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白い黒猫のタンゴ(短編集)

単純な確率の問題ではない事

作者: 白い黒猫

 我が家のリビングがいつになく緊張した空気が漂っている。というのは息子が、結婚したいという女性を紹介するためにやってきたからだ。

 私達夫婦は、ある程度は息子を信頼しているので、息子が選んだ女性なら暖かく迎えようと思っていたし、やってきたのは綺麗なロングヘアーで、ややきつい感じはするものの綺麗で素敵なお嬢さんだった。

 相手のお女性は、息子の言うところだと「会社の同僚で、真っ直ぐな性格で気持ち良い女性』という事。その日やってきた女性を見た感じ、その言葉通りには見える。

 にも関わらず、何故そんなに私達が戸惑っているかというと、その女性が日本人ではなかったから。大学時代から中国から日本に来ているという事で、日常会話には困らない程度に日本語はしゃべれるようだが、イントネーションが外国人独自のなまりがある。コミュニケーションがとれないという訳でもない。これが単なる同僚を連れてきたというならば歓迎もしただろうが、結婚というと話は変わってくる。別に私は偏見とかいうのがあるわけではないが、国際結婚というと、普通の結婚にはない、しなくても良い苦労をせざるえなくなるという事が心配なのだ。

「国際結婚は大変だぞ! なんでよりにもよって外国人を捕まえてくるんだ…」

 そんな感じで切り出す夫に、息子は大きく溜息をつく。隣に座っている女性も困った顔をして、私達夫婦を見つめてくる。

「あのさ、親父! そういうけれど、この地球に中国人は何人いると思う? 世界人口の二十パーセントだぞ! それに比べ日本人は二パーセント弱くらいしかいない。これ考えると、日本人女性と出会い結婚する方が、確率的に低い事にならないか?」

 私はその言葉に唖然として息子の顔をみてしまう。そういうものだろうか?

「あ…、それもそうか……」

 息子の気迫に圧されて、夫はそう返事をする。チョット違う気もするけれど、私もつられて頷いてしまっていた。

「それにさ、大変とか苦労だとかは、他人が決めるのではないよ! どんな夫婦でも苦労も大変さもあると思うけど、それを彼女となら乗り越えられると思ったから結婚することにしたんだ」

 そう熱く語る息子を、真っ直ぐな瞳で見つめている隣の女性を見ていると二人にはシッカリした絆と気持ちがあるのがなんだか分かってきた。人が一生共に歩いていきたいと思える相手と出逢う確立は、どのくらいあるのだろうか? 恋愛面では器用とも言えない息子だけに、そう高くないように思える。そして息子ももうスッカリ大人なんだという事を実感する。親があれこれ口出す問題でもないのだろう。自分で決めた人生を歩いていくべきなのだ。しかも先ほどの言葉でも分かったが、息子は大きい視野で物事を考える事ができる男。グローバルな結婚でも向き合っていけるのかもしれない。

 夫を見ると、同じような事を思ったのだろう、先ほどの思い迷っていた様子は消えていて少し笑っていた。私と視線を合わせると、そのままゆっくりと頷いた。


国際結婚が特に日本で大変なのは、日本での制度が国際結婚に対して対応しきれてないから。ここが島国ならではの弊害なのでしょうね。

まだ、相手が帰化するならいいのですが、元の国籍をもったままの状態だと、本当にややこしいです。戸籍制度という事自体がかなり特殊な制度なんですよね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] データが具体的だった。 話の流れがつかみやすかった。 [気になる点] 改行がちょっと少ない気が……。 [一言] お久しぶりです! 半年くらい、放置でしたが、最近、勉強のなかに時間を見つけら…
[一言] 人と人との出会いって、まさに『単純な確率の問題ではない事』なんだなぁと、しみじみと考えてしまいました。 国籍だけでなく、関係や年代も含めると、それこそ奇跡的ですよね、出会いって。 今ある…
2012/09/10 01:02 退会済み
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