第256話~性格も診断できるとありがたい~
誤字脱字報告ありがとうございます!
投稿前に見直してるんですがねぇ。
地元方言ではこういうのを『目チョロ』と言ってました。
さて、何処から手を付ければいいのやら。
既知の属性の魔法じゃないことは分かっている。地味に天才肌のジャスミン姉ちゃんだ。既知の属性魔法であれば、既に自力で発現させているはず。それ以外の魔法だ。
ふむ。
この世界は神様によって創られている。それは間違いない。正確に三百六十日で公転する惑星、三十日で公転する月。そんな偶然はまず起こり得ない。
一から創ったんじゃないにしても、その手によって調整はされているはずだ。おそらく魔素によって。
その調整内容は地球からの情報を参考にしている。それも、現実の知識じゃなくてゲームやアニメ、小説なんかの知識だ。
じゃなきゃ、あそこまで俺の記憶に似た、つまりゲームやアニメに出てくるゴブリンや猪人、スライムのような生き物が存在するはずがない。
ネコ族やイヌ族、エルフなんていう亜人種だって、本来なら存在しえない。生活様式が競合する生物は、淘汰されて集約されるのが自然の摂理だ。ネアンデルタール人がクロマニヨン人に吸収されたみたいに。
けど、この世界には多種多様な、それこそファンタジーとしか言えないような生き物が、多様性を保ったまま跋扈している。これがこの世界が創られた、あるいは今も創られているという動かぬ証拠だ。
さて。
そんな地球のファンタジーを基に作られたこの世界なら、きっと魔法も地球のファンタジーに準ずるものが創られているはずだ。だったら、ジャスミン姉ちゃんの魔法属性もファンタジーの中にきっとある。
今知られている魔法は火、水、風、土、雷、特殊の六種。実際には化学反応、速度加速度制御、抽出成形、素粒子制御、特殊の五種だけど、地球のファンタジーを参考にしたなら、従来の属性魔法に当てはまる可能性が高い。
今知られていない魔法の属性は、光、闇、神聖、木、金、時空間、無属性ってところか。候補が多いな。
そういえば昔、光魔法は神様しか使えないってクリステラが言ってたな。ランプの魔道具なんかはあるけど、魔法として使えた人は歴史上ひとりもいなかったとか。俺が初らしい。俺のは平面魔法の一機能だけどな。
金もないだろう。土魔法と被っちゃってるもんな。土魔法があれば金魔法は必要ない。
そういえば、雷魔法の使い手であるサマンサは帯電体質だったな。空気が乾燥すると、静電気がパチパチしてしまう体質。それで雷属性だってことが分かったんだった。
さらに、火魔法の使い手であるルカは料理、特に火加減が絶妙に上手い。料理も美味い。
これは、適性のある魔法の効果が無意識に発現しているんじゃないかと思われる。魔素が体内に取り込まれて魔力に変わり、無意識の魔法として発現しているんじゃないかという仮説。まだサンプルが少ないから確証はないけど、多分大きく外れてはいないと思う。
この仮説が正しいとすれば、ジャスミン姉ちゃんをよく観察すれば、魔法適性の手がかりを掴めるはずだ。
「何よ?」
うーん、髪が赤いのは父親譲り、ナイスバディは母親譲りか。
背は高くなったよな。子供の頃は普通だったのに、いつの間にかスーパーモデル並みの高身長だ。けど、これはあの村長の娘ならおかしくはない。遺伝だな。
顔のそばかすも無くなってるな。肌の肌理も細かいし、色も白い。いつも外を走り回ってるのに、日焼けしないし赤くもならない。
ふむ、これは神聖系の可能性が高いか? 無意識のうちに自分に治癒魔法を使っているとすれば、そばかすが消えたことや日焼けしないことに説明がつく。
いや、判断するのはまだ早いか。身の回りで起きる現象にもヒントがあるからな。それを検証してからだ。
ジャスミン姉ちゃんの身の回りで起きる現象……トラブルメーカー? いつの間にか問題を起こしてるよな。これは闇属性? 無属性? それとも素の性格?
あとは、メシマズか。ただ肉を焼くだけで腐臭を放つ紫のゲル状物質が出来てしまうんだからな。あれはある意味魔法だ。腐敗の魔法。じゃ、やっぱり闇か?
うーん、決め手に欠けるなぁ。何か簡単に属性を判断できる方法でもあれば……。
あっ、そうだ! アレが使えるかも!?
