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魔力の欠片  作者: 小夜
第一章
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初めての戦い

 それからなんとか私は呪文で水族館の中に侵入し、警備員さんに出会わないように細心の注意を払って魔物がいるエリアに移動した。この時の私は忍者もびっくりだったと思う。いやこれ本当に。



「……ここだよ。私が魔物を見たのは」

「間違いなさそうだね、気配がする」



 あの時、あの瞬間――私は魔物を見た。その姿を思い出して身震いをする。夜の水族館は不気味で、昼間は可愛く見えた魚たちも今はゆらゆらゆらゆら、不気味でしかない。



 と、その時だった。目の前の水槽の中にあの魔物が姿を現したのだ。突然で驚いて転びそうになったが、そこはなんとか踏ん張って耐えた。……間違いない。この血のように真っ赤に染まった瞳は――あの魔物だ。



「わ! いきなり来た!」



 フィルムも驚いて大きな声をあげる。その魔物は不気味な笑い声をあげて、水槽の中を上昇していった。私は水槽にへばりついて上を見上げる。そこは吹き抜けになっている作りで、外に繋がっていた。おそらくペンギンのエリアだろう。



「行かなきゃっ」

「ちょっ! 待って!」



 私は頭で考えるよりも早くその場を飛び出した。確か、こっちに階段があったはず。大きな魚が泳いでいるエリアを通り抜けると、そこには記憶通り上へと続く階段があった。二段飛ばしで駆け上がる私に、フィルムが「早い早い!」といいながら着いてくる。まあ、フィルムは空を飛んでいるんだけれど。




「……はあ、つい、た」



 乱れた呼吸を整えながら、私はたどり着いた場所を見渡す。予想通り、そこはペンギンが普段いる場所なのだろう。その生態を紹介する看板が立っている。ペンギンは夜だから小屋の中にでも入れられているのか、その姿は見えない。




「気配がする……。気をつけて」



 フィルムの言葉に頷く。

 ……今更だけど、怖くなってきた。あんな化け物とどうやって戦えばいいというのだろう。



 シン、と静まり返っているその場所。そっと耳を澄まして様子を探っていたその時。




「来た!! よけて!!」




 フィルムの叫び声が聞こえて、私は思わずしゃがみこむ。私に襲いかかってきたのは大量の水。水が空を飛んでいる――否、正確には浮いて襲いかかってきたのだ。



「ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!!!!」



 その水の向こうで不気味な笑い声を上げているのは魔物。……怖い。怖すぎるんだけど!




 今度はしゃがみこんだ私を狙って水が襲い掛かってきた。私はそれを間一髪のところで避ける。これじゃ、埒が開かない!



「魔法! さっきの魔法を使って!」



 どこからかフィルムの声が聞こえてはっとする。そうだよ私は魔法が使えるんだった!

 たっと全速力で駆け出して、作り物の岩の上に登る。相変わらず不気味な笑い声をあげたまま、私にまた攻撃をしてこようとする魔物。


 


「ウァリエタース!」



 水がくるより先に、私はフィルムから教わったポーズで呪文を唱えた。

 すると、ペンギンの生態について書かれていた看板がふわふわと浮いて、魔物の頭に命中。魔物は呻き声を出して倒れこんだ。



「もう一回!! 殴れ!!」



 フィルムの言うとおりに私はもう一度その看板で魔物の頭を殴った。正直、無我夢中だった。

 と、魔物は動かなくなって水の中に沈んでいき、魔物から水色の光の球体が出た。それは私の目の前までくると、ふっと私の中に消えた。



「な、何!?」

「大丈夫。魔物を倒せたから、魔物の魔力が君にチャージされたんだよ」

「じゃあ、私……」

「うん、おめでとう! やっつけたよ」




 私はその場で座り込んで大きなため息を吐いた。



「良かった……」

「千絵、すごいよ! スムーズだったもん!」

「……もうやらないから」

「だーめ!」

「……」




 どうやら、これからもこんなことが続くようです。







ぐったぐだ。



★習得呪文


マリナ…水を自由に操ることができる。




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