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俺、冒険者!~無双スキルは平面魔法~(WEB版)  作者: みそたくあん
第2章:駆け出し冒険者編

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第47話~後は任せた、もう疲れたから~

 その後、生き残ったゴブリン共はバラバラに逃げていった。気配察知を使えば追いかける事も出来たが、気を失った奴らにとどめを刺す方が優先だ。なにしろ400匹近くいるからな。

 クリステラを呼び戻して、2人でサクサクと頭を刺して回る。ウーちゃんは俺の後ろを尻尾を振りながらついてくる。散歩でもしてる気分なんだろうか?今は間に合わせの白い布を首に巻いているが、ちゃんとしたハーネスとリードを用意するべきかもしれない。


 街の周囲から魔物が居なくなったのを確認したのか、ようやく北門が開いて冒険者達が出てきた。ギルド職員と思われる軽装の人達の中に、革鎧を装備したイメルダさんも見える。全部で30人程だろうか。冒険者の街にしては少ない気もするな。


≪よし、皆で手分けして魔石を切り出すぞ!そこの3人と5人、それとそこの3人は処理用の穴掘りだ。数が多いからな、出来るだけ大きく深く掘るように!場所は東門の南東だ。道具は用意してある、詳しい事はその職員に聞け!残りの連中は魔石の切り出しだ!南門方面から順番に切り出して行くぞ!切り取った後の死体は荷車に積んで、いっぱいになったら処理場へ運べ!いいか、職員が見ている!くれぐれも着服などしないように!もし不正行為が発覚した場合、討伐と採取のランクを降格の上、罰金として金貨5枚だ!では作業にかかれ!≫


 耳元の平面からイメルダさんの声が聞こえてくる。なかなか堂に入った指示だ。流石はギルドの副支配人。門からの一団がそれぞれ南と南東へ向かう中、イメルダさんだけがこちらへ向かってくる。


「ビート君、君の腕前は壁の上から拝見させてもらった。流石は旋風の愛弟子だ。差し詰め『小旋風』と言ったところか。正直、恐怖さえ感じた。特に最後に見せた殺気だ。壁の上に居てさえ気が遠くなった程だ。実際、少なくない数の冒険者と職員が気を失って、今もギルドで寝ている有様だ。」


「あー、すみません。ちょっとやりすぎちゃいましたね。ここまで効くとは思わなかったもので。」


 それで、さっき後処理に出てきた人達の数が少なかったのか。申し訳ない事をした。


「何、街が救われたのだ。この程度は問題ない。今、手の空いている者たちで魔石の回収をさせている。君たちは今回最大の功労者だ。何しろたった2人で1000匹以上の魔物を追い払ったのだからな。疲れも溜まっているだろう。ここからは私たちに任せてゆっくり休んでくれ。」


「そうですか?では、お言葉に甘えさせて頂きます。クリステラ、僕達の仕事は終わりだって!街に帰って宿を取りに行こう!」


「分かりましたわ!ですがあと11匹で終わりですので、もう少しだけお待ちください!」


 少し離れたところでとどめを刺して回っていたクリステラに声を掛けると、そんな返事が戻ってきた。1分も掛からないし、そのぐらいはいいだろう。


「そうだ、まだ礼を言ってなかったな。ありがとう。君たちのおかげで街が救われた。感謝の言葉も無い。君のような強い冒険者を我が冒険者ギルドは歓迎する。今後ともよろしく頼む。」


「いえいえ、どういたしまして。こちらこそよろしくお願いします。」


 そう言って差し出された右手を俺も掴む。女の人とは思えないくらい固くてゴツい手だった。なんか苦労してそうだな。



 ギルドの中はまるで野戦病院のようだった。

 包帯を巻いた怪我人こそほとんど居ないものの、所狭しと人が寝かされている。最初に来たときは全然居なかったのに。待合スペースも机が片付けられ、毛布が敷き詰められている。そこへ整然と人が寝かされている(さま)は、まるで前世のテレビで見た漁港のマグロのようだ。…なんか寿司喰いたくなってきたな。

 その寝かされた人達の間を縫うように走り回っている職員の中に、依頼の受付をしてくれた猫耳お姉さんを見つけた。なにやら寝ている人の身体を検分している。喋り方は眠そうだったのに、その動きは意外に俊敏だ。


「この人はぁ、問題なしぃ。この人はぁ?おでこにタンコブゥっとぉ。」


 どうやら外傷の有無をチェックしているようだ。怪我をしている人の手首に紐を巻き付けている。あれで治療の要不要を区分しているのだろう。


 ってか、もしかしてこれ全部、俺の魔力に当てられた人達か?