◇
「何、このコップと葉っぱ? これで何をどうするの?」
「それは今から説明するよ」
ジャスミン姉ちゃんの目の前には、水の入った透明のグラスが置かれている。水の上には小さな葉っぱが一枚浮かんでいる。
グラスはジョン特製のクリスタルガラス製、水は塩水だ。葉っぱは庭の黒柑の木の若葉を一枚千切ってきた。
そう、ちょっと手を加えてあるけど、某ハンター漫画のオーラ属性判別法、水見式だ。コップにオーラを流して生じた変化で、属性を判断するという判別方法。
オーラと魔力という違いはあるけど、多分これでいける。そんな気がする。
よし、実験してみよう。
「ルカ、サマンサ、キッカ、サラサ、ちょっと来て!」
「なんだい、坊ちゃん?」
「あらあら、御用ですか?」
「はいはい、なんぞ?」
「参上」
「ビート様、お呼びになられまして?」
いや、クリステラは呼んでない。というか、扉の陰からこっちを覗き見てたのは知ってた。多分、何をしているのか気になってたんだろう。まぁ、いいか。
「ちょっと実験をしようと思ってね。上手く行けば、僕以外の人でも魔法適性が分かるようになると思うんだよ。それに協力してもらおうと思って」
「まぁ、それは凄いですわ! これまでは発現するまで分からなかった適性が、すぐに分かるようになるんですのね!」
「いや、出来るか出来ないかまだ分からないし、すぐにでもないけどね。ある程度魔力を操れるようにならないと出来ない方法だから」
「それでも凄いですわ! で、どうするんですの!?」
「簡単だよ。この葉っぱを浮かべた塩水に魔力を流すだけ。そうだな、最初はキッカ、やってみてよ」
「うちか? ええで、ほなやってみるわ」
「こういう風に、両手の間にコップを置く感じでね」
「こうか?」
「そうそう」
キッカがコップに魔力を流すと、俺の目にはコップの周りを青い気体が取り巻く様が映る。皆には何の色も見えないはず。
そして、コップの中の葉っぱがゆっくりクルクルと回り出す。
某漫画だと操作系の現象かな。そしてキッカの属性は水と風、つまり速度加速度制御だ。操作系と近似している。つまり、コップの中に無意識の魔法が発現し、回転という形で表出したと思われる。
よし、いけそうだ。
「おー、魔法は使こてないのに葉っぱが回っとる。おもろいな、これ!」
「ありがとう。それじゃ次はサラサ、やってみて」
「承知」
サラサが同じようにコップを両手で包み、魔力を流し込む。サラサの属性は土。黄色い魔力がコップにまとわりつく。
そしてコップに生じた変化は……水の中にキラキラと光る粒が現れた。
具現化系? いやいや。これは多分、溶かしておいた塩が魔法の発現で析出したものだ。思った通り!
「へー、キッカとは違う変化じゃん。これが適性の違いってわけか」
「多分ね。検証は必要だけど」
「よし、それじゃ次はアタイがやってみるぜ!」
「あらあら、わたしはどんな変化が起こるのかしら? 楽しみね。うふふ」
順番に異世界版水見式を進めていく。
サマンサが魔力を流すと、水面に小さな泡が生じた。ふむ、これはなんだ?
サマンサの属性は雷……ああ、なるほど。きっと塩水が電気分解されて、塩素か水素が発生したんだな。塩水は薄い水酸化ナトリウム水溶液になって、ちょっと苦みが増してるかも。味が変わるから変化系? そういえばキ〇アも変化系で雷使いだったな。納得。
次にルカが魔力を流すと、一見変化が無かった。何回か試してもらっても、何かが変化したようには見えなかった。あれ?
失敗か? と思って、実験前と実験後のスクリーンショットを見比べてみると、若干、葉っぱの色が変化していることが分かった。本当に微妙な変化。アハ体験も起きないレベル。
多分、葉っぱの成分が何かと反応して変色してるんだろう。ルカの属性は火だからな。焼けたわけだ。色が変わるのは放出系だったっけ? 火魔法は確かに放出系っぽいよな。
すげぇ、水見式、異世界でもほぼ正解じゃん! 冨〇先生、天才か!?
ついでにクリステラと俺もやってみたけど、こちらは全く変化が起きなかった。スクリーンショットで見比べても変化が見られなかった。固有魔法は変化しないらしい。特質系みたいに変な変化が起きるかと思ったんだけどな。
ともあれ、これで俺以外でも属性の判別が出来そうだ。
「素晴らしいですわ! これなら魔力の操作さえ出来れば属性を判別できますわね! 今までの常識をひっくり返す大発見ですわ!」
クリステラがいつものように絶賛してくれるけど、コレ、俺のオリジナルじゃないんだよな。凄いのは〇樫先生。ああ、あの漫画の続き、読みたかったな。
「じゃ、いよいよ本命、ジャスミン姉ちゃんの番だね」
「真打ち登場ね! 任せなさい!」
この世界にも真打ちって言葉があるんだ? あれって落語とかの用語じゃなかったっけ? この世界に落語あるの?
まぁいい、それよりジャスミン姉ちゃんだ。
ジャスミン姉ちゃんが両手でコップを包み込み、魔力を流し込む。緑の魔力が両手の間を満たしていく。
そしてコップに生じた変化は……。
「……葉っぱが大きくなった?」
えっ、強化系?
なろう大賞で別の連載作『草転生ってwww』が一次選考を通過しました!
応援ありがとうございます!
未読で興味のある方はこちらからどうぞ。
自分で言うのもなんですが、とてもバカバカしい作品です。
https://ncode.syosetu.com/n0581gm/








