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第六話 

 何とも可愛げの無いデュラハンを言いくるめ、道を聞くとここはダンジョンの最奥らしい。


 奥へと続く道は無く、宝物庫があり外に出る魔法陣があるからそれを使えばいいと言う。


 だが問題はデュラハンが一緒に来ると言い張ることだ。


「だから! 頭がないと困るだろ!」


「じゃあ宝物庫で何か探すんじゃ!」


「なんで俺達が手伝わないといけないんだよ!」


「じゃあ扉開かないもーん! お主達はここでワシと一緒に暮らすんじゃ! わははははは!」


「はぁ!?」


こいつ……ただの寂しがり屋かよ!


「お前……寂しいんだろ」


「そ、そんなわけないじゃろ。ワシは何百年もこのダンジョンで座っておったのじゃ。今更寂しい事などあるか!」


ふぅん?


「そんな事言っちゃっていいのかなぁ? 本当はわかっちゃってるんじゃないのぉ?」


「な、何がじゃ……」


「ずっと一人だったから耐えられたけど、久々に俺達と会話したから楽しくなって寂しさを思い出しちゃったって事をだよ」


「……」


「いいのかなぁ、意地張っちゃってぇ? ほーれ、ほれほれ、素直に言っちゃえよ」


「ぐぅぅぅ! むかっ腹の立つ奴じゃああ!」


「で、言う事があるだろ」


「斬りかかってすまんかった……」


「そうじゃないだろ」


「え?」


「それは違うだろって。あの時俺達は確かに敵だった。俺だってお前を消し去るつもりだったしな」


「じゃあ……」


「だから言ってるだろ、素直に言えって」


「ぐぐっ……ワシも、一緒に連れて行ってください……」


「よし、ルスー」


そう言って呼ぶとルスは奥から黒い何かを咥えて持ってきた。


「それ……」


「ルスにそれっぽいの探しておいてくれって頼んでおいたからな」


「うおおおおん! ルスちゃんや~」


「てめぇ! 変な事をするんじゃねぇ!」


「変とは何じゃ! どこも変じゃないじゃろ!」


 お前の性格だよ!


 どうみてもデュラハン(笑)だがその誇りである鎧と剣やマントは貶さない。

 このデュラハンは言ったのだ。何百年もここにいて、昔は城を闊歩していたと。

 そうなればこいつは過去の将軍職についていたかそれに準じる人物だったのだろう。


 そんな誇りを、どうして貶せようか。


 俺もゲームではヒーラーとか(笑)って言われた事があるがメイスで頭を割ってやりたくなった。

 しかしそいつは味方で敵ではない。癒す対象ではあったが怪我を負わす相手ではなかったから耐えた……

 だからその辛さはわかる、わかってると……思う。


「なかなか似合ってるな」


 全身を包む鎧はゴテっとしており重厚感のある鎧だ。その頭に据えられた兜は少し色味が違うが十分にマッチしており後頭部の辺りから出た真紅の房が様になっている。


 本音を言えば滅茶苦茶格好いい。でも悔しいから絶対に言わない。


「ふふん。ワシもまだまだ捨てたものじゃないのぉ!」


 ふん! むんっ! とポージングを決めていて非常にイラつくがそれだけ嬉しいと言う事だろう。


「ルスもありがとな」


 その言葉にぶんぶんと尻尾を振って答え、頭を下げたので撫でて欲しいのだろう。よしよし、可愛いやつめ。


「ルスちゃんはいい子じゃのぉ」


「ちゃんって言ってるがルスの雌雄は不明だぞ」


「なんじゃと! 本当なのか?!」


「骨なのにどこで判断するんだよ……」


「むぅん……」


「まぁ可愛いからいいじゃんか。そろそろ出ようぜ」


「宝はいいのかの?」


「袋とか持ってないしな」


「お主は……ちゃんと調べんか! 確かマジックバッグがあったはずじゃ」


「なんだそれ?」


「そんなことも知らんのか! カッー! それぐらい知ってないでどうする!」


「いや、俺アンデッドだし」


「なにぃ?! そんな奴がなんで回復魔法なんて使えるんじゃ!」


「使えるんだから知らないって。普通は使えないのか?」


「普通どころか摂理に反するわ!」


 そんな摂理聞いた事ないわ。まぁ摂理に反しているからこそ反転魔法とかいう極悪魔法が使えるのかも知れないがそんなのは例外中の例外だろう。

 俺の願いを叶えてくれた神様に感謝だな!


