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ファーマ君の気ままな異世界生活  作者: 幸村
4章 王立学園
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第19話 タータニヤ、ロザリアと仲良くなる

タータニヤ視点です。

 ファーマから色々聞き出した日の放課後。正門の通りでロザリア様を見かけた。


「ロザリア様」


 私は声を掛けながら前を歩くロザリア様に駆け寄る。


「今、帰りですか?」


「タータニヤ様。今朝は失礼いたしました」


「いえ、その事ならお気になさらずに。良かったらこれからお話でもしませんか?」


「えっ? これからですの?」


「はい、折角再会できたのですから交流を深めたいと思いまして。お忙しいなら後日でも構いませんが」


「いえ、これといってこの後に用事はありませんので、喜んでお誘いをお受け致しますわ」


「ありがとうございます。お受けいただいて嬉しいです。では、どこでお話をしましょうか? 茶屋か、私の部屋か、迷惑でなければロザリア様の家にも行ってみたいです」


「そうですわね。それではタータニヤ様の屋敷の方にお邪魔してもよろしいですか? 私の家でも構わないのですが、今は父が来ていますからタータニヤ様が気疲れするといけませんので」


 やっぱり、この子はあの頃と変わらず気遣いの出来るいい子だ。


「では参りましょうか」


 ロザリア様の方も迎えの馬車が来ているので家の場所は教えて、1度帰宅してからうちに来る事になった。驚いた事に、ロザリア様の家は私の家の同じ通りの10軒先。


 こんなに近くに住んでいるのに入学して2カ月も気付かなかったなんてびっくりよね。


 私が帰宅して1時間ほど経って、ロザリア様が訪ねてきた。


「今日はお招き頂きありがとうございます」


「いえ、こちらこそ、足を運んで頂きありがとうございます」


 挨拶を済ませ自室に案内すると、ロザリアさんは何処か落ち着かないように室内を見回している。


「あの? 本当にうちで良かったのですか? もし、落ち着かないのであれば、今からでも茶屋に変更しても良いですよ?」


「いえ、申し訳ありません。自分の家に人を招く事はあっても、人の家を訪ねるという事があまりないので、少し緊張してしまっただけですわ。でも、嫌という事はありませんから」


 なるほど、私も人の家に遊びに行く事ってあんまりないわね。誰かと仲良くなって家に遊びに行くと、どうしても家柄の関係で相手に気を使わせてしまうから行き辛いのよね。


 それから1時間ほど色んな話をした。家の話、家族の話、友達の話、学園生活の話。楽しい時間はあっという間に流れる。


「つかぬ事をお伺いしますが、今朝ロザリア様の様子がおかしかったのは、何か深い事情があるのではないですか? ロザリア様さえ良ければお話を聞かせてもらえませんか?」


 思い切って聞いてみる事にした。折角、性格の良い子で仲良くなれそうなのだから、困っているなら助けてあげたい。


「……」


 複雑な顔で顔を伏せてしまった。どうやら困らてしまったようだ。


「話したくないのなら、無理には聞きません。別の話にしましょうか?」


「いえ、お話ししますわ。私……男性が怖いのですわ。ですから近くに寄られたり触れられたりするとパニックになってしまって、つい攻撃してしまうのですわ」


 男嫌いという噂は聞いていたけど、男嫌いで攻撃していた訳ではないのね。攻撃するのは恐怖心の裏返しって事か……


「以前、お会いした時にはもう男性の事が苦手だったのですか?」


「はい。ですが、あの頃はまだ男性に対する恐怖の方が勝っていて、自分から攻撃を仕掛けるという事は出来なかったのですわ」


「苦手になってしまった理由をお聞きしても?」


 ロザリア様は少しの沈黙の後、ゆっくりと説明を始めた。



 ないわー、そりゃ、6才で初恋の人のそんな光景を目にしたら男の人が汚い物に見えてもしょうがないわよね?


 その後に知り合った子達も問題よね。大人から見れば子供の可愛いイタズラ程度の事でも、やられる本人にとっては笑えない程辛い事もある。悪気があった、無かった、の問題ではない。


 本人は出来るだけ距離を置きたかったそうなのだけど、侯爵家には色んな人が顔を出す。当然、自分の子供を侯爵家の人間と結婚させて繋がりを持ちたいという人は後を絶たないから、親が認めた相手なら顔を合わせなければいけない。


 けど、家柄や親は良くても残念な子供というのは多い。ロザリア様は運悪く良い人に出会わなかったという事だ。いや、良い人もいたかもしれないけど、その頃にはもう良いところが見えなくなっていたのかも知れないわね。


 距離を置こうとしても相手から近づいてくるなら、自分の身は自分で守らなければいけないと体を鍛えた結果。今では男性が近づいてくると頭が真っ白になり勝手に体が動いてしまうようになったのだとか。


「大変でしたね。そんな子ばかりと知り合ったのも良くなかったのでしょうね」


「はい、全ての男性がそうではないという事は、頭では分かっているのですが、どうしても男性を見ると警戒してしまって自制が利かなくなるのですわ。タータニヤ様のご友人には申し訳ないと思っていますわ」


「大丈夫ですよ。ファーマは全然気にしていませんから」


 いや、ちょっとは気にしているみたいだけど、怒ってはいなかった。


「本当ですの? あれだけの事をしてしまったのに?」


「はい、そういう子なんです。少し天然で抜けているところもありますが、性格が良い子だというのは私が保証しますよ。それはそうと、ロザリア様は男性恐怖症を克服したいですか?」


