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夢幻の星刻騎士〈スター・ナイト〉  作者: 夢愛
第一章 死して戦う者達
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流星・紅蓮

 僕と網走先輩は脱衣所に連れて行かれ、騎士の甲冑を着るよう説明された。元々着る物は決まっているらしくて僕は水色の星の様な丸が幾つも付いた──まるで変身時の鎧みたいだ。


 今更だけど思ったんだよね。何か「変身」って言うの小っ恥ずかしい。


 大剣のレプリカだと思われる物を装備し、ルカ達の待つコロシアムのリングに向かった。このレプリカ重いなぁ。


「遅かったな夢奏。夜耶はとっくに来ているぞ」


「おかしいなぁ! 同時に入室した筈なのにそんな早いの!?」


 何食わぬ顔で網走先輩は西洋風の大きな剣を眺めている。何やら楽しそうな表情で。

 僕やルカには無い兜まで有るんだね先輩。頭重そう。そして西洋と東洋の融合体か。


 僕の手を引いて仲間達の元へ連れて行くポニテのギャルっぽい女の子、笹野辺さんはフーセンガムを膨らます。何やってのこの人。


「今日は、アイジが掴みかかったりしてごめん。私が代わりに謝るよ」


「いや、別にいいけど。僕も失言だったろうし」


 アイジの味方をすると思ってたけど、案外そうでもない? いや、寧ろアイジの悪い印象をフォローする為に謝ってる? まあ後者だろうね。

 アイジ以外の重要人物らしきメンバーが集合し終えると、先程まで僕の腕を掴んでいた筈の笹野辺さんが中心に移動していた。


 移動速度はもしかしたらトップレベルなのかな? 気づきもしなかったよ。



「行くよ、二人共。ガードしなきゃ、ただじゃ済まない」


「え?」


 先輩も、困惑してるし僕だって全然理解出来ていないけど、何かが始まりそうだ。しかも笹野辺さんは僕達二人に向かって発言していたよね。

 ガードしなきゃ、ただじゃ済まないってもしかして攻撃するつもり!? 何で!?


 慌てて腕を交差させてガードしようとすると、笹野辺さんは画面の付いたブレスレットを上下に一度擦った。


 冷気が彼女を竜巻の様に包んでいき、凍って弾けた──本物の、騎士に変身したみたいだ。

 ダブルカリバーを装備し、鉄の耳当ての様な物が装着されている。鎧は透けた白で、ドレスになっている。防御力低そうだね。



「腕を交差させたくらいで、ガード出来ると思ってるのか?」


 ルカは悪魔の笑みを浮かべる。とにかく彼女達が本気で何やりたいのかが全く分かりません。

 父さん、僕ここで殺されるかも知れません! 仲間の手によって!


「はああああああああああああ!!」


「うわっ、来た!」


「危ない!」


 間一髪のところで網走先輩に抱き寄せられ、カリバーの突きから避けることに成功。それ、本物ですよね? 笹野辺さん。

 これは何? 新入生歓迎会みたいなものですか? 楽しいパーティとかじゃなくて手荒な感じの。


 左腕のカリバーの刃を外向きにし、僕に向かって更なる攻撃が発動。避けたら先輩が切れちゃう! どうすれば……!?


「右手」


「え?──」


 刹那、桜姫の声が聞こえ釣られた様に右腕を翳した。僕を天から注ぐ光が包み、初めて戦闘に参加した時と同じ水色の円の付いた鎧が身に纏われた。

 光がカリバーを弾き、笹野辺さんは尻餅をついた。


 桜姫が頷くのを見た感じ、これはコロシアムで殺し合えってことですか? いや、流石に嫌。


「綺麗な鎧だね、羨ましいよ。そっちも早く変身しなよ、死にたいの?」


「えっ、変身って……」


 笹野辺さんの連撃を避けながらあたふたする先輩。変身の仕方なんて誰にも教わってないもんね。

 先輩をひとまず守るべく、僕は笹野辺さんに大剣を振り上げた。


 戦いたい訳では決してなく、とにかくこのままじゃ網走先輩が本当に殺され兼ねないから。


「おっ、やる気だね」


「いやいや違うから! 何これ!? 何で仲間同士で戦うの!?」


「何だ、理解していなかったのか」


「こんなの理解出来ると思う!?」


 真顔で驚くというか呆れているルカに対して正直な怒声を浴びせた。

 急にこんな所に連れて来られた上に何の説明も無く攻撃されてるんだよ? それを理解出来るって、どんな天才? 心でも読めるのかな?