「まぁまぁ。細かい事は気にするなって。気持ちいいの一発くれてやるからさ。アンヒチール」


「ふぉぉぉ……これはなかなか。じゃなくて、ごまかすな!」


「探るな。人には言いたくない事だってある。お前はこれから同道する相手を探ってこれからも生活するのか?人となりがわかり、信頼し、信用できるようになれば自然とわかるようになる。それは時間が解決するだろう、違うか?」


「ぐぅの音もでんわい……すまんかった。この通りじゃ」


 そういって頭を下げられたのだが別にそこまでする必要はない。

 俺はやらないからお前もするなってのはちょっと違う気もするが、探られながら一緒に生活するのは嫌だろ? ちゃんと時が来たら言うさって言ってるんだ。今は我慢してもらうしかない。


「いや、いい。それで、マジックバッグって?」


「そうじゃったな。まぁなんと言うか大昔の遺物で空間魔法が練りこまれた糸を使って作られたものでの。見た目に反して大量の物を入れれる袋の事じゃ。えっと確かこの辺に……お、あったあった」


 それは便利そうだな。あるのと無いのじゃ大違いだ。貰えるなら貰っておこうじゃないか。


 デュラハンに渡されたのは絹のような肌触りのクリーム色をした巾着袋。

 本当にこんなのに入るのだろうか。


 俺はずっと戦った広間側の壁にもたれ掛かってルスと遊んでいたのだが中を覗くと目が痛いくらい凄まじい金の光だった。


「うおっ! 眩しい!」


「宝物庫じゃなからな! わはははは!」


「流石に全部は持っていけないよな。袋にも少しあまりを持たせておきたいし」


「そうじゃな。持っていけるに越した事はないが流石に無理じゃろう。三分の一が良い所じゃろうがそれでもしばらくは遊んで暮らせる金じゃ」


 貨幣価値はわからないが恐らくそうだろうなと思える程の量がある。


 宿を取ってもルスには窮屈な思いをさせるだろうから治安が良さそうな街であれば家を買うのがいいのかもな。

 ちょっと相談してみるか。


「なぁ、この金どうするんだ? デュラハンは何か欲しいものとかないのか?」


「ないな。お主の好きに使え」


「そうか、じゃあどっかで家でも買うか」


「ほう。それもいいじゃろうな」


「俺は外を知らないんだが知ってるか?」


「何百年もここにおったワシが知るわけないじゃろう!わはははは!」


 俺が間違っていた。こいつも俺達と同じ引きこもりだった……


つまりデュラハンに期待できるのは戦力とちょっとした常識程度と言う事だけか。


「まぁ探り探りやっていくか」


「ワシはついていくだけじゃ」


「よし、じゃあ行くか。外へ!」


「応!」


 俺達は袋に詰めれるだけ金を詰めた。ふと、この金が外でも使えるか気になったのだがこれはダンジョンが生成する金で問題ないらしく、鉄貨 銀貨 金貨 聖銀貨と四枚あり百枚毎に価値が上がる。

 袋に入っているのは金貨二十万枚。聖銀貨約二千枚相当だ。

 数えたわけではなくこの袋から出そうとすると個数と名称が表示される便利機能のおかげだ。


 ホクホクした気分になりながら俺達は部屋の脇にある魔法陣へと足を踏み入れる。

 

 バラバラにされないように俺はしっかりとルスにしがみつき、デュラハンは俺の体にしがみついた。

変なウイルスに感染しそうだから触らないで欲しかったがこの場だけは許してやる。


 魔法陣に刻まれた幾何学模様が高速で回転し始め白の光が体を包み込んだと思うと俺達は小高い丘の上にある朽ちた神殿に立っていた。

 その入り口には立て札が立っている。


「ここが入り口なのか? 俺の目がおかしくなければ聖域につき立ち入り禁止と書いてあるんだが」


「わ、ワシにはなんの事やらわからんのぉ」


 何か隠してるがそれはお互い様だ。まぁ大体想像は付くが本人が言う気がないのならそれもいいだろう。


 煌々と照りつける太陽は眩しく、不快だ……


 前はこんな気持ちのいい天気だったらピクニックやドライブにでも行きたい気分になっていたのだろうが、アンデッドになった弊害だろうか。消滅しなくて良かったと思う反面少し残念に思う。


