旅立ち
この世の中全てに無関係です。
そして世の中のお父さん頑張ってください
第2話
―旅立ち
利用者さんからの言葉で心が折れた私、高瀬栄子は憧れの英雄が生きたトルコへの旅を決めた。
そして仕事を辞めたことも含めて実家の母と兄に今から話す。
「あの…仕事、辞めた」
「「……え、ついに?」」
反応酷い。
でもあっさりと受け入れられてちょっと胸の支えがとれた気がする。
前から止めたいとはいっていたし、二人からしたら確かにそんな驚くことではないのだろう。
しかし。
私が旅に行きたいと言ったからって家族旅行と勘違いするのは辞めて欲しい。
「トルコ?また突然ね、新聞屋さんに電話しなきゃ」
「え、お母さんっ」
一人旅したいからついてこないで。
「ほらネットで宿とか調べるぞ、じゃんって海外やってたかな?」
「お兄ちゃんっ」
仕事のことは私の責任だし、父が早くに亡くなったから過保護気味なのもしょうがないと…頭ではわかっていても行動が追い付かない。
二人が用意しているのをみると、何故か胸がモヤモヤして何かを叫びたくなるんだ。
手持ちぶさたで立っているように見えたらしい。
二人は声を合わせて言う。
「「ほら栄子はまず部屋の片付け」」
ブチッとキレた。
「私の話を聞けぇええ!」最初から説明をした。
トルコへは一人で旅をしたいからというと反対される。
遠い外国だし、言葉は通じない。
何故トルコなのかとも言われた。
一つ一つの疑問に答えて、旅の準備をする。
話しながら旅に向けての想いは増すばかりだ。
かの俳人の言葉を借りるならばまさに、「旅の風が私を呼ぶ」。
東西文化の十字路、シルクロードの地…灰色の狼の子孫が住まう国。
家族を説得しながら数日過ごし、準備は整った。
お気に入りのYシャツとジーパン、風になびくロングコートに歩き慣れた靴をはいてリュックを背負う。
「本当に一人で大丈夫なの?」
心配そうな家族に頷いて、仏壇に手を合わせた。
お父さん、お母さんとお兄ちゃんをお願いします。
開けていた窓から風がはいる。
まるで背中をおされているかのようだった。
私は立ち上がり帽子を被る。
「行ってきます」