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ファーマ君の気ままな異世界生活  作者: 幸村
4章 王立学園
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第15話 ファーマ君、初めての社交界 その2

 最初に挨拶に向かったのは陛下の所、陛下とは会食後に別室で話をするという事になっているらしいので、簡単な挨拶だけで終わった。


 次に向かったのは王太子様(ワグナード様)のところ。グラヴァさんが軽く挨拶した後、僕の事を紹介し、僕がエミルと一緒に一礼。ミシェリアーナ様は先程までとは違い、おすまししている。


「聞いていた通り本当に子供なのだな? この者があれほど複雑な術式を作り上げたとは驚きだ。今後もセリウスやミシェリアーナと仲良くしてやってくれ」


 王太子様は王様と同じく威厳を感じるが物腰は柔らかい。隣にいるアデリアナ様は、品定めするかのような厳しい目つきで僕の事を見ている。


 目が合ったので軽く会釈しておいた。


 そこから15分ほどグラヴァさんと王太子様が雑談を躱して次の人に挨拶に向かった。因みに僕は挨拶だけで殆ど会話には参加していない。


 2人目は政務公爵様。この人は静かな雰囲気で無表情な人だった。グラヴァさんとの会話もあまり弾まず、5分ほどで終了。


 3人目はステイール侯爵。


「うちの人ったら、ここに来るまでファーマの秘密を一切口に出さなかったのですよ。酷いと思いませんか?」


「いえ、それは緘口令が敷かれていたので仕方のない事かと……」


「それはそうと、グラヴァ様。ファーマとタータニヤの交流の件は聞いていますか?」


「ええ、うちの実験農場で勉強会をするという話ですね」


「はい。ですが、アレを作ったのがファーマだという事なら本格的にターニャの家庭教師をやって頂く事も考えなくてはいけませんね。練成魔法の技術もあった方が良いですが、魔法道具作成に欠かせない術式の構築技能の方が大切です。ファーマ、正式に家庭教師として雇いますからターニャに技能指導をお願いできるかしら?」


「いえ、その辺りは緘口令が敷かれている事ですので下手に教えない方が良いと思います。ですよね? グラヴァ様」


「そうだね。クレスティア様には申し訳ないですが、術式技能の指導はさせられません。ファーマの術式知識は、まだ研究を始めたばかりの新技術ですので、そちらのお嬢様に限らず、まだ一般に広める訳にはいかないのです」


 デザリアに元々ある魔法文字を使った術式に関しては僕もそれほど研究していないので、周りの子達よりほんの少し理解している程度だ。態々僕が教えるよりは学園の先生に教わる方が遥かに勉強になるだろう。


「そういう事でしたら仕方ありませんね。それにしても、前々から優秀な子だとは思っていましたが、本当に貴方には驚かされるばかりです。グラヴァ様、うちのタータニヤとファーマの仲について考えておいてくださる? そちらが良ければ正式に婚約など」


「馬鹿な事を言うな! ターニャは誰にもやらん!」


「いい加減子離れしなさい。これほど優れた人材なのですよ? エンドール家との関係も深まりますし良い事だらけではありませんか」


「ダメなものはダメだ。これだけはお前がなんと言おうと絶対に許さん」


 ……僕にその気は全く無いのだけど、ターニャの将来が心配だ。このままじゃ本当に誰とも結婚出来ないんじゃないだろうか?


「トーラス殿の機嫌がこれ以上悪くなるといけませんので、これで失礼します」


 グラヴァさんが空気を読んで早々に退散する事になった。


 次に向かったのはカッポウド侯爵のところ。そしてシルバリオ侯爵、プラチネル侯爵と続く。カッポウド侯爵とシルバリオ侯爵は当たり障りない感じで挨拶と簡単な会話をして終了。


 プラチネル侯爵は僕の事がお気に召さないようで僕が挨拶をすると舌打ちされた。何か言いたそうにしていたけど、グラヴァさんが早めに話を切り上げてくれたので何も言われなかった。


 どうしてあんなに嫌われているのかは分からないけど、今後会う事も無いだろうし気にしなくてもいいだろう。


 そして、最後に挨拶に行ったのはゴルドオウル侯爵。ゴルドオウル領は観光や娯楽関係が盛んなので商業ギルドとは繋がりが大きいらしい。


「貴様がファーマか。聞いていた通り娘子のような顔をしているのだな」


 かなり不機嫌な様子だ。


 ……エンドール家とゴルドオウル家は仲がいい筈なのにどうしてこんなにトゲトゲしいんだ?


「まったく、貴様が余計な事を望むから、うちの収入源が1つ減ったではないか」


「まあまあ、その件はうちが補填するという事で話がついたから良いではないですか」


 ゴルドオウル侯爵も僕の事はお気に召さないようだ。慌ててグラヴァさんがフォローに入ってくれたけど、ちょっと気になる事が。


「えっと、収入源が僕の所為で減ったというのはどういう事ですか?」


 グラヴァさんには『折角話を切り上げようとしたのに』とでも言いたげな顔をされたのだけど、気になるものは気になる。


「亜人奴隷の件だ。我が領地にある剣闘場では剣闘士と亜人を戦わせる催しは集客が大きい人気の見世物だ。貴様の所為で亜人を奴隷にする事は出来なくなり、収入源が減ってしまうのだ」


 なるほど、褒章の件はこの食事会の後に聞く事になっているから知らなかった。でも、亜人奴隷の制度は無くなったんだな。良かった。


「それでご機嫌が宜しくなかったのですね。僕の褒章の為に申し訳ありませんでした」


 ここは素直に謝っておこう。


「もう1つお尋ねしたいのですが、亜人奴隷は幼子ばかりなのですよね? 剣闘士のような屈強な大人と戦わせても勝負にならないと思うのですが、そんな試合でも集客って取れるものなのですか?」