 俺達はデュラハンを詳しくは知らない。何があってこの聖域と嘯くダンジョンでこうなったのかを。

 だがそれでいい。俺達は出会い、そしてこうしている。


 そして問題なのは今のルスはとんでもなく目立つと言うことだ。


「ルス、悪いが人が驚くかも知れないから影に入っててくれるか?」


 シュンと目に見えて落ち込んでしまった……

 できれば何とかしてやりたい所だが流石に超巨大サイズの黒い骨が動いていたら警戒されてしまうのは間違いないだろう。


「ごめんな」


「なんじゃ、ルスちゃんはデッドウルフじゃろ? 後二段階も進化すればエンドウルフを越えてグレートデッドウルフになってサイズを変えられるようになるぞ?」


「なにぃ!? おいおいおい、爺さん。そう言うのは言わないのが鉄板だろ? 何楽しみ奪ってくれてんだよ!」


「お、おぉ。よくわからんがすまんの」


 何に進化するかわからないから楽しみなんだろうが! それをネタバレだと?! なんと言う暴挙だ!

 思わず猛ってしまったがまぁ隠れる必要がなくなるなら、と気持ちを切り替える。


「でもそんなすぐ進化できないだろ」


「ワシが考えなしにそんな事を言うわけなかろう。ほれ!袋を貸してみぃ!」


 そういって俺から袋を掻っ攫うと何かを探している。

 何か仕込んでたのか?


 様子を見ていると袋から大きめの魔石を取り出した。見た事のないサイズのものだ。


名称:大魔石


 ハイの魔物でも魔石は中サイズだったのだがいったい何の魔石なのだろうか。

 だがこれでルスが進化できるのならばありがたい限りだ。


 まだ何かありそうだがこのマジックバッグと言うのは物を入れた本人しか取り出せないようになっている。

 そのため落としたとしても要領がなければゴミ同然だし、なくした本人が困ると言う以外でその他が得をしないものなので俺が知ったところでどうすることもできない。


「ルスちゃんや、これをお食べ」


 飴ちゃんやで~と言わんばかりにルスの目の前で大魔石をうろつかせるがお座りをしたルスは不動だ。きっと俺の許可を待っているのだろう。なんて義理堅いんだ!

 いいんだぞルス、我慢しなくていいんだ!


「いいぞ」


 俺がそう言うとデュラハンの手から器用に大魔石だけをもぎ取りばっくりと丸齧りにするといつものようにぶるぶると震え出した。

 だが今回は様子が違う。

 変な光を放っている……!


「お、おい!」


「むむっ」


「どうなってる!」


「魔物が魔石を摂取して死ぬ事はないわい。ただ大魔石と言うのは中々貴重なものじゃなからな。体の適応に時間がかかっておるのじゃろう」


「大丈夫なんだな?」


「そう言っておるじゃろ。安心せい」


 不安は拭いきれないが焦ってもしかたない。

 今はルスを信じて待つだけか……


 俺とデュラハンは神殿の瓦礫に腰掛けてルスの様子を見守ることにした。


「そういえばお主はいつまでワシをデュラハンと呼ぶつもりじゃ?」


「え? 名前デュラハンって付いてたからいいんじゃないの?」


「お主は……街中で甲冑姿の男をデュラハンデュラハンと呼んでおったらすぐに浄化しに来る連中で溢れ返るわ!」


「そうなの? 俺あんまり詳しくないからさ」


 ゲームにはいない種族だったしな。小説だとか伝説とかだと妖精だったとは思うけど。


「まったく。デュラハンとはスケルトンの最上位に近い種族じゃ。ワシは自我があるが、ないものは生者の気を探知すればそこへ飛んで行って殺戮を繰り返すSランク級の魔物じゃわい」


「へぇ」


「へぇって。Sランクじゃぞ?」


 ランクって言われても知らないからなぁ……

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