勇者の末裔と村長のパンツ
少しでも笑っていただけたら嬉しいです。
※途中、下品に感じる表現があります。
ここは──エッホラ村。
この村には、かの伝説の勇者の末裔が暮らしていた。その名はブレック(初期HP43)。
そして彼が15歳の誕生日を迎えたその日、村長に呼び出されたのである。
「よく来たな、ブレックよ」
「村長、ご用とは何でしょう?」
(まさか誕生日プレゼント? それともサプライズパーティー?)
淡い期待を胸に、ブレックは周囲をキョロキョロ見回した。
「どうした……? そんな探し方では、ワシのパンツは見つからんぞ!」
(パ、パンツ……? なんで俺が村長のパンツ探してる前提なの!? この世で一番興味ないわ!)
「ち、ちが──」
ブレックが否定しようとした瞬間、村長が叫んだ。
「このスケベ野郎が!!」
ブレックは10のダメージを受けた。
「まあ良い……お主も年頃じゃ……。今回のことは二人だけのヒ・ミ・ツ、うふん♡」
さらに10のダメージ!
「ところで、お主も知っての通り、魔王が復活した」
「は、はい……存じております」
「伝説の勇者の末裔であるお主も15歳になった。言いたいことは分かるじゃろ……?」
(ついに……俺も旅立つ時が……!)
「ついに来たのですね」
「そうじゃ……ついに来たのじゃ……ワシのお通じが!」
(お通じ!? パンツより興味ないワード出たよ! 村長のお通じが、俺の“興味ないランキング”堂々の1位に……)
「10年ぶりじゃ」
(え、10年!? それ病気じゃん! ……村長のお通じが“興味あるランキング”にランクインしてきた……!)
「さあ、旅立つのじゃ! ブレックよ!」
「お言葉ですが村長……10年ぶりのブリブリは心配で、旅立てません!」
「10年ぶりじゃと……すまん、話を盛った。……10日ぶりじゃ」
(十分ヤバいわ!!)
「まずは、この世界に散らばる伝説の4つの秘宝を探すのじゃ」
「4つの秘宝?」
「そうじゃ……アンパン、カレーパン、ジャムパン、クリームパン……」
(パンかよ!?)
「ちょっと待ってください、秘宝ってパンなんですか?」
「そうじゃ! 古より伝わる神聖なパンじゃ!」
「“古より”って、腐ってるじゃないですか!?」
「ふふ……若造め。伝説の秘宝が腐っているわけなかろう!! この“知ったかブリブリ野郎”が!!」
30のダメージ!
(いやいや、ブリブリはむしろ村長でしょ!)
ブレックは戦闘不能なのに、ツッコミをしている!
「そのパンはな、表面が緑だったり、白いフワフワがついてたり、黒い斑点が──」
(完全にカビ! アウト!! 食ったら即ブリブリだろ!)
「そ、村長……その秘宝を集めてどうするんですか?」
「呼びだすのじゃ……」
「呼びだすって、ま、まさか……?」
(何でも願いを叶える魔人とか?)
「そうじゃ! ワシのパンツを!」
(お前のパンツかーーい!!)
「ワシのパンツを呼び出し、願い事を言うのじゃ!」
「願い事……『魔王を倒してくれ!』とか?」
「違う! パンツで魔王が倒せるか! お主、馬鹿か?」
(なんだこのジジイ……イライラする……!)
「じゃあ願い事って……?」
「ワシのお通じが毎日くることに決まっとる!」
(決まってねぇよ! 世界の命運より腸の調子を優先かよ!)
「さあ、旅立つのじゃ、ブリックよ!」
(ん? 今ブリックって言った? ブレックとブリブリ野郎を混ぜた?)
「ところで、村長……魔王はどうやって倒せばいいんですか?」
「ん? 魔王か……。それは……気合いと根性じゃ!」
(うわぁ……出た精神論! 超絶ブラック!!)
「さあ行け! ブラックよ! いや、ブレッ……ブリックよ!」
(今度はブラック!? そしてやっぱりブリック!?)
こうして──世界に散らばる4つの秘宝を求めて、ブレッ……ブリックは旅立った。
(いや、地の文まで間違えるなーー!!)
◇
──数ヶ月後。
数々の仲間(※全員途中で逃げた)との冒険を経て、ブレックはついに魔王城へと辿り着いた。
「フハハハ! 来たか、勇者の末裔よ!」
玉座に座すは、漆黒の鎧をまとった魔王。背丈は3メートル、角は2本、声はドスが効いている。
「この世界は我がものとなる! 貴様のような青二才が、我に勝てると思うか!」
「や、やってみなきゃ分からない!」
ブレックは剣を抜いた。だが──
「……は、剣が折れた!?」
魔王の覇気に触れた瞬間、伝説の勇者の剣はパキンと真っ二つに。
「フハハ! 武器も失ったか、ブリブリ野郎!」
(なぜ、その呼び名を……!?)
絶望に沈みかけた、その時。
ブレックの腰の袋が光を放ち始めた。
「こ、この光は……!」
「ブリブリよ……聞こえるか?」
脳内に、懐かしいジジイの声が響く。
「そ、村長!? どうして……? それに俺の名前、ブリブリになってるし!?」
「お主に最後の切り札を授けよう。そう──ワシのパンツじゃ!」
(パンツーーーッ!?)
袋から、ぼわぁっと光とともに布切れが飛び出した。
それは、金色に輝く村長のパンツであった。
「な、なんだあの布切れは……!?」
魔王がたじろぐ。
「ゆけ、ブリブリよ! パンツをかぶるのじゃ!」
「かぶるの!? 履くんじゃなくて!? いや、履くのも嫌だけど!」
「かぶってこそ勇者! 気合いと根性じゃ!」
(ここで精神論かよーーー!!)
しかし他に手はない。
ブレッ……いや、ブリブリは震える手でパンツを頭に装着した。
──その瞬間。
「う、うわああああ!!」
全身から光が溢れ、身体能力が桁違いに跳ね上がる。
「ば、馬鹿な……!? パンツの力がここまでとは……!」
魔王が後ずさる。
「いっけぇぇぇぇーーー!!」
ブリブリはパンツから、村長の姿をしたミサイルを発射!
ドカーンッ!!
村長ミサイルが魔王の胸を直撃し、漆黒の鎧を吹き飛ばした。
「ぐおおおおおおっ……!! パンツに敗れるとは……我が生涯……一片の……ブリブリ……」
魔王は断末魔とともに、チリ(ブリ)となって消え去った。
静寂に包まれた魔王城。
パンツを頭にかぶったまま、ブリブリは膝をつく。
「やった……勝ったんだ……!」
そこに、再びジジイの声が響く。
「よくやったのう、ブリブリよ。これで世界は救われた。ワシのお通じも、毎日快調じゃ!」
「関係ねぇぇぇぇ!!」
こうして世界は救われた。
だが、後世に語り継がれるのは「勇者ブレック」ではなく──
「村長のパンツ」であった。
パンツで魔王を倒してるや~ん!
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