余命についての短編小説
【俺さ、余命一年なんだよね】
何気なくSNSサイトをいつも通り覗いていた少年は、その書き込みに驚愕した。
普通に考えたら、こんな書き込みは信じられない。嘘に決まっている。
だが、この人が…そんな書き込みをするのか?
この書き込みをした張本人は、少年と趣味が合い、相談事にも乗ってくれる人間であった。
そんな人の書き込みに興味を持った少年が、見たのがこれであった。
友人との会話。
それに、この書き込みがあった。
前から疑問に思っていた。このSNSサイトをわざわざ使いにくい携帯ゲームの機能を使ってやっていたこと。決まった時間に書き込みが途絶えること。しかもそれも時間がやけに早いこと。
きっと彼は…病院にいるのだろう。この書き込みを見た少年が出した結論はこうだった。
どうして。なんで、そんな。そんな思いが少年の考えを埋め尽くしていた。
死とは人間に平等に、時として突然に襲いかかる。少年もそれぐらい知っていた。
少年はこれまで死を素っ気なく思っていた。死ね、という言葉も、嫌な奴に対して簡単に言っていた。それを、どうとも思っていなかった。
だが、実際にそれを目の当たりにした少年は、恐怖に襲われた。
彼に対する心配。それもあったが、憎たらしいことに、少年にはそれよりも自分の死に対しての恐怖が…
と、そのとき、一件の通知があった。
…彼からだった。何気ない話題に関しての、少年に対する書き込み。
だが、少年は、そんな何気ない会話に対してさえも…まともな返事ができそうになかった。
返事を返せなかった少年は、嘆いた。
どうして彼は一年しかない寿命なのにこうも冷静でいられるのだろう。
自分には、何が…
そこまで考えて、少年はようやく気づいた。
自分は奇跡の医者でもなく彼の知人でもなんでもない。
自分にとっては、彼は画面の向こうの存在であり、相手も同じだ、と。
例え何があったとしても、自分には何もできないのだ。
少年は自分の無力さを嘆いたわけではない。自分には何一つできることはないと気づいただけ…いや、一つあったな。
彼にいつもの調子で返事をする。
これからも、彼にとっての画面の向こうの人間として、話そう。これが、自分にただひとつできることだろう。
もっとも私は、彼に生きていてほしいが。
読んでくださり、ありがとうございます。