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ラーレと菊を飾りて貴方を想う  作者: ソメイヨシノ
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世界の名前

この世の全てと関係ありません。


山田さんたちに挨拶をしてからその場を離れた私とギョクチェンさん。

エンヴェルさんは何かまだ言いたそうだったけど無視をしてきてしまった。

「まあ、まずはチャイでもいれるよ」

ギョクチェンさんに手を引かれてたどり着いたのは一戸建ての大きなお屋敷。

日本だったらまず足を踏み入れることどころか近づくことすら戸惑う立派な屋敷に、トルコでは大家族が多いから大きいのかと首をかしげる。

かの英雄が住むにしては違

和感があるからだろう。

足を止めた。

顔に熱が集まるのが分かる。

かの英雄を考えて暴走しそうな思考をなんとか押し止めた。

「ほら、何一人で百面相してるのかな。おいで。」

「あ、すみませんっ。」

あわてているとニヤリと笑いながら言われた。

「ババは仕事でいないよ、残念ながらね」

「!そ、そんな残念だなんて」

「いいんだよわかっているから。初恋なんだろう?」

息をのむ。

その言い回しは、一人を除いて誰にも言っていないはずだ。

「説明はついてからね」

ギョクチェンさんはチャイをいれてから客室らしきところに案内してくれた。

椅子に座っても、地図や本に杖が沢山置いてある家にキョロキョロしてしまう。

「まずは説明しよう、ここがどんな世界か。どうして君はここに来たか」

「よ、よろしくお願いいたしますっ。」

いれて下さったチャイをわきにおき、彼女は地図を取り出した。

やけに綺麗な紙を使用している地図はまるで現代のもののよう。

そこに書かれた文字は読めないのは当たり前だけど、大陸の書き方が違い過ぎて驚く。

まるで中世の天動説を基本とした地図を誰かがパソコンで作りコピーしたような地図だ。

「エイコは多世界解釈を知っているかな?」

「名前だけならば知っていますが…」

多世界解釈、量子学上の考え方で昔から多くの物語や創作に利用されているものだ。主に、パラレルワールド等と呼ばれる異世界へ主人公が旅をしたりする際の説明で使われているはず。

簡単に言うと、自分たちの世界とは違う世界があり、その世界と自分たちの世界は互いに何らかの影響を与えあっているということだったかなと呟くと頷かれた。

「話しは早いね。そう、ここは君の世界とは違う世界で、私たち渡り人は便宜上『ホーム』と呼んでいる。」

この世界はホームと呼ばれる異世界。

納得するものがあって頷いた。

実はさっきから気になっていたのだ。

現代と昔が混じりあったような不思議な地図や、町並み。

年齢差が不自然な人。

彼らが身につけている道具や、屋敷のなかの家具。

異世界だというと納得する、しなきゃいけない。

…でも渡り人?

また新しいわからない単語だ。

「渡り人っていうのはホームと他に存在する異世界を渡る能力を持った私みたいな人間のことさ。大抵は気ままに世界を渡るだけなんだけど、たまに何処かの世界に定住して権力者として活躍するのもいる。力は遺伝するんだけど、完全ではなくて確率は未知数だけどね。君の世界の日本にもそうして名家と呼ばれる一族がいる。」

「えええ!?」

でも私の周りにはいないだろうな。

あ、京都にいそう。

「ああ、ちょっと脇道にそれたね。…ホームは二つの大陸を持っていて、他は海。二つの大陸は昔の戦争で和平調停をしたから今は平和さ。言語も統一されている。歴史を詳しく知りたければ後で教えるよ。で、それぞれの大陸には地域ごとに代表がいて、議会をまとめている。ここらへんはババが代表だね。定期的に代表が集まって大陸の間にばかでかい船を浮かべて国連みたいに会議を開いているよ。」

広げられた地図を指差しながら教えてくれる。

次に彼女が出したのは何かのリストで、何故かローマ字リストだったから私にも読めた。

そこにはかの英雄の名前や歴史上の偉人たちの名前が、時代や地域や分野もバラバラに記されているが一体なんのリストか皆目見当がつかない。

「このリストは何ですか?偉人たちの名前リストなことはわかりますが…」

「ホームで本人だと確認された偉人たちのリスト」

「!」

「私たち渡り人はこう考えている。ホームは偉人たちの魂を引き寄せると」

引き寄せる…。

それもまた多世界解釈のなかの考え方なのかもしれないけど、ずいぶん曖昧なもののように感じた。

「ああ、ちなみに君が此方に来たのは君の先祖に渡り人がいて少し力があったのと私のハンカチを持っていたからさ。残念なことに渡り人の力は果ててしまったらしいけど」

……ちょっと待ったぁあああ!

「どういうことなんですか!?」

「言った通りさ。」

私が渡り人の血をひいていて、ギョクチェンさんのハンカチを夢で掴んでしまったからこっちに来たと?

しかも帰れない。

「私が、ハンカチを掴んでしまったから…」

「正確には、ホームの私のハンカチを君の世界の私のハンカチと重ねたからかな。世界が近づいた時に渡り人の血が高まって君はホームに来た」

まあ、と一息おいてから彼女は開けっ放しのドアに身体を向けた。

そこには信じられない人たちがいて目を見開く。

「先に君たちと出会っていたからだとも思うけどね。久しぶりタケオ、ミツエ」

そこには、あの土井夫婦がいた。

(土井夫婦、向き合う時)

「やっぱりよ、彼女の先祖に一人だけ神隠しという逸話が残るのがいたわ」

「…そうか」

「異世界を渡り、知識や宝物を得て家を繁栄させてきた土井家のタケオ。そして力を持つミツエと私の側にいたから彼女は渡ったか、なんて思い詰めちゃダメよミツエ」

「でもっ」

「行くんでしょう?ホームに。」

「…」

「君も、まさか?」

「行くわよ勿論。ただ、少し調べモノをしてからね」



そうして彼らは向かう。

ホームへと

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