「勿論ですわ。出来る事なら男性に怯える事なく普通の生活が送りたいですわ」


「それなら私に協力させてくれませんか?」


「良いのですか? 私達、まだお会いするのは2度目ですのよ? ご迷惑になりませんか?」


「ロザリア様が苦しんでいるのは私も嫌なので協力させてください」


「どうしてそこまでしてくれますの?」


「私がロザリア様と仲良くなりたいからです。以前、お世話になった時に良くしてもらって、今日話をしてみて、やっぱりロザリア様は良い方なので、お友達になりたいんです」


「本当に? 嬉しいですわ。私も以前お会いしたときからタータニヤ様と仲良くなれたらと思っていましたわ」


「じゃあ、私と友達になって下さい。ロザリア様」


「はい、喜んで。私、同格の家の方とお友達になるのは初めてですわ」


「私もです。私の事は気軽にターニャって呼んでください」


「はい、では私の事はロザリーと呼んでもらえると嬉しいですわ」


 やっぱり友達同士は愛称で呼ぶのがいいわよね。これまで仲良くなった子達って家柄を気にして愛称で呼んでくれなかったから困っていたのよね。


「では、早速ロザリーの男性恐怖症克服の方法を考えましょう」


「はい」


「とは言ったものの何からやれば良いのか分からないですね。……えーっと、ロザリーは男性だと誰でもダメなのですか? 例えば家族や小さな子供は平気ですか?」


「はい、家族とは普通に会話も出来ますし、触れられても特に嫌悪や恐怖はありませんわ。ですが、従兄弟が近くに来ると動悸がして落ち着かなくなりますわ。でも小さな子供だと平気ですわ」


「どのくらいの年齢までは大丈夫なのですか?」


「5才以下……は、平気だと思います」


 5才くらいから少し怪しいのか……でも


「男性の全てが苦手ではなくて良かったです。従兄弟が我慢できるのなら身近な人から少しずつ慣らしていけば何とかなるかも知れませんね。ちょっと私のお兄様で試してみましょう」


「えっ? でも、もし手を出してしまったら大変ですわ」


「大丈夫です。お兄様は腕立ちなので避けるか受けるかすると思いますから」


 と、いう事で早速、応接室にお兄様を呼び出し、顔を合わせてみる事にした。


「お久しぶりです、ロザリア様。ゴルドオウル領へ観光に行った時以来ですね」


「あ……い、いやっ!」


「おおっ!?」


 予想はしていたけどお兄様が近づくと我慢出来ずに足が出てしまった。でも、流石はお兄様、不意打ちだったにも関わらずしっかりと腕でガードしている。


「なんだ? どうした? 俺に何か失礼な点でもあったのか?」


「ごめんなさいお兄様。少し離れてくれる? ロザリー落ち着いて、ゆっくり深呼吸して」


「……も、申し訳ありません」


「本当にごめんなさい、お兄様。これには深い訳が」


 ロザリーの初恋の人の話を省いて事の経緯を説明した。


「──と、いう訳で、ロザリーはある程度の距離に男性が近づくとパニックになって手が出ちゃうの」


「なんだ。そういう事だったのか。何か失礼な事をしてしまったかと思って焦ったぞ」


「本当に申し訳ありませんでした」


「いや、構わない。苦労されたのだな」


 優しい言葉とは裏腹にお兄様とロザリーの距離がジリジリと離れている。


「やっぱり、いきなりお兄様は厳しかったわね。それならテレサ叔母様はどうかしら? よく男性と間違われるくらいだからテレサ叔母様に慣れれば男の人も平気になるんじゃない?」


「ターニャ、それは失礼ですわよ? テレスティナ様は何処からどう見ても女性ではないですか」


「ターニャ、お、おまっ……」


 あれ? お兄様の様子が……?


「ターニャが私の事をどう思っているのか、よーく分かった」


 いつの間に部屋に入ってきたのか後ろからテレサ叔母様の声が……


「あの、ち、違うのテレサ叔母様……」


 ぃあああぁぁぁぁ!!!!


「クスン……お尻が砕けるかと思ったわ」


「まったく、人を何だと思っているんだ?」


「そうですわよ? こんな綺麗な方を捕まえて男性みたいなんて失礼ですわ」


「ロザリア殿はとてもいい子だな。何か困った事があったらいつでも私に相談すると良い。出来る限りの事はしてやろう」


 うぅ……ちょっと失言だったとは思うけど、ロザリーの為を思って言った事なのに……


「うーむ、男慣れする為に良い相手か……それならファーマはどうだ? 奴なら見た目は女と変わらんだろう?」


「お兄様、それはファーマに失礼よ?」


「いや、お前だって異性には見えないと言っているではないか」


「まあ、それはそうなのだけど……でも、今朝ファーマも挨拶しようとして蹴られたのよね」


「そうなのか? 一目であいつを男と見抜くとは凄いな」


「あ、いえ、あの方とお会いしたのは今日が初めてではないのですわ。初めてお会いした時は私も女性と勘違いしました」


 やっぱり? そうよね。ファーマって見た目は女の子にしか見えないのよね。髪を短くすれば……無理ね。男の子には見えないわ。


「でも、それならファーマで慣れるのも良いかも知れないわね。男だと分かっていても普通の男の人に比べれば慣れるのも早いんじゃないかしら?」


「ですが、ご迷惑になるのではないでしょうか?」


「うーん、大丈夫たと思うのだけれど……明日にでも聞いてみるわ」


前話で書き忘れていましたが、感想を頂きました。


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