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酔 (3/47)


社交的で友達の多い親父が悪友と飲んで、週末の今日は朝から男三人で何処へとも知れず遊びに行った。

家には、開けただけで殆ど手のついていないボトルのワインと、ビール瓶が一本ずつ残され、僕は一日、放置されたアルコール飲料を横目にチラチラと盗み見ながら、勉強に集中出来ずに居た。


夕方になり、親父が今日は帰らない事を電話で連絡してきた。

だらしなく放置された酒類。

耳年増な僕は、ワインは保存が難しく開けた以上は飲まなくてはいけないことを知っている。


スマホの、10件くらいしか入ってない連絡先のうち、星のついたものを、五分ほど逡巡した挙句、叩くように押した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「うわー」

彼は、ビールとワインの瓶を見比べて時々僕の方へも視線を投げかける。

「すげーなあ。これ飲んじゃっていいの?」

「大丈夫・・・な筈。ばれないと思う」

「お酒何処へやったんだーって言われないの?」

「捨てたって言えばいいよ」


ワイングラスとビールグラスを用意する。別にマグカップでもいいんだろうけど、こういうのは気分だから。


「つまみがいるんじゃないの?」

「? つまみって?」

「スナックとか、柿ピーとか・・・ あんきも? とか」


棚に柿ピーを見つけたので、適当な皿に盛って並べる。


「乾杯」

「乾杯!」


啜る様に。用心深く、ちょっとずつ飲む。

うまくも何ともなかったが、僕たちはたちまち酔っ払った。


人間酒に酔うと本性が現れるという。


僕は酷く饒舌になり、普段からこうであれば友達だってもっと出来るだろうにと思わずにはいられなかった。

友人はというと対照的に、何時もに比べて言葉少なになった気がした。

ゆっくり飲んでも、二瓶の酒はあっという間に無くなる。

僕は酔いが覚める虚しさを知り、飲みすぎる奴らの気持ちを知った。

僕は、彼も同じ気持ちなのかなと、見るとも無しに彼の表情を伺った。


近いな


薄ぼんやりと思った時には、遅かった。

彼の顔が視界いっぱいに広がり、唇に柔らかいものが押し当てられる。


酒の苦い味がした。


顔を離したのは、彼の方だった。

顔が赤いのは酒のためか、それとも恥じらいか。

僕は呆気に取られてしまって、長いこと沈黙して彼が何か言い出すのを待っていた。

「・・・お前」

「御免」彼は唐突に謝ると、青くなって後退り距離を取った。「忘れて」

「俺の事が、好きなのか」

俺の問いかけは届いたのか、届かなかったのか。

バタバタと慌しく、彼は出ていった。


息苦しさに溜息を吐く。胃がキリキリと痛む。

こういう時に相談出来る友人が欲かった。

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