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災禍は淡い光を放つ携帯画面を確認し、音をたてて閉じた。ゆっくりとした動作で硝子テーブルの上のリモコンを手に取り、電源を付けた。ピンク色のスーツを着た女性レポーターが生中継の映像を送っていた。
『私は今、あるバーの前に来ています。たった今ここで、二人の男女が殺害されました。差益 魍魎さん(32歳)、リベット・コールさん(24歳)だそうです。』
画面の中に、入れ墨の入った坊主にサングラスを掛けた筋肉質な男と、金髪メガネの女の写真が映った。
災禍は興味なさげにテレビを消した。
「仕事が早いな。さすがだ」
部屋の中でポツリとつぶやいた言葉は、確かな意味も持たずに床に落ちた。リモコンがごとりカーペットの上に落ちる。そんなことも気にせずに災禍は立ち上がり、キッチンへ向かう。フローリングの床は冷たく、裸足の足はひたひたと小さな足音を立てた。シンクのキッチンの横の棚からティーカップを取り、ティーパックを入れてお湯を注いだ。透明なお湯の中で漂うティーパックから紅が染み出る。白いティーカップの中で絵の具を落としたような模様が広がっていく。
紅色のお茶からパックを取り出し、角砂糖を二つ入れた。
カップを持ち、暗い部屋にほのかな光を放つパソコンに向かい合うように、回転椅子に座った。
もうインターネットではあの二人の死が話題になっていた。
「邪魔なモノは排除する。入らないものは捨てる。アタリマエだろ?異路馬劉輔。」
彼の口元には歪な笑みが浮かんだ。人を人として見ない。人は玩具である。まるでそれが、正論であるかのように、堂々とした表情で災禍は嘲笑する。
「災禍?誰か来てたんなら呼んでよ。」
災禍と同じ容姿をした同じ背丈の少年がほの暗い部屋の中から、ぬっと現れた。
「おはよう、雪崩」
災禍はその少年に微笑みを向けた。
あの異路馬劉輔に向けた冷たい表情ではなく、人間らしい温かみのある笑みを。
雪崩は災禍の双子の弟、彼は禍罪の血を引いていない。二卵性双生児だからだ。しかし彼と災禍と瓜二つな容姿をしている。
「おはよ、災禍。誰が来てたの?」
「あの陰険白スーツ野郎だよ」
災禍がはき捨てるようにそう言うと、雪崩はクスクスと笑った。
「異路馬さんだね。」
異路馬劉輔。この世界の全ての人材と情報を揃える人間だ。
彼の職業は万屋。何でも頼めば解決してくれるという職業。自殺の手助けや、暗殺依頼までこなす。それが異路馬劉輔なのだ。
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