表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔力の欠片  作者: 小夜
第一章
3/4

水族館前にて


久しぶりです!

ゆるゆる更新すぎる(笑)




シンと静まり返った、夜の水族館。私は今、フィルムと伴に水族館の前に立っていたりする。



「……ねえフィルム。何で夜中なの?」



時刻は只今真夜中の十二時。親が寝た後にこっそり抜け出してきたのだ。

こんな悪いことしたの初めて。ごめんなさい、お父さんお母さん。



「昼間じゃたくさん人がいるでしょ? 人目についたら大変だもん」



 確かに昼間に魔物退治なんかをしたら大騒ぎになってしまうか、と納得する。しかし、建物はすでに閉まっていてもちろん真っ暗。鍵や赤外線のセキュリティー対策や、もしかしたら警備員さんが見回っているかもしれない。


 見つかって、不法侵入で捕まってしまったとしよう。真夜中の水族館に忍び込んだ理由を聞かれて、天界から来た妖精と一緒に魔物退治をしに来たんです、なんて答えたものなら私は狂ったと思われてしまうだろう。

 適当に言い訳をしたとしても、犯罪は犯罪。私は犯罪者になる。



「そんなの嫌だっ!」

「うわっ!! 突然大声出さないでよ!!」

「私は刑務所には入りたくない!」



 華なんてないが、こんなんでも一応女子高校生だ。前科付きなんてありえない。お断りします却下だ却下。

 


「うんやっぱり帰ろう」

「ちょ……っ! 今更無理だから!」

「だって捕まりたくないもの!」



 全力で嫌だと言うことをフィルムに伝えようとしたら、フィルムは顔を困ったように歪めて私を見た。

 ……そんなに可愛い顔をしても無駄だ。平凡女は平凡に勝手に生きていくのがセオリーってもんだ。魔物退治は別の人に頼んでください。



「もう、本当にバカだね。千絵」

「は?」

「捕まるわけないでしょ。魔法があるんだから。鍵も赤外線も魔法でどうにかなるよ」

「私、そんな魔法なんか使えないよ」

「だーかーら、それを今から教えるの。簡単な魔法だから、今の千絵の魔力でも使えるよ」



 フィルムはそう言って、両手を伸ばして掌を前に向けてクロスさせるポーズをとった。



「これが魔法を使うときの基本的なポーズ。まあ、魔力が高ければポーズなんて必要ないんだけれど、低い場合は絶対に必要だね。ほら、僕の真似をしてみて」



 言われるがまま、私はフィルムと同じようなポーズをとってみる。いちいちこんなポーズをしなければ魔法は使えないのか。何だか不思議な感じだ。


 

「ウァリエタース」

「え?」

「ウァリエタース。これが浮遊の呪文。自分が持てるくらいの重さのものなら、動かすことができるんだ」



 所謂、超能力のようなものだろうか。よくテレビなどの特集で目にするような。

 フィルムは実際に魔法を使って、それを見せてくれた。

 その呪文をフィルムが唱えると、近くにあった小さい葉が風もないのに宙に舞ったのだ。



「イメージ的には、掌に魔力を集中させて。アレを浮かすぞーって、そんな感じ」



 なんと大雑把な説明か。

 フィルムはやってみて、と言って自分の手を下げた。すると先程まで宙に舞っていた葉ははらはらと地面に向かって落ちていった。

 


「やってみて」

「……あの、呪文なんだっけ」

「ウァリエタース」

「ああ、そうだったね」



 呪文を確認して、ポーズをとる。手始めに、私はあの枝を浮かせてみることにしようか。

 さんざん文句を言ったけれど、魔法を使うなんて展開に内心ドキドキしていた。

 ――すうっと息を吸って、そして。



「ウァリイエタースル」



 ……何も怒らない何故だ。もう一度。



「ウァリエァタースル! ……ダメだ、やっぱり何も起こらな――」

「なんか呪文が違うように聞こえるのだけど、それは僕の気のせい?」

「え?」

「え? じゃないよ! そんな思いっきり間違えてて気が付かない方に僕は軽く引いたよ」



 フィルムは大げさに顔を横に振った。

 ……あれ、私呪文間違えていましたか? 



「ウァリエタース、だよ」

「ウァリエタリスね」

「いや、全然違うから! どういう耳をしているの!!」








あれからどれくらいの時間が経ったのだろうか。一文字ずつ、フィルムと練習をしてやっと呪文が正確に言えるようになった私は、見事枝を浮かすことに成功した。

枝が浮いたときはうれしくてテンションが上がり、フィルムに抱き着いた――正確には体のサイズの違いから抱き着いたとは言えない――が、フィルムはもう疲れ切っていて、おめでとうの一言しかくれなかった。



「……正直、ここから苦労するはめになるとは思っていなかった」

「なんか言った?」

「……なんでもない。それより、この鍵を開けるよ。さっきの呪文を使って内側から鍵を開けるんだ。それから赤外線のスイッチを切る。いいね?」

「うん。ところでフィルム。もし警備員さんがいたらどうするの?」



 鍵と赤外線から避ける方法は分かったけれど、そういえばまだ警備員さんと出会ったときどうすればいいか聞いていなかった。 

 そう思い、フィルムに尋ねる。

 と、フィルムはふにゃりと笑ってそれに答えた。



「……倒す、しかないかな?」



やっぱり私、帰ろうかな。



★ 習得魔法

ウァリエタース…自分が持てるくらいの重さのものならば、浮かせることができる。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