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俺、冒険者!~無双スキルは平面魔法~(WEB版)  作者: みそたくあん
第6章:秘境探検編

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第162話~育成計画開始~

 うちの訓練は、まず魔力操作と身体強化からだ。これは基礎体力の底上げってのが一番の理由だけど、体力が回復しやすくなったりケガが治りやすくなるっていう副次効果にも期待してのことだ。その分訓練の時間が増やせるし、密度も高くできる。

 魔法を教えるのはそれからだ。この世界ではまだ確立されていない効率的な魔法の習得という『秘術』。それを確立させるため、今回は記録を取りながら進めていこうと思っている。戦闘訓練は更にその後だ。

 既にうちの女性陣という前例があるけど、彼女たちのときは明確なカリキュラムを組んでなかった。記録も取ってないし、全部手探りだった。今回はその時のノウハウを活かし、キチンとカリキュラムとその成果を記録して、実用的な習得方法としてまとめる予定でいる。

 もっとも、まとめた内容を公表するつもりはない。確実に権力者から目をつけられるだろうから。しかし、バレるのは時間の問題だとも思っている。なにしろ、俺の周囲には魔法使いが多すぎる。ちょっとでも察しがいい者なら、俺が魔法使いを育てていると勘付くだろう。その技術を手に入れようと、あの手この手の勧誘合戦を仕掛けてくるのが目に見えるようだ。

 あ、ドルトン伯爵が俺に接近してきたのってソレ(・・)か? あの人、あんな成りしてるくせに切れ者らしいから可能性は高い。油断ならねぇな。

 とはいえ、実のところ、そうなったとしてもそれほど深刻な事態には至らないだろうとも思っている。今の俺は貴族だし、王様とのコネもある。いざとなったら王様に全資料を渡して、魔法習得方法を国の管理にしてもらえばいい。ザ・丸投げ。やられるとムカつくけど、やるほうは気楽でいいな、コレ。


「考えるんじゃない、感じるんだみゃっ!」

「はい、師父!」

「同じお魚でも味が全部違うみたいに、アタシとバジルの魔力も違うみゃ! 味わうように違いを探すみゃ!」

「? 比喩が、分かり、にくい、ですけど、内容は、分かりました!」


 なんか、アーニャが某アクション映画俳優みたいな事を言っている。どこで覚えてきた? 師父とか呼ばせてるし。

 でも言ってることは間違ってない。今は背中から魔力を流してもらって、魔力の感覚を覚える訓練だからな。考えるな、感じろ。食べるな。


 土がむき出しになった庭の一角に子供たち四人が並んで座り、それぞれの背中に女性陣が手を当てて魔力を流している。服装は訓練用の動きやすい布の服だ。バジルにはアーニャ、リリーにはキッカ、キララにはルカ、サラサにはデイジーがあたっている。

 この組み合わせは、子供たちの魔力の色、つまり魔法の適性属性を見て俺が決めた。なるべく同じ色になるように担当を決めたわけだ。バジルとリリーの魔力は青で風か水、キララは赤で炎の属性だった。

 サラサの魔力は黄色だから土属性なんだけど、うちには同じ属性の魔法使いがいない。ウーちゃんとジョンが土だけど、さすがに教官にはなれない。なので、彼女だけは固有魔法属性であるデイジーに担当してもらっている。これが成長にどう影響するか……あとで記録を突き合わせて検証しよう。モルモットにしてるみたいで申し訳ないけど。


「温かいのは分かるです。じんわり背中から広がってるですよ。でも、自分の中に同じものがあるかどうかが分からないです」

「あらあら。わたしも最初は自分の魔力が分からなかったわ。まだ始めたばかりだから焦らないで?」

「はいです!」


「強うにしたり弱ぁにしたりしてるんは分かる?」

「(コクコク)」

「ほんなら、それが自分の中に広がってから外へ出ていくんも分かるやろ? 出ていかんやつを感じられたら、それが自分の魔力や。ヘソの辺りが一番濃いから、そこを意識したら見つけやすいと思うで」

「(コクコク)」


 ルカとキッカのところは順調みたいだ。自分の経験を上手く伝えられている。アーニャも魚が絡まなければ……いや、無理だな。


「……これは感じる?」

「感受」

「……これは?」

「感受」

「……これは?」

「不感」

「……」

「感受」


 サラサとデイジーのところは、何やら不思議な空間ができあがっている。会話の独特のテンポが妙な調和を生んでいる。相性がいい組み合わせなのかもしれないけど、共振して暴走することもあり得そうだ。ちょっと注意して見ておこう。


 全体の監督はクリステラだ。俺がやっても良かったんだけど、以前にルカ達を指導した時の流れで、クリステラが引き続き行うことになった。サマンサはそのサポート。ちょくちょくクリステラの指示でメモを取っている。

 クリステラには天秤魔法がある。今回は記録を取っていくので、天秤魔法による測定はとても有効だ。子供たちがどれくらい成長したかはっきり分かる。目に見えない魔力量もバッチリだ。これぞ適材適所。