 鶏に空を飛ぶ方法を教える人を見る様な呆れっぷりでルカは説明を始めた。僕は鶏でもそのアホな人でもないからね。


「センスを知りたいと言っていたばかりだろう。戦闘に入れば高確率でセンスが現れる」


「センス分かったの!?」


「いや、そう言えばお前達はセンスを武器に纏わせる方法を知らんなと思ってな」


「バカなんじゃないのかな!?」


 偉そうに物を言う割にはルカってかなり抜けてるよね! 僕は以前戦ってるけど、先輩に至っては変身すらしたことなんだからね!


 桜姫に指示され、掌を確認した網走先輩はそのまま手を挙げた。ウル○○マ○じゃないんだから。


 熱風がコロシアム中に立ち込み、網走先輩は燃え上がった。怖。

 風が消えると炎も消え、先輩は赤い厚めの鎧を装着している。兜も、西洋風の大剣も装備されてるけど、さっきの格好まんまだね。


 変身時に燃えていたってことは、もしかして【炎】とかそこら辺?


「わっ、変身出来た。鎧かぁ、かっこいいけど可愛くないね」


「その二つって、両立するのかなり難度高いですよ先輩」


 ところで、変身時に必要なあの携帯電話みたいな機器は一体どこに消えたんですか? 持っていた筈なのに無いし。

 特撮ヒーローものであるけど、もしかして変身したら消える又はいつの間にか持っているとかそんな感じですか? 凄い気になるんだけど。


 僕達二人が変身すると、ルカと笹野辺さんがアイコンタクトをとる。

 カリバーを二つとも上空へ投げた笹野辺さんの周囲に凍てつく風が出現。そして螺旋状に伸びていきダブルカリバーと連結。


「行くよ、二人共!」


「えぇ!?」


「わっ、わっ、わっ!!」


 何か、フィニッシュ技っぽいのが来そうなんだけど、僕も先輩も慌てるだけ。だってどうすれば良いのか分からないんだもん。


「剣にセンスを込めろ! 循環させるんだ!」


「分かんないいいいい!!」


 剣にセンスを循環ってどゆこと!? センスがイマイチ分かってないのに出来ると思ってんの!?


「あ、出た」


「え?」


 後方では、先輩の大剣が炎上していた。何それ、着火した訳ですか? 燃やした訳ではなくて、センスを発動させた訳ですか? は? 何それ何で出来んの。


 振り下ろされるカリバーから僕は逃げ、先輩は対抗するかの様に炎上する剣を払った。衝突し、冷気と熱気が広がる。暑い寒い暑い寒い。


「うむ、中々良かったぞ。さて、桜姫アレはどんなセンスだ?」


 いやルカは分からないんかい。

 桜姫が携帯機器の画面を見ると、僕らの方へそれを向けた。そこには先輩のセンス名が大きく書かれていた。


「網走夜耶。お前のセンスは【紅蓮】だな。どうにかして使え」


 センス知れたのはいいことかも知れないけど凄い無責任! 散々使え使えって初心者に偉そうに言っておいてそれ!? 使用法とか教えないんだ!?


 先輩は先輩で、僕よりも先にセンス攻略しちゃうなんてそれこそセンスあるよね。なんて。

 僕は未だによく分からないけど、さっきルカが剣にセンスを込めて循環させろって言ってたよね。何か剣に集中してみるとかそんな感じかな。


 自分なりの解釈をし、剣に力を込めていくつもりで集中してみる。何かが現れるとかの異常は確認出来ない。

 ダメかなぁ。僕はセンスを扱えないのかな。


「ん? 夢奏、お前鎧光ってるぞ」


「え?」


 桜姫に突っ込まれ、鎧を確認すると確かに光ってる。水色の円から浮き上がる様に光が発生している。何これ。


「もしかしたらそれがセンスの技になるかも知れないな。よし、夢奏剣を振り上げろ!」


「えぇ!? う、うん!」


 重たい鎧が邪魔だけど、僕は勢いよく剣を振り上げた。振り上げたら、僕の前方に九つの水玉が円を描く様に出現した。

 綺麗な光だなぁ、青いホタルみたい。なんて感動してたけど、これでどうすればいいの? どんな行動が正解なの?


「いや振り下ろせよ」


「あ、はい」


 思ったより簡単でした。

 ルカの指示通り剣を振り下ろすと、九つの水玉も同時に進んで行く。待って、このまま行くと笹野辺さんに当たっちゃう!


 余計な心配ではなかっただろうけど、笹野辺さんは間一髪避けた。いや多分、今割って入って来た奴に救われた感じ。

 僕の前方右手側に、アイジが笹野辺さんを抱えて立っている。何だ来てたのか。



「何も考えずに振るなんてな、クソ野郎が」


 あーあ、出たよこれこれ。コイツ本当大っ嫌い。初心者相手に初めからプロレベルの剣捌きでも期待してるんですか? 無理に決まってるでしょ。

 僕はアイジを無視して笹野辺さんに謝り、ルカと桜姫に顔を向けた。二人は頷いてくれた。


 ただそっち見ただけだけどね。


「夢奏のセンスも解析が出来たぞ。見ろ」


 僕のセンス──期待も不安も相まって変な感じだけど、技の速度がかなり遅いのは不安要素。そして大振りなのは不満要素。もっと扱い易いのがいいよ。

 アイジも含め、メンバー全員が桜姫の携帯機器に釘付けになる。そんな気になる?


