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Something Wicked This Way Comes

話もひと段落したちょうどその頃、仙一郎らに話しかける声がした。

「やっぱりこっちに居た!」

その声に振り返る十万里の顔が途端に険しくなる。

山上(やまがみ)!」

十万里がそう呼んだ少女は、ちらりと仙一郎とリザを見るとゆっくり十万里に近づいた。派手な柄のボートネックのTシャツにホットパンツのラフな格好をした今風の若者といった雰囲気のその少女は十万里の前に立つと鋭い目つきで睨み吐き捨てた。

「あんたの姉ちゃんのせいでこっちはとんだとばっちりだよ!」

「何の話?」

十万里の口調も刺々しい。

「勝手に自殺なんかして…私達はふざけてただけなのにさ!」

「よく言うよ!あんた達のイジメのせいでお姉ちゃんは…」

仙一郎は二人の口論を立ちつくしておろおろしながら見ていると、突然として嫌な気配を感じる。それは殺気と言っても良い気配。身体にねっとりまとわりつくようなドス黒い感情。その気配の出所を探るとそれは美咲からだったのだが彼は一瞬それが彼女だと分からなかった。それほど雰囲気が違ったのだ。イジメの張本人である山上を睨む美咲のその様子はまさに怨霊といっていい様相だったので仙一郎は愕然とした。

「美咲さ…」

おもわず彼女に近寄ろうとするが危険を感じたリザに腕をつかまれ止められる。

その間も山上の怒声は続く。

「学校はイジメの張本人呼ばわりされて結局、転校だし、親からも怒られて散々だよ!そのうえ名前と住所がネットに流失して私ひとりが悪者扱い。外もまともに出歩けないじゃないか!」

「そんなの自業自得じゃん!」

「その事でアンタのこと探してたんだよ!」

山上は十万里の胸を人差し指で小突き彼女は睨み返す。

「何よ!」

「ネットに住所とか書き込んだのアンタじゃないの?ずっとワタシのこと目の敵にしてたし!」

「信じられない!逆恨みをいいところだよ!私そんなことしてないっ!」

わなわなと震えて怒る十万里に山上は追い打ちをかける。

「アンタの姉も、どうしようもないクソ野郎だったけど姉が姉なら妹も妹だな!アンタも死ねばイイのに!」

そのひとことに十万里は逆上し山上につかみかかる。

「お姉ちゃんのことは悪くいうなっ!」

二人は取っ組み合いを始める。

「ちょっと二人ともやめっ…」

仙一郎は割って入ろうとするが止まらない。

彼は助けを求めるようにリザを見ると彼女はやれやれといった風に二人に近寄ろうとする。

「お前のせいでお姉ちゃんは!」

「うぜぇ!クソ女!」

罵詈雑言が飛び交い、もつれ合う、ちょうど到着しようとしていた電車がホームの騒動に気づいたのか警笛を鳴らす。なおも止まらない二人の争い。

「このっ!」

十万里が掴まれた手を押し返そうとしたとき、山上が身体をひねり半身の体勢になったためバランスを崩した十万里は勢い余ってホームの端から線路へ。電車の警笛がけたたましく鳴り響く。

「危なっ!」

仙一郎が叫ぶのとほぼ同時に今まさに線路に落ちようとしていた十万里の身体が突然静止するとビデオ映像を巻き戻すようにホーム上に戻るような動きをする。電車のブレーキが軋む音が響くホーム上に仙一郎が見たものは十万里を抱えたリザの姿だった。吸血鬼であるリザが人智を超えたその速さで十万里を受け止めたのだ。

「十万里ちゃん大丈夫!」

仙一郎は駆け寄るとリザに支えられた十万里に声をかけるが放心状態で応えられない。

「危なかったデスネ!でも怪我は無いデスヨ!」

リザは何事もなかったかのように平然と答える。

「助かったよ!」

仙一郎が礼を言うとリザは嬉しそうに微笑む。

すると遠くから騒ぎに気づいた駅員が仙一郎らの所へ駆け寄ってきた。

「ちょっと君たち!危ないじゃないか!」

それに一番早く反応したのは山上だった。これまでとは全く違うほがらかな笑顔で言う。

「すみませーん!ちょっと友達とじゃれあってただけなんですぅ。気を付けまぁーす!」

「本当気を付けて下さい。危ないからあまりホームで騒がないように!」

怒る駅員の注意に素直に頭を下げて謝り続ける。その様子を見ていたリザは抱えていた十万里を仙一郎に任せると山上に歩み寄り彼女の肩に手を回し仲が良いことを駅員に訴えるようにして口を挟む。

「申し訳ございませんネ!気を付けますんデ平にご容赦くださいデース!」

「本当に気を付けて下さいよ!」

二人の様子をみて駅員は呆れたように注意すると去っていった。駅員の姿が見えなくなると突然リザは山上の胸倉をつかみ睨みつける。

「何だよ?放せよ!」

山上は抗うがびくともしない。不穏な空気を感じた仙一郎が声をかける。

「リザ!」

「仙一郎、安心しな!殺しはしないからさ。」

リザの口調が普段とはガラリと変わり目の色も赤く染まっている。その豹変ぶりは仙一郎が殺されかけた時と同じであったが、あの時と違い殺意は微塵も感じられなかったし仙一郎は今の彼女の事を信頼していたのでその言葉を信じ成り行きを見守ることにした。

「お前、偶然のふりして彼女が線路に落ちるようにわざと動いたろ!」

リザは山上を睨みそう詰問する。

「なに言ってんの?そんな訳ないじゃん!」

「電車が来るのをチラッと確認したのも、タイミング合わせて彼女を煽ったのもわかってるんだよ!もみ合ってるようにみせて突き落そうとしたのもな!」

「そんなこと、してませーん!」

山上はふざけた口調であくまでも否定する。その態度にリザの口調が厳しくなる。

「私は人を痛めつけて苦痛を味わわせることに喜びを感じるサディストだし、人を殺すことなんか何とも思っちゃいないがお前のやり口には反吐が出るんだよ!」

「だぁかぁらぁ、してないって!でも…もし姉妹そろって電車に惹かれて死んでたら笑えたんだけどね!」

山上は薄笑いを浮かべそんな当てつけがましい言葉を吐く。仙一郎はその時、彼女が見せた表情があまりに邪悪で化物じみていたことに戦慄した。その態度を見たリザは突然、山上のみぞおちに拳を入れる。

「がっ!」

短いうめき声を漏らし腹を押さえて倒れこみ嘔吐物をぶちまける山上。

「リザ!」

さすがに仙一郎は声をかけるが彼女には届かない。リザは彼女の喉を片手でつかむと軽々と持ち上げ締め上げ言う。

「お前も苦痛の果てに一回死んでみたら少しは賢くなるんじゃないかな?」

「うっ…うっ!」

山上は息ができずジタバタと空中で暴れ逃れようともがくがびくともしない。首に食い込むリザの指に今にも握りつぶしてしまいそうなほどにギリギリと力が加わる。

「リザ!やりすぎだ!ストップ!ストップ!」

仙一郎が語気を強め叫ぶとリザはぴくりと反応して山上を放す。解放された山上は地面に這いつくばって苦しそうに咳き込む。リザはしゃがみこんで彼女の顔を覗き込むと言った。

「命びろいしたな!でももしこの先、小田十万里にちょっかい出すようなことがあったら…」

リザは山上を睨みつける。

「殺すぞ!」

その言葉はあまりに冷たく鋭く山上はそれが嘘偽りない言葉であることを感じ恐怖した。

「ひっ!ひやぁぁぁ!」

山上は情けない声を上げ這うように逃げていった。

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