「こういう感じで、体全体を魔法で覆うんだよ。翼はまだ使わなくていいから」

「ピーッ? こう? ピーちゃん、よくわかんない~」


 俺はというと、ピーちゃんの教育だ。具体的には、空を飛ぶための魔法の練習だ。


 空を飛ぶセイレーンは翼を持ってるけど、実はその翼の力だけで飛んでるわけじゃない。セイレーンの重さと骨格では難しい。ではどうやって飛んでいるかというと、やはりと言うか、魔法の力だ。自身の周囲に風魔法で上向きの重力を発生させ、それによって自重を軽減させることで翼による飛翔を可能としているらしい。

 最近まで、全て魔法の力で飛んでるんだろうと思ってた。実際、俺は重力フィールドの効果だけでそれなりに飛べてしまう。けど、同じように重力を操るアーニャによると、風魔法だけで空を飛ぶのはとても難しいらしい。魔力の消費が激しくて、長時間の維持が出来ないのだそうだ。持ってる魔力量の差ってだけじゃなく、俺の魔法とはシステムが違うんだろうな。

 それじゃどうやって飛んでるんだろうと悩んでたんだけど、その答えはすぐに見つかった。先日の巨大トンボだ。あの三メートルを超す巨体を飛ばすためのカラクリが、風魔法による重力制御だったのだ。弱い風魔法を常時発動して重力を軽減し、翅の力で上昇、前進する。狩るために観察していて気が付いた。思い返せば、野生のセイレーンも同じように魔力を纏っていたから間違いないだろう。

 ピーちゃんはまだ子供だけど、魔物だからか魔力はそこそこあるし、多少の魔力操作もできる。まだ翼が小さいから飛ぶのは難しいかもしれないけど、魔法の練習くらいなら可能だ。というわけで、ピーちゃんにも魔法を教えようと思い至ったわけだ。決して俺だけヒマになったからではない。


「それじゃピーちゃん、翼を広げて」

「ピーッ? こう?」

「そうそう、そのままジッとしててね」


 ピーちゃんの背中側の両脇から腕を差し入れ、おなかに回して抱え込む。そのまま重力フィールドを展開して三メートルほど浮き上がり、クルクルとトンビのように旋回する。子供たちが魔力を体で覚えてるのと同じように、まずは重力が軽減される感覚を体に教え込もうというわけだ。

 

「ピーッ! たかーい! ママちっちゃーい!」

「(ムスッ)」

「ピーッ! ママおこったーっ! あははは~♪」


 ピーちゃんがご機嫌だ。そしてリリーはふてくされている。でも小っちゃいのは事実だから仕方ない。うちで一番幼いんだから当然だ。そのうち大きくなるから焦らないで。


「♪~♪~」


 ご機嫌なピーちゃんがソプラノの綺麗な声で歌っている。誰も教えてないのに上手いもんだ。やっぱ種族特性なのかね? でも普通、鳥の仲間はオスが鳴くんだけどな。虫と同じで求愛行動だったはず。メスしかいないセイレーンが歌うのはなんでなんだろう? 同じ種族のハーピーは歌わないらしいし、謎だ。

 ピーちゃんの歌は呪歌でも魔法でもない、普通の歌だ。いつかは魔力が乗って呪歌になるんだろうか? 教えないと覚えないとか? 別に覚えなくてもいいけどな。


 地上ではウーちゃんが俺たちを見上げてクルクル回っている。犬なら大喜びでワンワン吠えてるところだけど、ウーちゃんは狼(の魔物)だから、吠えたりしない。こういうところで犬との違いを実感するんだけど、だからといって愛情が減るかというと、全くそんなことはない。上から見るウーちゃんも可愛いなぁ。


「あら、みなさんの魔力量が微量ですけど上がりましたわ。ピーちゃんの歌に何か効果があるのかしら?」

「単に気分が良くなっただけじゃね? 魔法って、その日の体調で効果が変わったりするじゃん?」

「ああ、そうかもしれませんわね。リラックスしていたほうが効果が上がるのかもしれませんわ。サマンサさん、これもメモしておいていただけます?」

「あいよ!」


 まだ始めたばかりだけど、育成計画は順調みたいだ。



「……っ! 若、お客さんが来る(・・)


 しばらく訓練していると、突然デイジーが俺を見て言った。『来る』? 『来た』じゃなくて? ああ、『先読み』か。戦闘中だけじゃなく、日常でも使ってるんだな。しかも結構先まで見通せるようになってる。もはや先読みじゃなくて予知だ。凄いな。

 あれ? 玄関は屋敷を挟んで反対側だから、もしかして視界の外まで見通せるようになってる? いつの間にか弱点が無くなってる。マジで予知になってるじゃん! すげぇ! 


「ごめんくださーい! 冒険者ギルドの者でーす! フェイス準男爵閣下はご在宅ですかー!?」


 おっと、誰か来たようだ。冒険者ギルドからか。

 なにやら面倒事の匂い……俺のは予知じゃなくて予想だけどな。

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