 画面に映し出されたのは、『流星』の二文字。


 ──僕のセンス名は【流星】だった様だ。まあ、星なのは何となく分かってたけど。

 でも、これで未然に防ぐ方法が無いことも判明してしまったね。僕らも役には立てなかったよ。



「いや、これは役に立つぞ。恐らくな」


 桜姫の呟いた台詞に全員が目を丸くした。流星で、どうやって炎神の出現を未然に防ぐの?


「いいか? 流星も星だ。それなら太陽系を利用すればいい。地球や火星とリンクし、太陽からの侵入者を即座に確認出来れば人間を乗っ取るのを防げるかも知れないだろ」


「え、あ、リンクってどうやれば?」


「どうにかしてくれ」


「やっぱり無責任!」


 でも、今なら何とか地球の『声』が聞こえる気がする。まだ、炎神は居ないとかなんとか、聴こえる、ような。


 ルカ達もゆっくり慣れてくれと優しく応援してくれたから、あまり急がずにコントロール出来るようにしていこうと思う。

 だって、無茶してダメだったとか言ったら笑えないでしょ? のんびりマイペースに、初めは炎神をとにかく探すことに専念しよう。


 ──瞳を閉じて心を落ち着かせたら、宇宙が見えた。瞼を閉じると見える闇の世界がそんな風に見えること、あるよね? そう感じてみたりさ。



「ん? 何だろう……」


 星が、一つ一つ何かを訴えている様に感じる。これが、僕のセンス? それとも妄想?

 でもとにかく、地球が鳴いてる。鳴いてるんじゃなくて、泣いてる? あ、声かな。声がハッキリと言葉を話してるんじゃなくて、文が映る様に脳に入って来る。


 地球から発せられたその言葉は──



『熱いよ』



 熱い? 確かに今は少し暑くなっては来ているけど、夏後半になったらもっと熱いでしょ? 今年は猛暑でもないらしいし。

 だったら、何で? 僕が問いかけてみると、太陽が映し出されそこから──炎の塊が、人の形をした炎の塊が二つ地球に落下した。


 そして、僕に射抜く様な頭痛が走った。


「ん? どうかしたか夢奏。先程まで寝ていたみたいだが」


「起きてたよ! それより、炎神が地球に降りて来てる! 声が聞こえたし、映像も見えた。急がないと、人間を乗っ取っちゃうよ!」


「何!? 桜姫、レーダーは!?」


 慌て出すルカは桜姫にレーダーを確認させた。そして、炎神が一体だけ確認された。もう一体居る筈だ。


「よし、アイジとフーカは先に行け! 桜姫とナナミも頼む!」


「おう」


「うん!」


「分かったが、お前はどうする? ルカ」


 桜姫以外の三人は先に光に包まれて消えた。多分、現実世界に向かったんだと思う。

 先輩はプチパニックに陥ってるけど、僕が押さえつけて何とか制御。桜姫に問われたルカは携帯機器を取り出し


「私はもう一体の場所へコイツらと向かう」


「……分かった。気をつけろ」


「お前達もな」


 ちょっと待って? レーダーには一体しか映ってなかったんだよ? なのに、何でルカはもう一体確認出来てるの? 桜姫も納得してるし。

 僕、まだ後一体降りて来てるよなんて言ってないよね? いつの間にか二体来てること教えたかな。


 ルカに腕を引かれ、更には僕が先輩の腕を引いてそのまま光の中にダイブした。

 疑問は消えて無くなったりはしないけど、ルカに疑問抱いたって仕方ないよね。もっと不明な点有るもん。例えば幾つなの? とか何で死んだの? とか。



 ──空中に放り出された僕達は、見た事のない治安の悪そうなスラム街らしき路地裏に降りた。僕は落ちた。

 延々と何処までだよってくらい続く道と、壁の下品な落書きを見てヤバそうな場所だなぁって思いました。


 何だって良いんだけどさ、炎神路地裏好きだね。



 前回みたいに携帯機器を弄るルカは、指を止めて前方を睨みつけた。来たみたいだね。


「異常だな……夢奏、夜耶、早めに変身しておけ」


「え、あうん」


 僕と先輩は言われるがまま変身し、剣を動きやすい様両手で構える。先輩は大きいから担いでる。

 異常って、何がだろう? まだまだ疑問は減らないけど、僕は炎神に集中することにした。


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