 やべぇ、予想以上にやっちゃってた!魔力フラッシュバンは思ってた以上に危険だ!下手したら俺ひとりで軍隊を制圧出来てしまいそうだ。いや、普通に平面魔法を使っても制圧できるだろうけど。…あれ?そう考えると殺傷力がほぼ無い魔力フラッシュバンは、実はそれほどヤバくないのか?なんかよく分からなくなってきたな。


「あぁ、帰ってきたんですねぇ?ご無事で何よりですぅ。どういうわけかぁ、気を失った人が沢山出たんでぇ、何かあったんじゃないかと心配してたんですよぉ。」


「心配して頂いてありがとうございます。ご覧の通り、僕らはピンピンしてますよ。それじゃ邪魔になるだろうから、荷物を受け取ったらすぐに退散しますね。」


「はいぃ、お疲れさまでしたぁ。報酬は監査役の報告を受けてからなのでぇ、明後日以降にギルドで支払われますぅ。ではまたぁ。」


 『すみません、それやったの俺です』とは言えないからな。いずれは知られるだろうけど、今俺が話しても信用してもらえないだろうし、ここはしらばっくれて逃げるに限る。

 手を振る猫耳お姉さんに手を振り返しながらカウンターに向かい、他の職員から荷物を受け取ると俺達はそそくさとギルドを後にした。



≪副支配人、あの子供に見張りを付けた方がいいのではないですか?≫


 イメルダさんに張り付けた平面から会話が聞こえてくる。これは聞いた事が無い声だな。職員のひとりだろうか?


 時刻は間もなく陽が沈もうという時間帯だ。ギルドを出た俺達は、ぽつぽつと人通りが見られるようになった大通りで、従魔も一緒に泊まれる宿を運よく見つける事が出来た。ウーちゃんをひとりにはしたくないからな。多少相場より高くついたが、ツインで取った部屋は予想より広かったので文句は無い。

 既に夕食は終えている。ウーちゃんはベッドの下に敷いた毛皮の上で丸くなっており、クリステラは裏庭の水場で身体を拭いている。風呂なんて贅沢なモノは、普通の宿には無いのだ。大抵の宿や家庭では井戸水や小川で水浴びか、濡らした布で身体を拭いて終わりだ。

 俺はクリステラより先に身体を拭いて装備の手入れも済ませ、後は寝るだけだった。ベッドに横たわって今後の予定を考えてたら、ふとイメルダさんに集音平面を付けっぱなしだったのを思い出したのだ。あくまで『集音』であって『盗聴』ではない。たとえ使い方がソレであったとしても。


≪不要だ。子供ひとりに人員を割く余裕は、今のギルドにはない。≫


≪しかし、アレは明らかに異常です!相手がゴブリンだったとは言え、たった2人、実質ひとりだけで1000匹近い魔物を無傷で倒すだなんてありえません!討伐の7つ星でも不可能です!≫


 会話の相手は、当然イメルダさんだ。しかも、話題はどうも俺っぽい。やっぱりやり過ぎだったみたいだ。この人からは危険視されている。魔法については隠したけど、戦闘力は隠さなかったからな。


≪確かに子供とは、いや、人間とは思えない異常な強さだった。が、今のこの街には上位の冒険者がほとんどおらん。強いならむしろ歓迎すべきだ。≫


≪それはそうですが…。≫


≪気持ちは分かる。だが街を救った点からみて、少なくとも悪人ではないはずだ。こちらから敵対しなければ危険は無いだろう。多少大人びてはいるが、子供であることも間違いない。歪まないよう、我々が気を付ければ問題ない。≫


≪そうですねぇ。あの子ぉ、私の耳をずっと見てましたよぉ。きっとぉ、初めて獣人を見たんでしょうねぇ。びっくりした顔もぉ、何でもないように取り繕った顔もぉ、可愛かったですよぉ。≫


 この声と喋り方は猫耳お姉さんか。見てたのバレテーラ。まあ、別にチラ見してたわけじゃないしな。超ガン見だったし。アレはイイ物だから仕方ない。


≪あの子供についてはそれでいいだろう。むしろ私としてはだな、一緒に居たあの美少女をだな!監視というか鑑賞というか、手元に置いて愛でたいところなのだが!!どうにか人員を割けないものだろうか!!いや、いっそ私が出向いて!!≫


≪≪はいはい、仕事してくださいね、副支配人。≫≫


 …随分慣れた感じでスルーしてるな。きっと日常的にこんな会話をしてるんだろう。

 なんだかなぁ。


「どうなさいましたの、ビート様。ハッ、もしやわたくしが身体を清めてくるのをお待ちに!?とうとう夜伽を命じて下さるのですわね!!」


 部屋に戻ってきたクリステラが、開口一番のたまった。


 こっちも、なんだかなぁ。

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[気になる点] ≪そうですねぇ。あの子ぉ、私の耳をずっと見てましたよぉ。きっとぉ、初めて獣人を見たんでしょうねぇ。びっくりした顔もぉ、何でもないように取り繕った顔もぉ、可愛かったですよぉ。≫ 危険だ…
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