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ガイドのタホマ

伯爵とエルザはナヤラのこの村を拠点に、周辺の呪術師を訪ねることにする。

村からガイドとして紹介されたのは

名を タホマという。

静かな瞳を持つ、村の若者だった。


「タホマは大地のこと、生き物のことなんで知っている。狩りも上手い。星も読める、風もだ。」


村の長がそういってタホマを伯爵とエルザに紹介してくれた。

だが、タホマは二人には無愛想だった。

それは二人のことを快く思ってなかったからだった。

旧大陸の人間を信用しないようにしていた。

無理もないことだった。

それは伯爵とエルザにもよくわかることだった。


「タホマくん、これは仕事だと思ってくれ、気に入らないのはわかる。ガイドとしてちゃんとやってくれればそれでいい…」


伯爵は少しでもタホマに無理はさせたくはなかった。嫌なら断るだろう。しかし、彼は受けた。長も無理にとは言ってない。

能力を認められれば誰でも気分はいい。それが長から認められればなおさらだ。

年長者に対する尊敬の念は強い部族だからだ。

こうして3人は村々を訪ねた。

無理せず、また村に戻り、また出発する。

この繰り返しだ。


最初は言葉少なく無愛想だったタホマだったが、少しは態度が柔らかくはなった。


「おまえのその刃物はほんものか?使えるのか?」


ある日、タホマはエルザがつけているナイフをさしてそういった。


「本物だよ(笑)」


そういうとエルザはナイフを取り出し巧みに操った。それはイルマに教わったナイフの術。


それをみたタホマもナイフをつかんでいた。

タホマは構えた。

エルザも構える。


伯爵はそれを黙って見ていた。


2人のナイフは激しく交差し、ぶつかり合った。


「おまえ、つよいな(笑)」

「タホマもだよ(笑)」


伯爵はそんな2人をみてなぜかニヤついていた。


若さだ…


2人はその後互いの銃を見せあった。


「これはなんて書いてあるんだ?」


エルザのリボルバーを見てタホマは尋ねた。それは銃身に彫られていた旧大陸の文字のことだった。


「これはね…」


エルザは彼に言葉の意味を説明した。

こうやって2人は互いのことをだんだん知るようになっていった。


タホマは森の道を知り、

水脈の匂いを知り、

風の変化を読む。

狩りをする。


エルザは毎日、旅の安全を祈る。

狩りの恩恵を感謝の儀式を行う。


そんなエルザをタホマは尊敬する。

呪術師は尊敬の対象だからだ。


タホマと親しくなると、エルザは時々ルーカスを思い出していた。


元気かな…



エルザは訪れた村々の呪術師から学ぶことが多かった。

祈りの形。

薬草の扱い。

祖霊への言葉。

伯爵はすべてを書き留める。

時には伯爵やエルザが旧大陸の魔術をみせた。

そのせいか、伯爵に対しても畏敬の念をもって接してくれる村もあった。

村の呪術師と伯爵の間の通訳をエルザがしていた。


ある村で伯爵とエルザが魔術を見せていると、村の長と呪術師がなにかを話し込んでいた。

エルザには聞こえている。


旧大陸の魔術を取り込むことができればかなり大きな力を得るのではないかと。


エルザは、そのことを伯爵に伝えた。


「なるほど…」

夜には、二人で小さな実験をした。


村から離れた草原に出た。

月明かりが2人を微かに照らす。

伯爵が術式を詠唱する。

するとエルザの足元に魔法陣が表れた。

伯爵の魔術陣の中で、

エルザが呪文を唱える。

理論と感応。

旧大陸の術式と、新大陸の祈り。

二つの力が触れ合った。

エルザが空に向かって手を突き上げる。

空気が震える。

エルザが光に包まれる。

咄嗟にエルザは銃を取り出した。

銃口は暗闇のどこか向こうに向けられていた。

引き金を曳く。

鈍い発射音と共にエルザの全身を包んでいた光が銃身に集まる。

それは一瞬の現象だった。

普通の人にはただの銃声だろう。


銃身に集まった光は一瞬のうちに彼方に伸びていった。

その光が暗闇に消えたその瞬間、遠くで地鳴りのような音がした。

微かな光の下で、山からなにかが立ち上るのがみえた。

伯爵は確信する。

これは新しい体系だ。

新しい力だ。

だが、危険だ…恐ろしく…

だが、これはエルザにしかできないだろう。

そこが安心でもあり、不安でもある。


エルザにはなにが起こったのかわからなかった。


「伯爵…今のは…」


「ああ…今のは、新しい力だ…とてつもなく大きな…」


「すごい!こんなことができるなんて!」


エルザの喜ぶ姿を伯爵は素直に喜べなかった。


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