 友達に頼られるのは悪い気分ではないな。うん、悪くない。


 と、いう事で早速、今日のお昼休みに一緒に食事する事になった。既に約束は取り付けてるんだって。



 お昼休み。食堂前で待っていると、ロザリアさんがやってきた。


「ターニャ、お待たせして申し訳ありません」


「大丈夫よ。私達も今来たところだから」


「こんにちは、ロザリア様」


「ふぁ、ファーマさん。先日は……ぃやっ!」


「ぅおっとー」


 やられると思ったよ……


 飛んできたのは鋭い踏み込みから顎へ目掛けての突き上げ。腰の入った良い拳だ。


「ロザリー、落ち着いて。深呼吸よ、深呼吸。ファーマ、もう少し離れてくれる?」


 どうやら少し距離が近すぎたようだ。今朝、言われた通り手足の届かない位置で止まったんだけどね。まさか踏み込んでくるとは……


「も、申し訳ありません」


 ターニャに背中を擦って落ち着かせてもらい、ロザリアさんは怯えたようにターニャの後ろに隠れる。


 うーむ、男性恐怖症だと分かっていても、怖がられるのは気分が良くないよね。僕は何もしてないし……


「大丈夫よ。怖くないから、ファーマは無害だからね?」


 こらこら人を獣みたいに言うんじゃないよ。


 ロザリアさんを落ち着かせて食堂に入り、男の子が座っている席を避けながら移動する。毎回ではないらしいんだけど、男の子が特定範囲内に入ると手が出てしまう事があるらしい。なので、出来る限り近寄らないようにしているんだとか……不便な生活をしているんだな。


 ロザリアさんはターニャの隣、僕の斜向かいに座って小さな声で『あれは男ではないですわ、あれは男ではないですわ』と呟いている。


 いや、男だからね?


 まあ、男じゃないと思い込まないと落ち着かないんだろう。気にするのは止めて食事を済ませた。


 今日はエルトミイルクを食べた。というか、2日に1回はこれを食べている。味を覚えて自分で作る為だ。いずれはマヨとカレーも作れるようになりたいな。



「少しは落ち着きました?」


 食事中はずっと警戒されるような目で見られていたので、少し落ち着かなかった。


「……」


「大丈夫よ。最初に比べれば目を合わせられるようになったもの。ね?」


 とは言うが、相変わらず僕を見る目が怯えているし、普通に会話も出来ていない。昨日より酷くない?


「そうだ。どうせ、男性に慣れる訓練をするんならグレイシス君にも協力してもらえばいいんじゃない?」


 是非、僕にも仲間が欲しい。


「あー、それもやろうとしたんだけどね……」


 した?


「昨日、お兄様を呼び出して少し交流しようとしたらロザリーが耐えられなくなって……」


 殴られたのか?


「蹴られたの。まあ、ちゃんと防御はしたから怪我とかは無かったんだけど」


 おいおい、君のお兄さんは侯爵家の嫡子だよ? 怪我でもさせたら一大事だよ?


「グレイシス君、怒らなかった?」


「大丈夫よ。ちゃんと説明したら分かってくれたわ。お兄様は女性に優しいから、少し驚かれはしたけど怒りはしなかったわ」


 男性相手にもその優しさを見せてほしいものだ。


「まあ、お兄様は外見からして男らしいから、もう少しファーマで慣れたらまた協力してもらうわ」


「こらこら、その流れで僕で慣れたらって、失礼だよね?」


「ち、違うの。ファーマは親しみやすいから、なんだからね?」


 いや、絶対に違うよね? ……まあ、いいか。女の子みたいって言われるのは今に始まった事じゃないし。それが人の役に立つのなら我慢しようじゃないか。


「きょ、今日は、協力して頂き……感謝いたしますわ」


「いえ、一緒に食事するぐらいの事でよければ、いつでも協力しますよ」


 もう少し笑顔で言ってくれると嬉しいんだけどね。


「無理しなくていいから少しずつ慣れていきましょうね?」


「はい、ありがとうございます。では、失礼します」


 ロザリアさんは軽く一礼して自分のクラスに帰っていった。


「……かなりの重症だよね。治ると思う?」


「だ、大丈夫だと思うわよ? 根拠はないけど」


 ……適当だね。


「それにしても、あの状態で今までよく大事にならなかったよね」


「あー、なったみたいよ?」


 やっぱり?


「何やらかしたの?」


「ゴルドオウル家の重鎮の子供に鼻を折る重傷を負わせたらしいわ。まあ、相手にも悪いところがあったから、治療費とそれなりの慰謝料で解決したらしいのだけど、それ以来一部の貴族家の子供達から〝凶姫〟って呼ばれているらしいわ。でも、根は良い子なのよ? 相手が男でなければ」


 ……いくら男性恐怖症とは言っても、それで済ませていい問題じゃないよね? まあ、相手も何かやらかしたんなら自業自得か?


「今までは恐怖症の治療しなかったのかな?」


「やったみたいよ。でも、結構強引に男性に慣らそうとしたみたいで、逆効果だったみたい」


 なるほど、ゴルドオウル侯爵(あの人)って強引そうだもんね。


 この日から2日に1度は3人で食事をするようになり、僕は慣れてもらう為に出来るだけ話しかけるようにはした。ロザリアさんも一生懸命恐怖心を抑える努力をして、かなりストレスを溜めているようだ。


 それをターニャが一生懸命背中を擦りながら声を掛けて落ち着かせる。


 この数日で


・ロザリアさんの気持ちの抑えが利かなくなり始める距離は間に壁になるような人(女性)や物が無けれ2mくらい。食卓を挟むと斜向かいくらいの距離なら何とか我慢できる。


・視野に入らなければ傍にいても問題は無いけど、気付かれた時点で何かしらの攻撃が飛んでくる。


・男性に一瞬でも体に触れられたと分かると完全に意識が飛び、身内か女性が止めるまで攻撃してくる。


 という事が分かった。先は長そうだけど、治ると良いな。

誤字報告ありがとうございます。

結構、誤字や抜けが多かったんですね。

本当に助かります。

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