「勿論だ。亜人が善戦する姿など誰も望んではおらんからな。逃げ惑う亜人を剣闘士が爽快に血祭りにあげる試合こそ客を呼ぶことが出来るのだ」


 悪趣味だな。そんなのは試合とは呼ばない。


「剣闘場というところは一方的な試合を観戦させるだけの所なんですか?」


「『だけ』というのはどういう事だ?」


「僕はてっきり強い者同士が死闘を繰り広げる場所が剣闘場という施設だと思っていたので」


「勿論、そういった試合もある。だが、そういった試合は各地で開かれているし、殆どは命のやり取りにはならんから、それほど多くの集客は見込めん」


 なんでそんなに命のやり取りが見たいのか理解できない。あれ? って事は


「剣闘場ではお客さんは試合を観戦するだけなんですか?」


「ん? どういう事だ」


「いえ、僕はてっきり試合の勝者がどちらかを予想させて賭博で利益を得ているものだと思っていました」


 賭博場があるってターニャが言っていたから当然剣闘場でも賭博が行われているんだろうと思っていたけど違うのかな?


「剣闘賭博か……それは盲点だったな。確かにそれもありかも知れん。いや、しかし剣闘賭博となると参加人数が多くなりすぎて集計や分配で問題が……」


「その辺りの面倒な事はうちが引き受けますよ。寧ろエンドール家の者から出た儲け話にうちが絡まないなんてあり得ない。当然、エルリック殿もそうお考えですよね?」


 グラヴァさんは凄い笑顔なのにとても威圧感が出ている。この人、邪属性の適性って無かった筈なんだけど?


「も、勿論、グラヴァ殿に相談するつもりでいた。と、当然ではないか……」


 慌てぶりを見る限りゴルドオウル侯爵はエンドール家と共同でやろうなんて考えていなかったんだろう。


「では、後日細かな話し合いをやりましょうか?」


「そうだな。明日にでもそちらに伺わせてもらおう」


 話がついたようだ。


「いや、今回は領地の収益が減る事になってかなりの痛手だと思っていたが、思わぬ儲け話を貰ったな。最初に不遜な態度を取っていた事を詫びよう」


「いえ、とんでもないです。僕の方こそ、自分本位の勝手な要求をして申し訳ありませんでした」


「いや、貴様の年齢でそこまで考えて発言できる者は滅多におらん。それに褒章に何を望むかは本人の勝手だ。貴様に落ち度はない」


 じゃあ、なんで文句いったの? いや、まあ収入源を減らされたた文句も言いたくなるか。


「それはそうと貴様、婚約者はいるのか?」


「はい?」


 なんで突然そんな話に?


「その年ならそういった誘いの1つや2つは上がっているだろう?」


「いえ、普通の平民はこんな年齢で結婚とか考えませんから」


 貴族はどうか知らないけど、一般平民が僕の年齢で婚約者とか居ないよね?


「普通の平民ならそうだろうが、貴様は普通の平民ではないだろう? エンドール家の家臣、それも分家に相当する扱いと聞いたぞ? それなら貴族に準ずる立場だ。グラヴァ殿もその辺りは考えているのだろう?」


「そうですね。うちの次女辺りを考えているのですが、まだ思案中です」


 聞いてない。そんな話は聞いてないよ? 僕の知らないところで勝手に結婚相手を決めようとしないでよ。っていうかお宅の次女さんはまだ1才だよね?


「それならばうちの四女を考えてくれんか?」


「エルリック殿のお嬢さんならばうちとしては歓迎ですが、四女と言うとあのお嬢さんですよね? 大丈夫なのですか?」


「いやいやいや、当人を差し置いて勝手に話を進めないでください。なんで僕の結婚相手をグラヴァさん達が決めているんですか?」


 あっ〝さん〟って言っちゃった。


「まあ、落ち着きなさい。何も無理やり婚約させようという話ではない。とりあえず、顔合わせをして気に入ればという話だ。それとも、君は私やエルリック殿の娘には会う価値も無いと、そう言いたいのかい?」


「いや、そういう訳ではないですけど……」


 確かに相手の事を知らないのに否定するのは失礼だな。


「でも、ゴルドオウル侯爵様はどうして突然、僕なんかと娘さんを会わせようと思ったんですか? 今日会ったばかりなのに」


「そうだな。会議で貴様の話が出た時に優秀だという事は分かっていた。まあ、うちの収益源が減ると小言は言ってしまったが、普通であれば貰って当然の褒章にケチを付けられれば反発をするところを、貴様は素直に詫びて代案まで用意した。その人間性と将来性を考えれば娘と引き合わせたいと考えるのはおかしな話ではないだろう?」


 ……過大評価されている。さっきのは単に疑問に思ったから聞いただけで、代案を用意した訳ではない。将来有望というのも僕的には疑問だ。


 好き勝手に行動した結果、偶々運良く事が運んだだけなので、今後も良い方に結果が出せるとは限らないんだから……


「身に余る評価で恐縮です。でも、只の平民と侯爵家の令嬢では身分が違い過ぎますよね?」


「身分の違いは問題ない。どちらかと言えば娘の性格──いや何でもない」


 ん? 何か言いかけてやめたぞ? まあ、いいか。それより


「身分が問題ないというのはどういう事なんですか?」


「まあ、色々と事情があるんだよ。それより、顔合わせの日取りを決めようか?」


 嫌な予感しかしないんだが? ってか、会う事はもう決定なんだね。


「この場で決めなくても良いだろう。先程の話を詰める時にでもついでに決めればいい」


「それもそうですね」


 そんなこんなでお見合いする事が決定してしまった……


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