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オレンジ色の木の実  作者: のみのみの
プロローグ
1/7

エピローグ

最後まで書ききる事を最優先事項とし、お読みいただく方々への感謝の気持ちを忘れずに書いていきたいと思います。

拙い文章であり、更新は非常にゆっくりだとは思いますが、よろしければお読みください。

感想、誤字脱字、その他厳しいお言葉など、何でも構いませんので残していただけると大変嬉しいです。

読んでいただいている方にお願いをするということは大変厚かましい事だとは思いますが、執筆の励みとなりますのでこの場を用いてお願いさせていただきます。


それでは、前書きが長くなってしまいましたが、本編の方をお楽しみくださいませ。

「うっ!」

「だ、大丈夫?」


 胸に刺さった剣。彼と帝王との死闘の結末は、相討ちという呆気ないものだった。

 私は彼に駆け寄ったが、心臓を一突きされて既に回復の見込みはない。

 それでも僅かばかりの希望を持ち、私は服の一部を剥ぎとり彼の胸に当てて、出血を止めようと試みた。


「だ……だめだよ。僕は、もう」

「何言ってるのよ! ピンチの時こそ諦めるなって言ったのは、どこの誰よっ!」

「はは……そんなこと、言っのか、僕」

「そうよ! 喋ると体力使うから、黙って」

「無理だよ。だってもう、僕は、げほっ、げほっ」


 突然咳き込んだかと思うと、口から血を吐き出した。慌てて彼の体を支えながらうつ伏せにする。

 何度か血を吐き出すと、彼は苦笑をもらした。


「はは、情けないな……ここで死ぬなんて」

「どうして! 情けなくなんか、無いよっ! 死なないよっ! ちゃんと帝王を倒せたじゃない! 私たちを守ってみせたじゃない!」

「そう、か。みんな無事か」


 私の後ろから肯定の言葉が二人分聞こえた。


「……よかった」

「よくないっ!」


 自分の言った言葉にハッとした。

 彼は痛みに顔を歪ませながら私を見る。そこには困惑の色が見てとれた。


「わ、私はっ……」


 僅かな逡巡。仲間であるはずの二人は、いつもこういう時に限って手を貸してくれない。

 彼は顔を再び下に向けると、咳き込みながらぼそぼそと呟いた。


「僕は……君が、す――」


 突然、支えていた彼の体の重みが増す。

 そっと仰向けに寝かせると、彼の目は閉じられ、そこに生命の営みを感じることはできなかった。


「…………っ!」


 私は彼の名前を呼んだ。だって、ただ寝てしまっただけなんだよね。こうやって呼び続ければ、いつか彼は目を――


「やめろ」


 渋い声、パーティーで一番年長の男に肩を叩かれた。

 私はそれを振り払い、血に汚れるのも構わず彼を抱き締めた。


「独りにしないでよ、帰ってきてよ、私、まだ何も言えてないんだよ、まだ何も聞いてないんだよ。ねえ、起きてよ」

「ミント!!」


 突然、頬を叩かれた。

 目の前にはいつも冷静だったはずの渋い男が、目に涙を浮かべながら睨んでいた。


「俺だって悲しいさ。だがな、コイツはやるべきことをやった。だったら! だったら、次は俺たちがやるべきことをやらないといけねぇんだよ!」

「私は、私は好きなのっ! いなくなっちゃったら、わたし、どうしていいか」

「甘ったれんな!」


 男は反対の頬を殴ると、吹き飛ばされた私には見向きもせずに部屋を出ていった。


「今のが、最後だ」


 意味の分からない言葉を最後に、部屋は静まりかえる。

 痛む体を動かして彼の所に戻ると、肌の色が青くなっていた。

 この世界に来て初めて会った少年。圧政をしく帝王を倒すと勇んでいた。こっちに来て魔法が使えなくなった私は、必死に戦う術を学んだ。途中で渋い男とお姉さまと出会い、そしてここまでやってきた。

 魔法が使えればきっと私は、彼は……どうなったというのだろう。

 魔法が使えれば、彼は助かったはずだ。そう、全ては私が魔法を使えなかったせい。そのせいで――


「ミントちゃん」


 後ろから抱き締められ、思考が途切れる。


「ミントちゃん、彼は精一杯頑張った。頑張って、頑張って得た結果、帝王を倒したの」

「……」

「でもね、私たちには一体何が出来たの?」

「それはっ、彼と一緒に」

「帝王を倒す? うん、そうだね。でも結果はこうなった。みんなみんな、頑張ったのに彼だけが倒れてしまった。何でだと思う?」

「え?」

「何で彼だけが倒れたのか。ううん、違うわ。何で私たちだけ生き残ったのか」

「……彼が、私たちのことを、守ってくれた、から」

「うん、そうだね」


 お姉さまは私をギュッと強く抱き締めた。


「私たちは彼に守られた。それなら、私たちには彼に何を返してあげられるかな」


 お返し……私は、彼に守ってもらった。だから私は。私のできることは。


「うん……」

「守ってあげたかったんでしょ?」

「……うんっ」

「だったら」


 私は立ち上がった。そして駆け出す。

 彼の夢を叶えるために。

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